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なりたくないけどチートな勇者

作者:南師
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14*よくある使えない人

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「うらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ただ今自分達は敵の本拠地の……え~と…なんつったけ………とりあえず敵の国の首都に当たるとこを攻めています。
正解には砦で王都に要請した援軍が戦ってる、というか門を破ろうとしている所を2キロくらい離れた小高い丘にて、高見の見物となっているのですが…

「う~ん、なんというカオス。」

ぶっちゃけて言おう、援軍使えねぇ。

素人目で見ても解る、策もなにもない、ただの神風特攻隊よろしくな感じに数でごり押しなだけなんだもん。
やっぱりエリザの言うとおり、援軍として来たあの将軍は無能だったのか。

「……あれは、兵が無駄に死ぬだけだ。」

激しく同意、略して禿同。

「だから私達が行けばもっと速やかに都を落とせる上被害も最小限ですむのというに…」

そういいながら、苦虫をかみ砕いた後に青虫を煎じて飲んだような顔をするエリザ。
きっとお茶請けは芋虫だな。

と、話がそれた。
とりあえず、今指揮をとっているのは無能な将軍であり、彼は援軍として来た全ての兵士をお国のために特攻させている。
対する自分達はその様子をただ見守るだけである。

あさつまえ、エリザが考えたここを落とすための色々な作戦も全てパーになってしまった。

真に遺憾であります。

ではなぜ、エリザの作戦を全て捨て、しかも自分達はおいてきぼりで馬鹿が特攻命令を下しているのか。
それを説明するために、少し時間を遡ってみようではないか。


多分、誰もが予想はつくだろうけど…


*********←☆

さてさて、ただ今ここは会議室。
そこで例の如く会議が行われています。

なぜかと言うと、自分による「日本の諺・慣用句講座』を終わらせ一息ついた所に援軍がやってきたので今後の予定、もとい作戦を話し合っているのですが……

「だから!そんな回りくどい事をやるより正面から行くのが一番早いし確実です!!」

「阿呆か!策も無しにそんなことしてみろ!兵が無駄に死ぬだけだぞ!!」

「策ならあります!貴女様よりももっと完璧なのが!」

「ならそれを言ってみろ!!」

……なんでこいつがいんのさ。

いままさに言い争っていらっしゃるのは我らが姫、エリザと彼女に能無し呼ばわりされた阿呆将軍でございます。
ちなみに自分はまたもやハイド。

さて、なぜ彼がいるかというと、援軍の指揮官だからでございます。

正直、いらねぇ…

だってこいつ、ただ全員で門を攻めて一気に城を落とすのが一番と主張して聞かないんだもん。

エリザとしては、まず敵に見える所に堂々と兵士達が待機する。
そしてそちらに意識が向いてるうちに自分がハイドで侵入して司令塔付近で騒ぎを起こす、その混乱の裏で隠密部隊が正門を開き歩兵で一気に攻める。
そして敵の後ろから飛竜を使い挟み打ち。

これが一番楽な方法だと彼女は言っている。

「つっ!ですがそもそも!貴女様の考える作戦を実行出来る程隠密活動がうまい者などここにいません!そんな状況でその作戦を行うよりも私の策に乗る方がいいに決まっています!!」

「居るから言っているこのたわけ!ナルミ、出てこい!」

そう言われハイドを解く自分。

「んなっ!貴様どこから来た!?」

「ほれ、この姿を消す術を持つこいつなら問題あるまい。ちなみに最初からいたぞ。」

「っつ…しかし飛竜を後ろに移動させるのはどうしますか!?あんなに巨大な大群、すぐに見つかりますよ!?」

なんとしても突撃さしたい将軍。
ぶっちゃけこれだけ反対する理由はエリザの作戦だと彼の出番がないからだろう。
出番がない=活躍できない=武勲をたてれないだからね。
何たって最初に自分が出るって主張していたくらいだから、よほど活躍したいんだろう。

「あぁ!?飛竜もこいつが処理できるぞ。」

そう言われながらエリザに親指で刺される自分。
やめなさい、行儀悪い。

「ナルミ、見せてやれ。」

「あ~、はいはい、んと……スモールライト~。」

某青狸風にポケットから出すは懐中電灯(手回し充電式)、中学の技術の授業で造った代物だ。
それのスイッチを入れ、光を机に当てる。

「な…ん……」

すると手の平サイズまで縮む机、おまけに言葉を無くした将軍がついてきた。

「元にもすぐ戻せますよ。」

そういいながらもっかい光を当てる自分。
机はもちろん元通り。

「どうだ?まだなにか文句はあるか?では、お前の策がどんなものかか教えてくれないか。」

勝ち誇った顔のエリザ。

「つっ……解りましたよ!!」

そう言いながら机を叩いて出ていく将軍。
顔は赤く、怒りが滲み出ている。
ぶっちゃけキモい。

「ふんっ!欲にまみれた能無しが。」

そう言いながら残った人達に作戦を詳しく伝えるエリザ。

あれ?
最初より将軍の出番少なくなった。
ご愁傷様、そしてざまぁ。




********-☆

次の日、昼頃に出発して目的地に着いた自分達は、作戦のための準備を進めていた。

しかし、自分はまたも飛竜酔いでダウン。
そのため、自分は横になって休んでいた。
その横ではエリザが隠密部隊と自分に作戦の最終確認をしている。

その時、事件が起こった。

「突撃ー!!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

「な、何だ!?」

地響きと共に兵士達の雄叫びがこだまする。
それに驚き飛び出すエリザ。
それに追随して飛び出す自分。
ついでに胃からも何か飛び出そうとしてきたが、それはなんとか持ちこたえた。

「おい!これはどういう事だ!?」

外に出ると頭が二つの変な生き物に跨がった将軍と、彼を怒鳴りつけるエリザの姿が。
……あれ、馬か?牙生えてるぞ?

「どういうもなにも、援軍は私の指揮下にあります。だから私は私が最善だと思う方法を私の指揮下の兵だけで進めたまでです。」

無茶苦茶だ、最高指揮官はエリザなのに。
こいつ、なにやってるか分かってんのか?

「おまえ!これは明らかな反逆だぞ!!」

「もう一度言いますが、援軍は私の指揮下にあります。私の兵をどう動かすかは私の自由です。それに…」

そして、一拍置いて彼は言った。

「最終的に功績を残せれば誰も文句を言いますまい。」

そう言い放ち、彼は駆け出した。

要するに何かしら功績を残したい。
そのためにはエリザの作戦に乗る訳にはいかない。
なぜなら活躍できないから。
だから無断で無理矢理部下達を特攻させる暴挙にでた、と。

………脳みそ何で出来てんだ、あの単細胞。

「っつ~!おい!今居る全員ここに集めろ!各隊毎に残った戦力を確認して私に報告しろ!!」

そう叫びながら指示を出すエリザ。
かなり怒っているのが後ろ姿だけでも見て取れる。




あぁ、なんとゆうか…

面倒なことになってしまった…

*********→☆

以上が、今までにあった事である。
はっきり言おう、非常に迷惑である。

現在エリザのもとにいる兵士は、砦に出向いた時の面子、それに一部前線へと行かなかった、もといそんなこと聞いてませんな援軍の方々がいくつかいる。
あとはここまで皆を運んでくれた飛竜部隊の方々。
他は全部あっちがわ。

ぶっちゃけここに残ってる数の二倍はあっちにいっちゃってる。

ちなみに後からきた飛竜部隊の方々の半分は皆、砦で捕虜を運ぶためにいなくなりました。

「……先生、なんとかなりませんか?」

途方に暮れている自分の所にやってきたのはシルバちゃん。
ちょっと遠慮がちに聞いてきた。

「ん~、敵だけを倒すような都合の良いものは生憎もってなくて…」

そう、これが一番重要なのだ。
確かにこれは戦争で、敵を倒すのが一番の目的だ。

しかし、敵を一掃出来るからって味方まで巻き込んで吹き飛ばすなんて外道な行為、自分にはできない。

「そう、ですよね…」

そういって落ち込むシルバちゃん。
とりあえず、頭を撫でて慰めておこう。

「大丈夫、なんとかなるさ。」

「……ふぁ………」

……また風邪か?
真っ赤だぞ。

と、シルバちゃんを気遣いつつ頭を撫でていると

「だー!ナルミ!どうにかならんか!?」

さっきよりもさらに怒ってエリザが登場。

「味方も一緒に巻き込んでしまうから今自分が出るのはちょっと…」

とりあえず、さっきと同じような事をいっておく。

「そうか…やっぱりな…」

そう言って考えこむエリザ。
でもイライラしてか、右足はさっきから地面に穴を掘っている。

そしてしばらくして語り出した。

「さっき出遅れて残った兵に聞いたのだが、あの馬鹿、私が正面から突撃するように指示を変更させたと今朝になって部下に言い出したらしいのだ。それを聞いて多少怪しく思ったらしいのだが、将軍の指示に従わない訳にもいかずに皆出ていったらしいのだ。」

確かに、あいつならやりかねん。
つかこれ、完全に軍事裁判ものでない?

「だからあんな犯罪者、死んでもいい。ナルミ、奴共々敵を蹴散らせ。」

いやいやいや。

「まて、他の兵士はどうなる。ただ巻き込まれただけだぞ。」

「……味方の兵以外、奴共々敵を蹴散らせ。」

「うん、それ無理。」

ぶっちゃけ無理難題。
それが出来たらしてるっつーの。

「やっぱり無理か……はぁ、全く、あれでは門を壊せても城を落とせるだけの兵力が残らんと言うのに。門が開いても、ここに残った兵だけではまともに戦うだけの数がないし……撤退するか……。」

やっぱり、ねぇ。
見た感じ、今こっち残ってる兵士よりもあちらので戦ってる敵兵士の方が多いだろう。
しかも、敵は中にもっといるはずである。

まともにやって勝てるかっつーの。
ここは戦略的撤退をして、もう一度兵士を連れてこなければ。
と、すっかりネガティブな考えをしている自分に、シルバちゃんが一言。

「……いっそ、味方も巻き込んであそこにムルスンを数匹ほうり込めば……」

なによムルスンって。

「ムルスンって、何?」

「あ、ムルスンって言うのは魔物の一種で、草食なんですけど鳴き声を聞くと錯乱して下手すると精神が崩壊する恐ろしい生き物です。」

下手に刺激しなければ鳴かないんですけどね、とシルバちゃんが丁寧に教えてくれた。
錯乱する鳴き声、ね。

「…シルバ、ムルスンは手なずけるのが難しい上にとても危険でしかも数が少ない。出来るはず無いだろう。出来たらとっくに使ってる。」

「ハハハ……わかってますけど私の思い付く味方が傷付かない最善の方法がこれで……すいません。」

「仕方がない、撤退す「シルバちゃんの意見、採用」……は?」

そう言いながら自分は、準備を始める。

「せ、先生?まさかムルスンを手なずけててそれがいまいるんですか!?」

まずは針金と……ピンポン球でいいや、をポケットから取り出す。
2つづつの2セット。

「まさか、んなはずないべ。ムルスンって生き物の存在すら知らんかったのに。」

針金の先っちょにピンポン球を突き刺す。
そしてくっつける。
ちなみに刺すのとくっつけるのはキリとア○ンアルファで。

「じゃあどうやって……」

お気に入りのマイヘッドフォンの耳に付ける部分の上に貼っつけて完成。
自分は形から入るタイプなのです。

「ん~?どうやってって……」

最後に、端子を…何だっけ……とりあえずウォークマン、パソコンにさして充電するあいつに取り付けてこれで完璧。
曲はもちろんメ○ト!初○ミクは自分の嫁さ!!

「これからやるさ。」

そういいながら、ヘッドフォンをして、耳の部分に手をそえる。

そして、

「熱くなんなってオッサン…。年寄りはもう寝る時間だぜク~ックック…。自分の子守歌でも聴いて…イッちまいな…!」

「「「「ギャァァァァァ!!!!」」」」

叫びの合唱の後、門の近くには気絶した兵士達。
敵味方いりみだれて全員仲良く痙攣しながらおねんねしてます。
もちろん、門の上や後ろにも攻撃は行き届いております。

「な……何をやったのだ?ナルミ。」

「奴ら個人個人の最も嫌な周波音を直接全員の頭に発信してやった。」

「どうゆう事ですか?」

あー、発信とか周波音とかわかんないか。

「よするに、嫌な音を際限無く頭の中からずっと大音量で響き渡らせたの。」

「……恐ろしいな、これは。」

確かに、さすがク○ル曹長だ。
あんな嫌な奴にはなりたくないけど。

「…先生が味方で、本当によかったです。」

「本当だな、下手したら一人で国を落とせるな。」

「あ、これが“一騎当千”ですか!」

「おお!そうかこれが一騎当千か!」

おー、よく覚えてるねぇ、と、ちがうちがう。

「…で、どうする?このまま突っ込む?撤退する?」

「おぉ、そうだったな。……ナルミ、あそこにいた兵士は皆死んだのか?」

「いや、多分気絶。上に乗られたり壁から落ちたりして死んでるのも居るかも知れないが、基本気絶。」

「そうか、よし!!各隊毎に味方の回収と敵の殲滅をしてくれ!門は無理に壊さんでも良い、とゆうか壊すな!」

その号令とともに動き出す兵士達。
てか彼らの好奇の視線が痛い、やめてください本当に。

「……なんで門を壊さないの?」

その視線から逃げたいので、エリザに話しをかけてみる。
根本的解決にはなってないが。

「混乱が起きずらくなるからだ。司令塔がいきなりやられた上に閉まっていた門が急に開いた方が奴らとしては最初から開いている所になだれ込むよりもつらい所があるだろう?」

む、確かに。
司令塔がやられたとこに予想外の精神的打撃を与えるのがこの子の目的か。

「エリザ、恐ろしいこ!」

「は?」

「あ、いやすまんつい。」

ほんとに無意識で声が出てしまった。

「姫様、将軍はどうするんですか?」

忘れてた、馬鹿将軍の存在。
つか、いまさらだけど名前しらねぇ。

「あんなやつ、縛り首だ。いや、いっそさっきのナルミがやった奴を延々聞かせるか…」

なにをのたまうこの娘。

「やだよ、主に自分が。なぜにずっと奴のために能力つかわなならんのだ。だったらいっそ平の兵士から再出発してもらえ。」

「お、いいな。よし、奴にはもう一度雑用から始めて貰おう。」

まじで?思い付き言っただけだよ自分。

「まぁ生きてたらの話しだがな。ちなみに、これは最高指揮官からとしての一時的な罰であって王都へ戻ったら今度は軍事裁判にかけられた後に正式な罰が決まる。まぁ間違いなく極刑だろうが。」

あぁそうなん。
ぶっちゃけ奴の末路なんて興味無いです。

そんなこんなをしてるうちに、兵士の回収は終わったようだ。
ちなみに将軍は生きてたっぽい。

回収しに行った全員が戻ってきたのを確認して、エリザが号令をかけた。

「よし、いったん砦に戻るぞ!」

それに従い竜乗る兵士達。

「先生、いきましょう。」

「……ヤダ。」

竜は、酔う。
あいつらまるでジェットコースターなんだもん。
それに一時間近く乗ってごらん、死ねるから。

「…帰れませんよ?」

……ハァ。
仕方がないので渋々乗る事にした。
ついさっきも乗ったのに………





しかし、一つ不思議に思う事がある。

なんで奴らは魔獣を使わなかったのだろうか。

確かに逃げていった人達から魔獣は無意味だとか報告されてるかも知れないけど、それは普通、信じてもらえないのではないか。

信じて貰えたにしても全く使わなかったのはおかしい。自分なら真っ先に使って一人でも多く倒そうとするのに…

魔獣が切れたのか、召喚できる奴が捕まったのか……

どっちにしろ、ゲームとかではこうゆうのは何か裏があるからなぁ。

…まぁ、自分が考えてもしゃーないか。
所詮自分だしね。

せいぜい頭の片隅に置いておく程度にしときましょう。




「ナルミ!早くしろ!置いて行くぞ!」

「あー、ごめんごめん。」

とりあえず、今はこのトカゲの上で酔わないようにがんばろう。
それが今自分に出来る最善の策。

「よし、ではいくぞ!!」

え、ま、ちょ!
まだ心のじゅんびィ~~ヤァ!!!?


もう、竜なんて嫌い……。





ちなみに余談だが、このあと自分は。

「あーもう!なんでこんなことしちゃったかな!!」

ヘッドフォンに思いの外強くひっついた針金をとるのに悪戦苦闘していた。
しかもちょうどよく隙間に差し込んだからたちが悪い。


さらに言うと、はがし液の存在を思い出したのはその二時間後である。
形から入っていったあの時の自分を殴り殺したくなってきた。




……チクショー!!
 
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