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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第74話 立ち上がれ、宇宙の王者

「にしても久しぶりだなぁ」
 始めに口を開いたのは甲児だった。夕日の浮かぶ町並みでの激戦を終え、一同はこうして集まっていたのだ。
 其処に居たのは甲児やなのはは勿論、フェイト、シグナム、はやて等も居た。
 そして、ウルトラ3兄弟と名乗る三人が彼等の前に居た。
 ハヤタ、モロボシ・ダン、郷秀樹。
 彼等三人である。
「本当に久しぶりだね、皆」
「僕達が居ない間に知らない顔も増えたみたいだしね」
 ハヤタとダンがそう告げる。恐らくはやてやシグナム等を指しているのだろう。彼女等が加わったのは丁度ハヤタ達の居ない時だったから無理もない。
「にしても二人共酷いぜ。帰って来るなら来るで連絡位寄越してくれても良いのにさぁ」
「すまない、事態が事態だったんでね。でも、もう大丈夫だよ。僕もセブンも光の国でパワーを回復させてこうして戻って来た」
「これからは僕達も地球の防衛に加わりたいんだ。構わないかい?」
 願っても無い申し出であった。無論それを断る理由は何処にも無い。
 これから恐らくヤプールの放つ怪獣や超獣、果ては侵略者達の攻撃も更に熾烈さを増してくる。
 そんな時にウルトラマンが居るのはとても心強い限りだ。
「勿論歓迎します。また一緒に戦いましょう」
 皆万条一致であった。
「しかしウルトラマンか、初めて見るが凄まじい者達だな」
「せやなぁ、何せでっかいもんなぁ」
 シグナムやはやては正直な感想を述べていた。確かにウルトラマンは巨大だ。そして強大だ。
 だが、そんなウルトラマンにも弱点はある。
 それは活動時間だ。
 ウルトラマンは地上では僅か数分間しか戦うことが出来ない。その為それをサポートできる存在も必要と言えるのだ。
「でも、ダンさん達がまたこうして帰って来てくれて本当に嬉しいです。またこうして一緒に戦えるんですから」
「あれ? 僕の事は無視かい?」
 フェイトがダンばかり見ているせいか隣に居た郷が少し不貞腐れていた。
 其処がまた新鮮なのか回りに居たメンバーがドっと笑ってしまったのだが。
「そ、そんな事ないですよ! 郷さんとだって一緒に戦えるのはとても嬉しいですよ。だから、その……あの―――」
「ハハハ、冗談だよ。気にしてないからさ。それより、これから僕達はどうしましょうか?」
 問題はそれだ。ウルトラマンが戦列に加わってくれたのは何よりも有り難い。
 だが、目の前に立つ侵略同盟を打倒するにはまだ力が足りない。まだまだ弱すぎるのだ。
 もっと強い力をつけなければならない。その為にも散らばった戦力を結集する必要があった。
「辛い話だよなぁ。半年前に比べてまだまだ戦力は少ない位だしなぁ」
「クロノ君やアルフさん、それにユーノ君も居ないし」
 彼等だけじゃない。
 本郷、一文字、風見志郎に結城丈二。
 グレートマジンガーにゲッターロボ、グレンダイザーなど、まだまだ居ない戦力が多い。
 しかし、敵は待ってはくれない。まごまごしていたら敵に更なる侵略の機会を与える事になってしまう。
 先手を打たなければならないのだ。その為にも早急に戦力を集結させる必要があった。
「だけど、守りを平行して行うのは正直辛い話だな」
「うん、防衛隊の殆どとも連絡が取れない状況だし……皆は大丈夫だろうか?」
 ダンが不安になるのも無理はない。
 科学特捜隊、ウルトラ警備隊、怪獣攻撃隊MAT、そしてアースラ。
 この殆どと連絡が取れない状況なのだ。
 後ろ盾がなくなってしまったのは非情に厳しい事となる。それらの状況確認もしなければならない。
 だが、それだけに専念する訳にはいかない。世界の守りも行わなければならないのだ。
「だったら、俺が行って来るぜ」
「甲児君!」
 いの一番に名乗りを上げたのは甲児だった。
「この中で一番行動範囲が広くて汎用性が高いのは俺のマジンガーZだ。マジンガーを使えば日本位ならひとっ飛びだしな」
「確かに、今の僕達には移動する足がない現状だ。それは有り難い限りだよ」
 現状でハヤタ、ダン、郷の三名は移動手段を用いていない。ウルトラマンで移動すると言う手もあるがそれでは目立ちすぎるしなにより効率が悪い。
 魔導師達の方でも難がある。飛行魔法を続けるのは思っている以上に魔力を消耗する。
 移動だけで魔力を使いきり戦闘が行えないのでは話にならない。
「そう言うと甲児兄ちゃんが一番適任やねぇ」
「だろだろぉ!」
「だが、同時に不安もあるな。貴様一人で本当に大丈夫か?」
 シグナムの言葉が意外にも痛かった。どうやら彼女は余り甲児を信用していないようだ。
「酷い事言うなぁシグナムさん。俺を信用してくれよ」
「貴様だから信用出来ないと言うのがある」
「ぐっ……」
 ぐうの音も出ない。正にそう言える状況でもあった。
「だったら、私もついて行きます」
「なのはがぁ!?」
「甲児さん一人で不安なら私もそれについて行きます! それなら大丈夫ですか?」
 なのはが名乗りを上げた。
 皆の驚きと戸惑いの視線を一線に集めつつもその意思を堅く貫きつつ、なのははシグナムを見る。
「そうだな。高町が同伴なら安心だろう。目付け役としては充分な存在だしな」
「とことん信用ないんだね、甲児君は」
「一体俺が何したってんだよぉ~。皆して酷ぇなぁ」
 全く心外だと告げる甲児。それを聞いて回りの空気が一瞬固まる気がしたがそれも気のせいだろう。
「確かに、なのはちゃんを連れて行くのは危険かも知れないけど適任かも知れないね」
「どういう意味ですか? ハヤタ兄さん」
「皆、良く考えてみてくれ。僕達はどうやってこうして集まったと思う?」
 いきなりなハヤタの問い掛けに誰もが顎に手を当てて考え込んだ。
 一体どうやってこうして集まったのか?
 そんな事考えた事もなかったので今更ながら考え込まされる。
 そんな誰もの顔を見てハヤタは笑みを浮かべながら答えを述べる。
「これは僕の推測なんだけど、僕達は一概になのはちゃんに集められたと考えられるんだ」
「私に……ですか?」
「あぁ、なる程!」
 甲児が手を叩いて納得した。
「確かに、俺も最初になのはに会ってから色々な出会いがあったな」
「僕もそうだ。そして、此処に居る皆もそうじゃないかい?」
 その通りでもあった。
 一部例外もあるかも知れないが、その根源には皆なのはが関わっている。彼女がこうして多くのヒーローを呼び寄せたと思えるのだ。
 それがハヤタの見解であった。
「確かに、そう考えると強ち間違いとも言えぬな。高町が居たからこそ主も目覚める事が出来た」
「私も、自分の闇から抜け出せた」
「そうだ、もしかすると、なのはちゃんには僕達にない何か特別な物があるんじゃないかな」
「そんな……偶然じゃないんですか?」
 あくまで本人は否定する。
 だが、偶然と言い切るには余りにも重なりすぎる傾向がある。
 とても偶然の一言では片付けられない。
「ま、何にせよだ。俺としても話し相手が居る方が退屈しないで済むな」
「む~、それを納得して良いのか微妙な気が……」
 甲児の言い分にちょっぴり不満を感じているなのはであった。
「でも、皆さんがそれで良いんでしたら。私は甲児さんと一緒に行きます」
「よし、決まりだな。甲児君となのはちゃんは各地を回って散らばった仲間の招集、並びに事態の確認を行ってくれ。その間敵は僕達が全力で食い止めるから」
「頼むぜ、皆」
 皆が一致した元で、甲児となのはは皆の元を一旦離れた。
 鉄の巨人に乗り込み、大いなる大空へと飛び立っていく。
 各地に散らばった仲間を見つけ出す為に。
 全ては、侵略同盟に打ち勝つ為に……




     ***




 スカルムーン基地内で、自身の椅子に座っているガンダル指令は苛立っていた。
 苛立ちの原因は勿論の事であり、現状の侵略状況に関しての事だ。
「どうしたガンダル? 何時になく苛立っているな」
「これが苛立たずにいられるか!」
 席を立ち、すぐ後ろに居たバレンドスに怒鳴り散らした。その怒号を聞きながらも、バレンドスは涼しい顔を浮かべているが。
「憎きグレンダイザーを打ち倒し、地球侵略の障害が無くなったと言うのに、侵略活動が遅々として進まんではないか! これではベガ大王のお怒りを食らう事は必然だぞ」
「ふむ、貴様の苛立ちも分かる。だが、迂闊には動けんのも現状だ」
 冷静に状況を分析した後、バレンドスはモニターの装置を動かす。
 起動音が鳴り、モニター全域に映り出したのは地球の全大陸の図面であった。
「確かに、日本が所有するスーパーロボットを打ち倒したし、光の巨人も居ない。それがかつての現状だった。だが、侵略同盟と言う名の鎖がそれを邪魔しているのだ」
「どういうことだ?」
「下手に動けないと言う事だ。誰かが下手に動けばそれを火種として同盟間同士で争いが起こる。そうなれば敵に付け入る隙を作ってしまう事になる。だからこそ動けんのだ」
「何を悠長な! そんな物蹴散らせば良いではないか! 我等の戦力には円盤獣に加え強力なベガ獣も配備されたのだ。敵など居らんだろうが!」
 此処スカルムーン基地には既に円盤獣数十体とそれを凌駕する性能を持つベガ獣が配備されている。これらを持つ事がガンダルに絶対の自信を与えていた。
 だが、それに対しバレンドスは慎重だった。
「分からんか? 俺が待っているのは互いの潰しあいだ」
「何?」
「恐らく近い内に何処かの組織が痺れを切らして口火を切る。それを火種としてそれぞれの組織同士が内部争いを行う。俺達が動くのはその後だ」
「なる程、漁夫の利を狙うと言う事か!」
 それを聞いてガンダルは改めてバレンドスの内面を理解した。
 幾ら強力な戦力を持っていたとしても悪戯にそれを消耗させるのは無能の証明だ。
 真の指揮官と言うのは攻め時を見誤らない事。
 それを告げていたのだ。
「だが、何時までも手拱いているのもつまらん。其処でだ……この際グレンダイザーだけでも完膚なきまでに叩きのめすと言うのはどうだ?」
「なる程、ベガ大王への手土産に最大の好敵手の首を献上しようと言うのだな?」
「その通りだ。それならば地球侵略の遅延も寛大にお許し下さるだろうよ」
「うむ、早速始めよう! で、誰がそれを行うのだ?」
「既に手配してある。入れ!」
 バレンドスが声を放つと、後方の扉から一人の男が現れた。
 青い肌をした鋭い眼光を持った男だった。体つきや顔つきから見るに歴戦の勇士だというのが見て取れる。
「バレンドス。この男は?」
「新鋭隊員のコマンダージグラ。この男にならグレンダイザー討伐を任せられるだろう」
「むぅ……しかし、本当に大丈夫か? この男で」
 どうもガンダルは疑念を抱いているようだ。そんな時、ジグラは一人ほくそ笑んでいた。
「何がおかしいのだ? コマンダージグラよ」
「どうやら俺の実力を疑ってるみたいだな? だったら俺の力の一旦を見せてやろう」
「何?」
 突如、ジグラは腰に携えている皮製の鞭を手に持つ。地面に向けて収められていた鞭を撓らせる。
 その直後であった。撓らせた鞭を一切の迷いもなくガンダルへ向けて放ってきたのだ。
「おぉっ!」
 突然の出来事にガンダルは驚愕した。
 一体何を血迷ったと言うのか?
 自分の司令官に向かって鞭を放つなどと。
 だが、その狙いはガンダルではなかった。
「はははっ、ガンダル指令! 先ほど手に持たれていたグラスはいずこかな?」
「何? はっ!」
 其処には先ほど持たれていたワインの注がれていたグラスがなくなっていたのだ。
 一瞬落としたのかとばかりに思ったが、実際には違っていた。
 ガンダルが持っていたワイングラスはコマンダージグラの手に持たれていたのだ。
「そ、それは私の……!」
「そう、俺が狙ったのは何も貴様のじゃない。貴様の持っていたワイングラスを私の手元に引き寄せる為にこの鞭を使ったに過ぎないのさ」
「なんと!」
 驚きであった。
 鞭を用いてあの様な割れ易いワイングラスを手元に引き寄せることなど神業に等しい。
 それをいとも容易くやってみせる辺り、この男の自信に偽りはなさそうだ。
「良いだろう。貴様にグレンダイザーを葬る栄誉を与える。見事グレンダイザーを葬って見せろ!」
「あぁ、吉報を待ってな」
 意気揚々と二人の場から姿を消すジグラ。後に残ったのはガンダル指令とバレンドスのみとなる。
「バレンドスよ、確かにジグラの力量が素晴らしいのは認める。だが、本当にそれでグレンダイザーを倒せるのか?」
「ふん、心配ない。ジグラは既にグレンダイザーの弱点を知っている。それも、奴にとって致命的な弱点をな」
「何! そんな弱点があるのか? あのグレンダイザーに」
 ガンダルは驚いた。自分達でさえグレンダイザーには手を焼く。そのグレンダイザーの弱点とは一体何なのだろうか?
 その真相を知っているのは、コマンダージグラ、そしてバレンドスだけなのであった。




     ***




 雄大な自然に囲まれ、絶壁に建てられた立派な建築物。
 言わずと知れた宇宙科学研究所。
 其処にはまだその姿が残っていた。どうやらベガ星連合軍の攻撃から辛くも耐え切ったようだ。
「良かった。ベガ星連合軍の奴等の攻撃を受けた時には流石にヤバイと思ったけど、皆無事みたいだな」
「でも、大介さん達は無事なんでしょうか?」
 不安が募る。研究所が無事でも大介達が居なければ話にならない。
 そんな時、研究所の下部に当たるダムが突如開いた。
 何事かと思った二人の目の前で、突如それは出現した。
 一機に巨大な円盤。間違いなく、それはグレンダイザーだった。グレンダイザーが突如大空へと飛び出したのだ。
 だが、疑念が募る。今の所レーダーには敵影は感知されない。なのに何故グレンダイザーが出撃したのだろうか?
「どうしたんだ? 敵も居ないのに出撃するなんて?」
「テスト飛行なんじゃないんですか?」
「そうだとしてもこんないきなり……あっ!」
 甲児は突如血相を変えた。グレンダイザーが突如腕を伸ばしてきたのだ。
 腕の肘より下に取り付けられていた棘に似た部分が腕をスッポリと覆いつくし、その状態でこちらに飛ばしてきた。
 スクリュークラッシャーパンチだ!
 咄嗟に甲児はハンドルを切り、それをかわした。グレンの武器はどれも宇宙の技術で作られている。まともにぶつかりあえばマジンガーZでも無事では済みそうにない。
「何するんだ大介さん!」
 一体何があったのか?
 通信機を片手に甲児は叫んだ。だが、それに対し返って来たのは全く知らない声であった。
【五月蝿い! これ以上この研究所に近づくってんなら容赦しないわよ!】
「女の声?」
 そう、グレンから返って来たのは紛れも無い女の声だったのだ。
 しかし、解せぬ思いがあった。
 グレンダイザーは本来宇門大介こと、デューク・フリードにしか乗りこなせない代物だ。
 以前グレンダイザーに近づこうとした際に大介が止めてくれなければグレンの内部に搭載されている自動防御装置の前にやられていた。
 これから分かる通り大介以外の人間がグレンを操縦する事は出来ないのだ。
 なのに、今のグレンには女が乗っている。一体どういう事なのだろうか?
「君は一体何者なんだ? 何でそれに乗っているんだ?」
【あんたに答える義理なんてないわ! 今すぐ立ち去りなさい! さもないと撃墜するわよ!】
 全く聞く耳持たずであった。だが、此処で帰る訳にはいかない。何としても現状を把握しなければならないからだ。
「悪いけどこっちにも事情があるんだ! 此処で引き下がる訳にはいかないんだよ」
【往生際の悪い奴みたいね。良いわ、それならとことん相手になってあげるわよ!】
「望むところだ!」
 こうなれば戦うしかない。Zを空中から地上へと降ろす。それを見た後、グレンが巨大円盤であるスペイザーからドッキングアウトし地上に降り立った。
 グレンの大きさはマジンガーよりも頭一つ分近く大きい。
 宇宙の王者のその名に相応しい雄雄しき姿をしていた。
 かつての味方とまさかこんな形で再会を果たそうとは。甲児自身夢にも思っていなかった事態だ。
「なのは、今の内に降りろ! ちょいとやばい展開になりそうだ」
「大丈夫ですよ。私も一緒に居ます! 甲児さんが無茶するのはずっと前に知ってますからね」
「けっ、言ってくれるぜ。舌噛まないようにしておけよ」
 後ろに居るなのはに気をつかいながらも甲児は歩を進めた。
 地響きを立てて大地を揺らし、Zの巨体が走る。それと同じ様にグレンもまた大地を疾走する。
 二つの巨体が今、雄大な自然の中でぶつかりあった。
 最初に口火を切ったのはZだった。Zの右拳を堅く握り締めて、それをグレンの胴体に叩き付けたのだ。
 その衝撃に溜まらずグレンは倒れこむ。
 その際に女の甲高い悲鳴が流れ込んできたが気にしてられない。
【やったわねぇ! お返しよ】
 立ち上がりざまに女の声が聞こえてきた。それと同時に同様にグレンの右が下から上へと突き上げられてきた。
 綺麗なアッパーカットがZの顎を捉えそのまま叩きつけて来たのだ。
「うわっ!」
「きゃぁっ!」
 甲児もなのはも揃って声をあげる。
 弧を描く形でZが宙を舞い、地面へと落下する。
 激突するよりも前にジェット噴射で姿勢を整えて両足で着地する。
 だが、衝撃は相当な物だった。頭がクラクラしてくる。
「な、なのは……お前の方は大丈夫か?」
「う、うん……目が回るけど、大丈夫ですよ」
 口ではそう言うが明らかにやせ我慢だと言うのが見て取れた。マジンガーの操縦はかなりキツイのは自分自身分かっている。
 パイロットスーツを着ており衝撃緩和作用がある甲児はまだ良い。なのはにはそれがないのだ。
 しかも、デバイスを失ってしまっておりバリアジャケットを纏う事も防御結界を張る事も出来ない。
 下手に乱戦に持ち込めばそれだけ彼女に危険が及ぶ事になりかねないのだ。
「大介さん、悪いけどぶっ壊すつもりで行かせて貰うぞ」
 甲児がボタンを押した。Zの両目が光り輝く。
 閃光が放たれた。光子力ビームだ。
 光子力ビームが真っ直ぐグレンへと向かって飛んでいく。それに対し、グレンの目からも閃光が迸った。
 ダイザービームだ。
 光量子エネルギーを2万度近くまで発熱させて放つ超高温ビーム砲だ。
 双方のビーム砲が互いに空中でぶつかりあい激しいスパークを起こす。
 互いに一歩も譲らない戦いになった。
 甲児の頬を冷や汗が流れ落ちる。この押し合いに負ければダイザービームがZの頭部に直撃する。そうなればZの顔が一発で粉々に吹き飛ぶ事は目に見えていたのだ。
 緊張が戦場を支配している。
《其処までだ! 戦闘を中止するんだ》
 突如、声が響いてきた。聞いた事のある男の声だった。威厳のある中年相当の声だ。
「この声、宇門博士!」
【叔父様!】
《二人共、戦闘を中断するんだ。すぐに研究所内に来なさい。話がある》
【でも叔父様。こいつは敵じゃないの?】
 グレンの指がZを指す。しかし、それに対し宇門博士は違うと反応を示した。
 どうやらお互いの誤解から生じた戦いだったようだ。
 そして、その戦いは宇宙科学研究所所長でもある宇門博士の手によって終結させられたのであった。




     ***




「久しぶりだね、甲児君。無事で何よりだったよ」
「そちらこそ、皆無事みたいで、安心しました」
 研究所内に招かれた甲児となのはは、其処で宇門博士を筆頭とした全所員達の無事を確認できた。
 あの忌まわしき侵略同盟の総攻撃から辛くも生き残ったのは幸いでもあった。
 だが、喜んでばかりもいられない。今は早く戦力を集結させる必要があるのだ。
「宇門博士、今世界は大変な事態に陥っています」
「承知している。私としてもこのまま手拱いている訳にはいかないのは承知の上だ。だからこそ、君達が来るのを待っていたんだ」
「それじゃ?」
「グレンダイザーもようやく修理が終了した。再び戦いの場へと戻れるようになった。また、一緒に戦って欲しい」
「何よりの言葉です」
 最高の一言でもあった。グレンダイザーの修理は終了し、こうして再び戦場に立つ事が出来ると言うのだから。
 だが、疑問が一つだけ残っている。先ほどグレンに乗っていた女の件だ。
「宇門博士、そう言えばあの時グレンダイザーに女が乗ってました。彼女は一体何者なんですか?」
「そう言えば紹介が遅れていたね。もうすぐこちらに来ると思うから、その時に紹介しよう。む?」
 噂をすれば、だ。
 扉が開き、其処から一人の女が入ってきた。赤いパイロットスーツを纏い、茶色い長髪をした綺麗な顔立ちの少女だった。
「貴方があのマジンガーZとか言うロボットのパイロットね?」
「あぁ、そうだ。俺は兜甲児。君は?」
「私はマリア。グレース・マリア・フリードよ」
「フリード? まさか君は大介さんの―――」
「そう、宇門大介、いいえ、デューク・フリードは私の兄さんよ」
 初耳だった。あのデューク・フリードに妹が居たなどとは。
 そう言えば宇門大介とは親しい仲だが、彼に関する事は余り知らないことが多かった気がする。
 今度その点に関してはしっかり聞いておく事にしよう。
「そう言えば、そっちの子は誰なの?」
「えと、始めまして。私は高町なのはと言います」
「ふぅん、もしかしてあんたそう言う趣味とか?」
 マリアが甲児を睨み付ける。どうやら誤解しているようだ。
「冗談、俺の好みはもっと色気のある可愛い子ちゃんさ」
 そんなマリアに対し甲児が半笑いで返す。
 本人は冗談のつもりなのだろう。が、それを聞いたなのははかなり不機嫌な顔をしていた。
「どうせ私はお子様ですよぉだ!」
「はは、悪ぃ悪ぃ。そうヘソを曲げるなよ」
 そう言いながらなのはの頭を撫でてあげる。
 そうされると少し嬉しいのか不機嫌な顔をふっと和らげて嬉しそうな顔をしだす。
「ほぉれ見ろ! やっぱガキだ!」
「ああああ! 甲児さん酷いぃぃぃ!」
 嵌められたらしい。目の前で甲児は勿論マリアや宇門博士、それに所員たちも揃って笑っている。
 それに対し更に不機嫌になったのか、頬を膨らませて見せるなのは。
 しかし、大人でそれをやられると怖いかも知れないが、子供でもあるなのはがそれをすると返って可愛いと言う印象さえ与えられるのだから不思議な話だ。
「ところで宇門博士。大介さんの方は?」
「うむ、その事なんだが―――」
 途中で宇門博士は言葉を詰まらせた。甲児はその意味を知っている。
 言い難いからだ。かすかにだが甲児は覚えている。甲児の乗るTFOが円盤獣を超える新たな敵【ベガ獣】の攻撃により墜落するその間、デュークの乗るグレンから聞こえてきた操縦者の苦痛の叫び。
 あれから察するに相当の痛手を被った事となる。もしくは、何かしら危険な物を施されたか。
「甲児君、来ていたのかい?」
「大介さん!」
 声のした方へ皆が顔を向ける。其処に居たのは大介であった。
 以前会った頃と変わらず気さくな感じで声を掛けてきたのだ。
「大介さん、体の方は大丈夫なのかい?」
「それは……」
「その事については私から話そう」
 甲児と大介の会話を割り切って宇門博士が入ってきた。甲児はそれに従い視線を大介から宇門博士へ移した。
 同様になのはやマリアも宇門博士の方を向く。
「今、大介の体はベガトロン放射能と言う未知の病魔に侵されているんだ」
「やっぱり、あの時の苦痛の叫びはそれだったんだね、大介さん」
 甲児は大介に問い掛けるが、大介は何も言わなかった。それに対して詮索をしている余裕はない。今は寧ろ別の事について知りたい事があったからだ。
「それで、その大介さんに掛かっているベガトロン放射能はどんな病気なんですか?」
「一概には分からない。だが、それは確実に大介の命を危機に陥れていると言うのが分かる。だが、今の我々にはこれを除去する方法がないんだ」
「私が来た時もそうだったの。このままじゃ兄さんは―――」
 マリアの顔が涙に濡れていく。大介に妹が居ると言うのは初めて聞くが、どうやら僅かな生き残りなのだろう。
 その兄妹の感動の対面だったと言うのに、その兄が死の病に侵されていると言うのだから。
 まるでドラマみたいな展開だ。それも、悲劇のドラマのだ。
「冗談じゃねぇ! このままみすみす大介さんを殺させるかってんだ!」
「だけど甲児君、治療法は見つからないんだ。手の施しようはないんだよ。我々に出来る事と言えば、病の進行を遅らせる位のことしか出来ないんだ」
「だったら、それを感染させた奴等に聞きゃ良いんだ! ベガ星連合軍の奴等をとっちめて治療方法を吐き出させてやる!」
 両手を目の前で叩き付けるようにして甲児が言い切る。そんな方法今まで何人の人間が思いついた事だろうか?
 しかし、言うは易し、行うは難し。と言う言葉もある。
 ベガ星連合軍はそれだけでも巨大な存在だ。その上更に悪の軍団が集まり侵略同盟なる組織を作り上げてしまった。そうそう倒せる
存在ではなくなってしまったと言える。
 だが、それでもやらなければならないのだ。掛け替えのない友を救う為にも。
「宇門博士!」
「どうしたのかね?」
「大気圏を突入して未確認物体がこちらに接近してきます!」
 所員の言葉に誰もが戦慄を覚えた。大気圏を越えたと言う事は宇宙からやってきた事になる。そして、現状の組織にそんな事が出来る者は居ない。となれば敵としか考えられない。
「モニターに出してくれたまえ」
「分かりました」
 電波望遠鏡により映し出された映像が巨大スクリーンに投影される。其処に映し出されたのは一機の円盤であった。
 黄色い姿をしたラグビーボールを思わせる形状をしており、頭頂部に鋭い突起がついている。
「あ、あれは!」
「大介さん?」
 その円盤を見た途端、大介の顔色が変わった。明らかに驚愕の色だった。一体あの円盤がどうしたと言うのだろか。
「間違いない。あれはベガ大王親衛隊だ!」
「何だって!」
「あの円盤にとりつけられた赤い十字の紋章。間違いない、とうとうベガ大王が本腰を入れて来たんだ!」
 ベガ大王親衛隊。
 確かに大介はそう言った。今まで戦ってきた円盤獣は皆人口知能を搭載した怪獣だった。だが、今回は違う。
 腕利きの戦士が搭乗しているのだ。恐らく相当手強い相手となるだろう。
「へん、手間が省けたってもんだぜ! あんにゃろうをとっちめてベガトロン放射能の除去方法を聞きだしてやる!」
「やめるんだ甲児君。奴の強さは今までの円盤獣の比じゃない。返り討ちにあうだけだ」
「やってみなきゃ分からないだろ?」
「嫌、僕には分かる。奴はとてつもなく強い。だから、僕が行く!」
「大介!」
 宇門博士の制止を振り切り、大介は管制室を出て行った。大介が言うのだ。恐らく相当強い相手なのだろう。だが、だからと言って黙って見ているなど甲児に出来る筈がない。
「博士、俺も行きます。大介さん一人に任せておけませんよ」
「頼む。だが、妙だ」
「妙?」
「親衛隊と言うのに、奴は一機でやってきた。相当なまでに勝てる自信があるのだろう」
 宇門博士は冷や汗を流した。親衛隊と言うからには相当な地位にある筈だ。その地位にある者が部下も連れず単機でやってきた。
 余程勝算がなければやらない事だ。奴等とてグレンの強さを知っている筈なのだから。
「へっ、只舐めきってるだけじゃないんですか?」
「いや、奴等はきっと知っているんだ。グレンダイザーにある死の弱点を」
「死の弱点?」
「甲児君、直ちに大介の後を追ってくれ。もし私の予測が正しければ大介が危ない」
「分かりました」
 宇門博士の予想があたっていればとんでもない事態になってしまう。
 グレンダイザーの死の弱点。一見すると弱点などなさそうにも見えるグレンにそんな物があったとは。甲児ですら気づかなかった。
「あ、私も行きます!」
「怪我しないようにしっかりしがみついてろよ」
「うん!」
 甲児となのははそう言いあいながら大介と同じように管制室を後にした。その中で、マリアだけが一人取り残されてしまった。
「叔父様、私には何かないの?」
「うむ、本来ならテスト飛行をしたかったのだが、こうなってしまえば止むを得ん状況だ。使わざるをえないな」
「何かあるの?」
「うむ、この時を考慮して秘密裏に作り上げていた物があるんだ。そう、地球製のスペイザーを」
「地球製の……スペイザー」




     ***




 敵は既に研究所上空まで来ていた。その目の前にスペイザーとドッキングした状態のグレンダイザーが道を塞ぐような形で現れる。
「待て! ベガ大王親衛隊。此処から先は一歩も通さないぞ」
「現れたなデューク・フリード! 俺の狙いは最初から貴様だけよ! 俺と勝負しろ」
「望む所だ! シュート、イン!」
 頭上にあるレバーを操作し、座席を移動させる。スペイザーからグレンダイザーに座席がスイッチするシステムなのだ。しかし、大介は気付かなかった。
 それこそがベガ大王親衛隊ことコマンダージグラの狙いだったのだから。
「馬鹿め、今だ!」
「何?!」
 突如、円盤獣の頭頂部にある突起から怪光線が放たれた。その怪光線はスペイザーの右翼とエンジンに直撃し、破壊する。凄まじい衝撃と共にスペイザーが一気に高度を落としていく。
「うわあああああああああ!」
 デュークが叫んだ。グレンの巨体が大地に倒れこむ。それと同じくしてスペイザーがグレンのすぐ隣に不時着した。完全に機能を停止してしまったのか、スペイザーは微動だにしない。
「い、今のは……」
「これが俺の狙いよ。貴様のロボットは分離する際に僅かだがタイムラグが発生する。俺は其処に狙いをつけたのよ」
「くっ……」
 完全にやられた。スペイザーの援護なしではグレンは本領を発揮出来ない。しかも相手はベガ大王親衛隊と来た。かなり分の悪い戦いとなってしまった。
「死ねぃ、デューク・フリード! その首をベガ大王様の下へ献上させて貰うぞ」
「そう簡単に参ったと言って溜まるか!」
 立ち上がり、迎え撃つ体制をとるグレンダイザー。そんなグレンの前で円盤が円盤獣へと変形した。頭頂部を盾にし、右手の指は皆撓る鞭の様な形をしている。
 これが奴の円盤獣なのだろう。
「行くぞ!」
「来い!」
 即座にグレンが殴りかかってきた。しかし、それを円盤獣はヒラリとかわし、鞭を撓らせて殴りかかってきた腕に絡みつかせて来た。ハッとするデュークであったが、その瞬間にはグレンの巨体が宙を舞っていたのだ。
 そして、背中から大地へと激突させる。衝撃がコクピット全体に響き渡った。
「がぁっ!」
「ハハハッ、こんな奴に今までガンダルもバレンドスも手を焼いていたと言うのか? まるで木偶の棒だな! それ、一気にトドメを刺してやるわ」
 倒れて動けないグレンに向かい再度怪光線を放とうとする。だが、その刹那であった。
 突如円盤獣に向かい黒い何かが飛んできた。それは太い腕であった。腕がロケット噴射で飛んできたのだ。
 咄嗟に円盤獣は盾でそれを防ぐ。
 弾かれた腕は主の下へと帰っていく。其処に居たのは鉄の城マジンガーZであった。
「ふん、何かと思えば地球人が作り上げたガラクタか」
「何だとこの野郎! マジンガーZを侮辱するなんざ許さねぇぞ」
「丁度良い。グレンダイザーの前に貴様を葬ってくれるわ」
 大地に降り立つZ。それを迎え撃つ円盤獣。二体が互いに睨み合っていた。
「これでも食らえ!」
 マジンガーZの両目から光線が放たれた。円盤獣もまた頭頂部から怪光線を発する。互いの光線が激しくぶつかり合い発光しあう。
 押し勝ったのは円盤獣であった。円盤獣の放った怪光線がZの体を軽々と吹き飛ばしたのだ。
「ぐはっ!」
「ふん、他愛も無い。これでは歯応えがなさすぎるぜ」
 倒れるZとグレンを見て勝ち誇るコマンダージグラ。今までの円盤獣とは桁が外れた強さを持っている。
「つ、強ぇ……これが、ベガ大王親衛隊の力なのか?」
「思い知ったか? さて、この俺に逆らった報いを受けて貰うぞ」
 ジグラが鞭を撓らせて振り下ろす。それはZの頭部、パイルダーであった。
 撓る鞭がパイルダーのキャノピー部に直撃する。ガラスが割れるような音を立ててパイルダーのキャノピーが粉砕された。操縦席が剥き出しの状態になってしまったのだ。
「くっ、くそぉ!」
 負けじと操縦桿を握り締める甲児。だが、甲児の命令に反してZは微動だにしないのだ。
「なっ、Zが動かない?」
「俺の電磁鞭を受けたんだ。大抵の機械はショートして動かなくなっちまうのさ」
「畜生、味な真似しやがって!」
 幾ら必死に動かそうともZは何も言わない。何も答えない。完全にショートしてしまったようだ。復旧には時間が掛かりそうだ。
 そんなZに向かい円盤獣が再度腕を振り上げた。
「くたばれ、愚かな地球人!」
「ぐっ!」
 咄嗟に両腕をクロスして目を瞑る甲児。そんな事で防げる筈がない。一撃の元にペシャンコにされるのがオチだ。
 鞭の撓る音がした。どうやら直撃したようだ。
 だが、それにしては妙だった。音がしたのに痛みが感じないのだ。疑問に思った甲児は目を開く。
 目の前を覆っていたのは半透明で奇妙な色をした膜状の物だった。それがZの体を包み込んでいたのだ。
 な、何だこりゃぁ!?
 甲児は勿論、コマンダージグラすらも驚いていた。マジンガーにこんな機能は備わっていない。無論、ショートしている現状ではそんな事出来る筈がないのだ。
 では、一体何故。
「大丈夫ですか? 甲児さん」
「なのは、お前なのか?」
 後ろを振り向き幼い少女に問い掛けるが、それに対しなのははかぶりを振った。
「分からないんです。只、よく分からないけど気がついたら勝手に出来ちゃって」
「どういう事だ? デバイスがないのに魔力結界を張れたっていうのか?」
「違います。これ、魔力結界じゃないですよ」
「え?」
 なのはは否定した。これは魔力結界じゃないと。
 言われて見ればそうだ。なのはが結界を張った場合、大概は桜色の結界を張る。だが、この結界はどちらかと言うと無色に近かった。それも、強度も今まで張ってきた結界のそれとは違い過ぎる。
 円盤獣の攻撃を防げる訳がないのだ。
「でも、これを張ったのって……私なんですか?」
「俺に聞くなよ」
 答えが分からず二人して疑問に感じ出す。
「ちっ、まぁ良い。俺の目的は初めからグレンダイザーだ。こうなればグレンダイザーだけでも仕留めてやる」
 Zは無理と悟ったのか、狙いを今度はグレンに定める。
 不味い! 今のグレンじゃ奴には勝てない。
 甲児は悟り再度操縦桿を動かす。だが、やはり動かない。まだ復旧には時間が掛かるのだろう。
 頼む、急いでくれ!
 祈る思いで甲児は操縦桿を動かした。だが、そんな甲児の思いを汲み取る事なく、円盤獣が盾をグレンの頭部に翳す。
「死ね! デューク・フリード!」
「大介さぁん!」
 誰もがグレンの最期を想像した。だが、その時、円盤獣の背後が爆発した。何かが放たれたのだ。
 それによろける円盤獣。
「だ、誰だ!」
「あれは?」
 それは上空を飛んでいた。白銀の色を身に纏った大型の戦闘機であったのだ。
「間に合った。大丈夫兄さん!?」
「その声は、マリア!」
「叔父様が用意してくださったのよ。地球製のスペイザー。ダブルスペイザーをね」
「ダブルスペイザー!?」
 それがあの戦闘機の名前なのだろう。雄雄しく、力強い名前であった。
「えぇい、たかが蚊トンボ一機増えただけでぇ!」
「兄さん、このダブルスペイザーとグレンダイザーは合体出来るのよ」
「何だって?!」
 マリアの言葉にデュークは驚く。どうやらその名の通り、あのダブルスペイザーにはスペイザーと同じ機能を有しているようだ。
「合体しましょう、兄さん!」
「だが、僕達にできるのか?」
「私達なら出来る筈よ。それに、このまま奴に殺されるなんて、私は嫌よ! フリード星の皆の仇を討ちましょう! 私達二人で」
「……分かった。やろう!」
 機体を起こし、それに応じるグレン。
「おのれ、何をする気か知らんがそうはさせるか!」
 何かをするのだろうと悟った円盤獣が腕を振るわせる。だが、そんな円盤獣の背後から誰かが殴りかかってきた。
 反応できずそのまま、前のめりに倒れてしまう。殴ったのはZであった。
「へへっ、やっと復旧が終わったぜ。大介さん、頼むぜ! 時間は俺が稼ぐ」
「有り難う甲児君。行くぞ、マリア!」
 グレンダイザーが上空へジャンプする。それに続いてダブルスペイザーが続く。
「まずはスクランブルターンをして。高度を水平に保って頂戴!」
「分かった。スクランブルターン!」
 空中で半回転しダブルスペイザーと同じ高度になる。其処へグレンの背中に向かいダブルスペイザーが飛んで行く。
「行くわよ! コンビネーション・クロス!」
 マリアの掛け声と共にグレンの背中にダブルスペイザーがドッキングする。マジンガーZのジェットスクランダーと同じ要領であった。
 そして、これによりグレンダイザーが単体で空を飛べるようになったのだ。
「何? グレンダイザーが空を!?」
「やったわ、成功よ兄さん!」
「あぁ。よし、行くぞ!」
 反撃開始である。再び戦う力を取り戻したグレンが上空から円盤獣目掛けて飛んでくる。
「おのれ!」
「二度も同じ手を食らうか!」
 再び鞭を放とうとする腕目掛けてダブルスペイザーの翼から黄金色に輝く刃が飛んできた。ダブルカッターだ。
 そして、グレンの両肩から白銀の刃も同時に飛んで行く。ショルダーブーメラン。
 この双方が円盤獣の鞭を根元から切り裂いていく。自慢の鞭を失い今度は怪光線で応戦しようとした。
 だが、其処へ今度はマジンガーZの腕が飛んできた。しかも、その腕には鋭い刃が取り付けられていたのだ。
 アイアンカッターだ。それが怪光線を放つ盾の腕を切断してしまう。
「ぐおっ!」
「へん、相手は大介さんだけじゃないぜ!」
 思い切り鼻を鳴らす甲児が其処に居た。一瞬にして戦う術を失ってしまう円盤獣。達磨同然である。
「ぐ……くそぉ!」
「往生際が悪いぜ、これでトドメだ!」
 Zからブレストファイヤーが放たれ、グレンからはスペースサンダーとサイクロンビームの複合攻撃が一斉に放たれた。
 それらの一斉攻撃をまともに受けた円盤獣はその場で崩壊し、バラバラに砕け散り爆発した。
 コマンダージグラの断末魔と共に。
「へへっ、どんなもんだい!」
「やった、やったぞ! 僕達は勝ったんだ。あの、ベガ大王親衛隊に!」
「やったな、大介さん!」
「有り難う、甲児君。有り難う、皆!」
 戦いは終わり、Zとグレンは互いに手を握り合って勝利を分かち合った。
 今此処に、再び宇宙の王者が蘇ったのだ。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

グレンダイザーを仲間にした甲児となのは。次に向ったのは科学要塞研究所であった。
しかし、其処を襲っていたのはかつてグレートマジンガーとゲッターロボGを戦闘不能に追い込んだ光の怪物であった。

次回【邪悪なる光、打ち砕け!偉大な勇者よ】

お楽しみに 
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