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ラインの黄金

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第二幕その六


第二幕その六

「貴様やヴォータンとは違うからな」
「この目で見ない限りは信じるわけにはいかない」
 ローゲはさらに挑発を隠してみせていた。
「この目で見ないとな」
「言ったな」
 アルベリッヒは最早引かなかった。
「では死ぬ程羨ましがらせてやるぞ」
「では私をそうさせてみるのだな」
 ローゲはまた挑発してみせた。
「羨ましがらせるなり恐れさせるのもな」
「よし。それではだ」
 アルベリッヒは遂に乗った。完全に。
 そうして帽子を被り。言うのだった。
「見よ、この姿」
「むっ!?」
「この大蛇の姿をな」
 言うなりすぐにとてつもなく巨大な大蛇に変わってみせるのだった。大蛇はまさに洞窟の中を完全に覆ってしまわんばかりだった。その姿で彼等の前に出たのだった。
「どうだ?」
「うわっ、これは」
 ローゲもこれには驚いた顔をした。するように見せた。
「何ということだ。わかった、わかった」
「わかったな」
「そうだ、わかった」
 両手を前に出してその掌をしきりに振ってそれを認めるのだった。
「よくもそんな姿に変わったものだ」
「これでわかったな」
「ああ、信じよう」
 そしてこのことは認めた。もっとも認めただけではないが。
「それはな。それではだ」
「まだ何かあるのか?」
「大きいものにはなれるのだな」
 いよいよ策略を仕掛けるローゲだった。
「大きいものにはな」
「何が言いたい?」
 大蛇のアルベリッヒはそれに問うた。ローゲの今の言葉に。
「小さなものにはなれるのか?」
「小さなものにか」
「そうだ。抜け目なく危険を逃れることこそが最も賢いことだ」
 こう言ってアルベリッヒをそそのかしていく。
「それがまた非常に難しいのだがな」
「難しいと思うのは御前が馬鹿だからだ」
 アルベリッヒはローゲの驚いた仕草にもう有頂天になっていた。
「そのようなことはな」
「できるのか?」
「できる」
 彼は蛇の姿で豪語してみせた。
「どんな小さなものにも変わってみせるぞ」
「それではだ」
 ローゲは内心ほくそ笑みながらまたアルベリッヒに対して告げた。
「ごく小さな隙間にもヒキガエルなら逃げ込めるな」
「容易いことだ」
 彼は有頂天になってローゲに告げた。
「そら、見てみるのだ」
「おおっ」
 実際にヒキガエルになってみせるのだった。そこでさらに言おうとするがだった。
「ヴォータン!」
「うむ!」
 ここで二人は顔を見合わせて頷き合うのだった。
「今です。あのヒキガエルを!」
「わかっている!」
 すぐにそのヒキガエルを踏みつけてしまったヴォータンだった。ローゲも駆け寄りそのうえでそのヒキガエルの頭から帽子を取った。それによりヒキガエルは元のアルベリッヒの姿に戻ってしまったのだった。
「くそっ、しまった!」
「よし、これでいい」
 ローゲは早速そのアルベリッヒを完全に縛り上げてしまった。自分で出した炎の縄で。
「後は山の頂上に戻りましょう」
「うむ」
 ヴォータンはローゲの言葉に頷く。そうしてそのうえで二人で山に戻るのだった。
 山に戻るとローゲはすぐに。縛ってあるアルベリッヒに対して言うのだった。
「さあ、ここだ」
「ここは確か」
「そうだ。御前が何時か手に入れようと言ったその世界だ」
 上にはあの城が見える。それも指し示しながらアルベリッヒに言うのだった。
 
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