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東方守勢録

作者:ユーミー
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第五部
  第一話

幻想郷 再思の道周辺 革命軍地上本拠地


『再思の道』幻想になりかけた・生きる希望を失った外来人がふらふらと立ちよってしまう場所。

それをねらう妖怪も多く、付近にある無縁塚には劣るが危険な場所とされている。

そこから数十メートルほど離れた場所に、幻想郷にある建物とは全く思えない大きな建物が建築されていた。革命軍が建てた地上本拠地である。

その中で、手錠をはめられた二人の少年少女が兵士に連れられてある場所に向かっていた。


「なぜ……あの場所にいたの?」

「先回りされたか近くに潜伏されてた兵士がいまして。状況を考えたら俺が残る方が一番いいんじゃないかと思いまして」

「なるほどね。ごめんなさいね……俊司君」

「いえ。こっちこそ面目ないですよ……咲夜さん」

「おい静かにしろ」


兵士は銃で二人をつつきながらそう言った。

そうこうしていると、かなり大きめのホールのような場所に出てきた。壁一面にはたくさんの牢屋が所狭しと設置されていた。


「では、あとは頼むぞ」

「了解」


兵士は監視担当の兵士に俊司と咲夜を引き渡すと、そのままホールから出て行った。


「来い」


兵士はめんどくさそうにしながらも二人を特定の場所に連れていこうとする。

そして案内された牢屋には、すでに見覚えのある三人の人物が閉じ込められていた。


「入れ」

「……」


俊司と咲夜は仕方なく中に入る。兵士はそのまま牢屋の鍵を閉めると、また入口の方に歩いて行った。


「……」


なんとも言えない雰囲気が漂い始める。

そんな中、九つの尾を持つ妖怪が口を開いた。


「……外来人が牢屋に入れられるとは、珍しいこともあるもんだな」

「そうですね……八雲藍さん」


俊司がそう言うと、藍は軽く少年を睨んだ。


「お前たちがどのような理由で来たのかは知らんが……何をやっているのか分かってるのか?」

「すいません……」

「すいませんですめば……今頃こんなことには……」

「いや、その……俺ここの兵士じゃないんで……」

「……は?」


俊司の意外な一言に、藍は目を丸くしていた。


「言葉通りですよ」

「なら……なぜ君はここに……」

「まあ連れてこられたんですよね……あなたの主さんに」

「!? 紫様は……ご無事なのですか!!」

「はい」

「そうですか……よかった……」

「藍しゃま? どうかしましたか?」

「ああ橙、紫様はご無事だそうだ」

「そうなんですか! よかったです……」


思わず安堵のため息が漏れる藍と橙。藍はすぐさま俊司の方を見ると、さっきとは違う優しい表情をして話し始めた。


「すまない……事情も知らずに変なことを申してしまって……」

「いえ、いいんです。こいつらがやってることは間違ってますから」

「ありがとう。君……名前は?」

「里中俊司です」

「そうか……こっちは……自己紹介しなくてもいいか」

「はい。八雲藍さんに橙さん……それと……」






「東風谷早苗さん」





「……」


俊司の反対側に座っていたロングヘアーの少女は、何も言わずに俊司の方を見ていた。


「……話は前に聞いていました。あなたが私達に手を貸している外来人の少年ですよね」

「はい」

「永遠亭への攻撃の際……やつらに手を貸してしまいすいませんでした。ですが……事情があってのことなんです。どうしても……さからえなくて……」

「わかっています。神奈子様と諏訪子様のことですよね?」

「はい。今もどこかに捕えられて……」

「あの……そのことなんですが……」


そのことと言われ不思議そうに俊司を見る早苗。

俊司は少しためらいながらも口を開いた。


「神奈子様も諏訪子様も……革命軍に捕えられていません。いまも守矢神社でやつらの攻撃を防いでいます」

「!?」


衝撃の事実を聞かされた早苗は、目を見開いて絶望したかのような表情をしていた。


「なにを……おっしゃってるんですか!そんなわけ……」

「その事実を知ったのは昨日のことです。文が守矢神社に偵察に向かった際、お二人と話をしています。お二人が言うには早苗さんは知らない間に出て行ったと言っていましたが……」

「そんな……ですが!証拠として写真も見せられて……」

「外の技術を使えば合成写真も作れます。それを知らない幻想郷の住民を騙すなら十分だと思いますし……」

「うそ……では……私は騙されてたんですか!?」

「そうだと……思います……」


俊司がそう言うと、早苗は再び絶望したかのように頭を抱え込むみ、その場にうずくまってしまった。

彼女にとっては人質を取られ仕方なく行ったこと。だが、実際は人質はおらず騙されていただけ。早苗の中には罪悪感と後悔の念がふつふつと浮き上がってきていた。


「そんな……そんな……私は……私は……なんてことを……くっ……ひぐっ……」

「早苗さん……」

「顔をあげなさい」


何もできずにいた俊司を差し置いて声をかけたのは咲夜だった。


「あなたは騙されていただけなのよ?自分を責めるのはよしなさい」

「ですが……ぐすっ……私は……みんなを……ひぐっ……危険な目に……」

「私だって……同じ状況に立たされたらそうするわ。それだけ主のことを思ってるからよ?」

「ひぐっ……そうですけど……」

「彼女の言うとおりだ。私だって紫様や橙が人質にされて…それが本当かどうかわからなくても従うさ……」

「そうよ。さ、顔をあげなさい。それこそ主に怒られちゃうわよ?」

「そう……ですよね……ぐすっ……はい……わかりました……」


そう言って早苗は軽く泣きながらも笑みをこぼした。


「俊司君……すまないが軽く外がどのような状況になっているか教えてもらってもいいかな?」

「はい」


俊司は言われた通り、自分が知っていることすべてを三人に話した。

俊司が話している間、彼女たちは終始驚いた表情をしていた。すこしづつ戦況を変え始めていること。革命軍にも協力してくれる人がいたこと。すべてを話し終えた時、約二・三時間は経過していた。


「そうだったのか……だが、これで希望がもてそうだな」

「そうですね藍しゃま!」

「はい。ですが……ここにいるからにはなにも……」

「それもそうですね……」

「きっと助けが来るわ。それまで待ちましょう」


と、それぞれが励ましあうように話していた時だった。







「里中俊司!面会だ……出ろ」







監視員がそう言いながら牢屋の鍵を開けた。
















本拠地内 面会室


「久しぶりだな。何年ぶりかな?」

「だいたい6年といったところじゃないですかね。由莉香のお父さん?」


面会室にいたのは由莉香の父親だった。

俊司にとっては小さいころから家族ぐるみでお世話になっていた人。思い出も少なくはない。だが今は敵同士ということだけはわかっていた。


「由莉香がこの軍にいたのは知ってましたが……あなたがいるなんて……」

「そうでなければ、うちの娘をこんな危ない場所には行かせていないさ」

「それもそうですね……」


上条はしかたないと言わんばかりに困った表情をしていた。俊司はそんな彼を軽くにらみつける。

だが、上条はそれにびくともせずに話を進めた。


「さて……君はいろいろと聞きたいことがあるんじゃないか?」

「はい」

「特別にいくつでも質問を聞いてやろう…さあ、遠慮なく聞きたまえ」


上条はそう言って腕をくんでいた。


「なら、どうやってこれだけの人数をここに連れてきたんですか?」

「ほう……この軍はなんなのかとかは聞かないのか?」

「日本政府が憲法を無視して勝手に作った、軍隊みたいなもんでしょう?」

「まあ……正解だな。もう少しいえばアメリカなどの国も手を加えてるがな」

「そうですか……で?質問の答えは」

「そうだったな。さて……少し長くなるぞ?」


上条はそう言いながらポケットから手帳を取り出した。 
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