ハイスクールD×D ~銀白の剣士~
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第3話
Side 渚
「ほら、ベッドへお行きなさい。私も支度するから」
リアス先輩は僕を急かしながら、制服を脱ぎだし始めた。
「え? ちょ、ちょっと! ちょっと待ってください!」
理解が追いつかないが、なんとか脱ぐのをやめさせようとする。だが、リアス先輩はすでにスカートを脱ぎ捨て、上も脱いでいる。下着姿だ。
思わず、視線がそちらに向かいそうになるのを、必死に耐える。
「お、落ち着いて! 一旦落ち着いてください!」
なんとか思い留まらせようと声をかけるが、一切聞いていないようだ。
「ねぇ、ナギ? 私ではダメかしら?」
下着姿になったリアス先輩は、一度深呼吸をした後、僕に詰め寄ってきた。僕はそれにしたがい、後ろに下がっていく。
「いや、ダメとか、そういうことじゃなくて!」
「いろいろ考えたのだけれど、これしか方法がないの」
リアス先輩は何を言っている?
「既成事実ができてしまえば文句はないはず。身近でそれが私とできそうなのは、あなたとイッセーしかいなかったわ。でも、イッセーはアーシアのことが好きみたいだから、あなたしかいないの」
いや、他にもいたんじゃないですか? ほら、ええと・・・・・・祐斗とか!
「祐斗ではダメ。彼は根っからのナイト。絶対に拒否するわ。だからこそあなただけだった」
僕の思考を読んだように答えた。そして、迫りくるリアス先輩に僕はついに追い詰められベットに押し倒される形になった。
「リ、リアス先輩・・・・・・・・・」
先輩は腕を後ろに回して、ブラジャーのホックを外した。胸が露出される。理性がガリガリと削られていった。
「ナギは初めて? でも『抱かれたい男の娘』って言われてるから・・・・・経験あるの?」
いやいや、それ周りが勝手に言ってるだけです。経験なんてありません。
「いや、その、初めてです」
「そう。私も初めてだから、お互い至らない点もあるでしょうけど、なんとかして最後までことを成しましょう。大丈夫、仕組みは簡単だわ。私のここにあなたのを入れるだけよ」
まずい! このままでは本格的にやってしまうことになる・・・・・・・。今のところは削られていく理性を必死に奮い立て、なんとか息子は鎮めているが、このままではヤバイ!
すると、突然リアス先輩が僕の手を取った。僕の右手はリアス先輩の胸に当てられている。
なんとも言えないやわらかい感触が、右手から伝わってくる。
「わかる? 私も緊張しているわ。胸の鼓動が伝わるでしょう?」
右手を通して、ドクンドクンという音が伝わってくる。
さらに、リアス先輩は僕の服に手をかけ始めた。まずい! このままでは脱がされる!
「リ、リアス先輩! 一寸、一寸待ってください!」
「私に恥をかかせるの?」
いや、恥とかじゃなくて! こんなのがいいわけないじゃないか! 猛れ、僕の理性! 奮え、僕の理性! 諦めるな、理性! もっと熱くなれ、理性! 今こそ現状を打破できる力を僕に! いくぞ!
「リアス先輩!!」
「キャ!」
理性を振り絞り、腹筋だけで上体を起こしてリアス先輩を抱きしめた。
「ごめんなさい・・・・・・僕にはこんな形で先輩を抱くなんてできません」
リアス先輩の胸がダイレクトに当たっているが、そんなことは関係ない。
「急にどうしたんですか? 何があったんです? 僕にできることなら力になりますよ、約束します」
僕がそう言うと再び、魔法陣が現れそこから銀髪のメイドさんが出てきた。
「こんなことをして破談に持ち込むつもりですか?」
メイドさんはリアス先輩を確認すると、淡々と言った。
「こんなことでもしないと、お父様もお兄様も私の意見を聞いてくれないでしょう?」
「だからと言って、女性としようとするのを知れば、旦那様もサーゼクス様も悲しまれます」
じょ、女性・・・・・・・・。ああ、初対面の人から女性扱いされるのは慣れているが、この状況で女性扱いされるなんて・・・・・・・・・。涙が出そうだ。リアス先輩にお兄さんがいたとかどうでもいい。僕はベットに倒れた。今日は枕を涙で濡らしそうです。
メイドさんの言葉を耳にして、リアス先輩は一気に不機嫌になった。
「私の貞操は私のものよ。私が認めた者に捧げて何が悪いのかしら? それにナギは男よ。女の子に見えるけど」
最後は余計です・・・・・・・・。「女の子に見えるけど」はいりません。
「それは失礼しました。女性にしか見えませんでしたので。それはともかく、グレモリ―の次期当主がむやみに肌を晒すものではありません。ただでさえ事の前なのですから」
メイドさん、リアス先輩の上着を拾ってかける。そして、メイドさんの視線が俺に移った。
「はじめまして。私は、グレモリー家に仕える者です。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを。そして、先ほどは失礼しました」
メイドさん――グレイフィアさんが丁寧なあいさつと共に、僕に謝罪してきた。
「構いませんよ、慣れてます。慣れてますから・・・・・・・・」
「ところで、グレイフィア、あなたがここに来たのはあなたの意志? それとも家の総意?・・・・・・それともお兄様の意志かしら?」
半眼でいかにも不機嫌ですといった表情のリアス先輩。なんか新鮮だ。
「全部です」
グレイフィアさんは即答した。リアス先輩は諦めたように深くため息をつく。
「そう。兄の女王であるあなたが直々に人間界に来るのだもの。そういうことよね。わかったわ」
リアス先輩は、脱いだ服に手をかけた。
「ごめんなさい、ナギ。さっきまでのことはなかったことにしてちょうだい。私も少し冷静ではなかったわ。今日のことはお互いに忘れましょう」
「ナギ? この方が」
あれ? 僕のこと知ってるの?
「ええ、兵藤渚。魔王を上回るほどの魔力を持つ人間よ」
「興味深いですね。人間でありながら魔王を超える魔力を持つとは」
不思議なものを見る目で僕を見てくる。ほんのり顔が赤いのは、服装の乱れた僕を見たせいじゃないと思いたい。
「グレイフィア、私の根城で話しましょう。朱乃も同伴でいいわよね?」
「『雷の巫女』ですか? 構いません。上級悪魔たる者、女王を傍らに置くのは常ですので」
「よろしい。ナギ」
リアス先輩がツカツカと歩み寄ってきて、僕の頬にキスをした。
「今夜はこれで許してちょうだい。迷惑かけたわね。明日、また部室で会いましょう」
そう言って、グレイフィアさんと共に魔法陣に消えていった。
僕の頬にキスの感触を残して。
Side out
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Side 一誠
俺は今、アーシアと木場と共に部室に向かっていた。渚は少し遅れるらしいと木場が言っていた。
「部長の悩み?」
「うん。最近部長の様子がおかしいのはイッセーくんも気づいていただろう」
確かに、心ここに在らずって感じの時が多かったな。
「たぶん、グレモリー家に関わることだと思うんだけど」
そう言えば、今朝の渚の様子が少し変だった気がする。あいつ何か知ってたのかな?
「朱乃さんなら知っているよな?」
俺の問いに木場はうなずく。
「朱乃さんは部長の懐刀だから、もちろん知っているだろうね」
うーん、俺たちにはわからないか。何か事が起きてからがんばりますかね。
「・・・・・・僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて・・・・・・・・」
部室の前に立って、目を細めて顔を強張らせる木場。なんだ?
気にせずに開けると、室内には部長、朱乃さん、小猫ちゃん、そして初めて見る銀髪のメイドさんだった。どなたでしょうか?
部員の面々を眺める。明らかに不機嫌そうな部長。いつも通りニコニコしているがどことなく冷たい感じの朱乃さん。小猫ちゃんは部室の隅っこで椅子に静かに座っている。メイドさんはなんかクールな感じだ。
(なんか張りつめた空気なんですけど・・・・・・・・)
後ろで、木場が小さく「まいったね」とつぶやいた。
そんな中をメイドさんが俺の前に歩いてきた。
「はじめまして。私は、グレモリー家に仕える者です。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを。」
「ど、どうも。リアス様の下僕で兵士の兵藤一誠です」
メイドさん―――グレイフィアさんはピクリと片方の眉を動かす。
「リアス様。彼が?」
「ええ、そうよグレイフィア。彼が『赤龍帝の籠手』の使い手よ」
「・・・・・・・・・『赤龍帝の籠手』、龍の帝王に憑かれた者」
異質なものを見る目で俺を見るグレイフィアさん。何かやらかしましたか、俺?
「挨拶はそこまでにしてちょうだい。ナギがいないけどとりあえず、部活をする前に少し話があるの」
「お嬢様、私がお話ししましょうか?」
部長はグレイフィアさんの申し出をいらないと手を振った。
「実はね――――」
部長が口を開いた瞬間だった。床の魔法陣が輝きだす。
魔法陣はグレモリーの紋様から見たこともない姿へと形を変え始めた。
なんだ? グレモリーの関係者じゃないのか?
「―――フェニックス」
近くにいた木場がそう漏らす。フェニックス? やっぱりグレモリーじゃないのか!?
魔法陣が輝き、そこから人影が姿を現した。そして炎が巻き起こる。
熱い! なんなんだ急に!
炎の中から赤いスーツを着た男が姿を現した。
「ふぅ、人間界は久しぶりだ」
見た目は二十代前半と言ったところだろうか。整った顔立ちだが、どこか悪ガキっぽい印象がある。ぶっちゃけホストにしか見えない。
男は部屋を見渡して、部長を捉えると口元をにやけさせた。
「愛しいリアス。会いに来たぜ」
・・・・・・・愛しいリアス? こいつ部長とどういう関係?
部長の方は、一切歓迎しているとは思えない。しかし、男は部長の様子など気にせず、近づいていく。
「さて、リアス。早速だが、式の会場に行こう。日取りも決まっているんだ」
こいつ、軽そうなやつだな。
「・・・・・・・放してちょうだい、ライザー」
部長が手を振り払った。声が恐い。
「あんた、女の子にその態度はどうよ」
「あ? 誰、お前?」
俺が男に言うと、明らかに不機嫌な口調で返される。
「俺はリアス・グレモリー様の下僕。兵士の兵藤一誠だ!」
聞かれたからには答えなければな!
「ふーん。あっそ」
興味ないんかい! だったら聞くな! まったく、むかつく奴だなっ!
「つーか、あんた誰?」
こちらは名乗ったんだ、こいつの名前くらい聞いてもいいだろう。
「あら? リアス、俺のこと下僕に話してないのか?」
「話す必要がないから話してないだけよ」
部長は冷たく突き放す。
「あらら、相変わらず手厳しいねぇ」
男は目元を引きつらせている。
「兵藤一誠様」
そこへグレイフィアさんが介入してきた。
「は、はい」
メイドさんに話しかけられて、緊張する俺。・・・・・・なんだか情けない。
「この方はライザー・フェニックス様。純潔悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であります」
爵位持ちの悪魔ってことは上級悪魔か。それはいいとして部長とはどういうご関係で?
「そして、グレモリーけ次期当主の婿殿でもあります」
ん? 婿・・・・・・・・? 次期当主って部長だよね?
「リアスお嬢様とご婚約されてるのです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」
図らずも、俺は絶叫してしまった。
Side out
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