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ソードアートオンライン~性別不詳の槍術士~

作者:araiittetu
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4.本当のスタート

 
前書き
とんでもなく遅くなったorz
というわけで第4話。 

 
「す、すいません。あんなに泣いちゃって」

「構わないさ。流石に驚いたけどね」

 あの後、涙が収まった彼女――シリカと名乗っていたが――を連れてレストランへと向い、遅い夕食を取っていた。

 眠気は、先ほどの出来事に驚いたようですっかり息を潜めている。代わりに空腹感が我慢できないほどの存在感を表してきたが、幸いにもお腹の声の再現前に食事にありつけた。

 ……いや、俺も変だとは思うよ。ここで食べて満腹になるなんて。でもどうしてこうなってるのかなんて調べられないんだし、受け入れるしかないじゃないか。

 この世界の不思議については考えを強引に打ち切り、今後のことについての話し合いを始めることとしよう。

 だから、俺は真剣なまなざしをシリカ嬢に向けた。

「本当に、いいのかい?」

「はい。私も連れて行ってください」

 シリカ嬢と共に行動すること。それ自体は彼女の涙を見たときに覚悟はした。けれども、ここまで積極的に来るとは予想していなかった。まぁ確かに、仲間がいたほうが一人でいるよりも安全でやり易くもあるだろう。

 けれでも、それで良いのかとも考えてしまう。この空気に流されているのでは、場当たり的な考えなのではと。

「誰かといた方が心強いですし、何より女の子同士の方が落ち着きますから」

 そんな考えを知ってか知らずか、シリカ嬢の返答はありきたりでも、綺麗な表情をしていた。何かが吹っ切れたかのような清清しい笑顔。やけくそや場の流れに押されている訳ではない本心からの言葉と分かる一言。

 自分の考えは杞憂だったようだ。これなら安心し、あんしん?

 ……あれ?何かおかしいな。とてもおかしいな。先ほど誰が女の子と言っていたんだ?ここに女の子は一人しか、いや、そもそも話し合っているのは二人しか。

「ち、ちょっと聞き取れなかったらしい。えっと、女の子?だ、誰が」

「……あれ?」

 なんだろう。いまものすごい情報の齟齬と言うか、ひどい誤解が見つかったのだけど。

 いや、分かるよ?現実でも間違えられたことがあるからね。ナンパに出会ったときは本気で殴り倒そうかと思ったけど。で、でも今使ってるのはアバターだから俺の作った何処からどう見ても男にしか見えない、ってぇ!

「そういえばあの時リアルの顔になってたんだよね……」

「い!いきなり落ち込んでどうしました!?」

「いや、運命というかリアルラックの低さに嘆いているだけだよ」

 まずは説明と言うか、俺が男だと言うことを彼女に教えなきゃいけないんだよね。気の重さよりも心の痛みのほうが断然きつい。そんなことをテーブルに突っ伏しながら考えるのだった。



・・・・・・NOWLOADING・・・・・・  



「じ、じゃあ……」

「正真正銘男です!別に水をかぶると変わるわけでも、グロテスク人形によって変えられたわけでもなく!正真正銘男です!」

 あれからしっかりとお話、と言うか嘆願にも近い説得によって理解はしてくれたみたいだ。その顔はありありと納得していないと言っているが。

「で、でもその髪型は?」

「……いや、それは、その」

 まぁ、そうだよな。

 シリカちゃんが指摘した俺の髪型。男性にしては長すぎる。それもただ伸ばしている訳ではなく、その長さに調整して手入れもしているのだから余計に勘違いするのだろう。顔?次の人生に期待するしかないよ。

 ただ、この長さが俺にとっては重要なのだ。鏡を見れば否応なくあの日のことを思い出す。俺の罪を忘れずに、正面から叩きつけてくれる。

 何と言えばよいものか。頭を掻きながら思考をめぐらせる。

「別に無頓着と言うわけではなく、ちょっとした事情でね。意図的にこの髪型を維持しているんだよ」

「それが、その髪型?」

「まぁね。女男とは呼ばれたことはあったけど、そんなに似合ってたのか」

 もしかすると、知り合いの中にも同じ勘違いをしている奴らがいるかもしれない。い、いや……いないはずだよな。うん。

 そういえば、そもそも学生時代はあまり友達と遊んだ記憶が無いな。どちらかというか物理的会話のほうが多かったし、家事が忙しくてまっすぐ帰ってたから。

「……シリカ嬢。学生生活は満喫しようね。後で絶対後悔するから」

「い、いきなりどうしたんですか?そんな寂しそうな顔をして」

「いやなに、過去に残るのは後悔だけだと今更ながらに体感しているだけさ」

 まぁ、一応理解はしてくれたんだしこの話題を引っ張る必要は無いよね。と言うか引っ張られると精神へのダメージがひどい。

「そういうことでシリカ嬢。別に俺についてこなくても大丈夫だぞ?女性だと間違えてきていたんならなおさらだ」

 女性だからこそ安心していたのなら、勘違いだとしてもこのまま連れて行くのはまずいだろう。だからこそ聞いたのだが、

「問題ありません」

 彼女の笑顔には何も変わりも無かった。

「確かに女の人のほうが安心しましたけど、サクさんなら信用できます」

 ……まぁ、このくらいの年齢ならまだ恋愛云々は経験が無いんだろうなぁ。俺に幼女趣味はないが、少しくらいは防波堤になったほうがいいよな。

「そっか。じゃあこれからよろしく」

「はい!」

 それに、これだけの信用を貰ってんだ。それを返さずにいるのは、いささか以上にみっともないだろう?

 そう考えながら、無邪気に伸ばされた手をつかみ返すのだった。 
 

 
後書き
戦う理由なんて人それぞれ、でもシリカの理由はかなり悩んだり……

感想等お待ちしております。次はもうちょっと早く書き上げるよ! 
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