ラインの黄金
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第二幕その三
第二幕その三
「このまま永遠に奴の奴隷だ」
「とのことです」
ローゲはミーメの話が終わったところでヴォータンに顔を向けて述べた。
「あの男を捕まえるのは厄介かも知れませんね」
「だが御前なら何とかなる」
しかしヴォータンはローゲの知恵を信じていた。
「御前ならばな」
「まあそうかも知れませんね」
そしてローゲも涼しい顔で返した。
「私なら。それでは」
「それにしてもあんた達は」
ミーメは少し落ち着いたところでローゲ達に尋ねた。
「何者だ?一体」
「御前の友人だ。ニーベルング達を助けてやろう」
「助けるって。わし等をか」
「そうさ。さて、アルベリッヒはあちらか」
ローゲがアルベリッヒのいる方に歩いていった。
「では行きましょう」
「そうだな」
ヴォータンも応える。そうして洞窟の奥の方に行く。見ればアルベリッヒは相変わらず威張り散らしニーベルングの者達を虐げていた。
「さあ、もっと集めろ。それはそこだ」
金を彼の右に集めさせていた。
「それはそこだ」
銀は左に集めさせている。
「それでいい。細工をしたものはわしの前だ」
「は、はい」
「こちらに」
ニーベルングの者達はガタガタと震えながらその細工や金銀を彼の周りに置いていく。
「こちらでいいのですね」
「ここに」
「そうだ。全て持って来い」
あらためて彼等に告げるのだった。
「よいな」
「わかりました」
「それでは」
「わしはニーベルングの王だ」
かつてもそうだったが今はそれだけではないといった言い様であった。
「そしてこの世の全ての王になる。そのわしに逆らうことはできんぞ」
「はい・・・・・・」
「そのわしに逆らう者なぞいる筈がないのだ」
「また随分と騒がしいな」
その彼の前に二人が姿を現わした。あの二人である。
「アルベリッヒよ」
「貴様等は」
「夜の国ニーベルハイムにて近頃新しい話を聞いた」
ヴォータンが彼に対して言う。
「この国の王アルベリッヒが新たに不思議な力を手に入れたそうだな」
「だとしたらどうするのだ?」
「それを見て楽しみたい」
ヴォータンは不敵を装って彼に告げた。
「是非な」
「貴様等がここに来たのは何故かわかっている」
アルベリッヒは敵意に満ちた目であった。
「わしにはすぐにわかる」
「おやおや、また随分と邪険なものだ」
ローゲはそんな彼の視線にあっさりと返した。
「そこまで嫌わなくてもいいだろうに」
「ではどうしてここに来たのだ?」
「私を知っていると言ったな」
ローゲはその両手を軽やかに動かしながら仁王立ちはしてもまだ背が曲がっているアルベリッヒの前を通り過ぎるようにして歩きながら述べた。
「この私を」
「ローゲだな」
「如何にも」
楽しそうに笑って答える。しかし顔は彼には向けてはいない。
「その通り。火の神ローゲだ」
「光の精霊におべっかを使う忌々しい奴だ」
「御前達が冷たいこの世界でうずくまっている時に私が笑顔を見せた」
やはりアルベリッヒの顔を見ずに笑いながら歩いている。
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