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東方リリカル戦記

作者:雪風冬人
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第四話「ディスカッション」

「こぉぉぉぉぉいぃぃぃぃぃしぃぃぃぃぃ!!」

 オーロラを抜けた悠達を待っていたのは、こいしの姉であるやや癖のある薄紫のボブに深紅の瞳に、フリルの多くついた、ゆったりとした水色の服装をしており、下は膝くらいまでのピンクのセミロングスカートを履き、頭の赤いヘアバンドと複数のコードで繋がれている第三の(サードアイ)が胸元に浮いている『古明地さとり』の飛び蹴りと、

「誰だお前!?」

純真無垢な暴言であった。

「ぶべらッ!!」

 顔面に飛び蹴りを受けたこいしは、ドンガラガッシャーン!、と周りの机やイスを巻き込みながら飛ばされる。
 ダークカブトの変身も解除されて元の背丈に戻る。

「お、お姉ちゃん!どうして此処に!?」
「あんたが勝手に失踪するから、よ!」

 黒光りするGを連想させる、カサカサした動きで逃走を図ろうとしたこいしのスカートを踏みつけて捕まえる。

「さて、愚妹。賢姉の手を煩わせ、あまつさえ、私の悠に迷惑かけたことで、O☆HA☆NA☆SHIしようか」
「離せえー!鬼!悪魔!」
「残念、覚です」
「……ついでに言うなら、俺もお前のものじゃないがな」

 古明地姉の後を古明地妹は泣くほど喜びながら付いて行った。悲鳴なんて聴こえないと言ったら、聴こえない。

「誰だ、とは酷いじゃないか、レヴィ」

 悠は変身を解くと、青い長い髪をツインテールで結び、ウエイトレスの恰好をした『雷刃の襲撃者』レヴィ・エーベルヴァインのこめかみに両手の拳でグリグリ押す。

「イダダダ!!イッツジョーク!ジョークだよ!王様とシュテるんも見てないで助けて!!」
「自業自得ですよ。ねぇ、ディアーチェ?」
「たまには痛い目に見るのもいいだろう」

 悠を止めようとせず、レヴィとは違うコックのような服装の『星光の殲滅者』シュテル・エーベルヴァインと、『闇統べる王』ディアーチェ・エーベルヴァインは、傍観者に徹した。

「で、この惨状はどうすんの?」

 悠が元凶たるいつの間にか戻って来ていたさとりに問い掛けるが、張本人は口笛を吹きながら明後日の方角を見ていて目を合わせようとしない。

「騒がしいが、何があったんだい?」
「おう、ナズーリンじゃないか」

 騒ぎを聞き付けたのか、厨房からこちらもコックの恰好をした『ナズーリン』が顔を覗かせる。

「店の中が見ての通りの惨状なんだが」
「これまた、派手にやったね。だが安心したまえ。直に元に戻る」

 ナズーリンの言葉通り、壊れたテーブルやイスが見事に復元されていた。

「すご!?いつの間に」
「Made in JAPONだからね」
「ん?今なんて言った?」

 レヴィの発言に違和感を覚え、悠は思わず聞き返す。

「Made in JAPON だよ~」
「JAPON ?JAPANじゃないのか?」
「違いますよ。JAPON です」
「おい、それって」
「うむ。悠の想像した奴らだ」

 聞き間違えを否定され、当たって欲しくない予想が当たり、冷や汗が止まらない。
 その悠の前にナズーリン達とは違う、白衣を羽織った五つの人影が現れた。

「フーハハハ!!我こそは、Jこと、ジェイル・スカエリッティ!」
「私は、Aこと、アリシア・テスタロッサ!」
「私こそが、Pこと、プレシア・テスタロッサ!」
「あたしが、Oこと、岡崎夢美だ!」
「そしてぇ!私が、Nこと、河城にとりだ!」
「五人合わせて!」
「「「「「技術屋集団JAPON !!」」」」」
「JAPONの技術はぁ」
「「「「「世界一ィィィィィ!!」」」」」

 まるで戦隊物のようなポーズのまま固まる五人組。五人がビシィ!と、思い思いのポーズを決める。

「やっぱりお前らか。いいのか?のこのこ出てきて」

 JAPON のメンバーであるジェイルとプレシアは、ここミッドチルダでは犯罪者とされており、アリシアは死亡したことになっているのだ。

「ああ。大丈夫大丈夫。似た顔の別人だから」
「何せ、片や獄中、片や死亡したことになっているからね」
「出来ることなら、あの子も一緒にいたかったんだけど」
「仕方ないさ。こっちは『砕け得ぬ闇異変』で手を離せなかったんだ」
「すみません。私達のせいで」
「気にしないで。シュテル達のせいじゃないのだから」

 『砕け得ぬ闇異変』の単語を聴き、落ち込んだシュテル、レヴィ、ディアーチェの三人をプレシアとアリシアが慰める。

「あー皆々様、よろしいでしょうか?」

 今まで忘れられていたせいなのか、若干いじけたジャッジの声が食堂内に響き渡る。

「すまんすまん。ちょっと待ってくれ」

 ジェイルがリモコンを取り出し、スイッチを押すと室内の照明が落とされ、天井から立体モニターが降りてくる。
 そのモニターには、円卓を囲んで座る十一人の人影が映っていた。

『待たせたみたいだね、ジャッジ。こちらの準備は済んだよ』

 映った人影の一人、金髪のショートボブに金色の瞳を持ち、その頭には角のように二本の尖がりを持つ帽子を被り、古代道教の法師が着ているような服の上に、ゆったりとした長袖ロングスカートの服に青い前掛けのような服を被せ、腰からは金色の狐の尾が九つ、扇状に伸びている『八雲藍』がジャッジに話をするよう促す。

「あれ?紫は?」
「お仕置き中だ」

 本来なら紫が居る筈なのだが、その従者である藍がいたことを尋ねた悠の疑問に藍は即答する。
 それで概ねの事情を察したのか、大半の者はまたやったのか、とあきれ顔になった。

「ではでは、『幻想』の皆々様方。そして、『道化』様。お集まり頂き恐悦至極で御座います。此れより、僭越ながら吾輩、審判たるジャッジが此度の『遊戯』のルール説明をさせて頂きます」

 シャラン、とまるで始まりの合図かのように、ジャッジの持つ杖の天秤が打ち合い、音を響かせる。
 それを受け、悠達はジャッジの言葉を一語一句聞き逃さぬよう、気を引き締める。

「至極、めんどくさい事この上ないですが」
「それ言っちゃ駄目だろ。仮にも審判なんだから」

 真面目に不真面目に、魔法少女達が与り知らぬ所で事態は進行していく。
 
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