恋は無敵
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第七章
「君には麻美子を任せられる」
「有り難うございます」
渉は哲章のその言葉に喜びよりも安堵を感じた、右手の痛みによりそうなったのだ。
その彼に哲章はまた言った。
「だが」
「だが?」
「それは蛮勇だ、知恵ではない」
「知恵ですか」
「答えはもう一つあったのだ」
それがあったというのだ。
「尚氷で手を冷やしてから中に手を入れることは許さなかった」
「といいますと」
「中に手を入れないでその茶釜をひっくり返してだ」
そしてだというのだ。
「鉄の棒だけを私に渡してもよかったのだ、冷えてからな」
「そのやり方もあったんですか」
「冷えるまで待つつもりだったしな」
「つまりそれが知恵ですか」
「知恵もまた力だ」
だからだというのだ。
「それでもよかったのだ」
「そうだったんですか」
「君は蛮勇だ、だがその蛮勇もまた力だ」
知恵と同じくそうだというのだ。
「見事な、な」
「だったらいいですけれど」
「知恵は麻美子も持っている」
「あの娘が」
「二人で助け合ってやっていくことだ」
今度はこう言う哲章だった。
「一人でな駄目だ」
「乃木坂さんと一緒になるjからですね」
「そういうことだ。では麻美子を頼む」
哲章はここで正座をしたまま頭を深々と下げて渉に言った、こうして彼は麻美子との交際をその恐ろしい兄から認めてもらった。
麻美子は包帯に巻かれた渉の手を心配している顔で見ていた、そのうえでこう彼に対して言った。
「あの、すいません」
「お兄さんのこと?」
「はい、ああした無茶を言って。兄は私から言っておきましたので」
「あのお兄さんに?」
「ひっぱたいておきました」
その和製シュワルツェネッガーをだというのだ。
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