インフィニット・ストラトス~IS学園に技術者を放り込んでみた~
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本編
第13話「クラス代表決定戦04」
<アリーナ観客席>
セシリア
『ブルーティアーズは4機ではなくってよ!』
薫子
「お~っと! オルコット選手、まだ武器を隠し持っていたー!!!」
あらら、やっぱりね~。
試合に熱中して本音たちの忠告を忘れたな少年。
レーザーやビーム兵器はエネルギー消費が激しいから、それ以外の武装を隠してるかもしれないって。
それがアサルトライフルであれ、弾道ミサイルであれ、常に対応できるよう注視とかしないと。
それにBT兵器が俺の知っている通りのままだったら、他にも近接武装を最低でも1つ拡張領域にいれてるんだろうな…。
因みにだ。
“弾道型ブルー・ティアーズ”から放たれた2対のミサイルから逃げようとしているのはわかるけど、残念ながら映画でたまに使われる“太陽に向かって飛んで急旋回すると、ミサイルは太陽に向かって飛んでいく”ってのは、旧式の赤外線誘導ミサイルだから出来る芸当だぞ。
やるなら、射撃武器で撃ち落とすか別の障害物にぶつけるとかして、1つ1つ確実に破壊しないと――
[ドォーンッ!!]
――追いこまれるぞって遅かったか…。
薫子
「直撃だぁああっ!! オルコット選手のミサイルが織斑選手へ直撃しました! これで試合終了となるか!!!」
鏡也
「…いや、まだだな」
薫子
「え?」
鏡也&千冬
「『機体に救われたな…((ん? 今誰かと被ったような…気のせいか……?))』」
<アリーナ内?
アリーナの上空。
セシリアが見つめる先には、先ほど自身が放ったミサイルによる爆煙で覆われた一面が広がっている。
これで終わっっていればもうけものだが、恐らくS.Eはまだ残っているだろう。
せめて武装にダメージを負っていることを期待し、煙がはれるのを待つのだった。
やがて煙がはれ、大戦相手の状態を確認しようとするセシリアだったが、彼女の期待は見事に裏切られることとなる。
観客A
「え、どういうこと?」
観客B
「織斑君の専用機の姿が変わってる…」
そう、彼女たちの言うとおり白式の姿は戦闘開始時よりもややスマートになり、色も灰色だったのが白と青に変わっている。
その現象はまるで“たった今、織斑一夏専用の機体になった”かのようだった。
一夏
「やっとか…」
セシリア
「ファ、一次移行っ! あなた、今まで初期設定で戦ってましたの!?」
一夏
「ああ。ようやく、この機体は俺専用になったってわけだ」
これはセシリアにとって、完全に予想外の出来事であった。
先程まで何の設定も行われていない初期状態で、BT兵器を破壊し、本体に一撃与えられていたというのだ。
確かにセシリア自身にも慢心や油断があっただろう。
だが、これが本当に初陣の……ISの起動が数回目となる者の実力なのか?
その事実にセシリアは驚きを隠せないでいた。
因みに現在の二人の状態はというと
セシリアのS.E残量は被弾率とレーザー兵器による消耗やその他諸々を含めて残り60%といったところで、武装に関しては射撃型BT兵器は4機とも大破し、弾道型BT兵器の残弾数も心持たず。あとは自身の右手に持つレーザーライフルと拡張領域に量子変換されたショートブレード1つのみだ。
一方一夏は、S.Eの残量は回避による消耗と被弾率を合わせ残り40%といったところで、武装は健在し、レーザーによる被弾箇所は一次移行のせいなのか修復されている。
ナギ
「な、何とか一次移行が間に合ったみたいだね…」
癒子
「ミサイルが当ったときはもうダメかと思ったよ…」
本音
「行け~オリム~。ここからが本番だよ~」
一夏
「みんな…[ビビッ…]ん? 何だ?」
<近接特化ブレード“雪片弐型”が使用可能になりました>
一夏
「(“雪片”って千冬姉が使ってた武器だよな…千冬姉…)」
一夏はここまでやってこれたのは自分の力だけではないと自覚している。
自分一人だったらとっくに諦めていただろう…。
箒と剣を交えて己を鍛え直したから、あの三人に知識を付けてもらい情報を集めてもらったからここまでやってこれたのだ。
だからこそこの戦いに勝ちたいと、勝たなければならない…。
こんな自分を助けてくれた友人の為にも、雪片を託してくれたであろう姉の為にも、己を鍛え直してくれた箒の為にも勝ちたい。
そう思っている。
一夏
「オルコット!」
セシリア
「な、なんですのっ?」
一夏
「この試合、勝たせてもらうっ! 協力してくれたみんなの為にもなっ!!」
[シュンッ]
セシリア
「っ速い!?」
薫子
『織斑選手、新武装を展開し、今まで以上のスピードでオルコット選手に迫りかかったぁああ!!」
鏡也
『最適化処理が済んだおかげで、ISとの感覚が馴染んだのでしょうね。動きが断然に良くなっています』
セシリア
「墜ちなさいっ!!」
[バシュンッ!!]
[バシュンッ!!]
急加速で近づいてくる一夏に向け、レーザーを掃射するセシリア。
一夏はそれを交わしてセシリアに迫る。
一夏
「貰った!」
セシリア
「くっ!!」
[ザンッ!]
[ドォオンッ!!]
右手に握る雪片弐型をブルー・ティアーズへ振るう。
だが、それをセシリアはレーザーライフルを咄嗟に手放すという行動を取ることで辛うじてかわすことに成功した。
薫子
『織斑選手、オルコット選手の主力武器を奪ったぁああ!!』
セシリア
「っ行きなさい!!」
主力武器を失ったセシリアは、後方へと距離をとりながら腰部から2門の弾道型ブルー・ディアーズ展開し、2連続で撃ち放つ。
それを一夏は一度後方に下がりミサイルを引きつけ、1つ1つ確実に切り裂いていく。
[ザンッ!]
[ドォオンッ!!]
一夏
「これで終わりだっ!!!」
最後のミサイルを切り裂き、セシリアへ向けて一気に加速する一夏。
一夏
「はぁぁああああああ!!」
セシリア
「イ、インターセプター!!」
近接武装を展開し、迫りくる一夏に向け自身も加速するセシリア。
だが、その武装のリーチはあまりに短く、行動を移すのも遅すぎた。
雪片弐型を振い、それはブルーティアーズを切り裂いて一夏の勝利に終わると殆どの者がそう思った。
だが、二人の距離がゼロへとなるその瞬間――
『プーッ! 試合終了。勝者セシリア・オルコット』
一夏
「え?」
セシリア
「はい?」
試合終了のアナウンスが流れ、セシリアの勝利を告げたのだった。
観客A
「え、いったいどうしたの?」
観客B
「なんであそこで試合が終わっちゃったの?」
薫子
「え、えっと~、鏡也さん。これはどういうことなのでしょうか?」
鏡也
「ふむ…、どうやら織斑選手のS.Eが切れたようですね」
薫子
「えっ、確か織斑選手のS.Eは被弾数と高機動による消費を計算してもそこそこそこ残っていたのでは?」
鏡也
「ええ、その筈です。詳しいことは解りませんが、S.Eを消費して発動する何らかの特殊効果があったとみるのが妥当でしょうね」
薫子
「なるほど、能力は速度上昇か攻撃力上昇、あるいは全身が光っていることから幻覚作用といったところでしょうか?」
鏡也
「さあ、そこまでは…っと、どうやら両選手が各ピットに戻ったようですね」
薫子
「あれ、本当ですね。え~まだまだお話ししたいこともありますが、今回はこれにて失礼させて頂きます。ここまでは、整備科2年黛薫子と同じく整備科3年近衛鏡也の二人でお送りしました」
鏡也
「それでは皆さん…」
鏡也・薫子
「「さようなら~」」
―――
――
―
部下A
「はい、OKでーす。お疲れさまでしたー」
鏡也
「はい、お疲れさん。撤収準備を始めてくれ」
オラクル's
「「「「はーい」」」」
鏡也の言葉に従い、放送席に集まっていた整備服を着た何名かの生徒が撤収準備を始める。
鏡也
「薫子もお疲れさん」
薫子
「鏡也さんこそ、お疲れ様です。ここまでの準備とか大変だったんじゃないんですか?」
鏡也
「いや、案外そうでもないさ。新聞部で事前にこのことを流してくれたから、予想よりもスムーズに申請が通ったよ」
薫子
「そうですか」
今回のこの企画、新聞部が密かに情報を流して観客を集め、オラクルが色々と準備を進めて来たのだ
因みに、某戦乙女がこの企画を知ったとき「またか…」と頭をおさえ、元日本代表候補だった教師は「この前暴れたばかりじゃないですか~」と泣き叫び、学園最強は「よし! 面白そうだから許可♪」と書類に判子を押し、その従者は呆れた顔をしながらサポートに徹していたそうな……
薫子
「…それにしても鏡也さんも人が悪いですね~」
鏡也
「…なにがだ薫子」
薫子
「織斑君に激励を渡すフリをして戦意を上げさせ、その裏では両者のISデータを平然と採ってたことですよ」
そう、薫子の言うとおり、彼らが片づけているのは放送機材以外のモノも含まれているのだ。
鏡也
「人聞きが悪いなー。俺はただ単に同じ男が代表候補生相手に喧嘩売って闘うと聞いたから、俺なりに応援してその勇士を記録してただけだぞ」
薫子
「フフフ、そういうことにしておきます」
鏡也
「そういう薫子こそ、集まった観客を蓑隠れに使って撮影し、トトルカチョなんかもやってたくせに」
鏡也が見つめた視線の先には、撮影道具をかたす新聞部員と、食券のような紙を持った女生徒がチラホラといた。
薫子
「あら、なんことでしょうか?」
鏡也
「売上は4割でいいぞ」
薫子
「……鏡也さん、私はこの件について誰にも公表しませんよ?」
鏡也
「そうか、なら俺もこの件について黙っておこう」
薫子
「フフフ」
鏡也
「ハハハ」
薫子&鏡也
「「アハハハハハハハ」」
部下A
「ヒッ!?」
突如笑い始める両者の表情はどこか黒く、決して誰も近づこうとしない。
そして、たまたま近くで撤収作業を進めていた部下Aは逃げ出すタイミングを逃し、一人そこで恐怖に震えるのであった。
薫子
「それじゃ鏡也さん、私はこれで失礼しますね」
鏡也
「あ、薫子」
薫子
「なんです、鏡也さん?」
実況席から立ち去ろうとした薫子を引き留める鏡也。
鏡也
「この後、オルコットと織斑のインタビューだろ?」
薫子
「ええ、そうですけど?」
鏡也
「織斑少年の方は……いや、二人ともまた今度にしといてくんない?」
薫子
「えっ、何でです? こういうのはすぐにやった方がいいコメント貰えるんですけど…」
鏡也
「いいから、な?」
薫子
「……まぁ、別にいいですけど」
鏡也
「あんがとさん。んじゃ、また明日」
薫子
「…はぁ、また明日」
そう言って、部下Aを連れて立ち去って行く鏡也を薫子はやや納得いかない表情を浮かべながら見送り、自分もこの後の仕事を思い出し帰る事にしたのだった。
<アリーナ ロッカールーム>
一夏
「はぁ…、負けちまったな……」
今俺は第三アリーナの更衣室内のベンチに腰掛け、先ほどの試合の事を振り返っていた。
正直、あの三人や箒に合わせる顔が無いと思っていた。
そんな俺を皆は、“よく頑張った”等と褒めてくれたが、やっぱり情けなく思うし…、かなり悔しい。
千冬
「一夏」
一夏
「ち、千冬姉っ!?」
千冬
「バカ者、学内では教師として呼ぶようにと言ってるだろう」
一夏
「あ、ご、ごめん。じゃなくて――」
千冬
「フッ、冗談だ。この場には私とお前しかいない。普段通りにしろ一夏」
一夏
「え、あ、ああ。わかったよ千冬姉」
ほっ…よかった。また出席簿で叩かれるのかと思ったよ…。
そういえば、千冬姉の笑ったところってIS学園に来てから初めてみるな…
っていうか千冬姉でも冗談っていうんだ。
千冬
「おい、一夏。今失礼なこと考えてなかったか」
一夏
「いっ!? そ、そんなことないぜ千冬姉!!」
な、なぜわかったし……
千冬
「……まあいい。それで、始めてIS戦はどうだった一夏」
一夏
「どうって、最後は訳がわからないまま負けの判定が出てもう何が何だか……」
千冬
「…負けて悔しいか?」
一夏
「そりゃ…悔しいさ。悔しいに決まってる」
折角皆に協力して貰ったってのに、俺は……
千冬
「そうか、ならその悔しさをバネに己を磨き力を身に着けろ。IS学園ならそれを手に入れられる術がある」
一夏
「己を磨く…か。俺も千冬姉みたいに強くなれるかな……」
千冬
「さあな。それはお前の努力しだいだろう」
一夏
「そこは“お前は私の弟なんだ”とかいうとこなじゃいのか?」
千冬
「…何も私の様になる必要性なんてないさ。私は一人で我武者羅に強さを求めただけにすぎない。お前はお前らしく精一杯頑張れ」
一夏
「…俺らしく?」
千冬
「そうだ。もしも道に躓いたり、迷ったりした時は遠慮なく周りを頼れ。その中で築かれたモノは一生の宝物になる」
一夏
「宝物か……千冬姉、俺やってみるよ。今はまだ何をどうしたらいいのか解らないけど、精一杯頑張る!!」
千冬
「フッ、そうか」
そうやって優しく笑った千冬姉はなんだか少し羨ましそうに視えた。
千冬
「取りあえずは白式のスペックを知ることから始めるといいだろう。どうせオラクルの連中が今回のことを記録してるだろうから、やつらからデータを貰え。」
一夏
「そうだよな。まずは自分は何ができるかを知ることだ大切だって鏡也さんも言ってたし」
千冬
「……ああそうだな(またあいつらか…。まあ、言っていることは正しいのだが、それが余計に腹立たしいな…)」
一夏
「千冬姉?」
千冬
「む、いや何でも無い。さて、とりあえず私はこのあと用事がある。あとはそこの扉で聞き耳を立ててる連中と相談するんだな」
[[[[ビクッ!!!]]]]
本音
「テヒヒ~ばれてました~?」
千冬
「ああ、非常に腹立たしい事に気配を読むことはバカ共のおかげでそこそこ…いや、かなり上手くなってな。(具体的には現在ストーカーと化しているシスコンとか忍者といえるくらい隠密に特化した新聞部とかのせいでな…。なぜこの学園には変人しか来ないのだ?)」
千冬姉がそういうと扉が開かれ、そこからいつものダボダボな制服を着たのほほんさんが最初に部屋に入り、続いて谷本さん、鏡さん、山田先生、箒の4人が部屋に入ってきた。
麻耶
「お、織斑先生。これはその…」
ナギ
「わ、私たちはその…たまま通りかかっただけでして……」
箒
「そ、そうです。別に一夏のことを心配だなんて……」
千冬
「別に構わんさ。聞かれても別に困ることでもない。というか防音仕様に作らせたから、殆ど聞こえてなかったでしょう山田先生?」
麻耶
「あ、はい。流石オラクルですね。全く聞こえなかったです」
癒子
「ちょっ山田先生」
麻耶
「あっ!?」
千冬
「フッ、相変わらず素直ですね山田先生」
麻耶
「あう~~~///」
プシューっていう擬音が似合うくらいに顔を真っ赤に染めて俯く山田先生。
千冬
「山田先生。後のことはお願いします」
麻耶
「あ、はい。わかりました」
千冬
「お前たちもあまり遅くまでアリーナに残ってまた食堂での食事をそこねることのないようにな」
箒&ナギ&癒子
「「「は、はいっ!!」」」
げっバレてら…。
[カシュンッ]
千冬
「さて、取りあえず先に写真を売ろうとしている新聞部共を探すとするか…(ボソッ」
? 最後に何て言ったんだ千冬姉?
麻耶
「では織斑君。まず、専用機についての注意事項の本と必要事項の書類がこちらです」
一夏
「うげっ!?」
電話帳を連想するくらいに分厚い本と大量の書類を渡す山田先生。
あれ、てかこれだけの大量のをいったいどこに持ってたんだ??
―― 一方その頃のとある部室
[ゾクッ!!]
薫子
「…なんだか嫌な予感がするわ」
新聞部A
「どうしたんですか? 薫子先輩」
薫子
「全員、ブツを隠して!! 恐らく織斑先生に気付かれたわ。全員雲隠れして、万が一見つかったら何が何でも白を切り通すのよ!!」
新聞部
「「「「「「Yes my lord!!!」」」」」」
このあと門限ギリギリまで必死に逃げ隠れる新聞部員と無表情で彼女らを探す千冬の姿が有ったとか無かったとか……。
【没ネタ】
●その1
一夏
「(え、千冬姉が冗談を言った!? まさかまた偽物か? いやいや、このシーンに限っては流石に本物だろう。でも、もしかしたらっていう可能性もあるし…。それに本物の千冬姉はこんなにやさしくh―――)」
千冬
「……フンッ!!!!」
[メキャッ!!!]
一夏
「うわぁぁぁあああい。千冬姉、心配して来てくれたんだね。ありがとう!!!!」
千冬
「一夏、ちょっとばかし話がある」
一夏
「ごめんなさい!!!」
●その2
千冬
「さて、一夏のプロマイド写真が出回る前に全て買い取るか(ボソッ)
え? 今、千冬姉小声でなんて
薫子
「ム、お金の匂いがするわ」
新聞部A
「どんな嗅覚ですか…」
薫子
「皆、これから織斑先生が来るわ!! 厳選した織斑君のいい写真とネガを全て用意するわよ。いい、隠し持っておくなんて愚かなことは絶対にしないこと。バレたら一環のお終いよ!!」
新聞部
「「「「「「Yes my lord!!!」」」」」」
薫子
「さぁて、稼がせて貰いますか!!」
お・わ・り。
後書き
【あとがき】
大変遅くなりました…これにてクラス代表決定戦は終了です。
戦闘描写と最後の一夏のモノローグを変更してみました。
なんとなくなのですが、千冬は一夏を守るために一人であれこれやっていたために何でも出来る憧れの存在となってしまい、他人に頼れなくなってしまった。一夏には自分と同じようになってほしくない。助け合いながら成長して欲しいということでこのようにしてみました。
GWも仕事で潰れたので休みが無いです(泣)
次回の投稿はまた大分遅くなると思いますが、これからも私が書いた作品をみて頂ければ幸いです。
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