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なりたくないけどチートな勇者

作者:南師
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29*手袋は投げとらんぞ

安らぎ。

それは静寂なる空間で、徒然なるままに繋がらないニコ動に想いをはぜながらただただ、無為なる時の流れに身を任せる事を言う。
うん、いとをかし。

まぁつまり何が言いたいかと言うとだ。
安らぎってか癒しが欲しいんだよ、自分。
自分は今流行りの癒し系じゃないんだ。

自分は癒され系なんだよ。
誰か癒せ。

……………ふぅ。

さてさて、何故に自分がこんなに荒れているのかを説明しましょう。

ただいま自分こと長谷川鳴海、もっそいでっかいパーティーに来ちゃっております。

そしてその会場の隅っこにて、自分は料理と一緒に置いてあったジュース(貴族様方のちびっこい子供達が飲んでたやつ。…酒ではないと信じたい)をちびちび飲んでいる。

恰好的には、一張羅(詰め襟)を着こなし、ソーラー発電腕時計を完備して、耳にはヘッドフォンでミクたんの羅刹ト骸をバリバリ流す、と言うくらいのどこに出しても恥ずかしく無い一般男子高校生スタイル。
しかも、ヘッドフォンのおかげで外界のお貴族達を気にする事もなく、自分の世界に閉じこもってただパーティーが終わるのを待っている。

では、なぜに自分がこんなに癒しを求めて、早く終わるのを待ってるかってーと、それにはもちろん理由がある。

え?何かって?
決まってんでしょ、んなの。

自分がこの会場に入ってきた途端、周りのお方々が

「……あれが…黒騎士……」
「……なんでも、ランドルフ家の娘と結婚するために爵位についたとか……」

「そのために盗賊団全員を血祭りにあげたとも私は聞く」

「いや、私はランドルフの娘を手に入れるため、親である宰相のガルク公爵と決闘をして奪い取ったと聞いたぞ」

とかのたまいはじめたんだよ。

………オイコラテメェら、陰口叩くならもっとばれないようにしやがれや。
それか話しかけたいなら自分の半径5メートル以内にとっとと入って話しかけやがれコノヤロー。

そろそろ心が崩壊するぞ。
そしてガルクさん宰相だったんかい、似合わん。

………まぁ、はい、そんな感じです。

つまり、なんかみんなして噂におびれせびれにエラ鱗、さらには浮袋まで付けたようなとんでもない噂を自分を遠巻きにしながら話してんですよ。

孤高とか一匹狼とか言ったらカッコイイが、本人が望まないならもはやイジメ、精神的リンチだよ。

そしてそんな扱いに耐え切れなくなった自分は、ヘッドフォンを装備してこの中毒性の高い歌を聞いている訳ですよ。
うん、ハ○さん最高。

…………寂しくなんか、ないもん。

「……な……ナルミ……おい……」

もういんだ、自分、これ終わったら吊ってやる。

「なる……きい…のか………」

はぁ……もうやだ。
そろそろこのジュースもあきたし、でも他のは何が入ってるかわからんしなぁ……

「ナルミ!!」

「にょう!?」

いきなり叫ばれ、いきなりヘッドフォンを強奪された。
そして即座にアイアンクローをかまされる。

「き・さ・ま・は私の話が聞こえんのかぁ!!」

その犯人は、猪突猛進という言葉がよくにあう暴走王女、エリザ様でありました。
ピンクいピーチ姫みたいなドレスを着た彼女はめっちゃ口をひくつかせながら、小鳥くらいなら一瞬でヤキトリにできるだけの熱い視線を自分に向けております。

………やっぱこの世界はみんな眼力が凄いんだな。

なぁんて暢気に構えていると、顔がメキメキ軋む気がした。

やばい、顔が部位破壊される。

「すまん、聞こえんかった」

「あぁ!?」

「ごめんなさい、もうしません、なんでもするから許してください」

………チキンと罵るなら罵るが良い。
ただこの眼で睨まれてみろ、青鬼だって友達見捨てて泣いて土下座するぞ。

そしてそんな自分の願いが通じたのか、エリザは自分の顔から手を離した。

「……全く、お前は貴族の自覚があるのか?こういう場はもっと社交的に、家同士の良好な関係を築くものなのに……壁をつくってどうする」

「貴族の自覚?なにそれおいしいの?つか壁つくりたくてつくってる訳と違うし。勝手にみんな自分から離れてくし。」

そもそも貴族なんか、よくわからないっての。

「まぁ、私はお前にそんな事期待はしていないが、せめてもう少しそれっぽくしてくれ。なぁ、ハセガワ子爵」

はい、ここ重要。
子爵、とは自分の貴族としての爵位らしいが……

「うむ、じつは子爵がどれくらいか全くわからん。ぶっちゃけ偉いん?」

自分が知ってんのは、公爵やらの名前だけでどれが上かはわからないのだ。
だから自分が偉いって実感もなければ理解もできない。

わかって軍曹や二等兵や伍長くらいだ。

そしてそんな自分がなんとなしに質問したら、エリザは

「あー、まぁあれだ、伯爵より少し下くらいの………まぁ、そこそこ偉い」

目を逸らしながら答えてくれた。

てゆーかおい。

「………一国の姫として、そこら辺知らないのはどうなんだ?」

こいつ、ぜってーわかってねぇな。

自分のクリティカルな指摘に対し、エリザは慌てながら。

「な!!ち、違うぞ!わからない訳ではない!たた今の奴らに覚える価値がある奴がいないからど忘れしただけだ!!」

「そっちのがヒデェよ。つか、んな事でかい声で喚くな」

こいつの一言で周りにいた貴族方が、一瞬で顔を青くしたり赤くなったり紫に染まったりするのを見て、なんともかわいそうな気持ちがした。

てゆーかこいつ、本当に姫か?

そんな些細な疑問を頭に浮かべている間に、エリザは顔を微妙に赤くしながらそっぽを向いて叫びはじめた。

「ふん!自分の嫁をほったらかして一人で突っ立ってる奴に言われたくないわ!なぁシルバ!」

「みゃう!!」

尻尾を踏まれた子猫みたいな悲鳴が貴族の群れの中から響きはじめた。
それを聞いた周りの方々は、悲鳴の発信源と自分との間を避け、道を作りはじめる。

そこにいたのは、黒を基調にたまに白いフリフリがついたドレスの、ゴスロリファッションなシルバちゃんである。

「あ…あの……その…あの……ぁぅ……」

エリザの発言と周りの注目から、シルバちゃんは顔を真っ赤にしながらもじもじしている。
指をくるくるしながら恥ずかしそうにその場に佇んでいるその姿は、そこらの女の子には真似できないクルものがある。

あーくそ、萌えるなこのやろー。
これで病んでなければ最高なのに。

とかなんとか考えている自分も、やっぱり恥ずかしい訳である。
さらに重い沈黙が嫌いな自分はその空気を打破するべく愚かにも声を発してしまった。

「……あー、シルバちゃん……その……その服、似合ってるね。とってもかわいいよ」

まず自己弁護をしよう。
この発言は自分が沈黙に堪えられずにどーにかこーにか見つけ出した自然と思われる発言である。考えながらの発言により、歯切れも悪いし目も泳いでしまっているが、この言葉に他意は……少ししかない。

だが、周りの捉え方はそうではない。

「ムフフフフ……似合ってるね、とってもかわいいよ、か……こんなに注目されている所でいきなりそれか。いゃぁ、大胆だな、ナルミ。照れながらもしっかり褒める、さすがだ」

「はい?」

「とぼけるでない。そもそも私の服を見て全く無反応だったくせに、シルバの事になると即座に反応する。これが惚れた弱みという訳か」

ムフフ、と嫌らしい上品さのカケラもないような笑いをしながらエリザが話す。

ちなみにシルバちゃんは自分が褒めた事により再起不能、あわあわ奇声を発して手をぶんぶん振っている。

そんな彼女にエリザは近付き、腕を掴んで再び自分の所にやってくる。

「ほれ、悪い虫がつかないようにしっかり護ってやれよ。まぁ前までならともかく、今お前からシルバを奪おうなど考える愚か者などいないとおもうがな」

そういいながら、シルバちゃんを自分の所にポフッと押し渡す。
そしてシルバちゃんはバランスを崩し、自分のお腹辺りに倒れこみ、反射的に自分はそれを倒れないように抱えこむ。

すると途端に周りから“おー”とかいう歓声が。

……うん、気持ちは何となくわかるが、恥ずかしいからやめて欲しい。

「じゃあ、私は戻るがあとは任せたぞナルミ。シルバはさっきからお前を捜してうろうろしてたんだ、もうはぐれないようにしろよ」

そう言いながら奴はそそくさと戻ろうと…

「ぐへっ!?」

「おう?」

………い、痛い。
こいつ、ヘッドフォンを持って行こうとしやがったな。
首にぶら下がってたMP3プレイヤーがめっちゃ引っ張られた。

「………返せ」

「………………チッ」

渋々返すエリザ。
マジでこいつ、姫としてどうなんだ?

「………なんだそれは?」

「え?戻るんでなかったん?」

何をぬけぬけと、こいつ。
そんな態度と舌打ちが腹立つから、ついつい冷たい態度をとってしまうでないか。

だがそこは優しい自分、首からプレイヤーを外してエリザにおいでおいでと手招きする。
そして近付いてきたエリザの首にそれをかける。

「ほり、これが本体。んで、こっちを耳にあてれば歌が聞こえるから」

そんな感じに大まかな説明をしてやると、奴はうきうきしながらそれを聞いている。

「ナルミナルミ、これが噂のぼーかろいどの召喚器か?」

「いや、それらの歌が入ってるだけ。奴らは出てこん」

つか、実際ボカロが三次元に来たらいろいろと怖い。

特に眼とか眼とか眼とか。
あの眼の大きさ絶対脳みそ圧迫してるって。

「んじゃそれ貸すからあっちゃいってなさい」

ヘッドフォン貸すだけで厄介者がいなくなるなら安いもんだ。

「おう!ナルミもいつまでシルバの温もりを感じてないで、少しは楽しめよ。じゃあ私はこれ以上お前達の邪魔をするのも忍びないからもう行くぞ」

そう言いながら奴はノリノリでヘッドフォンを取り付け、どっかに去っていった。

まぁ、あれだ。
大音量のGO TO THE HOSPITAL!!でエリザの耳がやられる事を切に願う。
………なんともちっちゃい仕返しだ。

しかし………温もり?

腕の中を見ると、自分がさっき支えた時のままの体制で、真っ赤になりながらもしっかり自分に縋り付くかわゆい娘っこが一人。

……………すっかり忘れてた。

「………一人で立てる?」

「む、無理です立てません。まだこうしてたいです」

……この娘、こないだからだいぶ積極的で大胆に成長したな。
なぜだ?

てゆーかそれより、立ってくんなきゃ困るんだが。
めちゃめちゃ恥ずかしい。

そして悪い事は何事も重なるもので

「あらあら、よかったわねシルバ。でもそれをやるのは今ここでではなく、後でナルミさんの部屋でやった方がいいわよ」

はい、リリスさんご登場である。
水色に紫の装飾付きの綺麗なドレスを着ながらやっぱりのほほんとした顔を崩さずに、自分ら二人の前にやってきた。

「私も早く孫の顔が見たいし、むしろ今から「Shut up!!」…しゃ…?」

何を言い出すこの御仁は。
ついいい感じの発音が出来てしまったではないか。

「ほらシルバちゃんも立って。……そんな不満そうな顔しないの」

そしてそのままの流れでシルバちゃんを立たせてやる。
だが立った後もこの娘は腕を掴んでくる。

ほんとに、こいつは。

「フフフ、シルバ、大丈夫よ。ちゃんとナルミさんなら今夜あなたを「だからShut up!!」

そしてほんとにこの人は!!
何考えながら生きてんだ

「まったく、で何か用ですか?」
(訳・あんた何しにきたん?マジ迷惑)

こんな事を言ってしまう自分を誰が責めれようか、いや責めれない。

しかし、リリスさんにはそれが通じず、言葉の通りに捉えてしまった。
これを俗に一人相撲と言う。
……多分。

「そうなのよ、実はね、ナルミさんがいきなり子爵なんて地位についちゃったのを快く思わない方々がいるから、気をつけてねって言いたくて」

「………それ、そんな大声で言わないで下さいよ」

この人、脳みそあんのか?
てゆーか何か、自分変な逆恨み的なのの対象に選ばれちゃったわけか?

………みんな死ねばいいのに。

「そう?なら小声で言うわね」

ちゃうわ、黙ればいいんだよ。
あぁもういらいらする。

「あと、シルバって親とか抜きにの結構かわいいじゃない?ガルクの地位もあったし結構狙ってた方もいたんだけど……そっち方面でも危なそうだから気をつけてね」

「来たら即座にぬっ殺しますからご安心を。むしろぬっ殺されに来て欲しいくらいで。もうあらゆる手段を使ってこのストレスを発散させて貰いたい」

ホントに、来るならこいや。
ばっち来いですよ、狂喜乱舞で血祭りですよ。

「………ナルミさん、もしかして酔ってる?さっきからなんか変よ」

んー?
変とな?

「どこらへんが?」

「なんか…全体的に性格や言葉が変というか……なんか怒ってるようでそうでないような……さっきから嫌みやよくわからない言葉をつかったり……」

あ、嫌み通じてたか。

てゆーか変か?
自分そんな気はしねーぞ?
頭大丈夫?

「んな訳ないじゃないっすか。いい精神科の病院紹介しましょうか?」

「それ!せーしんかが何かわからないけど、そんな嫌な口調はこの前しなかったわよ?シルバから聞いた普段のナルミさんもそんな感じしないし、やっぱり酔ってるんじゃない?」

あー?
しつこいなぁこの人。
マジ死ねばいいのに。
むしろ自分が引導を渡してやろ………

ちょいまて自分、何を考えてる?
なぜにここでそんな危険な殺人計画を練っている?

たしかにおかしいぞ、これ。

「………ちょっちそこのネコミミ、こっちゃこい。そう、お前やお前」

異常を感じた自分は、近くにいたネコミミメイドを呼び寄せた。
リリスさんの登場から、周りの貴族はなんかそそくさと逃げてったので割合楽に呼ぶ事が出来た。

……うん、脳に反して命令口調になってる。

「は、はい!な、ななんでしょうか!?」

めっちゃびくつきながら来るネコミミ。
あぁ、この反応すらいらいらする。

「これ、なんの飲み物?」

そんな気持ちを無理矢理押さえ、自分は彼女に持ってたジュースを突き出した。

「あ、こ、これは……生ムリヌ一番搾りの最高級ミュール酒です」

…………マテマテマテ。

「スマン、もっかい、パードゥン?」

「は、はい!あの……最高級ミュール酒…です」

「その前!!」

「は、はひ!!な、ななな、生ムリヌ一番搾りで……す」

「ここでもか!?」

マジですか!?
キノコお酒に使います普通!?
頭おかしいんでない!?

「先生、どうしたんですかいきなり」

「あぁん!?」

「……し、シルバは何があっても怯みません。先生がなんで怒ってるかわからないけど、落ち着いて下さい」

あ……ああ、そうだ落ち着こう。
シルバちゃんには罪はない。
てゆーか誰も悪くない、むしろ確認しなかった自分が悪い。

……つか、シルバさん。
そのうるうるした涙目は反則です。

「あ……ご、ごめ…なざ……ごめん……なざい……」

そして泣くなネコミミメイドよ。
グズグズうるさい。

「あー、あんたは悪くないから、うん、大丈夫、だから黙れ」

後になって思う、最悪だ自分。

「ナルミさん、なにがあったんですか?ミュール酒なら子供用だしそんな酔うような事もないし……物凄くお酒に弱いとか?」

説明面倒だな、おい。

「……ムリヌが、駄目ですね。人間の弱点です毒です、精神がいろいろとやばかったり不安定になります、はい」

うむ、簡単簡潔、わかりやすい。

……どしたよ三人、その反応。

「ムリヌ、毒なんですか!?」

声でかいよ、うるさい。

「そうだったの……大丈夫?気持ち悪くない?」

あなたものほほん以外の表情あるんすね、初めてしりました。

「せ、先生……まさか死んじゃいませんよね!?そんな訳……ない、ですよね?」

一回君の家で食べたけど死ななかったよ?

………………駄目だ、本気で心配してくれてる三人にこの反応は、人として終わってる。
戻って吊ってこよ。

「………すいません、自分部屋もどって寝ます、はい。これ以上はいろいろと危ないです」

すたこらさっさと戻ろうとする自分。
なんか一人顔を真っ青にした少女が後ろからついてくるが気にしないでBダッシュで逃走を計る。

しかし、運命はそれを許さないようだ。

走る実際の目の前に、いきなり誰かが意図的に出て来たのだ。
もちろんそれに自分はぶつかり、痛い思いをした。

そして、そのぶつかった奴はと言うと。

「おいおいおい、ちゃんと前を見て歩きたまえ。……おや、誰がと思えば戦しか能のない黒兵士ではないか」

金髪金眼の嫌みったらしいキザな男がそこにいた。
男は17歳くらいで、自分より20センチは小さく全体的に細く華奢な感じである。
ただ、頭に二つの触覚がある。

そしてその男は見た目通り、嫌みな言葉をつらつら連ねる。

「たしか君は魔力がなく、武芸しか出来ない落ちこぼれだったな。この前は運よく武勲をあげたようだが、実際はどのようなものだか……」

………こいつ、存在が駄目だ。
拷問楽器『妖謡・魔』(イビルストリンガー)でも食らわせてやろうか?

とかなんとか、危ない事を考えてるとシルバちゃんが自分の腕をギュッてしながら

「あなたに先生の何がわかるって言うの!!いますぐ謝りなさい!」

こう叫んだ。
対象はもちろんあのキザ男。
しかしキザ男はそんな彼女の攻撃をものともせずにこうのたまった。

「ふん、僕は自分より下の者には謝らないよ。それよりシルバ・ランドルフ嬢、こんなのはほっといて僕と一緒にいないかい?」

「誰が女たらしのサザールスなんかと!私は不幸になるってわかっててついていく程馬鹿じゃありません!そんな事より今すぐ謝れ!!」

……あ、闇化しそう、この娘。
確かにこいつはムカつくし、シルバちゃんが自分のために怒ってくれるのはうれしいが、ここで覚醒されたら、ねぇ。

とりあえず、落ち着かそう。

「シルバちゃん落ち着いて。弱い犬程よく吠えるんだ、いちいち小物の相手をしても時間と体力の無駄だよ。それより早く部屋に戻りたい」

そう言って、彼女の手をとりこの場を後にしようとする自分。
だがしかし

「ま、まちたまえ!!」

キザ男がなんか呼び止めはじめた。

「弱い!?僕が小物!?君は僕が誰かわかっててそんな暴言を吐くか!?」

はぁ?
何言ってんのこいつ。

「いやしらねーし。つか知る必要性がねーし。何お前自意識過剰?ナルシーはキモいだけだよ」

自分の言葉に顔を真っ赤にさせながら怒るキザ男。
あー、ナルシストはこれだから。

「ぼ、僕の名前はグルーム・サザールス!!ガーリクル・サザールス公爵の息子だ!!」

へー、そーなんだー。

「………で?」

「は?」

「いやだから、あんたの親父が公爵なのはわかるが、あんたは何?まさか親父が公爵だからってだけで威張ってる訳じゃないしょ?それは親父の地位であってお前の地位じゃないし」

この言葉でさらに顔を赤くするグルームと言うらしいキザ男。
奴は近くにあった青い飲み物を取り

バシャ!!

自分にかけはじめた。

きっちりそれは防いだが、さすがにこれはトサカにきたので、自分も同じのを三つ持ち

「そぉい!!」

パリーン!!

グラスごと投げ付けた。

さすがに顔にはやらなかったが、胸に当たり見事に割れるワイングラス。
それと共に周りから“おぉー”やら“まさか…”やらの声が。

そして肝心のキザ男はと言うと

「……フ…フフフフフ」

なんか壊れたように笑いはじめた。
ヤダ不気味。

自分が気味悪がってると、シルバちゃんが横から

「……先生…絶対勝って下さいよ」

とか言ってきた。
ワケワカンネ。

「何を?」

「決闘です。あいつが挑戦を出して先生が受けたじゃないですか。かなり過激でしたが」

………マジで?
どこの丸マ?

「おい黒兵士!中庭に来い!お前を叩き潰してやる」

……………まぁ、こいつが相手ならむしろ大歓迎。
いままでのイライラ、全部発散さしてもらおう。

「はっ!!自分に挑んだその勇気、それだけは褒めてやるよ!!」

そうして、なんかいつにもましていろいろとヤヴァイ自分の決闘がはじまった。






…………後になって思う。
やめときゃよかった。

そして断言しよう。
その日は絶対仏滅だ。
 
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