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ソードアート・オンラインーツインズー

作者:相宮心
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SAO編-白百合の刃-
  SAO38-大自然の迷路

「『大自然の迷路』……?」
「そう。それが裏五十五層『ザトルース』の攻略ダンションのことよ。それを調べるためにNPC全員に聞いてきたから遅くなったわ」

 剛姫が話を繰り出したのは、私達が攻略しなければならない場所。『大自然の迷路』というダンジョンのことだった。
 名前からして第三十五層『迷いの森』のようなものだろうか。普通のダンジョンとは違うって聞いたから、めんどくさい仕掛けとかあるのだろうな。吹雪に当たると麻痺されたりとか、あまりにも熱すぎて徐々にHPが減ったりする裏層が存在したって聞いたことあるし。とりあえず初見殺しだけは勘弁してほしいな。

「みんな『迷いの森』を連想すると思うけど、あの森は別にそれほど迷わないらしい」
「どう言う……ことですか……?」

 鋼の騎士が私達の代表として剛姫に訊ねる。

「明確や確証はないけど、『迷いの森』って言うフィールドダンジョンのように、どこかの場所に転送されるようなことはないような言い方をしていたの。もしそうだったらNPCのヒントくらいは教えると思うの」

 だったら、単なる森林系ダンジョン? 絶対それだけじゃない気がするけど……。

「でも、NPCがヒントを教えないってこともあるじゃないですか」
「う~ん……その考えはなかったわ」

 私がふと思った発言を受けた剛姫は盲点だったようで、少し考え始めた。可能性を上げるとしたら、今まで当たり前のことがそうじゃないってことも少なからずある。裏層だけNPCのヒントやフラグがないことだってなくはないはずだ。

「結局はNPCの情報だけだろ? こんなところで想像してねぇで、さっさとダンジョン行くぜ!」
「落ち着きがない猿ね」
「誰が猿だ! ゴラァ!」

 ぽつりと毒を吐く漆黒に、赤の戦士はすぐに食いつき……猿というか犬のように吠えた。

「……赤の戦士」
「あぁ?」

 いや、漆黒みたいに毒とか吐かないから、チンピラみたいに睨まないでくれる? ちょっと怖くて話しづらいし……。

「明確なものはないにしても、もう少し剛姫から情報頂いたほうがいいんじゃない?」
「だから、そんなもん行って見た方が」
「情報は何よりも宝になるのよ、赤の戦士ちゃん」
「意味わかんねぇよ! あと、ちゃん付けするな、調子乗りすぎ野郎!」

 噛みつくように発する赤の戦士を狙撃者はクスクスとからかっていた。それにしても調子乗りすぎ野郎って……もうちょっとなんかないのかよ。

「と言うことで、情報くださいませ、剛姫お姉さま」

 狙撃者は口にないこと言う。それに対して、剛姫は苦笑いするものの、彼女のペースに入らずに落ち着いた口調で情報を与えた。

「『大自然の迷路』他の裏層と同様にモンスターが大量にいるそうよ。なんかね、プレイヤー一人に対して、モンスターは二匹以上になるエンカウント率の可能性が高いこと、それと面積がかなり広くて複雑そうみたいよ」

 というように、剛姫は聞き回った情報を私達に教えてくれた。まとめると裏層は想像通り難易度が挙がっていて、普通にできることが普通に死に繋がるようなことだった。
話を聞いて思ったことは、一週間以内で本当に攻略出来るのか? 今まで失敗したことないとはいえ、最前線での攻略が難航することだってあったはずだ。しかも、今いる人数以上でも時間が経過することだってあった。
想像よりも広いダンジョンだということも教えてくれた。ぶっちゃけどうなるのかがよくわかんない。というよりも想像ができないわね。

「なるほどなるほど……」

 うんうんと頷き、狙撃者を玄関の方角へと指を指しながら言った。

「よし、みんなで一緒に攻略しましょう。と言うことで、大自然の迷路へ、ゴー!」
「えっ……皆で、って……」

 狙撃者が突然言ったことに不意に戸惑ってしまった。
 それって、当たり前のことだけど、つまりはパーティーを組んで行動するんだよね? それしかない、よね。
 パーティー……集団行動は、ちょっと苦手だなぁ……。
 やはりどうしても思いだしてしまう。あの日の過ちを犯したこと。心がズギズギと痛み出す。
 わかっているはずなのに……過去を背負って生きていくって決めたのに、どうしてもあの日のことを思い出してしまい、恐くなってしまう。また、自分は過ちを犯してしまうのではないかと言う、自負を生んでしまう。
 でも、何が起こるかわからないうえに、裏層ダンジョン攻略は難易度が高い。ソロプレイだと危険過ぎることもわかっているつもりだ。そんな負の思考が何周も走らされ変われないのだろう、私は。

「おい、白いの!」
「えっ、わ、私!?」
「他に誰がいるんだ、アホ」

 いつの間にか周囲は私と赤い戦士しかいなかった。

「ほら、あいつら先に行ってんだぞ。まさか自分だけソロとかぬかすんじゃねぇだろうな?」
「い、いや、そうじゃなくて……」
「だったらなんだよ」
「あ、赤の戦士は、行動的にソロっぽいけど、反対とかしないの?」
「なんだよ、行動的にソロっぽいって……まあ、ぶっちゃけ一人の方がマシだな」

 口が悪い口調とは裏腹に、凛とした声音に落ち着いて言葉を発した。

「普段ならソロで十分だ。でもソロ行動にしないのは、それが危険な予感がしただけだ」
「あ……」

 赤の戦士のことは明確に、そして簡単な言葉を選んでそれを伝えるだけのような言葉だった。

「そんだけだ。わかったか、バカホワイト」
「バカホワイトって、コントにありそうな戦隊ヒーローじゃないんだから」
「だったらさっさと来いよな。一人だけソロ抜け出しとかしたら、ギッタンギッタンにしてやんからな!」

 そう言い残して彼女は行ってしまった。ギッタンギッタンって……某国民的ガキ大将じゃないんだから。でも赤の戦士はガキ大将に似合うわね。
 そんだけ、か……確かに、その通りね。
 ソロは安心。責任は自分で受けられるし、傷つくのは自分だけでいいから。
 パーティーは恐怖。皆がいなくなるのが恐いし、みんなを傷つけてしまいそうだから。
 ソロだけで生きていくのが限界なのはわかっている。安全マージンは取っているとは言えど、アインクラッドの攻略も半分を超えたんだ。だからこそ、このまま真っ直ぐに道が用意されているとは思えない。
 ちゃんと向き合わないといけないんだ。言い訳を探して避けてばかりでは、本当に守りたい者を守れなくなるし、動かなくなってしまうのかもしれない。

「よし!」

 もうあの日の私ではない。ちゃんと向き合えば、ちゃんと動けるようになるはずだから。



 街から離れて歩くこと数十分で『大自然の迷路』の入り口にたどり着いた。
 えぇ、わかりやすくここが入り口ですよって誰でもわかるようにね。そんな派手な看板で大きな赤い字で『大自然の迷路・入り口』と書かれているんだもんね。間違えようがないわ。

「文字書かれている時点で大自然じゃないような……」
「んなことはどうでもいいんだよ。さっさと行こうぜ!」

 赤の戦士みたいに、あんまり気にしない方がいいかもしれない。一々深読みすると体がもたないような気がする。まだ入り口だし……まだ初日だし……。

「あ、あの……ちょっといいですか?」

 鋼の騎士は、おどおどしながら勝手に先へ進もうとする赤の戦士を呼び止めた。

「あぁ?」
「ひゃぁ、ひゃんへぇもないふぇふ!」
「なに言ってんのかわかんねぇよ!」

 鋼の騎士は口に熱い物を入れたように噛む姿に赤の戦士は怒る気力を削がれていたかのように呆れていた。
 ここまで噛む人はそうそういないよね、鋼の騎士って。大人しい分、はっきり言うと思っていたが…………そんなに噛むとは思いもしなかったよ。

「鋼の騎士が気になっているのは…………アレね」

 噛んでしまった鋼の騎士に変わり、剛姫が入り口の巨大な神木の扉に書かれている巨大な文字に指を指した。
 あぁ、それね。気がついているんだけどさ…………明らかに怪しすぎてスルーしたいんだよね。
 いや、だってさ……書かれている内容が……。

「『右のドアを開くとボス戦突入だよ』」

 私は巨大な扉に書かれている文字を読み上げた。
 うん。いかにも、怪しすぎるんだもん。なんで、わざわざボスの居場所を教えているんだよ。おまけに右側には金ぴかに光る巨大で派手な扉だしさ、明らかに怪しさ満点だよね、絶対にトラップあるよね。

「んなもん、気にすることねぇよ!」
「あら、赤の戦士ちゃんは素直に行かないのね。お姉ちゃん関心しちゃった」
「いつから、あたしは調子乗りすぎ野郎の妹になったんだ! バカにし過ぎんじゃねぇよ! あと、ちゃん付けで呼ぶな!」
「漫才するなら路上で寂しくやっていたら」
「んだとゴラァ!」

 赤の戦士と狙撃者のやり取りを見向き、漆黒は毒を吐きながら怪しげな巨大扉へ近寄った。
 ちなみに赤の戦士は漆黒に吠えるように叫んだがガン無視していた。

「漆黒、なんでそっちに近寄るの?」
「単純な頭を持つ人は一生わからなくていいわ」
「教えてもいいじゃないか!」

 ここがボスの部屋ですってわかりやすく知らせるなんて、絶対に罠だと思うのに、彼女はどうして近寄って調べるんだ。

「漆黒は怪しいから怪しいのよ」
「どう言うことですか?」

 私は剛姫に訊ねる。

「いかにも罠がありそうな巨大な扉。わたし達にそう思わせるようにさせて、実際は文字通りの可能もある……そうでしょ、漆黒?」
「そうよ」

 剛姫は私に説明したらニコッと微笑んで怪しげな巨大扉を調べ始めた。
 そう説明されたら、確かにそう思える。わざわざ書かれている文字を私達は怪しいと認識させて遠回りの道を進んで攻略する。でも、書かれている文字が嘘だとは絶対ではない。わざわざ教えているのを素直に受け入れると近道で攻略出来る可能もある。
 人間心理って言う奴か……頭の中が“もしも”で増殖中だ。
 剛姫がおもいきって、怪しげな扉を押し開き中の様子を確認してから数秒後。

「何もなかった」

 本人の口から状況を説明した。怪しげなのは見た目だけで調べたら何もなかったと言う。人間心理でたどり着いた結果としては微妙だ。
 難解である宝の地図を解読したのに宝の中身は何もなかった感じと一緒だ。

「な~んだ、そのままボス戦でクリアじゃないんだ~。悔しい」

 狙撃者はそう言うが、表情や素振りがまったく浮かんでこない。とても悔しがっているのには見えない。

「なんだよ、一から攻略か。チッ」

 赤の戦士は舌打ちするけど、若干期待していたよね? それは私も同じではあるけどさ。
 つか、この怪しげな扉は単なるイタズラかよ。いらないじゃんか。

「まぁ、素直に行ったら何もなかったところで攻略しに行きましょうか」

 剛姫が先頭になり、元々進めようとした入り口の扉を開き先へ進んだ。
 後に続いて赤の戦士、鋼の騎士と言う順で進んだが……何故か私、キリカこと白の剣士を含めた、漆黒と狙撃者は流れのまま行かずに立ち止まっていた。

「なんで続かないの?」
「だって、あたし最後。つまり後方がいいのよね~」
「貴女が行けばいいでしょ、バカなの?」
「バカって言うなよ! 私だって一番後ろがいいのに同じ考えを持つプレイヤーが二人もいるなんて……っ!」

 わかっている。これも言い訳の一つなんだ。向き合わなければいけないのに、自分だけはみんなと距離を置こうとしている。その一つが団体行動での一番後ろにいること。

「貴女、ソロでも行けると思っているなら死ね」
「いくらなんでも酷くない!?」
「うるさい。裏層攻略は期限がある。厄介だからリスクはなるべく避けなければならない。嫌でもやりなさい。私も嫌なのよ、よくわからない白とピエロみたいなお調子者となんてね」
「いや~、それほどでも」

 よくわからない白ってなんだよ。とりあえず悪口なのか?
 ……ソロでは限界がある。今の所は最前線に立っていてもソロでやって行ける。
 だけどこのボーナスステージを期限内に終わらなければ五層分やり直しをさられてしまう。そうすれば余計な時間を使うことになってしまうし、最悪死人が出てしまうことだってある。
 おそらく、今回は人でも欠けたらヤバいのかもしれない。ただでさえ人数が少ないうえに情報がすくない。わかっていることだけど、本当に向き合わないといけないんだ。

「じゃあ、こうしない? 三人仲良く一緒に行くのは?」
「嫌です」
「わぉ、漆黒の居合いの如く、拒んじゃったか……なら、白の剣士。一緒に行こ」
「そ、狙撃者?」

 そう言って、狙撃者は私を連れて進んで行った。後方に顔を向けると漆黒は単独行動はせずにちゃんと着いてきた。

「……単独行動すると思った?」
「え?」

 いつの間にか手を放されてバランスを崩れそうになるも、踏みとどまって狙撃者と共に進んだ。

「漆黒は大丈夫じゃないかな?」
「なんで疑問系なんですか?」
「まだよく知らないところもあるからねー」

 その言い方はまるで、漆黒は知っているような口調だった。私も漆黒の正体は知っている……と思う。
おそらく、漆黒は『漆黒のドウセツ』と呼ばれているプレイヤーかもしれない。ドウセツもカタナを愛用していて、ここにいる漆黒もカタナを装備していたから同一人物でほぼ間違いないだろう。

「狙撃者さんは、漆黒とは親しいのですか?」
「絶賛片思い中」
「はい?」
「向こうはどうかしらね」

 落ち込む様子もなく、むしろどこか楽しそうに微笑んでいた。結局どういうことなのかがわからん。狙撃者が男で漆黒に恋を抱いているのならわからなくないけど……。
 容姿は本来使うアバターだから、狙撃者が本当に女性なのかはわからない。SAOがデスゲームになる前はほとんどのプレイヤーがネカマだったから、狙撃者がネカマである可能性もなくはない。狙撃者が漆黒や赤の戦士みたいに知っているわけじゃないからな……。

「漆黒は悪い人じゃないから、安心して」

 狙撃者はそう言うと後ろにいる漆黒にニコッと微笑むと、ガン無視される。悪い人ではないだろうけど、良い人でもなさそうだね。



『大自然の迷路』とは、名の通りの迷路であり、森林系ダンジョンになっている。それは正しかったが、全体的に通してみると想像以上におかしなダンジョンだと理解してしまった。
映るものはほとんどが常識外れ。景色、自然とは言い難いカラフルなパステルカラーに染まっている。青色の巨木、紫色の大木、桃色の樹木など、見慣れている自然の色とそうではない色が交ざり合った森林ダンジョン。目が痛くなるような不自然な色合いの森林ダンジョンに、先頭に立つ赤の戦士が悶絶してしまった。でも、剛姫がなだめてくれたから立ち直りは早かった。
 それと、剛姫が言った通りに、モンスター達は二人一組でのエンカウント率が多かった。しかも、敵さんも戦士や剣士系のモンスターはスイッチを使用してくることには驚いた。今までになかった行動パターンではあったが、それでやられるような軟な私達ではないので、難になることなく切り抜けられた。
 『大自然の迷路』に入って一時間。ここまでに、招かれたプレイヤーの戦闘スタイルはわりと把握はできたと思う。
 まず赤の戦士は見た目と行動通りの攻撃型タイプで片手斧を使用する。でも性格とは裏腹に落ち着いていて冷静。ここぞって時に普段の性格を表すように攻撃を与えている。単に暴走機関車のようだと思ったけど、そうではなかった。ある意味では質の悪い暴走機関車かもしれない。
 次に鋼の騎士、ガチガチの鎧を固めた防御と耐久重視のタイプで盾と片手槍を使用。主に私達のサポートに徹していて、モンスターのスイッチにやられそうになるも彼女が防いでくれて助かっている。装備や戦闘スタイルを見て、頭に浮かんだプレイヤーと一致した。ちなみに赤の戦士も同様だ。
 狙撃者は短剣と投剣スキルを起用に使っている。短剣は自分の身を守るために使用して、主に攻撃は投剣を使っているという珍しいプレイヤーだ。投剣スキルはおまけみたいなものだから、それを主に使っている人は初めて見た。
 剛姫は名の通りの振る舞いをしている。盾なしの片手剣を使い、大胆に攻撃をしかける剛の持ち主と同時に冷静に相手によって対処する判断力。おそらく今まで強い攻略組、特に私の中では兄、キリトが一番強いと思っている。けど、剛姫は同等、それ以上のプレイヤーかもしれない。
 となると剛姫は最強の一角とも呼べるヒースクリフなのか? いや、違うな。ヒースクリフは盾とするならば、剛姫は矛の印象が強い。それに剛姫は盾を使用していないからヒースクリフではない。
 最後に漆黒。漆黒の異名とも呼べるユニークスキル『居合い』で刹那の如し、目に見えない速さで抜刀する軌道は、いつ見ても視界に捉えるのは難しい。
 みんなすごいなぁ……知っている攻略組の三名は改めて思うけど、知らない二名も戦いに慣れているかつ凄腕のプレイヤーだと認識する。
 たった六人しかいなくて一週間以内に層を攻略するって無茶苦茶な話だけど、この五人のプレイヤーがいればそんなに難しいことなんてないかもしれない。
 更に進んでいくと、森林に囲まれた円盤状の広めの空間にたどり着いた。

「ちょっと休憩でもする?」
「できれば安全エリアで休みたいです、剛姫さん」
「白の剣士の言う通りにしたいけど、今ここで休んだほうがいいと思うわよ? 少しでも気持ち的に楽になると思うから」

 かれこれ何時間は森林ダンジョン、大自然の迷路で探索をしているが今のところ安全エリアにまだたどり着けていない。もちろんボス部屋ももってのほかだ。
 休むことなく精神的な体力が消耗していく、HPはポージョンや回復結晶で回復できても、精神は回復できないだけだった。だから剛姫は見渡りのよいところでひとまずは休憩を入れようと提案してきた。

「それにしても、よくわからない森林ダンジョンね、まるで常識なんて通じませんって感じ取られるわね」

 狙撃者は周りを見渡して呟いた。

「常識では通じません、か……」

 森林とは異なる彩色のダンジョン。どこに進もうが映る景色は対して変わらない。森にしては奇妙な色から奇妙な色に変わるから。裏層は普通のダンジョンや迷宮とは違うことはわかっている。ならここ、裏五十五層は森林ダンジョン『大自然の迷路』は色だけが違うのだろうか……。
 あれこれ考えながら休んでいると、狙撃者は投剣を構え始めた。

「狙撃者?」
「残念なお知らせです。剛姫、休憩は安全エリアでしたほうが良いっぽいですね」
「……それもそうね」

 剛姫も何かを感じとり、片手剣を構え始めた。他の三人も二人の様子に気づいて武器を構え始めた。

「来るんですね……モンスターが」
「うん。それもいっぱいね」

 周囲を見渡せば大量のウルフ系、ボア系、リザードマン系、ゴブリン系のモンスターに囲まれていた。
 おそらく、ここにたどり着いたらモンスターが襲ってくるように仕様されるようになっているのだろう。そうじゃなきゃ、いきなり大量のモンスターに囲まれることなんてそうそうない。

「みんな、これくらいなんとかなるよね?」
「な、なんとか……」
「こんくらい、どうってことねぇよ」
「あたしは問題ナッシング」
「別に……」

 皆さん、すごい度胸と自信ですね。数の暴力で押しかかってくれば流石にまずいって……。

「白の剣士は?」

 と言っても、私も負ける気で戦うわけじゃないんでね。

「皆と同じですよ、剛姫さん」
 
 自信満々に笑みを浮かべさせて剛姫さんに言った。
 私の言葉を聞くと剛姫も笑みを浮かべて言葉を発した。

「それじゃあ……行くよ」

 大量もモンスターに囲まれたくらいじゃ、私は負けない。負けられない。これくらいの不利な状況、切り払って進んでやる。

「レディ――――……ゴー!!」

 剛姫のかけ声のスタートダッシュの相図によって、私達は未知なる力を解き放って挑んでいった。 
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