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運命(ミチ)に導かれし先導者:Returns

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第二話:惑星クレイへ

 
前書き
三行あらすじ。
ナオキ、森を探検
一宮との出会い
クレイに行くことに。 

 
親に許可を貰い、待ち合わせ場所に向かう。
流石に森に行くとは言えず行先はぼやかしたが、親はそれで納得したようで、
「ちゃんと勉強しろよ~」
と笑いながら俺を見送ってくれた。
悪いことはしてないのに、罪悪感を感じるのはなんでだろう。

「ちょうど時間ぴったりだね」
さっき行った場所に来るとすでに一宮がいて、クスクスと笑いながら俺を待っていた。
「じゃあ行こうか」
「行こうかって、どこに?」
一宮はちょこんと首を傾げ、しばし考えてから
「僕の家……?」
とはっきりしない様子で答えた。
すごく不安になる答えやめて。

森のさらに奥に進んでいく。
薄暗い森は俺の恐怖心を煽り、思わず前を歩いている一宮の服の裾を掴んでしまう。
一宮は一瞬歩みを止めたかと思うと、無言で服を掴んでいる俺の手を自らの手で握り、また歩き出した。
「あそこだよ」
と指を指したのはそれから数分歩いた後だった。
指された方を見れば、こじんまりとしたログハウス。
なるほど、だから家に?マークが付いていたのか。
鍵は開いていたのか付いていないのか、一宮が軽く押すだけで扉は簡単に開き、俺達を出迎えた。
中は綺麗に掃除されていたが、それ以上に生活感のなさの方が目立つ。
「本当にここがお前の家なのかよ?」
という俺の問いに一宮は曖昧な笑いで返し、
「それじゃ、クレイに行く方法を教えるね」
と言った。
俺は大掛かりな魔方陣やかっこいい呪文をイメージし、期待に胸を躍らせた。
「まぁ、この証を握りながら寝るだけだけどね」
「……そんだけ?」
「それだけ」
「特別な呪文とかは……?」
「そんな余計なものなんていらないよ」
一宮はクスリと笑う。
そして無駄に大きいベッドに誘われた。
「っていきなり!?」
「うん。日も落ちてるし、これ以上待つ必要はないでしょ?」
「日が落ちていることと、何か関係があるのか?」
「あぁ、地球の日没はクレイの夜明けなんだ。逆もまた然り。昼夜が逆転しているんだ」
「なるほど」
「だから」
早くおいでよ。
と言って一宮は微笑む。
その笑顔がとても薄っぺらく見えて、思わず俺は逃げ出したくなる。
じり、と一歩退いた時、一宮の目が変わった。

此処まで来て帰るの?と。
後悔するよ?と。

ごくりと喉を鳴らし、制服のままベッドに潜り込む。
「いいこだね」
一宮はそう囁き、俺の手を自らの腕輪に重ねた。
それは見た目に反して人肌並みに温かく、すぐに眠りに落ちてしまいそうになる。
「それじゃ、おやすみ」
一宮の言葉が遠くに聞こえる。
水晶から金色の光が零れ落ちていくのが、最後に見た光景だった。



「……君、ナオキ君」
呼びかけと共に、体を揺すぶられる。
その感触があまりにもリアルだったので、俺はてっきりクレイに行くのは失敗したのだと思った。
けれど、目を開けてすぐに見えた風景はログハウスではなく、いかつい見た目の大きな門と頑丈そうなコンクリートの壁。
「おはよう、そしてようこそ惑星クレイへ」
白をベースに金色のラインの入った学ランを着た一宮だった。
「ここが……惑星クレイ」
思ったよりも近代的だな、と呟くと、一宮は首を横に振った。
「ここはスターゲートだからね。国家によってだいぶ違う印象を受けると思うよ
あ、くれぐれも手を放そうとしないでね」
「なんでだ?」
「簡単に言うと、戻れなくなるから」
いつもよりも低い声にぞっとする。
「早く行こう。時間はいくらあっても足りないし、会いたくない人もいるし」
「それは、誰のことかな?」
突然降ってきた声に、一宮は舌打ちをしてから視線を門の上に向ける。
追うように顔を上げると、鮮やかなオレンジの長い髪の毛を揺らして門に座っている女がいた。
悪戯っ子のような笑みを浮かべると、彼女は俺達の元へ降り立つ。
「こんにちは、そして初めましてだね。
私はノヴァグラップラーの先導者、(いざない) リンネ。これからよろしくね♪」
一宮は露骨に嫌な顔をするが、とりあえず挨拶を返す。
「どうも、俺は……」
「皆まで言う必要は無いさ。石田ナオキ君、でしょ?宮路学園高等部1-A、先導アイチの影響でヴァンガードを始めて、現在はカードファイト部に所属。根っからの『なるかみ』使いで、抹消者(イレーサー)が主軸かな。んで……」
「相変わらず、他人の情報を荒らすことが好きなんだね、君は」
一度も会ったことのない人に自分のことを次々に言われて混乱していると、一宮が溜息混じりに呟く。
誘は一度大きく目を見開き、それから一層楽しそうに唇を歪ませる。
「荒らすだなんてとんでもない!私は私自身のちょーっとした情報網で 偶・然 ナオキ君のことを知っただけさ。それに、君の事は何一つわかってないからいいでしょ?」
一宮は歯ぎしりをして誘を睨む。この二人には相当な因縁があるのかも、とさっきの一宮の発言を思い出しながら考えた。
「いい悪いの問題じゃない。それって相当悪趣味なことだって早く気づいた方がいいよ?」
「残念、私はとっくに気づいてるよ。直す気が無いだけー」
唐突に誘は俺を見遣る。
そして一気に距離を詰めたかと思うと俺の手を女と思えないような強さで引っ張られ、視界が黒く染まる。
抱き寄せられ、顔をたゆんたゆんの胸に押し付けられているとわかるのに、俺は数秒要した。
というか俺の方が身長低かったのに今気づいた。
「い、誘!な、何をして……!」
「ナオキ君を抱いてる。いー君も一回やってみなよ、割と抱き心地いいぞ~?」
誘の笑い声が、体を通して頭に響いてくる。
なんか、とても幸せに感じる。
流石おっぱい。おっぱいは正義。
「いい加減ナオキ君を返して。今は時間が惜しいんだ」
一宮の苛立った声がぼんやりと聞こえる。
誘はちぇ~、と唇を尖らせてからぐっと俺の耳に口を寄せて、

「絶対に一宮を信用するな」

と今までとは打って変わったような冷たい声で囁いてから俺の手を一宮のそれと重ねた。
「じゃあ行くよ。ナオキ君はなるかみ使いみたいだから、ドラゴンエンパイヤにしようか」
「お、おう!」
俺が頷くのを確認して、一宮は目を瞑った。
途端に右手の水晶が金色の光を放ち、一宮の体を覆い始める。
やがてある形に収束し、弾けるように光が散ると、そこには白いウサギをモチーフにしたような鎧を身に着けた一宮がいた。心なしか身長も高く、ガタイもよくなっている気がする。
「ライド、月影の白兎 ペリノア」
「かっけぇ……」
思わず呟くと、一宮は照れたように笑う。
「こんなの、先導者になれば普通のことだよ」
一宮は強く地を蹴り上げる。
突然の急上昇にビックリしたけれど、思ったよりも体に負担はなかった。
それを一宮に報告すると、
「まぁ、今のナオキ君は所謂霊体だからね」
と答えられた。
「んで、ドラゴンエンパイヤはどっちなんだ?」
一宮は無言で指さす。
よく見れば水平線ギリギリに龍が飛んでいるのが見える。
今からイメージでしか会えなかったユニットを生で見れる。
俺は今、無性にワクワクしていた。


そのころ、スターゲートでは。

「やっと石田が来たか……割と遅かったな。それに連れて来たのが一宮ってのも……向こうさんは石田を巻き込みたくなかった?それじゃあなんで一宮は積極的に動いたんだろ……あいつに自分の意思があるとは思ってなかったんだけどな……仮説、もうちょい練ってみるか」
ズボンのポケットからメモ帳とペンを取り出し、彼女は思考の海に沈んでいった。 
 

 
後書き
筆が、遅い。
まさかここまで投稿が遅くなるとは思っていませんでした(;・_・)
誘さんは前々から出そう出そうと思ってたので満足。おっぱい攻撃もできて満足。
ギリギリまで下の名前が決まんなかったのはナイショ。 
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