ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~
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アイングラッド編
SAO編
雨空の落し者
「もういーやーだー!!じめじめしてる今日はかえるそして寝るー!!」
ホルン先輩がもう何回目かわからないぐらいの文句を言った。
「わかりました。今日はもう止めにしましょう……」
「やっと折れたわね」
「お前も帰りたかったのか!?」
「当たり前でしょ。こんな雨の日に湿原のフィールドに来て、正気なの?」
「真面目に攻略しているやつを異常人扱いするやつは始まりの街にいるやつらとお前らだけだ……」
「気分が乗らない日は休むに限る!嫌々やっても効率が悪いだけ!」
「先輩のペースでやってるとボス戦のメンバーから外されますよ……今度はたしかKoBの新副団長さんが仕切るらしいですから」
25層のボスにより《アインクラッド解放隊》が壊滅してからボス攻略を度々仕切っている《血盟騎士団》。そこの副団長は攻略の鬼として知れ渡っていた。
……まあ、諸々の事情によりお目にかかった事はないのだが。
「『狂剣士』だっけ?おー怖っ」
((キレた時の先輩の方が怖いです。))
「ん?今なんか失礼なこと考えた?」
「「滅相もございません」」
先輩は普段は温厚で、滅多なことでは怒らない。というか現実世界では1、2回位しか見たこと無いほど優しい先輩なのだが一度キレると、そこらの盗賊とかボスなんて問題にならないぐらい怖いのだ。
「……まぁいいけど」
第44層 ナータル 現在の最前線
「はぁ……」とため息をついて、机に突っ伏す。
この貸家は現在、ギルド《オラトリオ・オーケストラ》の仮本部だ。貸家は各週単位で借りることができるアパートで、家具は一通り揃っているし、攻略組にとっては手頃な価格であるため、何時も最前線に借りることにしている。
予定では第50層を攻略後、ギルドホームの物件を探し始める予定だ。
余談だが、ギルドの構成は
団長 カイト
副団長 ユウリ
料理長(自称) ホルン
名誉顧問(他称) レイ
となっている。(正確にはレイはギルメンではないが)
帰ってくるなり、ホルンは昼食の買い物。ユウリは向かい側で紅茶(らしき液体)を飲んでいる。
何をするということもないため、灰色の空を窓越しに観ながら、ボウッと忘我に浸った。
〜回想〜
このゲームが発売された日。俺は幼馴染みのお兄さんと交代で3日前からショップに並んでいた。それだけ楽しみにし買った後のことを考えるだけで心が踊った。
もとから興味はあったが、うじうじ悩んでいたのを部活の先輩と同級生からど突かれ、ついでにパシられ、予約券を3枚持って並んでいた。
サービス開始当日、お兄さんは急な用事とかで来れなくなったそうだ。代わりに妹がログインするから宜しくと……。
ゲームの正体が明らかになった瞬間、まず俺は混乱することを自分に禁じた。素早く事前に決めといた集合場所に行き、先輩達と合流後、狼狽する先輩をいつもどおりクールなクラスメイトに任せ、俺は幼馴染み―明日奈を探した。
現実の顔と同じなら、あの整った顔立ちは目立つはずと探し回った。
だが……彼女は見つからなかった。
その存在を知ってから、恐る恐る生命の碑を確認しに行きそれらしい名前を探した。
アスナという名前を見つけてそれに横線が入っていないことを確認すると、俺はゲームが始まって以来初めて涙を流した(コッソリと)。
それから暇を見てそれを確認しに行き、彼女を探した。
まだ見つからない。始まりの街はもう探し尽くした。中層も叱り。
(残るは最前線か……)
あまり可能性はないが、頭の良いアイツなら外部からの救出を待つより、自らの手で道を切り開くのが合理的と考えるかも知れない。
〜回想終了〜
今度のボス戦からは『攻略会議』なるものが復活(初期は毎回やっていたらしいが)開かれ、今まで各ギルドの代表のみで行っていた作戦会議を参加者全員でやるらしい。もし、最前線で戦っているのだとしたらそこで会えるかもしれない。
ところで、ここで懸念されるのがソロの連中の扱いだが、そこもまた狂剣士殿がやってくれるらしい。
働き者で何よりだ。
そんな節操のないことを考えていると、ホルン先輩が帰ってきた。人を担いで。
「……先輩は何を好んで死体なんか拾って来たんですか?」
「死体じゃないよ!?市場で倒れてたから助けただけだもん!!」
「……素性の知れない輩を連れて来たという点では似たようなものですね」
「良いじゃない。圏内だし、こっちは3人よ」
「はぁ……」
とりあえず、ホルン先輩が連れて来た(拾って?)人をソファーに寝かし、俺達は昼飯を食べた。
全員が食べ終わり、世間話をしていると、
「ん……」
寝ていた子が起きた。状況を把握できていないようで、辺りを見回しこっちを見て首をかしげる。
「やーおはよー。大丈夫キミ?倒れてたから連れて来たんだけど」
「……ここは?」
「ギルド、オラトリオ・オーケストラの仮本部だ」
「攻略組?」
「まぁ…そうだ」
「良かった……」
……何が?
「レベルが上がってきて、最前線の安全マージンに届いた……このギルドに入れてくれませんか?」
「ちょっ……ちょっとま「いいよー」「いいわ」ああ、もういいよ……」
最近、なんか俺に発言権が無いような気がしてきたので、諦めた。…うん、前向きになろう。て言うかユウリさん、貴女さっきこの子の事得体の知れない輩扱いしてませんでしたか?
俺はギルドの入団申請を彼……『アード』に出し、4人で軽く自己紹介し合い、今日は解散にした。
「ははは。それは大変だったな」
「レイ……人ごとだと思いやがって……」
「人ごとだからな」
「はぁ……」
ふてくされた俺は3層下の中々旨いNPCレストランでレイに愚痴っていた。
「アードと言ったか?」
「ああ」
「そいつはこの間、迷いの森で迷ってたやつだな」
「なんだ、知り合いか?」
「ん。まあな、危なっかしかったんで、お前らのギルドに入るよう勧めた」
「大元の原因お前かよ!!」
とまあ、意外な事実が判明したのだった。
後書き
オリ主を除くと初の作者オリジナルキャラの登場です。
当初はさりげなく入ってくるキャラだったので、本文がだらだらしてますが、お許しを。
次回は、リオの登場。カイトとアスナの再会です。
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