トーゴの異世界無双
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第二十一話 テスト返しって憂鬱だよな
「トーゴ・アカジです。よろしくお願いします」
闘悟は黒板の前に立ちながら、自己紹介をした。
生徒達は知ってるよ的な視線を送ってくる。
まあ、あれだけの騒ぎを起こしたんだから、知られていても不思議ではない。
ここヴェルーナ魔法学園は、十歳以上なら誰でも入学試験を受けられる。
地球と違うのは、クラス分けが年齢でされてはいないということだ。
言ってみれば、大学みたいなところだ。
試験にさえ合格すれば、たとえ十歳でも、同様に合格した年上とでも同じ机を並べる。
ここではクラスとは言わずルームと呼ぶ。
ルームは一学年で五ルームある。
基本的には六年制なのだが、大学のように飛び級システムのようなものもあり、成績に応じてカリキュラムが削減される。
また、ルームごとに首に巻くチョーカーの色が違う。
ここの生徒は全員チョーカーが支給されて、着用が義務付けられている。
制服自体は、実は着用は義務付けられてはいない。
特に貴族出身の者達は、チョーカーこそ身に付けてはいるが、ほぼ私服だ。
ここの制服は白色のブレザータイプだが、闘悟は割と気に入っている。
王族であるはずのクィルも同じ思いらしく、着用して登校している。
さて、ルームの話に戻そう。
先程も言ったようにルームごとにチョーカーの色が決められている。
第一ルームである『オネスト』は青色。
第二ルームの『ブレイヴ』は赤色。
第三ルームの『オルビーディエント』は緑色。
第四ルームの『ウィズダム』は黄色。
第五ルームの『アンコンクェラブル』は紫色。
こんなふうに決められている。
ちなみに闘悟が所属するのは『ブレイヴ』である。
大体一ルームに三十人くらいいるらしい。
この『ブレイヴ』一学年も総勢二十七人だ。
「よ~し、それじゃ~トーゴくんは~」
この舌足らずに話しているのが、このルーム担当教師だ。
名前はハロア・フォーエン。
外見は二十代前半に見える。
話し方通りおっとりしてそうな性格だ。
腰まで届くウェーブのかかった銀髪はなかなかに綺麗だ。
でも、話し方のせいで、全然大人っぽくは見えない。
二十代前半とは言ったが、十代でもおかしくはないと思う。
「ん~と~グレイハーツさんの~隣ね~」
どうやら、闘悟の座る席を決めたらしい。
闘悟は返事をして席に向かう。
「よろしくなクィル」
「はい、よろしくお願いしますです」
可愛らしい笑顔で答えてくれる。
席に座ると、やはりあちこちから視線を感じる。
ん~ちょっと調子に乗って目立ち過ぎたかな?
すると背中にこそばゆい刺激を感じる。
どうやら、ペンか何かで突かれているみたいだ。
闘悟は軽く振り向く。
「よ! 俺はカイバ、カイバ・バン・ハッセル。これからよろしくな有名人くん」
そこにいたのは頭に耳をつけた茶髪の男だった。
おお、これがあの有名なネコミミか。
半ば感動しながらネコミミ男を見る。
しかし、どうせなら可愛い女の子のネコミミを最初に目にしたかった。
「こちらこそな」
微笑しながら答える。
この学園に来る前に聞いてはいたが、今日は試験評価発表があるらしい。
もちろん闘悟は受けてはいないので、完全に放置される。
一人一人呼ばれて教卓の前まで行く。
そこでファイルのようなものを渡される。
恐らくはその中に受けた試験内容と評価が記されているのだろう。
ミラニも教卓の前まで行く。
……ってかアイツもこのルームなのっ!?
今初めて知ったんだけど……。
ミラニはその場でチラッとファイルを開いて確認する。
そして、フッと笑みを溢(こぼ)し自分の席に戻る。
ん~どうやらなかなか高評価だったらしい。
お、次はさっき声を掛けてきたカイバというネコミミ男子だ。
彼もその場で開いて見るが、驚くほど分かりやすく落ち込んでいた。
まあ、そういうこともあるよネコミミ男子よ。
闘悟は心の中で優しく慰めてやった。
そしていよいよクィルの番がやって来た。
だが、彼女はファイルをもらうと、大事そうに抱えて席に早足で戻って来た。
闘悟はその動きを目で追っていると、彼女もそれに気づいたのか恥ずかしそうに目を伏せる。
席に座って、恐る恐るファイルを開こうとしている。
あれ? 今回の試験は上手く出来たとか言ってなかったっけ?
それなのにどうして不安がってるんだ?
ああ逆か。
自信があって取り組んだから結果を知るのが怖いのか。
まあ、頑張った結果が必ず報われるとは限らないからな。
闘悟はそんなことを思いながら静かに見守る。
ドキドキしながらクィルはゆっくりとファイルの中身を見る。
そして、強張った表情が段々と緩くなっていく。
そして、安心したように息を吐く。
闘悟はその様子でファイルの中身を確信して言う。
「良かったなクィル」
すると、いきなりの掛け声に驚いて振り向く彼女だが、闘悟の笑みを目にした瞬間
「はい!」
とても嬉しそうに微笑む。
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