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魔法少女リリカルなのはA's The Awakening

作者:迅ーJINー
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プロローグ

 
前書き
 Re:make! 

 
 蒸し暑くなり、雨が増えてくる梅雨。そんな中、とある田舎の豪邸のような家で、少女の絶叫が響き渡る。

「あーん、なんでそこで終わるんよそこでぇぇぇえええっ!」

 車椅子に座った一人の少女がテレビを見ながら頭を抱えていた。傍らのテーブルにはみかんの皮が山積している。

「むー、しかしこれはあれやな、製作者のヒキがうまいってことやな。あーでも何か腹立つ!……まぁええわ、もうそろそろ寝よ……ん?」

 すると突然、少女の傍らに置いてあった、鎖で閉じられた黒い本が宙に浮き上がる。

「え、な、なんや、これ……?」

 そして同時に暗い紫の光が部屋中に満ちた時、少女の家に電話のコール音が鳴り響いた。彼女はまるで「それ」から逃げるように電話へと急ぐ。もぬけの殻となった部屋には、一体いつどこから現れたのか、黒いアンダーウェアのみを身につけた女性が二人、少女が一人、青年が一人、呆然と立ち尽くしていた。



 そんな中、じめっとして暑い空気ながらも雨は降っておらず、深夜になれども人の賑わいはやまない繁華街の中で、携帯片手に歩く青年がいた。

「もしもし……あぁ、兄貴の竜二や。久しぶりやな……って、そっちは覚えてへんか。生まれてすぐ引き離されたもんな」

 その青年の名前は、八神竜二。関西訛りの残る話口調だが、声質が優しさを感じさせるからか、それとも単に落ち着いているだけか、あまり荒っぽさは感じられない。

「んで、そっちはどうよ?うまいことやってるか?……そかそか」

 彼の服装は、白の半袖シャツに黒のジーンズ。シャツの裾はズボンから出しており、第一ボタンだけ開けている。

「ん?家族が増えた?ペットでも飼うたんか?……え?違う?」

 また、ジーンズの尻ポケットから、革製の長財布が顔をのぞかせる。靴は白と青のスニーカーで、使い込んだ靴特有の汚れが目立つ。

「そうか……ま、ええんやないか。独りやなくなったってことやねんし。仲良うやってるか?」

 顔つきは整っているのだが、目まで伸びた前髪のおかげで表情は見えない。染めたであろう金髪を首筋まで伸ばしている。

「うんうん、ええこっちゃ。あぁそうそう。こっちがようやく片付いたからそっち行けるようになったんで、近い内に行くわ」

 そう言って彼は笑う。小さく、しかし確かに楽しそうな笑顔。

「それと、忘れてへんよ。誕生日おめでとう、はやて」

 そう告げ、一言二言残して通話を切る。

「さぁてと……しっかしまぁ、帰る手段がないとはいえ、よぉこんだけの人がおるもんやなぁ」

 彼は溜め息混じりに呟き、左手の腕時計を見る。

「ほなま、そろそろ帰って準備するか……しかし腹減ったのぉ……」

 そんな彼の胸元からは皮紐で提げられたシルバークロスが覗く。その中心にはルビーのように赤く、かつガラスのような透明感を持つ宝石がはめ込まれているが、その宝石が一瞬光ったように映ったのは、周りの光が反射したからだろうか。彼は財布を確認しながら歩き、オレンジ色の看板を掲げる牛丼屋へと入っていった。



 それから数日後、深夜の東名高速。一人の青年が、シルバーのスポーツワゴンを走らせていた。あまり焦っているような様子はなく、高速道路の流れに乗ってカーナビ任せのドライブ、といったところだろうか。彼の服装は、グレーのジャケットに黒いワイシャツ、青いジーンズに茶色のスニーカー。開けられた胸元には相変わらずシルバークロスのチョーカーが、そしてジャケットの胸ポケットには小さいシルバーチェーンが下げられている。腰にもシルバーチェーンが巻かれているのは、財布から伸びているのか。

「長距離は久しぶりやからなぁ……ちとしんどいか」
『大丈夫ですか?』
「まぁいうほどやないけどな。しかしこれくらいのペースやと、まだまだかかりそうやなぁ……」

 乗っているのは彼一人しかいないのに、男女二人の声が車内に響く。その声は、彼の胸元に提げられているクロスのシルバーネックレスから発せられているらしく、声からすると大人の女性のようだ。また、カーステレオからは彼がセレクトしたのであろう疾走感のあるヘヴィメタルが流れている。

『仕方ありませんよ。大阪から海鳴市って、距離が相当ありますし』
「まぁせやな。しかし、闇の書ってなぁ……おとぎ話やないねんし」
『この世界に存在する以上は仕方ありません。決して放っておけるものではないのですから、私たちで処理しなければ』
「お前の話が本当なら、な。まぁ実物は着いてから拝ませてもらおうか。とりあえず……」

 そういって彼は途中で進路を変え、サービスエリアに入る。

「そろそろ寝ぇへんとな。眠い」
『居眠り運転は事故の元ですからね。ゆっくり休んでください』
「そうするわ……あかんマジでヤバイ」

 適当な場所に車を止めてエンジンをストップさせ、ドライバーシートを倒して目を瞑る青年。その瞼には、幼い頃に別れた少女の姿を思い浮かべながら。 
 

 
後書き
 加筆修正版かつストーリーは変えていないので、そんなに投稿ペースが落ちることは多分ないかと。今度こそ週一更新を目指します。 
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