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ラインの黄金

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第一幕その二


第一幕その二

「ぬるぬるして水が強いし。ニーベルハイムとはえらい違いだな」
「そんなに文句を言う必要はないわよ」
「ここは楽しい場所だから」
「そうだな。あんた達がいるからな」
 アルベリッヒは上で泳いでいる乙女達を見上げて応えるのだった。
「それもそうだよな」
「そうよ。それでアルプさん」
 ニーベルングのまたの名前である。
「誰がいいのかしら」
「私達の誰がよくて?」
「私はどうかしら」
 まずはヴォークリンデが彼のところにやって来た。
「私を捕まえられたらね」
「よし、それじゃあ」
「あら、残念」
 しかし捕まえられようとするところで。ヴォークリンデはあっさりとすり抜けてしまった。そうしてそのうえで上に戻って笑うのだった。
「捕まえられなかったわね。どう?また挑戦してみる?」
「意地悪でしているのか?」
 アルベリッヒはムキになった顔で彼女を見上げて言った。
「若しかしてそれは」
「そう思えなくて何だというのかしら」
「くっ、何て女だ。もういい」
 こう言って地団駄を踏む。しかしここでもう一人来たのだった。
「ヴォークリンデは忘れなさい」
「あんたは?」
「ヴェルグンデよ」
 彼女もまた彼のところに来た。そうして笑うのだった。
「よろしくね」
「そうだな」
 アルベリッヒは彼女の言葉を受けて考える顔を見せた。
「あの取り澄ました女より」
 ここでヴォークリンデを見上げる。彼女は相変わらず楽しそうに笑っている。
「あんたの方がずっと奇麗だ」
「あら、嬉しい御言葉」
「わしに気があるならばだ」
 今度はヴェルグンデに対しての言葉だった。
「もっと下に降りてきてくれないか」
「これ位かしら」
 彼に応えて降りてきたがそれは少しだった。
「これでどう?」
「もっと降りてきてくれ」
 とても捕まえることのできない高さなので顔を見上げさせて抗議する。
「そしてあんたをだ」
「それならよ」
「それなら?」
「その毛だらけの腕に」
 まず言うのはこのことだった。
「そして真っ黒で瘤だらけの顔」
「何だと!?」
「硫黄の臭いがすること」
 嘲る言葉だった。
「誰がこんな人を好きになるのでしょうね、果たして」
「糞っ、御前もいい」
「あらあら、そうなの」
 ヴェルグンデも笑って上に戻った。そうしてそこからヴォークリンデと同じく彼を嘲笑うのだった。明らかに馬鹿にしているものであった。
「それじゃあ残念ね」
「嘘つき女め」
「本当のことを言っただけよ」
「骨だらけの冷たい女だ、これはニーベルングの姿だ」
「それを醜いと言ってあげているのよ」
 ここでも嘲るヴェルグンデだった。
「本当のことをね」
「おのれ、覚えておれよ」
「まあまあアルプさん」
 そして三人目が来たフロースヒルデだった。
「ここは落ち着いて下さい。まだ私がいるわよ」
「あんたがか」
「そうよ」
 こう言ってきてそのうえで彼のところに来たのだ。
 
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