なりたくないけどチートな勇者
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10*バーサーカーソウル
さてさて、自分の目の前には裕に60メートルはあろうかという巨大な門と壁がそびえ立っております。
何を隠そう、これこそ王都“グラディシア”の正門である。
「でっけー。すっげー。」
自分は馬車の窓からそれを見て、無意識に声をあげていた。
ついつい声に出してしまう、それくらいでかいのである。
「そうであろう、このグラディシアの都が出来て約7000年もの間に強化、拡張され続けた自慢の門と城壁だ。
ただでさえ国が自然の護りのある中でこの防壁、戦争になろうとも絶対にわが国は負ける事はない。
もっとも戦争などするつもりは無いがな。」
ちなみに自然の護りとは、この国の北は海で西と南は魔物の巣窟な険しい山脈、東は砂漠と完璧囲まれてるのだ。
しかも山には鉱石、海もあるし作物も育つというかなり恵まれた国らしい。
とかなんとか姫がご丁寧につらつら喋っていたらしいが、自分はそんなのミミクソほども聞いてなかった。
まぁいまはどーでもいいや。んなことよか。
「なぁ、ところですぐ王様に会いにいくんか?」
これよね、自分が今1番気になんの。
「…んー、すぐはむりかの……ゾーン爺、いつ出来る?」
「……明日の昼頃には出来ると思いますがの。」
つまり丸一日ほどかかると。
ちなみに、ゾーン爺さんは自分が風呂からあがった後にテレポートして連れてきた。姫いわく、一緒だといろいろうるさいから置いてきたとのこと。
……とてもかわいそうだ
しかも彼も一緒に行ったと城の方々は思っていたから捜されなかったらしく、下手したらマジで見付からずにいたかも知れなかったからなおかわいそうだ。
まぁとりあえず、この一日でサラっとこの世界のこと学んどきますか。
***********!☆
ツ・マ・ンネ♪
…スマン、錯乱した。
ただいま自分は王宮兵士宿舎四号棟の第三王女近衛隊男子部屋の自分のベッドの上にいる。
ちなみに漢字が多いのはご愛嬌だ。
さて、何がつまんないかというと
この世界の言語、ポノノ語だ。
全く英語見たいな文法なんよ、これが。
さらに文字は何処の落書きってくらい見た事ないし、やってらんねーよ。
余談だが自分、今までに英語で赤点三回とってる猛者です。
ちなみに今自分は先日、自称・神がくれた三冊のオマケ本のうち二冊、“和ポノノ事典”と“ポノノ和事典”を使って勉強しております。
“ポノノ”の部分に“英”を代入すると解りやすいと思います。
だぁー!!やめっ!もうやっ!
これ以上やると熱暴走の後に自爆する!主に頭が!
……いや、まだ30分もやってないんだけどね。
とりあえずポノノ語はあきたので、もう一冊のオマケ本、“地球料理大全”を読んでみましょう。
最初はそれこそ『何故にこんなもんが?』て思ったけど、結構これ必要だわ。
醤油の作り方からケーキまで、なんでも載ってるから味噌汁のみたくなっても自分で作れるし、何よりわかりやすい。
一家に一冊、“地球料理大全”!
………わかりやすいけど、興味無い。
今考えたら、食べたい時に使えばいいから、いま読まんでもいいやん。
…どうしよう、急に暇になった。
みんなは仕事でいないから遊べないし、ゲームや漫画はだいたいコンプリートしちゃったし……
……
………
…………お城の探険、行ってみるか。
**********ヽ☆
この城は広い、我が学校が10校、いやそれ以上入るほど広い。
しかも高い、東京タワーくらいあんでねって程高いところさえある。
ホグ○ーツ見たいなお城だと思えばいいであろう。
よーするにデカすぎるのだ。
だからといって城内迷子なんてお約束にはなりたくないため、1番近くの階段をのぼって1番上で景色を見ると言うミッションを遂行すると言う訳です。
馬鹿と煙りはなんとやらですね 、はい。
で、ただいま兵士宿舎の屋上にいます。
良い感じに夕焼けが眩しく、美しい町並みがよく映える。
…のだが。
なぁ、屋上ってこんなに屍屍累累としてるもんなん?
現在床には約30人程の兵士が転がっております。
一応息はあるっぽいけど。
そして、その兵士達が倒れてるなかに佇む影が一つ。
「……誰だおまえ。」
ダークレッドな髪を靡かせながら自分に気付き、聞いてきた。
背中には灰色の羽を持ち、獰猛な笑みを浮かべている。
右手の大剣が恐いです
「……………失礼しました。」
ペコリと一礼。
とりあえず危険と判断し、即座にUターン。
自分だって死にたくないもん、周りの兵士みたくなりたくないもん。
「まてよ、黒髪に黒眼なんて初めて見たんだ、興味持って当然だろ。
それにこの兵士達を見捨てて自分だけ逃げるなんて輩、根性叩き直してやんねぇとな。」
―ザンッ!
…………あっぶね!
なに!今日は雨の代わりに大剣が降ってくんの!?
つか完全に出口塞がれたよ!
「なぁ、なんでこいつら見捨てようとしたんだ?」
これがあれか、逃げようとして周りこまれた勇者の気分か。
「……いやぁ、これだけの数たった一人で倒したんなら一旦引いて仲間よんだほうが得策かなぁなんて……」
口から出まかせ嘘八百。
すると、赤髪さんはいきなり大声で笑い出した。
「…く、あっはっはっはっは!
確かにな!いやー初めてだ!逃げようとしておいてマトモな答え返したやつ!
気に入った!」
はぁ、ども。
しばらくひーひー言ってた赤髪さん。
しかし、その隙を見逃す程自分も愚かではない。
「……あい、きゃん、ふらい!」
とうっ!
端から見たらタ○フル使って頭がいっちゃったみたいな掛け声と共にダッシュで飛び降り、そのまま飛んだ。
イメージ的にはアトムな感じに。
ちなみに掛け声は気分だ。
このままとにかく逃げ出そう、そう自分は考えていた。
いたのだが…
「すっげー!おまえ羽無いのに飛べるのか!ますます気に入った!」
秒速で大剣掴んで追い掛けてきた。
…そうでしたね、あなたには羽があるんでしたね。
「まぁ待て、今ここで襲い掛かる程俺も愚かでは無い。
とりあえず、あそこの奴ら片付けんの手伝ってくれ。」
そう言いながら、屋上を指指す。
……相変わらず、この世界で自分に拒否権はなさそうだ。
それから10分くらい後
「…これ、片付けたって言うんすか?風邪ひきませんか?」
先程の兵士達は隅っこに寄せられてるだけである。完全放置プレー。
「大丈夫だ。これくらいで風邪なぞ引かれたら兵士としてやっていけない。」
それ、多分あなただけの常識です。
「でだ、おまえ何者だ?新しい兵士にしては服装が妙だし、そもそも種族はなんだ?」
……どーしよう。
ここで人間とか名誉顧問とかって暴露すると絶対メンドーなことになる。
自分の危険センサーがビンビンそれを感じてる。
「…………黙秘権を施行します。」
「…そうか、なら戦え!」
ハィ!?
「何故!?」
「ふっ、俺が戦いたいからだ。おまえがどんな答えを返そうが、ぶっちゃけ関係ない。さっきの奴らでは弱すぎて話しにならなかったが、おまえなら楽しめそうだ。」
おいっ!
なに、こいつ戦闘狂!?
「…もしかして、そこの兵士よけたのってそのため?」
「おう!」
うわっ!めっちゃ良い笑顔!
やだ、この子恐い!
どうにか打開策は…
「ちなみに逃げたら捜し出して毎日戦わせるからな。」
逃げ場なーし。
どうしよう………そだ!
「いやぁー、生憎自分は今武器を持ってないのでマトモに戦えないんすよー。
あー、残念残念。」
ふっふっふ、どうだこの秘策。
これで逃げられる。
この人も見た限り大剣1本しか持ってないし、武器を渡されてしまうことも無い。
「ん?じゃあそこに転がってる兵士の剣持ってこいよ。」
………秘策、失敗。
「…………じゃあ、使わして貰います。」
あきらめた自分はテキトーに剣を一方拝借した、70センチほどの両刃の洋剣。
「それじゃあ試合を始めようか。
良い試合になる事を期待している。」
そう言いながら奴は大剣を構え始めた。
なにが良い試合だこのヤロー。
馬鹿にしやがって。
ならこっちも考えがある。
「良い試合になる訳が無い!」
そう言いながら剣を右手に持ち、頭の上に上げ構えた。
「言うじゃねーか!」
そう言いながら奴は自分目掛けてかなりのスピードでかけてきて、切り掛かった。
それをバックステップでよけながら。
「おんどりゃあー!」
ステップの途中、それも空中から一気に突っ込む。
残像的なのを残しながら、ロケット噴射で。
「うおっ!」
叫びながら奴は右に転がり、回避する。
ちっ!
カイ現象を避けるとは、やるな。
だが甘い!
即座に転がってった方向を向き、覚醒必殺を出す事にする。
「駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目、駄目ー!!」
ドガガガガガガ!
「ぐっ、がっ、はあっ!」
どしゃっ
マトモに喰らった赤髪君は兵士達の山に突っ込んでった。
……ふう。
何が起こったか説明しよう。
自分が使ったのはロボ○イの覚醒必殺技、その名も『駄目な奴は何をやっても駄目』である。
とってもシュールな技名だ。
ちなみに、自分は生身の人間なので、イメージ的にはゴム○ムのガトリングの後に止めにバズーカをぶっ放す感じになっちゃいました。
まぁ機械じゃないからね。
いくらなんでも腕が増えたり胴体飛んだりできないしね。
……
………とりあえず、勝ったっぽい。
なので自分は、後ろを向きながら剣を地面に突き刺し。
「これが、科学の力!」
ナルミ、WIN!(心の中で)
格ゲーのお約束、勝った時の決めポーズである。
…ちなみに自分、ギル○ィギアはイスカしかやったことありません。
……さすがに、マイナーすぎるかな?
「…つっ?、効いたぁ!」
!!!??
びっくりした。
だって倒した思ったらフツーに頭摩りながら立ってきたんだもん。
「カガクっつーのか、おまえの武術は。
初めて聞くし、初めてみた。」
いってーとか言いながらも目を輝かせてこっちを見てくる。
……こっちも科学を武術と認識した人初めて見たよ。
「にしてもつえーなおまえ。
よし、俺も久しぶりに本気出そう!」
…今なんて?
まて、なにぶつぶつ唱えてんの?なんで君の周りに炎がいきなり発生してんの?
そしてそれがなんで君に纏わり付きはじめてんの?
「………我こそ炎を統べる者、絶対なる力よ、来い!神炎『ミューシャス』!」
そう言い終わると、奴の周りで軽く爆発が起きた。
すると、奴の体は炎に包まれていった。
今の奴を表すなら、炎の天使だ。
そして、彼は炎の剣を持ち、笑いながら言った。
「我が二つ名は豪炎王騎士バリス!参る!」
いや、二つ名以前にお前の本名しらんから。
?サイドバリス?
「我が二つ名は豪炎王騎士バリス!参る!」
そう高らかにバリスは叫んだ。
この国最強の5人、通称“王国五柱騎士”の一人に数えられるほどの強さを持つ程彼は強い。なので、名前を知らない者などこの国にはいない程有名である。
まぁ、彼は正確には騎士では無いのだが…
とりあえず、それほどまでに有名なバリスの名前を聞いたら、普通は驚くなり何らかの反応があるハズである、普通なら。
「………なんか、反応はないのか?」
「…何に対して?」
バリスの名を聞いといて、全くの無反応。
さすがのバリスもちょっと凹んだ。
「…とりあえず、いくぞ!」
そう言いながら切り掛かろうと駆け出すが…
「やだ!くんな!結!」
ガンッ!
ぶつかった、何もない空間に、顔面から。
「つっー……、な、なんだ!?」
鼻を押さえながら体制をたて直し、思った疑問を素直に口にだす。
「……ねぇ、もう自分の負けで良いから終わってくんね?」
明らかな挑発、だがそれには乗らない。
「だめに決まってんだろ!爆滅魔法!“リーキッド”!」
着弾すると爆発するサッカーボール大の炎の球が五つ。
それらが眼前の敵目掛けて飛んでいく。
バリス自身が編み出した上級魔法であるそれは、触れるもの全てを破壊する凶悪な魔法である。
もちろん、止める事は不可能に近い。
奴はその場から動かず、ただ右手を突き出したまま立っている。
当たったとバリスが確信した、その瞬間
―――パキンッ
しっかりと魔法は奴に着弾した。
だが爆発は起きなかった。
寧ろ奴が全て右手で受け止め、消したのだ。
「……………」
言葉を失うバリス。
何たって彼一番の得意技が、全て右手一つに止められたのだ。
そこに、奴は
「もう、終わらすよ。」
そう言うと、奴の体から虹色の何か、不可思議な光が揺らめき始めた。
そして、地面を蹴り、その場で跳ねた。
「!!?」
彼から光が出た時点で危険を察知したバリスは、とっさに飛び立とうとしたが、遅かった。
「イィヤァーーー!!」
掛け声と共に彼から放たれた二本の龍のような炎に、バリスは飲み込まれて行った。
?サイドナルミ?
結界にイマジンブ○イカー、それらを駆使して何とかこの炎上馬鹿から身を守っているが、そろそろめんどくなってきた。
なのでこっちから攻めて終わらせる事にする。
「もう、終わらすよ。」
気分はスマッ○ュボールを取ったマ○オです。攻撃判定広げるために、一回ジャンプして
「イィヤァーーー!!」
最後の切り札・マ○オファイナル発動!
マトモに喰らったバリス君は押し出されて場外へ。
まぁ、飛べるから平気でしょ。
……とりあえず
「逃げよ。」
三十六計逃げるにしかず、と。
「まてぃ!」
あぅ、復活早いよ。
バリスさんはばっさばっさと翼を羽ばたかせて、何とか浮いてるようなかんじです。
「はぁ、はぁ、やっぱつえーなおまえ。
まだ一回も攻撃が掠りもしてねぇ。」
いや、イマ○ンブレイカーで右手に当たったよ。
「ホントは使うつもりは無かったけど…
ここまでやられちゃしゃーねーか。」
そう言いながら、彼は屋上に降り立ち、呪文を唱え始めた。
何言ってるか聞き取れんが、ぶつぶつ唱えている。
だが、これは…
「………ハァー、ハァ!」
「グハッ!」
いくら何でも、呪文長すぎでしょ。
20秒は隙だらけだったよ。
そんだけあれば、ガ○ンおじさんの魔○拳も余裕であてれるって。
ちなみにバリスさん、吹っ飛んでまた落ちて行きました。
けどきっと…
「はぁ、はぁ、はぁ、よ、容赦ねぇな。」
ほら、復活。
どんだけタフよ。
「フ、フハハハハ。でもさっきの呪文で召喚のための基礎は出来た!途中だったから上級は呼べないが、中級の精霊なら簡単に呼び起こせる!」
まじでか。
ならやばくねぇか、これ。
「いくぞ!我が「全員動くな!」なんだ!?」
突然の命令は、屋上のドアからしてきた。
そこにいるのは、緑の長髪で、厳しそうな二十歳程の鎧を着た耳がエルフな女性と鎧兵士が二十人程。
「げ、フィーか!」
誰?
「……あなたですかバリス様。」
「いや、これは、その…」
すっかり怯えてるバリスさん。
いつのまにか、最初の姿に戻ってるし。
つか様って何。
「言い訳はいりません。正直に申して下さい。
なぜ召喚魔法を使おうとしたのですか?」
「いや、その……こいつ!!こいつと戦っててつい…」
自分のせいか?
こいつ、自分のせいにする気か?
「……あなたは誰ですか?」
わお、矛先がこっちに。
「…え?と、あの、第三王女様の近衛隊に…その、所属している者…です。
屋上に来たら、なんか兵士がいっぱい倒れてて、あの、戦いを挑まれて…。」
要領を得ないが、仕方が無い。
だってフィーさん、怖いんだもん。
でもなんか通じたっぽく、フィーさんは後ろにある兵士の山を見て。
「…あれですか。
……バリス様!」
「はいっ!」
「お部屋でゆっっっっっくりお話ししましょうか。」
「ひいぃぃぃ!」
バリスは叫びながらフィーさんに引きずられていった。
バリス、弱いぞ。
そんなこと考えてると、鎧兵士に後ろから捕まった。
なぜ?
「そこのあなたも不法侵入で連行します。
私の記憶ではあなたのような者は第三王女様の近衛隊どころか、一般兵士にさえいなかったので。」
フィーさんが自分の疑問を即座に解消してくれた、が。
「いや、ホントです。自分被害者ですし離して下さい。」
「不審者はみんなそう言います。
話しを聞いてあげるだけまだマシでは?
きちんと身分が解り次第処罰を決定します。
まぁ最低でも投獄は確実でしょうが。なんならこの場で切り捨てましょうか?」
いやいやいや。
なにこれ、この不当な扱い。
自分被害者なのに犯罪者扱い?
だれかヘルブ、ヘルブミー!
「そもそも近衛隊に入る為には直接王族から認めて貰う必要があるのです。
そのためにはよほどの才能や技術が必要なんですよ?
上級兵士でも難しいのに、あなたのような輩が入れる訳無いでしょう。
しかも変な色に髪を染めて…
考えるならもっとマトモな嘘を考えなさい。」
自分、全否定。
そしてやっぱり近衛隊ってエリート集団で強いんだ。
そしてこれは地毛だコノヤロー。
………にしても自分、どうなるんだろ。
このまま死刑?投獄?
アハハハハハハ……笑えねぇっての。
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