トーゴの異世界無双
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第五十一話 やるぜ! 人類究極の夢!
闘悟が去ってしばらく経った後、そこには一人の人物がいた。
その者はフードで顔を覆っている。
その上、ローブを着て全身を隠している。
まるで自分の存在を明らかにしたくはないという意思を感じる。
そして、地に臥(ふ)せている魔物を発見する。
(この魔物って……サーベルコング?)
驚いた様子で魔物を見下ろしていた。
(Cランクの魔物を誰が……?)
周りを観察してみる。
確かに大岩が幾つか破壊してはいるが、それだけだ。
魔法を使われた形跡も無い。
また魔物にも傷らしい傷が無い。
爪と牙が無いが、討伐部位として牙を持って行ったのは分かるが、爪はよく分からない。
周りを見ても爪は落ちてはいない。
もしかしたら倒した者が持って行ったのかもしれない。
何のためかは分からないが。
(争った範囲も小さい……どうやって倒したっていうの?)
疑問が湧いてくる。
魔法も使っていない。
だが武器らしい武器を使った形跡も無い。
魔物には剣などの斬撃も見当たらない。
争った範囲が小さいことから、短い時間で倒したということだ。
(素手で……? ううん、そんなはずはないわね)
自分で導いた答えを自ら破棄する。
その者は、解決できない疑問を抱えて、山頂へと向かった。
そこに答えがあるような気がしていた。
闘悟は岩の上に座り込み考えていた。
山頂付近に到着はしたが、例の巨大生物は見当たらない。
ここに来る間、いろんな魔物に襲われたが、どれも巨大生物とは言えなかった。
闘悟は休憩がてら岩に座り込んでいた。
そして、ふと思ったことがあり、それについて考えていたのだ。
何を考えていたのかというと、自分自身の体についてだった。
ん~このままじゃ、もしものことがあるかもなぁ。
闘悟は、先程戦ったサーベルコングの一撃の破壊力を直に見て、自分の体に不安を感じたのだった。
サーベルコングの一撃は、幾(いく)ら魔力最強の闘悟でも、無防備に受ければ命を失うことは必至(ひっし)。
常に魔力で体を覆っているなら、そんなことは無いが、そういうわけにもいかない。
もし、不意打ちか何かで、あんな威力がある攻撃を受けると、一瞬であの世に逝ってしまう。
サーベルコングぐらいの魔物なら、不意打ちをもらうことは無いが、今後はそういうわけにもいかないかもしれない。
相手に気配を悟らせない魔物がいるかもしれない。
その上、その攻撃力が人を簡単に殺せるほどかもしれない。
そうなれば、気づいたらあの世に逝っているということも有り得る。
オレはこの世界……『ネオアス』で第二の人生を送ってる。
この世界は、オレの知識欲を最大限に刺激する。
まだまだ知りたいことがたくさんあるんだ。
オレはこの世界を知り尽くしてえ。
だけど……もしかしたら魔物に殺されるかもしれねえ。
闘悟は先程考えていたことを反芻(はんすう)する。
オレはまだ死ねねえ。
死にたくねえ。
生きて、この世界を遊び尽くしてえ。
だからこそ、闘悟は不意打ちで死ぬことを恐れる。
死ぬ時は、自分で決めたい。
その望みを奪われないようにするためには、どうしたらいいか。
「…………なら、そんな存在になればいいんだ」
ふと思いついたように呟き、その場で立ち上がり、目を閉じる。
「ここなら、他の人間はいねえ。気兼ねなくやれる……」
すると、一瞬で空気が張りつめる。
闘悟が魔力を解放し始めたのだ。
いつも通り一パーセント程度の魔力で体を覆う。
「さあ、作り直すぞオレの体! 目指せっ! 不老不死っ!」
そう、闘悟が考えたのは、決して死なない肉体を持つことだった。
不死の肉体なら、たとえ不意打ちで、どれだけの攻撃を受けようが死にはしない。
これなら闘悟の望みを叶うことができる。
闘悟は自身の改変魔法で、肉体を不滅にしようと考えた。
それに不老不死は人類の夢だ。
叶えられるなら叶えてみたい。
だが、幾ら経っても肉体に変化が感じられない。
「ん~やっぱ不老不死は無理なのかねぇ……」
闘悟は残念そうに眉を寄せている。
だが首を横に振り、その考えを捨てる。
「いや、諦めるのはまだ早え! こうなったらやれるだけやってやる! 幸いここには誰もいねえしな」
ニヤッと笑って闘悟はまた目を閉じる。
すると、今度は魔力が肉眼でハッキリ確認できるくらい溢(あふ)れてくる。
「……一パーセントで駄目なんだったら……」
大気が震える。
地面が微かに振動する。
「……三パーセント……五パーセント……十パーセント……」
どんどん魔力を解放していく。
この世界に来て、初めて一パーセント以上の魔力を使用する。
闘悟は自身がどれほどとんでもないことをしようとしているのか理解してはいない。
普通の肉体である自身を、永久不滅の肉体に改変するというのだ。
それは、神に与えられたものを勝手に破壊し、作り直すことと同義(どうぎ)。
幾ら改変魔法の持ち主でも、普通は成功を手にできない。
神と同等の力が無ければ、闘悟の望みは叶わない。
闘悟は今、神の所業(しょぎょう)を成(な)そうとしているのだ。
それが、どれほどのことか分かってはいない。
もし、成功するのなら、それは新たな神の誕生とも言えるのかもしれない。
「十五パーセント……二十パーセント……二十五パーセント……」
莫大(ばくだい)としか言えないほどの魔力が闘悟の体を覆う。
まだだ……まだ足りねえ。
細胞を一つ一つ改変する。
寿命を取り除き、不死細胞として再構築していく。
闘悟は自身の体に高熱が宿っていくのを感じる。
足元の岩もその熱で溶けていく。
周囲にもその影響が出る。
魔力で生み出された風が竜巻のように闘悟を中心にしてできあがる。
岩が吹き飛び、地面に亀裂が走り、砂埃(すなぼこり)が舞っている。
まるで天災そのものだ。
だが闘悟は周りの状況を把握してはいない。
だから闘悟は知らない。
この後、ここに生息している生物が、その膨大な魔力の存在に怯えてしまい、一か月は巣から出てこなかったことを。
だがそんな中、二つの存在だけは、他の生物とは違った行動をとっていた。
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