魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
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後日談
⑳~魔術回路、覚醒
前書き
フェイト「強大過ぎる力は本人の意思をも無視する」
ランス「制御出来なければそれは暴力となる」
フェイト「子供達にその事を教えるのが大人の役目」
ランス「後日談20、魔術回路、覚醒」
フェイト「始まります」
side なのは
それは、あまりにも唐突に訪れた。
士郎君は本局に調べ物、ヴィヴィオはノーヴェと訓練で家には私と優だけだった。
「おかーさーん。みてみて!」
「なーに?」
庭で洗濯物を干していたとき、後ろから聞こえた優の声。
それに振り向くと……
「これあげるー!」
そう言って差し出される手に握られているのは、見覚えのある青い菱形の宝石。
(ジュエルシード!?)
何故ジュエルシードが!?そう思った矢先、レイジングハートから念話が。
(優がきれいな宝石を見たい、と言い出したのでジュエルシードの記録を見せたのですが、そうしたら未完成ながらも再現してしまったのです)
(未完成って?)
レイジングハートは未完成、というがこの膨大な魔力はまさしくジュエルシードのもの。
(形は完全にジュエルシードなのですが、願いをかなえる、というジュエルシードの性質がないのです)
(それって……)
(私が与えた情報のみを忠実に再現している、と言った方がいいでしょうか)
その性質は士郎君の投影に似たところがある。帰ってきたら聞いてみるべきだろう。
とりあえずは……。
「おかあさん?」
「嬉しいよ。ありがとう。優は優しいね」
「えへへ……じゃあもう一個あげる!」
不安そうな顔でこちらを見る息子を安心させることにした。
そうしたら今度は私の目の前で手に魔力を集中させてもう一つジュエルシードを作り出した。
これは士郎君が帰って来たら相談するべきだろう。
そう思いながら息子の相手をすることにした。
side フェイト
久し振りに休みが取れた私はアリシアと一緒に家にいる。旦那は昼まで寝てる、と言って部屋で惰眠を貪っている。
「う~ん、むずかしい……」
アリシアは石を片手に唸っている。何故そんなことをしているのか、と言うとランスのルーン魔術を真似して遊んでいるのだ。
今までは手に絵の具を付けて書いていたのだが、今日は違った。
「あれ?」
[どうされました?]
「アリシアから魔力を感じるんだけど……!?」
唐突に膨れ上がる膨大な魔力。慌ててアリシアの元へ駆け寄るが、異変は見られなかった。
「おかーさん?どうしたの?」
「な、何でもないよ」
「……?」
だが、それは間違いだった。その直後にアリシアが何気なく掴んだペットボトルがひしゃげたのだ。
「あれ?こわれちゃった……」
そうして気づく。アリシアから感じる魔力が夫の使う強化のルーン魔術と酷似していることに。
更に過剰なまでの魔力を放っている。
対処の仕方がわからなかった私はひとまず旦那を起こしに行くことにした。
side 士郎
家に帰った私を出迎えてくれたなのはの顔はいつもの笑顔ではなく、大きな悩みを抱えているのが一目でわかるような憔悴した顔だった。
「……何があった?」
「……優がね、これを………」
そうして渡された二つの青い菱形の宝石は一度見せてもらったことのあるロストロギアだった。
だが、これを優が、とはどういうことなのだろうか?
「一つはレイジングハートの目の前で、もう一つは私の目の前で、作ったの……」
「……作った、だと?」
「うん。もしかして、投影魔術なのかな、と思ったんだけど……」
なのははそう言うが、恐らくこれは投影ではない。
私ですら強力なロストロギアを投影できたことは武器系統のもの以外はほとんどない。優はまだまともに魔術回路を扱えないのだから出来るわけはない。それにこのジュエルシードはかなり高レベルのロストロギアだというのだから尚更だ。
だからこれは全くの別系統の物であるはず。
「とりあえず、調べてみよう。解析、開始」
調べた結果、高純度の魔力を含むただの宝石だった。やはりロストロギアではないようだ。
そして、これが投影品かどうかを調べるには破壊した時にどうなるかでわかる。
私は干将を投影し、ジュエルシードもどきを斬った。
「………やはり、か」
結果は予想通り。真っ二つになったまま、霧散したりせずに残っている。
「どういうことなの?」
「投影だったのなら構造を維持できなくなったときに霧散して消えるのだ。つまりこの宝石は確たる存在として生み出されたのだ。優の手によってな」
なのはが息を呑む。
確かに創生魔法というものはある。だが、それは既に存在する物質に魔力を通して組み上げるものだ。
つまり、魔力そのものを物質に変えている訳ではない。
だが、優のこれは無の状態から有を生み出してしまう。
これは私の投影以上に異質かもしれない力だ。
「ひとまずは優の魔術回路の半数以上を封印……もしくはリンカーコアにリミッターを付ける。レアスキルか魔術かはまだわからないが念のために両方やった方が良いかもしれないな」
「…うん」
やはり息子がこのような異能を持っている、と言うのは親として思うものがあるのだろう。
理解はしているが納得はしていない、と言ったニュアンスが含まれるような感じの返事だった。
そうして優が寝ている間に魔術回路の半数40本を封印。
リンカーコアには3ランクダウンのリミッターをかけた。
その状態の優をスキャンしたレイジングハートによると、魔力ランクAはあるそうだ。
更に魔術回路は私の三倍……子供には膨大過ぎる魔力を保有できる状態だ。
後日精密検査を行った結果、優の力はかなり魔術寄りの能力だった。
魔術を詳しく知らない優本人には稀少技能である、と教えておいたが、魔術回路の制御は教え込むことに決めた。
あれだけの力だ。回路が暴走すればどうなるかは目に見えている。
そのようなことにならぬように力の扱い方を教えていくのが私の父親としての役目だろう。
ともかく、これからやれることをやっていくだけだ。
side ランス
フェイトに起こされた俺がアリシアの行ったであろうルーンを調べて分かったことは、アリシアはルーン魔術の天才だろうということだ。
術式を勘で組んだとは思えないほどの効力。だが、それと同時に魔力運用の効率の酷さも目立った。
アリシアの推定魔力量は生まれた時に計ったらBランクだったのだが、恐らくそれはアリシアの魔力体系が魔術回路に偏っている証拠でもある。
前に比べて開いている回路の数も増えている。恐らくだが、最大120本はあるだろう。
だが、そんな莫大な魔力に体が耐えられるはずがない。これは成長に合わせてリミッターをかける必要があるな。
「……ス、…ンス!」
「……ん?」
なにやら体が重い。
随分と考え込みすぎたのだろうか?
「ねぇ、わざとやってるでしょ?」
「な、なんでわかったんだよ!?」
「へぇ……」
考え込んでいる、と言う建前の元、パニックになりかけていたフェイトを放っておいたら誘導尋問でお仕置きされた。さらにいつの間にやらアリシアが俺の背中で昼寝を始めている。
何が起きているんかさっぱりわからん。
…………………………………………………………………
「で、どうなの?」
あの後、お仕置きから解放された後すぐに説明を求められる。労りとかあってもいいと思うんだが。
ちなみにアリシアは布団に入って夢の中だ。
「後でいろいろしてあげるから早く」
「考えを読むなって……」
相変わらずこちらの考えは筒抜けのようだ。と、ふざけるのはここまで。ここからは真面目な話だ。
「……アリシアが使ったのは間違いなく俺の使う“原初のルーン”だ。ただのルーンじゃあねえ」
「……やっぱりそうなんだ。じゃあもう一つ。アリシアの魔術回路……いったいどのくらいのレベルなの?」
この質問は恐らく、魔導師で言えばどのくらいのレベルを持つのか、という事だろう。
「大体魔導師ランクに換算すればS+ぐらいだ」
「そんなに!?」
「だが、制御が上手くできていない。大分無駄に垂れ流してる」
しかし、魔力運用のコツさえつかめばアリシアは俺以上のルーン使いになれるだけの素質を持っている。それだけじゃあねえ。これはまだ確信してねえから誰にも言っていないが、アリシアの真の才能は全く別のものだと思う。それを極めれば将来的には魔力を使わずともオーバーSランクの強さを持つほどのものだ。
「どうするの?」
フェイトの問いかけに思考を中断し、答える。
「とりあえず回路の制御から教えてく。まあ遅くとも10才くらいまでには使いこなせるようになるさ」
「ならいいんだけど……」
「それよりよ」
「ん?」
「いろいろしてくれるんだよな?」
俺の言葉に固まるフェイト。
その一瞬を逃さずに襲い掛かる。
「え、ちょっと、まって、それは、よるの、はなし、でしょ!?」
ちなみに“、”の部分がやけに多いのはそのタイミングでニャンニャンしてるからである。
え?ニャンニャンって何?だって?ご想像にお任せしよう。
………余談だが、アリシアが予想以上に魔力運用の練習を嫌がるので、本当にルーンを使いこなせるようになるのが10才くらいになりそうだと思った。
後書き
前回一週間以内とか言っておきながらこの遅さ。
マジですみませんでした。やめてSLBはぎゃぁぁぁぁぁ!!!!
………と、おふざけはこの辺にして解説に移りたいと思います。
子供たちの能力は、
優……創造魔術
自身のイメージによって物質を生み出す。
投影と違いイメージがはっきりしない状態でも生み出されてしまう。
今回のジュエルシードもどきがそれに当たる。
イメージが完全ならば神造兵器やロストロギアだろうと生み出せる。
しかしそのレベルの物を完璧に創造すると魔術回路に膨大な負担がかかる。
リンカ―コアの魔力を使うこともできるが、それで魔術回路の負担が減るわけではない。
アリシア……原初のルーン
ルーンを操る。
天性の才能により、極めれば父親以上の効力を発揮できる。しかし、現在は制御が下手なので魔力を無駄に外に漏らしてしまう。作中でフェイトが気づいた魔力がこれ。
制御が下手なのはアリシアの魔術回路は本数が多めなのも原因である。
リンカ―コアの魔力を使うことはできるが、制御は魔術回路で行う。
とまあ二人の能力はこんな感じです。アリシアが弱く見えるかもしれませんが、彼女には別の才能が有るので。
それでは次回で最終話です。
ViVid編も同時公開しますのでぜひ見てください。
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