ソードアート・オンライン ~無刀の冒険者~
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SAO編
episode2 集団で戦うということ
「やっはーっ!!!」
「でぇっ!!!」
「……っ」
翌日。朝の早い時間から出た俺達四人のパーティーは早速例のクエストのダンジョン、『魔獣の炭鉱』を訪れていた。かなりMobのポップの盛んな場所のようで、入るなり最初のモンスター、『サーベルファング』の一団…おそらく10匹近い…との戦闘に入っていた。
(なかなか、というか、すげえな…)
戦闘は、はっきり言って俺にとっては初体験といってもいい「集団戦」だった。
モンスターを見つけた瞬間、「いっくよーっ!」と叫んで集団に突っ込んでいったのは、ソラ。装備は盾装備片手剣。戦闘のスタイルは俺とよく似通っており、小攻撃を繰り返しての走り回りながらの戦法で敵の憎悪値を駆りたて、戦線を混乱させている。
「……っ」
そのソラに、後ろから飛びかかろうとした一体の首筋を、青いエフェクトフラッシュを纏った飛来した光が的確に薙いだ。巨大な牙を持つ狼が、ギャン、と一声鳴いてポリゴン片となって爆散する。
ソラの火力不足を補うのは、後ろからで炭鉱の壁を背にして立つ、レミ。
見やると、青いエフェクトフラッシュがまるで吸い込まれるようにその手還っていく。
(これはまた、めずらしいね…なるほど、「後方支援」、か…)
青い光の正体は、この世界でも非常に珍しい武器と言えるだろう、『ブーメラン』だ。走り回る戦法の関係で弱らせた敵にとどめをうまく刺せないソラの代わりに、離れていても攻撃できる『投剣』のソードスキルを連発し、弱ったサーベルファングを一撃で沈めていく。持っている九の字型の投擲武器は確か《フライング・エッジ》。二十六層で見つかったばかりの投擲武器で、投げれば手元に帰ってくるという便利な特性を持ったアイテムだ。
(なるほど、その為の筋力優位、か)
『投剣』は、アイテムによってそのダメージ判定が異なる。『敏捷』で素早く投げると高威力を出すものが大半だが、中には投擲槍や投擲斧のように少なくない『筋力』を要求する武器もある。実際に使ったことは無いが、おそらくブーメランも「投げた武器を手元に戻す」というスキルを引き出すにはある程度以上の『筋力』が必要なのだろう。
そしてそれは、そのまま火力にもつながる。
おおよそ投擲武器では削りきれないだろう量のHP残量でも、飛来したブーメランはものともしないで的確に吹き飛ばしている。投げた武器が手元に返るまで無防備になるという欠点はあるが、それでも強力な遠隔攻撃手段だ。
「グルアアアアッ!!!」
「させないッスよ!」
そして、最後の一人、ファー。高威力技の連発で上がった憎悪値によって、武器を投げて無防備なレミへと襲いかかる狼を、単身で抑え続ける。効き腕であるだろう右手には、ボス攻略メンバーの装備でしか見たことの無いようなどでかいタワーシールド。
時折の隙をついての盾で捌けない攻撃には、街で着ていたのより遥かに頑丈そうなプレートメイルを装備した体それ自体で止める。時折盾が緑にエフェクトフラッシュを放つのは、恐らくなんらかの『盾』スキルが発動しているのだろう。
「リーダーっ、ヘルプ!」
そして、ファーが耐えきれなくなったら、またソラが突っ込んで乱戦を演じ、憎悪値を拡散させ、戦線をリセットする。うん、完璧なコンビネーションだ。後から知ったが、この方法はかなり特殊かつ難易度の高い連携で、他の連中はせいぜいスイッチのタイミングを計るくらいらしい。
と、感心していたところに。
「もちょいで終わるっ! 頑張ってファーちゃんっ!」
「ええっ!!? ヘルプ、ヘルプっ!」
「あー、シドくん、お願い!」
いきなりチームワーク崩壊。
いや、ファーにも笑っている余裕のあるところをみると、恐らく本当にヤバい訳ではないのだろう、三匹の狼を同時に捌きながらもHPゲージも緑色を保っている。だが、俺に助けを求めたところを見るに、永遠と大丈夫ってわけでもないのだろう。
やれやれ。
「了解」
幸い、俺のスキルならこの役割はうってつけだ。
タワーシールドの隙を縫うように走り抜け、そのまま出の速い『体術』スキル《スラスト》を発動。盾に噛みついていた二体の狼を弾き飛ばし、戦線を押し上げる。そのまま噛みついてくる別の狼の牙を
身を翻してかわし、そのまま回し蹴りを入れる。
超非力アパターのおかげで三割ほどしかHPを削れていないが、ここでは問題無いだろう。
なぜなら。
「なーいすっ!」
「助かったッス!」
「……ぐっじょぶ」
うし、予想通り。
三人が繰り出したそれぞれの大技ソードスキルが、俺が怯ませた三匹を残らず爆散させた。
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