なりたくないけどチートな勇者
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17*石川ではない
「どーしたもんかねぇ…」
自分は今、この国の重役(多分)達の偽者と戦っている。
というか正確にはあっちが攻めてこっちが守りに徹している。
だってあの偽者に攻撃したら本物傷つくし、こっち腰抜かしたお荷物がいるんだよ。
逃げれないし攻めれない、正にじり貧。
なので仕方なく自分は64仕様のネー○の愛で守りにてっしているのです。
ほんとは一人用だけどそこはGSP、融通がきくのです。
なので全く自分達は無傷。
いたって健全健康そのもの。
だけど、ねぇ…
「どうした、守ってばかりでは勝てないぞ?」
こいつ、ウッゼー。
限りなくウザい、さっきから人の神経逆なでするよーに喋ってくる。
「そうか、攻撃出来ないのだったな。これは失礼。」
身体は無傷だけど心は血管がブチブチ切れていく。
だけど確かに攻撃出来ない。
そして皆様は容赦なく魔法や斬撃の雨あられ。
くどいようだがどうしよう。
と、いろいろ思案していると、ヒューのイヤミの矛先がズールの方へと向きはじめた。
「しかしズールよ、ぶざまだな…かつては猛将と呼ばれていたお前がまんまと俺の策に乗せられ、揚句哀れにも力も出せずにその者に守られる姿は実に滑稽だ。」
「き、貴様…!」
「ふん!影のように後ろにへばり付きながら言われても、怖くも何とも無い。」
影の…ように?
「それいただき!!」
「は?」
ヒューの間抜けな反応は無視だ無視。
とりあえず自分はこの状況を変えるため、思い付きを実行しよう。
「忍法影真似の術!!」
自らの影を動かし、人形の影にくっつける。
するとどうだ、みんな全く動かなくなった。
多少プルプル痙攣みたくふるえてはいるが、それ以外は皆、自分と同じ恰好で止まっている。
「な……なぜだ!?なぜ人形が止まった!?」
うろたえ始めたヒューには、もはやさっきまでの余裕は消えて、焦りの色がみえる。
ふっふっふ、いい様だ。
よし、このままさらに混乱してもらおう。
そうと決まれば
「くらえ!」
バキッ!
「がっ、はぁっ!」
かけ声と共に右拳を大いにふるう。
すると、見事に王様(偽)の拳がヒューの頬にクリーンヒット。
……なんか、十何人も一斉に拳を無表情で奮う様は、何とも言い難いホラーさ加減だ。
「な、なぜだ!?なぜ勝手に動く!?なぜ俺に攻撃する!?」
頬を摩り、慌てふためくヒュー。
しかも、四方を人形に護らせていたため、その人形の制御が出来なくなった途端にその場から動けなくなったのだ。
なんと哀れ…
「く、くそっ!おい!こいつらをどうにかしろ!!」
自分が哀れみの視線をヒューに送っていると、ヒューが叫びはじめた。
どうにかしろって……もうあんたの味方はいないよ?
んなこともわからないの?
と、今度は嘲笑の眼差しをヒューにプレゼントした。
それはもう余裕しゃくしゃくで。
でもこれがいけなかった。
ドゴォッ!!
轟音と共に爆風が吹き、自分が影真似をかけていた人形が吹っ飛んだ。
自分達はつけっぱのまま忘れてたネー○の愛のおかげで無傷だが、床はえぐれて人形達は皆たたき付けられて動かなくなっている。
そして、爆風の来た方向を恐る恐る見てみると、そこには
窓の前にて無表情で木の杖を構える白い鎧姿の幼女が一人。
……窓と扉を見張ってた人形の存在、忘れてたようです。
「影真似の術!!」
とりあえず皆確保、が
「王風神『ヴァンフ』。」
ブンッ
彼女の言葉と共に彼女が持ってた杖が、なんかすっごい変化した。
杖の先には緑の30センチ大の宝石がはめ込まれ、無骨な木で出来た杖の本体は真っ白い、なんかミスリル的な素材でできた高級そうな杖に変化したのだ。
そして、
「ナクシム。」
呪文と共にさっきよりも強烈な風が自分に向かって襲い掛かってきた。
風が龍(東洋タイプ)に見えたのは幻覚では無いだろう。
しかも直撃した衝撃でかはしらんが、自分を守ってたネー○の愛がなんかいきなりなくなった。
ついでに驚いた拍子に影真似も解いてしまった。
マヂデ?
「…ふ、フハハハハ!!形勢逆転だな!流石に魔法大臣の膨大な魔力の前には貴様も太刀打ち出来なかったか!!」
魔力…?
あ、これってもしや緑のメーター無くなったからとけちゃったの!?
なんて無駄なとこだけ忠実なんだよ。
バリアが解けた原因を理解して落胆する自分を見て、多分あの幼女の強さに対して落胆していると勘違いしたヒューは満足げに言葉を続けた。
「しかしよくここまで粘ったな、まさかこれほどやるとは思わなかったぞ。…よし、褒美として魔法大臣を最強の武装でお前と闘わせてやろう。」
は?何言ってんのこいつ。
自分が頭にハテナを十個くらい浮かべてると、件の魔法大臣(幼女)はよくわからない呪文をつらつら唱えると、彼女の身体から光が出て、全身をつつんでいった。
そして…
「あ、あれは」
後ろでズールが目を真ん丸くして驚いている。
確かにその気持ちはわかる、おおいにわかる。
彼女は今、全身は黄金の鎧に包まれて、左手には巨大な白銀の盾。
右手に持ってた杖も先にはめ込まれた宝石を中心に槍のように変化している。
両肩には楕円を半分に切ったような巨大な黄金の装飾に、身体の所々には小さな翼のような飾りが幾つも付いていて、それに意思があるように微かに動いている。
ぶっちゃけこれは後光が見えるような気がする神々しさだ。
あのエセ神よりもこっちの方が神らしい。
ただね、ただこれだけはいわして…
「どこのミネルヴァだよ!!」
そう、ミネルヴァなのだ。
微妙に違いはあるが、クラ○シスコア最強の敵であるそれにそっくりなのだ。
ぶんどるをつかったらきっとフェニックスの羽が大量にとれるだろう、それくらいミネルヴァなのだ。
「な…みねるばとはなんだ?あれは太古の聖戦で女神“ムル”の使ったと言われる伝説の武具“カルス”だぞ!?文献でしかみたことは無いが、実在したとは……」
ズールが丁寧に説明してくれた。
あんま聞いてなかったが。
「よく知っているなズール。いかにもこれは伝説の武具“カルス”だ。他の遺産と共に発見した代物だ。本当は俺が使いたかったのだが……生憎使い手を選ぶらしくてな、今の所魔法大臣であるイースしか適任者はいないらしい。まぁしかし…」
そう言いながらヒューが指を鳴らすと、そのイースとか言う魔法大臣は奴の横まで瞬時に移動した。
「それでも、鋼鉄の自動人形できちんと操作はできるがな。」
クックックと、気持ち悪い声を出しながら笑うヒュー。
変な空気の中、奴の笑う声だけが会議室に響いていた。
……あれ?
今までピク○ンに襲われたチャッ○ーよろしくな感じにフルボッコにされかけたり、異常な爆風で攻撃されたりで色々テンパってたけど、よくよく冷静に考えてみたら案外簡単に状況打破できないか?
(なぜか)いきなり冷静になった自分は、とりあえずヒューを一旦止める事にする。
「ストップ。」
カキンッ
「クックッ……」
とりあえずFFのストップで時間を止める。
気持ち悪い恰好で中途半端なままとまったヒューがそこにいた。
そしてやはりと言うか何と言うか、この人形は操り主が命令しないと何も動かないらしい。
ひとまず人形が動かない事に安心した自分は、さっさと鏡を全部ヒューから奪い、そして
「その幻想をぶち壊す!!」
フラグ乱立駄男の台詞をノリで叫びながら、右手をそいつのイマ○ンブレイカーにして全部の鏡に触れてやった。
パキンッ!
とりあえず成功らしい。
鏡は割れる音と共にボロボロと壊れていった。
人形もそれぞれ皮膚が鉄の色になったと思えば、かさぶたが剥がれる様にボロボロ崩れて中から本物の本人が出てきた。
目の前にいるイースちゃんも、鎧の隙間からサラサラと粉になった人形のカケラが零れている。
「う……、つー。」
以外にも、1番早く起き上がったのは王様だった。
それでも上半身だけで、立つ事は出来ないらしい。
「お前が、助けてくれたのか……」
大分弱った声で話しかける王様。
よく見たらこいつはイケメンだ。
いや、むしろかわいい。
そこらの女より断然かわいい。
さらに肩まである青い髪はなんとも言い難いサラサラ加減で、青い目はくりっとしている。
ただ、なんかオーラっつか雰囲気が男……いや漢っていう感じがむんむんしてるのが残念だ。
「………どうした?」
おっと、考えながら見つめてたらしい。
「いや、なんでも無い。というかそろそろ……」
「……クックックック………あ?」
やっとこさ動き出した。
てか、自分がこいつの存在思い出した途端動きだした。
あのままずっと忘れてたらこいつ、永遠に動かなかったんだろうか……
「な、なんでまた人形が勝手に!?イ、イース!こいつらを何とかしろ!!」
再び慌てるヒュー、そして命令されたイースはと言うと
「う……あ、ま、魔王様!!」
命令無視して王様に駆け寄った。
いやぁ、元気な娘だ。
……そういや、この世界の王様は魔王だったんだよね、忘れてた。
「魔王様!お怪我はありませんか!?私が居ながらこんな事に……なんとお詫びしたらよいか…!!」
「あ、いやイース……なのか?別に怪我は無いしお前の責任じゃ無いだろう。」
「でも!!私は魔王様にもしもの………」
彼らは彼らでなんか大変らしいので、こちらはこちらで片付けますか。
「あー、あの人形全部壊した。」
「こ、こわ、壊した……だと?」
すっげー、人って驚くとここまで目が開くのか。
「そ、だから君を護る物はもう無いのさ。おとなしく降参しな。」
とりあえず一番楽な方法で。
まぁ、もうこいつには何も無いし素直に応じるでしょう。
「ク、クックック…降参?この俺が?いずれこの世界を支配するこのヒュー・スタム・ジューク様が?」
あ、なんかヤヴァイ。
目がイッちゃってる。
だれか救急車、黄色い救急車を呼んで!!
「ふざけるな!!俺にはまだこの召喚石がある!!」
そう言いながら奴は青っぽい石を取り出し、高々と掲げた。
やばい、忘れてた。
掲げられた石は鈍く青い光を放ち、その光が魔法陣を描いていく。
そして……
「ギャァァァァァ!!」
変な鳥みたいな魔獣が、天井を吹き飛ばしながら出現した。
体長は飛竜の三倍はある。
後ろにいる王様達は、皆さん揃って言葉を無くし、息を飲んでいる様子である。
「いけ!!奴らを消し飛ばせ!!」
ヒューは何のためらいも無く激戦区となっている大通りを攻撃するように魔獣に指示した。
魔獣は、口を開け、命令通り大通りに向かって攻撃するために突っ込んでいった。
自分はその様子をただ見守っているだけだった。
自分のその姿を見たヒューは、勝ち誇った表情で笑いながら自分に
「クックック、どうした?あれをほっとくと全員死ぬぞ?」
そう言ってきた。
多分こいつは、自分がなるべく人を殺したくないと思っているのを見越して、魔獣を倒すために真っ先にあっちに行くだろうと踏んでいるんだろう。
そんな奴の質問に対して自分は、無意識でかつ簡潔に答えた。
「誰も死なないさ。」
するとヒューが怪訝な顔をして、笑うのを止めた。
「なぜだ?」
今はそれには答えず、自分は事の成り行きを見守っている。
そして、魔獣はそろそろ大通りに突っ込もうとしているが、それでも自分は手を出さない。
そして、自分はここでヒューに回答を言い渡す。
「なぜかって?理由は簡単、至って簡単。」
そこで一旦言葉を区切る。
そして、魔獣がもう大通りに突っ込む直前、こからともなく、聞き慣れた吸血鬼の少女の叫びが聞こえた。
「トラップカード!『サンダーブレイク』!!」
その直後、自分は言葉の続きを喋る。
「自分のかわいい弟子達が待機しているからさ。」
鳥型の魔獣は雷にうたれ、そして消滅した。
「………は?」
ヒューは魔獣が一瞬で消滅したのが信じられないのか、口を死にかけの出目金みたくパクパクさせている。
「な、なぜだ!?なぜ魔獣が!?まさか報告にあった魔獣を一瞬で消す魔法が本当にあるのか!?」
めっちゃぱにくっている。
だがこれは、なんかヤバイ。
肌になんかぴりぴりした物をかんじる。
「なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ!?そうか一体なら少ないのか!?ならもっとたくさんの魔獣を!!たくさんたくさんたくさんの魔獣!!」
狂ったようにヒューが叫び、あたり一面が魔法陣だらけになった。
そして…
「「「ギュルェェェェェ!!」」」
なんとも言えない叫びと共に、少なくとも確認できる限りでは八体の魔獣が出現した。
「全部!!全部壊してしまえ!!この世界は俺の物だ!!俺の!俺の所有物だ!!全員俺に平伏すがいい!!」
ヒューがそう叫ぶと、魔獣は全部大通り目掛けて攻撃しにいった。
「ちょっ!大丈夫なのか!?」
「この数はいくらお弟子さんでも無理じゃ……」
後ろからは王様とイースちゃんが自分に話しかけてきた。
しかし、自分は余裕しゃくしゃくで。
「大丈夫大丈夫。見てなって。」
そう言った瞬間、やけに透るお転婆な姫様の声が聞こえた。
「トラップカード!『聖なるバリアーミラーフォース』!!」
そう叫んだ瞬間、魔獣の一体が壁にぶつかった。
そして
ドガァッ!
光が周りの魔獣もろともその魔獣を吹き飛ばした。
だがまだ魔獣は三体いる。
少し遠くて攻撃が当たらなかったようだ。
だが即座にその三体がまとまっているところに近付く小さな影が一つ。
何を隠そう、ムー君である。
ムー君は自分に気付いたのか、こちらに手を振っている。
それに対して自分も手を振り返事をする。
案外余裕っぽいな、彼。
まぁあの中で一番自分も驚きのカードを使えたし、余裕の訳もわかる気はするが。
そして、自分の返事を確認(?)したらすぐに彼は魔獣に向き直った。
そしてやったのが…
「マジックカード!『滅びの炸裂疾風弾《バーストストリーム》』!!」
ドゴォォォ!!
ムー君から放たれた白い光線が三体の魔獣を一瞬で焼き払った。
いやぁ、生で見るとすげーなバーストストリーム。
海馬が夢中になるのもわかる気がする。
仕事を終えたムー君はパタパタと姫達のいるであろう方向へと帰っていった。
かくして、エリザとムー君の活躍により全ての魔獣は殲滅された。
あと残りは……
「また魔獣がぁぁ!!魔力が足りない足りない足りない足りない足りないぃぃぃ!!」
この気違いだけである。
奴のもっている召喚石は、いまや完全なる緑色。
魔力を入れて青いになるならもう魔力は無いのだろう。
しかし、魔力が無いからって油断は出来ない。
こーゆー奴は最後に何やらかすかわからないからね。
とりあえず、召喚石を奪おうとしたその時。
「あはっ!!そうだ!!俺を使えばいいんだ!!」
そう言いながら、奴は自分の額に石をあてはじめた。
すると、青い気味の悪い触手みたいなのがヒューの体に巻き付いていった。
奴の足元には魔獣召喚の時と同じような魔法陣が浮かび上がっている。
「俺に力を!もっと強く!!誰よりも強い力を!!」
その言葉を最後に奴は、全てを触手に包まれた。
そして、その触手の塊から青い光がほとばしりはじめた。
「やばっ!!」
そう思ったが、時すでに遅く、光が収まった時にはそこには巨大な生物がいた。
山羊の頭を持つ、まさに自分が知る“悪魔”がそこにはいた。
「ヴ、ヴォォォォォ!!全ては俺の物だ!!全ては俺の所有物だ!!」
そう叫びながら、奴は暴れはじめた。
城を壊し、街を潰して暴れだした。
もはや暴走、それしか言えない。
奴は他の魔獣と同じように大通りの方に向かい歩きはじめた。
だが、いまや大通りにいた兵士達は皆、敵味方関係無く逃げ回っている。
そして、悪魔に近付く一頭の飛竜。
多分、エリザ達の飛竜だろうが…
…ヤバイ。
これはいくら近衛隊もヤバイ。
この距離からわかる禍々しい邪悪な気。
あれはマトモに太刀打ち出来る相手では無い。
そう思った時にはすでに体が動き初めていた。
「まて!!お前あいつに挑むつもりか!?」
「いくらなんでも無茶です!!」
王様とイースちゃんが息もピッタリに止めてくれた。
だが、行かない訳にはいかない。
「大丈夫だ、ぶった切ってくるだけだ。」
そう言って、自分は足に気を送り、壊れた壁から一気にヒューの元に近付いた。
そして、一護に手を添え、一気に
「キエェェェェ!!」
ズバッ!!
奇声と共に居合の要領で真っ二つにした。
そして決め言葉。
「また、つまらぬ物を切ってしまった…。」
ズドォン!
ちょうど良いタイミングで真っ二つになった悪魔がたおれた。
一護をおさめ、ゆっくりと辺りを見回す。
自分は大通りのど真ん中で、一人立ちすくんでいた。
周りからは、いろんな兵士達の視線がビシバシと……
まぁ、当然だよね。
あんなんぶった切ったんだもん、注目されて当然だ。
そして、いやーな沈黙がしばらく続いたが、すぐに
「「「「「ワァァァァァァ!!!」」」」」
大きな歓声が鳴り響いた。
もはや敵味方関係無く喜んでいる。
そして、目の前に一匹の飛竜が着地した。
そして、そこから誰か降りてきたが、自分にはそこらへんの記憶が無い。
多分、向かえが来た事で気が緩んだからだろうが。
自分はそこで意識を手放した。
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