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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第三話 あの犬デカ過ぎじゃね?

「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 女性の声だった。
 闘悟は実を放り投げて、声のする方向に向かった。
 ここからそんなに遠くない。
 すると、木々の隙間から微かに人らしきものが見えてくる。
 そして、腰を抜かした女の子の目の前には、犬にしては桁(けた)違いに大きい生物がいた。


「な、何だよあれ?」


 あれは間違いなく犬じゃない。
 サーベルタイガーみたいな長い牙を持つ犬なんて知らない。
 というか、地球にあんな生物はいないはずだ。
 体長は四、五メートル。
 口元には両端に長くて鋭い牙がある。
 白い体毛に覆われ、犬のようなソレは、今まさに目の前の女の子を襲おうとしているのが分かる。
 何故なら、物凄い涎(よだれ)を垂らしているからな。
 女の子は恐怖で体を震わせている。
 だけど、闘悟は立ち止まった。


 出て行ったところでどうする?
 あんな怪物みたいな生物をどうにかすることなんてできるのか?
 たとえ出て行こうが、二人とも確実に殺される。
 だとしたら、出て行っても意味なんか無い。
 無駄に命を散らすくらいなら、ここは見捨てた方が得策だ。


「い、いや……いやぁっ!」


 女の子の叫びが胸に響く。
 内心では助けてあげたい。
 だが、自分にあの怪物を倒すことなんて絶対できない。
 これは夢だ。
 夢は覚めるもんだ。
 オレはまだあの和室で寝入っているだけだ。
 そう自分に言い聞かせるように思う。
 だけど、肌に伝わってくる空気。
 流れる汗。
 呼吸をする度に締めつけられる胸が痛い。
 この感覚は本当に夢なのか?


「助けてぇっ!!! 誰かぁっ!!!」


 怪物が彼女にじりじりと詰め寄っていく。


「オレは……オレは……」


 夢であってほしい。
 限りなくそう思う。
 でも、何故か理解している。
 これは…………夢じゃない!
 闘悟は意を決したように走り出した。
 そうだ! ここで見捨てるなんて、オレはあの人達のようにはならないっ!
 その時、全ての動きが、いや、時が止まったように感じた。
 そして、目の前が真っ白になる。





「目が覚めたかの?」


 闘悟の耳に聞きなれない声が届く。
 ハッとなり振り向く。
 そこには、扉があった。

 
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