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魔法少女と魔術少女~あかいあくまの奮闘記~

作者:BLADE
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第1話 「舞い降りた少女」

 
前書き
初めまして、BLADEと申します。
長々と前書きを書くのもアレなので、詳しい自己紹介等は後書きの方でさせて頂きます。
それでは、どうぞ。 

 
気が付いたとき、私は空に居た。


この世に存在する限り、私達は大きな物に惹かれる性質がある。
例えば、小さい頃に自分の手を優しく包み込んだ父の手。
短い間ではあったが、自分を支えてくれたパートナーである『キザな弓兵』の背中でもいい。
真っ直ぐで有るが故に歪な、愛する少年の意志もそうだろう。
個人差は有るだろうが、人間として生きている以上は誰もが一度は経験した事が有るのではないだろうか。
そして、大きな物に惹かれる性質、というのは人間以外にも見られる現象だ。
多岐に渡る動植物も同様の性質がある。
人間も生物の中の一種で有る為、あまり不思議な事では無いだろう。
だが、この性質は『生物』という枠の外にも存在する。

『引力』と呼ばれる力である。

物質にも他の物を惹き付ける力が有るのだ。
それは他愛のない大きさであるなら感じる事の無い物だろう。

だが、それが規格外の大きさの物ならどうだろう?
人類の知りうる、最も巨大な物資は『星』である。
我々の住む、この地球にも力は存在する。
この惑星が万物に与える力。
我々、人類が定義する所の『重力』だ。
この途方もない大きさの物資が与える魅力には、我々、動植物も魅了させられざるを得ない。。
元を辿れば、動植物も物資も同じ『原子』で構成されている為、原子レベルで課せられた宿命の様なものだろう。

さて、話が長くなったわね。

つまり、今も私は地球の魅力にメロメロだ。
それはもうゾッコンな位に。
けど、この魅力に抗う為の足場なんて、空中には存在しないし、着地を任せられる相棒も居ない。
質量制御も気流操作も間に合わない。

眼下に広がるビルの山。
このまま落ちれば、目の前のビルの屋上が落下地点になる。
地上に向かう落下コースなら、何らかの緩和策が取れただろう。
足りない、時間が足りない。
「冗談じゃないわ、こんな所で死ねないわよ」

衝撃を殺せないなら、衝撃に耐えるしかない。
アイツの十八番でもある強化で、身体を補強する。
筋肉と骨、後は各部関節を強化すれば十分な筈だ。
同時に左腕の刻印に魔力を供給、ビルの屋上を爆撃する。
生じた爆風で、少しでも衝撃を緩和出来れば良いのだが……。

「間に合え―――ッ」

ビルはもう眼と鼻の先だ。
魔力を込めた左腕刻印より魔力弾を放つ。
着弾――、予定通り爆発。
落下速度は多少落ちた、衝撃に備える。
着地――、強化した身体の全身のバネを使い衝撃を逃がす。
落下による位置エネルギーを運動エネルギーに変換。
私は前転をしてそのまま倒れこんだ。

「全く、優雅さの欠片もないわね」
全身を確認する。
髪は乱れ、爆撃と前転で服は煤まみれになっている。

―――そこで気が付く。

服が妙に大きい。
大きいというかサイズが合っていない。
いつもの服を来ていた筈だが、首は埋まっているし、袖からは手が出ていない。
「――――まさか……ね」
立ち上がって、確認をする。

――――ストン。

と音がした気がした。
「え゛?」
嫌な予感がする上、なんとなく予想は出来ているが恐る恐る下を見てみる。
スカートが落ちていた。
つい先程まで自分の履いていた物だ。

……………。
とりあえず、もう一度履いてみる。

――――ストン。

また、そんな音が聞こえた気がした。
「驚いた………、ここまで急激に痩せれるなんて」

誰ともなしに呟いて、スカートを拾い上げる。

――――スルリ。

今度は何かが滑り落ちた音だ。
何が落ちたのだろう?
下を見てみる事にした。

下着が落ちていた。
つい先程まで自分の履いていた物だ。

――落ち着くのよ遠坂凛。
遠坂たる者、常に優雅で在るべし。
優雅に、そして冷静に状況を確認するのよ。

服は妙にサイズが大きい。
スカートはサイズが合わず、履けない。
下着はずり落ちる。
そう言えば、妙に視線が低い気がする。

そうか―――、分かったわ!
謎は全て解けた!



私はうっかり魔術師、遠坂凛。
こっ、恋人の……士…郎が処刑されると聞いて、並行世界に彼を飛ばしたわ。
けどその時、士郎を包み込んだ光が私も包み込んでいる事に気が付かなかったの。
次の瞬間、目が覚めたら空の上に居たわ。
命からがらビルに降りた私が自分の身体を見てみると………。

体が縮んでしまっていた!!



「って………、なに考えてるんだろ、私」
第一、うっかり魔術師って何よ。
まぁ、認めたくは無いが自覚症状が無い訳でもないというのが痛い所ではある。
気を取り直して、ずり落ちたままの下着を履き直そうとするが、その前に全身を素早く確認する。
うーん、外見から推定される年齢は約十才といった所。
起伏に乏しい子どもの体型では、服のサイズが合わないのも頷ける。
「とにかく、現状の整理は後回しかな」
下着を拾い直そうとした所で、周囲に鳴り響く轟音に気が付いた。
雷でも鳴っているのか、空中が明滅している。
「嫌だなぁ、なんだってこんな場所に降りたとたん鳴り出すのよ」
そんな事を言いながら、音の方向を見つめる私。
そこで、ふとした疑問が生まれる。
「雷……横向きに落ちてる様に見えるんだけど、眼の錯覚かしら?」
自分の目の前で鳴り響く稲妻は、何故か横向きに落ちていた。
始めは単なる錯覚と思っていたのだが、その結論は直後の事態に完全否定される。
「嘘……でしょ。あれ………完全に下から上に落ちてる」
その上、槍の様な稲妻が縦横無尽に飛び交うなか、周囲を翔る光点が二つ見えた。
挙げ句の果てには、空中で爆発までしている。
「おかしいわ。仮に私がアレに巻き込まれていたとして、この世界には魔術が無い筈。どういう事?」
視力を魔力で水増しし、当該空間を見据える。
ますますアイツみたいだ、と思いながら、強化により鮮明になっていく視界の先を睨む。

そこには、珍妙な光景が広がっていた。
光点の片割れ―――――さながら雷を手にしている様に錯覚させる光輝く大鎌。
それを手にする、かなり際どい服を着た少女。
いくらマントが有るとはいえ、アレって一歩間違えたら犯罪モノだと思う。
もう一つの光点はいくらかマシ……とは言え、物騒である事に変わりはない。
真紅の衣を纏った少女。
こちらは、何を壊すのか用途が分からないハンマーを振るっている。
あろう事か、この両者は空を飛び回って戦闘しているらしい。

そう、幼き子どもの憧れである『魔法少女』が具現したかの如く。
「頭が痛くなってくるわね……全く」
あの様な年端もいかない少女達が、雷を飛ばし、空を舞う。
協会に知らせれば、意気揚々と確保するであろう存在だ。
当然、私自身も興味が無いと言えば嘘になる。
「ま、今は諦めるしかないか。やる事は山積みかもしれないし」
そう、今は他にやる事が有る。
現状の確認、拠点の確保、士郎の捜索―――、全く大忙しだ。

下着を履き直し、服の袖を引き裂く。
急場凌ぎだが仕方がない。
下着ごとスカートを袖で腰にキツく巻きつける。
これで、暫くは保ってくれる筈だ。
「後で服を探さないと……」

踵を返して、ビルの昇降口に向き直すとそこには鎧を纏った女性が立っていた。
外人なのだろう、とても整った面立ちをしている。
モデルをしていると言っても通じそうな人だ。
だが、鎧のデザインとは裏腹、不思議な長剣が右手には握られている。
機械と剣が絶妙なバランスで調和した優美なデザインだった。
士郎が見れば、さぞや喜ぶ事だろう。
視線だけで相手を圧倒しそうな鋭い目に、私の身体は意図せぬ所で臨戦態勢を取っていた。
しかし、さっきから物騒な物ばかり見ている。
まるで戦争でも起こっているかの様な世界ね。

だが、この少女と化してしまった彼女も物騒な世界で、命のやり取りを行っていた事実がある。
故に全く人の事を言えないのだが、だからこそ少女には分かっていた。

――――この女は危険だ。

互いに相手を警戒しながら立ち尽くす。

「シャマル、私だ。かなり大きい反応を発見した。やり過ぎない程度に頼む」
先に口を開いたのは女性の方だった。
だが、それは私に向けられた言葉ではないらしい。
これだけ相手を威嚇しておいて、失礼な奴だ。
仕方がないので、私から動いてやろう。


「反応? 一体なんのこ―――と!?」
一体なんの事なのよ?
そう言い終える前に、言いようもない不快感が私の五体を貫いた。
それは何か、大事な物が吸い取られている様な感覚を覚えさせる物だった
た。
何が起こったのだろう?
私には何がなにやら、全く分からない。
ただ、その感覚は身体の中から胸にかけている物という事は分かった。
原因を知りたい一心で胸元を見る。
気付けば、私の胸には腕が生えていた。
「何………なのよ。こ………れ」



自分の身に何故、この様な事が起きているのかも分からぬまま 、私の意識はそこで途切れた。 
 

 
後書き
改めまして、BLADEと申します。
にじふぁんの方ではSaberと言う名で活動していました。
ご存じの方はお久し振りです。
そうでない方は初めまして。
以後、よろしくお願いいたします。

私はよくある「にじふぁん撤退組」の内の一人のなのですが、本作はこちらのサイトが初めての投稿になります。
まぁ「だからどうした」と言われれば、何も言えないのですが(笑)

本当はもう暫くの間は投稿しないつもりだったのですが、スマホの方での添削作業中に誤って公開してしまっていた様だったので、急遽、公開する事にした次第です。

何はともあれ、これから不定期ながら更新していく所存ですので、今後とも末長くよろしくお願いいたします。 
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