【完結】剣製の魔法少女戦記
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第二章 A's編
第四十二話 『シホとエミヤの邂逅』
前書き
シホのバリアジャケット姿は某アチャ子と『プリズマイリヤ』のイリヤがアーチャーに夢幻召喚した姿を足して二で割ったような感じです。
変身した時の描写を詳しく書きましたので想像はしやすいかと。
シホは困惑していた。
事前にシグナム達に仮名だけは聞いていたとはいえどうしてここに英霊エミヤの姿があるのかということに。
「どうしてエミヤが…いや、今はそんな事を考えている暇はないわ。
あれだとクロノが魔力を蒐集されてしまう。《フィア、聞こえる!?》」
《はいです!》
《すぐに私のところに来て! クロノが捕まってしまっているわ》
《クロノが!?》
《ええ。しかもその捕まえている相手が……………エミヤよ》
《エミヤって…え!? つまり英霊エミヤ。お姉様の未来の可能性の一つの人ですか!?》
《そうよ。これから私も仕掛けるから早く来てね!》
《わかりました!》
フィアットと念話を切り、急行しようと駆けようとしたが、別のほうから気配を感じて咄嗟にシホは回避運動を試みる。
そこにはどうやらあの時にシホに重症を負わせた張本人である仮面の男が足を突き出していた。
「避けられたか…」
「あなたが仮面の男ね…この間はよくもやってくれたわね」
「……………」
「だんまりか…あまりいい性格していないでしょう?」
「余計なお世話だ」
「そう。でも急がないと仲間が魔力を蒐集されてしまうかもしれないの。だから…」
シホはポケットに入れていたサファイア色の宝石…アンリミテッド・エアを取り出し、
「あなたで試運転をさせてもらうわ! アンリミテッド・エア! セットアップ!!」
《set up.》
瞬間、シホの真下に朱色のベルカの紋章陣が出現し、体は光に包まれる。
服装は一瞬ではだける。
そしてアンリミテッド・エアが変化を始める。
宝石が二つに分かれそれを中心に干将・莫耶をベースとした剣が形取られていく。
干将・莫耶の陰陽のマークは替わりにサファイア色の丸い宝石へと変化をし、峰の部分に小さいながらもカートリッジが排出・差し込める場所が存在する。
シホはその二刀を手に取り、次にはバリアジャケットが纏われていく。
まず上半身に黒い長袖のシャツが体を覆い、次に白と黒が入り混じった軽鎧が装着される。
下半身には黒いスカートとオーバーニーを履いている。
靴はタラリアを模した鉄の作りになっている。
次に上半身に聖骸布の赤い外套が出現し装着され左右の外套は胸の間で糸で結ばれ、腰にも同じく聖骸布の腰マントが装着される。
髪は再度ポニーテールに整えられていた。
バリアジャケットがすべて装着されると、変身を終えた。
ここにきてシホは初めて魔導師の姿として降臨したのだ。
「へー…バリアジャケットってこういう風に装着されるのね。体に馴染む感じがするわ」
《マスター、指示を》
「了解よ、エア。さて、仮面の男。覚悟してもらうわよ」
「…今の私は時間稼ぎだ。積極的な戦闘はしないつもりだ」
「そちらがそうでもこちらは急ぐのよ」
足にブーストをかけてシホは仮面の男に肉薄する。
「早い!?」
「せいっ!」
背後に移動してからの干将の左薙ぎ。
それを仮面の男は辛うじて腕で防ぐ。なにかを仕込んでいるのだろうか? 剣を当てた腕からは「カンッ」という鉄製の響きが返ってきた。
シホはそれで一度瞬動を使いそこから後退して、
「それなら!」
《Illusion air.》
アンリミテッド・エアがそう言葉を発した瞬間、シホの周りにいくつもの干将・莫耶が浮遊し停滞した。
「いって!」
数は二十はあるだろう同じ形の剣達が一斉にすべて回転を始めて仮面の男に襲い掛かる。
仮面の男は一度その場から逃げるようにして空を飛び、だが一双二対の干将・莫耶が抜きん出て襲い掛かる。
それを弾こうと腕を振るうが感触はなにもなくただ剣は空気に溶けるように消える。
「幻像か! がっ!?」
仮面の男の背中を違う干将・莫耶が掠り通り過ぎる。
「そう、これは幻像でもあり実体でもある。どれが本物か偽者か…あなたにはわからないでしょう?」
そして消えたと思った干将・莫耶は再度剣軍の中で数を放った時と同じ数に生産しなおされる。
仮面の男の周りをくるくると旋回し続けている。
「さぁそれを突破できるものならしてみなさい」
「くっ! なめるな!」
すると仮面の男はエクスキューションソードを作り出し射出した。
何度かカンッカンッという音が響き干将・莫耶達はすべて消え去った。
「せいっ!」
仮面の男が剣の牢獄を突破して拳を突き出してくるが、突き出されたシホの姿もこれまた幻像でその姿は掻き消える。
どこにいったのかと視界を巡らせようとした仮面の男は頭上から聞こえてくる声に上を向く。
《Schützeform.》
双剣は連結させて《ツヴィリングフォルム》から一つの弓《シュッツェフォルム》へと変化を遂げていた。
「赤原を往け、緋の猟犬!」
《Hrunting.》
放たれた魔力でできた赤い魔弾は勢いそのままに仮面の男へと迫っていく。
それを距離を置きながら回避するがしかしこの矢はそう甘くはない。
避けたそばから急に旋回してまたしても仮面の男を追尾する。
「なんだこの矢はっ!?」
「あなたはそれにずっと追いかけられていなさい」
シホは横目で見ながらその場を後にした。
矢から意識を離したら効果は切れてしまうけど時間稼ぎには十分だろう。
◆◇―――――――――◇◆
Side シャマル
「湖の騎士、結界破壊魔法を放つ準備を…」
「はい、主。後、少しです」
アーチャーさんがそう私に問いかけてくる。
闇の書のページを使った結界破壊。
こうでもしないと皆が脱出できないから。
そこに先ほどアーチャーさんが拘束した管理局の少年が声を張り上げながら、
「くっ…これは“マグダラの聖骸布”! お前は一体誰だ!? なぜこの布を使える!?」
「私は闇の書の主だ」
「なっ!」
少年は本当に驚いているようね。
でもどうしてこの武装の名前を知っているの?
私の思いを他所に少年は話を続ける。
「なら、なぜ闇の書の完成を目指す!?」
「何を聞くかと思えば…完成すれば大いなる力が手に入るのだろう? ならば答えは一つだ」
「違う! その闇の書は、そんな生易しいものじゃない!」
「敵の言葉など聞く耳持たんな。そんな事より今からこの結界を破壊するのでな。そこで大人しく見ているがいい。魔力を蒐集されないだけよかったと思え小僧」
なかなかの悪役ぶりですね…。記憶を失う前は役者の仕事にでもついていたのではないのか、と思わせるほどの演技だ。
だけどそこで前に魔力を蒐集していいと言ったシホちゃんが飛んできた。
その姿はどうやら甲冑を纏っているようで、あの時の覚醒からデバイスも目覚めたのだろう事が伺える。
「アーチャー…。いえ、エミヤ。あなたがなんでここにいるの?」
「エミヤ? それが私の名だと」
「ええ、そうよ。あなたは英霊エミヤ」
「済まない。今の私は記憶喪失なのでね。君の望む回答はできそうにない」
「記憶喪失…(話には聞いていたけど本当にないみたいね)」
どうしてシホちゃんはアーチャーさんの事を知っているのだろう?
それにエミヤ? それがアーチャーさんの名前?
でもどうしてシホちゃんのファミリーネームと同じエミヤなの?
私が混乱している中、そこで一瞬シホちゃんは私に目を向けてくる。
私とアーチャーが話し込んでいる今がチャンスだと目は語っていた。
それで私は結界破壊の魔法を放つ準備と同時に旅の鏡を展開しシホちゃんの背後からリンカーコアを摘出する。
「ぐっ…! これは!?」
「しまった! シホ!」
(ごめんなさい、シホちゃん…)
そう心の声で謝罪し、
「油断して、いた…あ、あああああーーー!!」
見る見るうちにシホちゃんのリンカーコアから魔力が闇の書に吸収されていき40ページ以上は溜まっただろう。
やっぱりすごい魔力保有量…。やろうと思えばまだページは埋まるけどこれ以上はシホちゃんが死んでしまう。
だから苦しそうにしながらも屋上に横にさせた後、
「湖の騎士。撃て、決壊魔法を!」
「はい! 眼下の敵を打ち砕く力を、今ここに…!」
そして闇の書から雷が発せされ、
「………撃って、破壊の雷!!」
天から降り注ぐ雷に結界は破壊された。
そしたら結界から脱出してきたのかシグナム達が急行してきて、
「主、ご無事ですか?」
「ああ、問題ない。では脱出するとしよう」
私は人間形態では飛べないアーチャーさんを抱えてその場を脱出するのだった。
でも…やっぱりシホちゃんとアーチャーさんはなにかしら係わり合いが合ったのは確かのようね。
後でまた会う機会を伺わないと。
◆◇―――――――――◇◆
「逃げられた、わね…」
シホは逃げられたというのにあまり気にしていないような素振りだ。
まぁ、それは仕方がない。リンカーコアから魔力を搾り取られてしまったのだから顔に出す気力もないのだろう。
そこにマグダラの聖骸布が無くなったのか自由になったクロノがシホの背後に立ちながら、
「…大丈夫か、シホ」
「なんとかね…でもこれでまた当分の間は戦線から退場ね」
「そうだな。ところでシホ…説明してくれないか?」
「なにを、って…聞くまでもないわよね」
「ああ。あの白髪の男、アーチャーもとい『エミヤ』の情報を知っている事があるなら教えてほしい。どうして君と同じ武装…“マグダラの聖骸布”を使えたのかも含めて」
「……………わかったわ。でも、話す内容は私の中でもトップシークレットの部分だからハラオウン邸で話しましょう。もちろん公開は絶対にしない事を約束してくれなきゃ話せない…」
そこにリンディがモニター越しに姿を現して、
『わかりました。シホさんの意思を尊重します。クロノ、皆さんを連れて帰ってきなさい。でもその前にシホさんは検査入院ね』
「はい、わかりました。ですがすみません。取り逃がしてしまって…。それにシホの魔力まで…」
『あれは仕方がないわ。男性であるクロノには抗えない力だものね。シホさんの件も背後からいきなりなんだからなす術がないわ』
「そういえば…仮面の男はどうしました…?」
そこにエイミィが通信に割り込んできて、
『追っていた矢が効果が切れたのか消えてその後は転移で消えちゃった。でもシホちゃんが放った矢はデバイスの発言からして“フルンティング”?』
「え? それまで映像に収まっているんですか?」
『当然!』
それでシホはまいったといった表情になり肯定の意を示したのだった。
『でも今回も仮面の男の転移先を特定できずにみすみす見逃しちゃった…ごめんね、みんな』
『侮れませんね…』
リンディの言葉でそう締めくくられた。
そこになのは達がやってきてシホが魔力を蒐集されてしまった事を聞き心配されたのをシホは苦笑を浮かべながら答えていた。
なんせこれはみんなを騙す演技でもあるんだから心苦しい事になるのは仕方がない。
しかし、その時シホは心の中で、
(でも、エミヤから感じたのは同族嫌悪ではなくて郷愁だった。なんでエミヤの事を懐かしむなんて感情が出てきたのだろうか…?)
そんな事を思っていた。
その後、一度本局の医療施設で見てもらってなのはと同じ症状だということで検査だけして入院はせずに済んだ。
そして向かうはハラオウン邸。話す内容はシホの過去。
◆◇―――――――――◇◆
Side エミヤ?
私達は一度散り散りになりながらも撤退し八神家に戻ってきた。
特に私は鷹の姿は晒していないので戻ってくるのは楽だった。
最初に戻ってきたのが私とシャマルだったらしく皆が帰ってくるのを待っていると次第に全員が帰ってきた。
「それぞれ追手は撒いたか?」
「ああ。それより経過はどうだ? アーチャー。…いや、“エミヤ”」
「著しくないな…。名だけではまだ思い出すのには至らないらしい」
「そうか」
「後で今度はじっくりとシホと会ってみればいいんじゃね?」
ヴィータがそう言ってきたので「そうだな」と返しておいた。
その後ははやてに連絡を取った。
本日は友達である月村すずかという少女の家に泊まるらしい。
はやては全員と話を交わしていて私とも話したいといったのでヴィータから変わる。
「もしもし。はやてか」
『あ、アーチャー。大丈夫?』
「君は何に対して大丈夫といっているのだ?」
『えっとな。アーチャーって契約できる人がいないやろ? だからいつも確認せんと心配なんよ』
「心配のしすぎだ。自力でも少しは魔力を回復できるのだから」
『そか。じゃ安心や』
「ああ。だからはやても安心してそっちで泊まっていけ」
『うん』
その時、向こうから別の女の子の声が聞こえてきた。
おそらくこの声が月村すずかの事だろう。
『はやてちゃん、アーチャーさんって?』
『ああ、私の家族の一人や』
『そ、そうなんだ…。変わった名前だね』
『あはは。そうなんよ』
『そっか…』
そこですずか嬢の声のトーンが下がる。
なにやらいやな予感がするので、
「では、はやて。もうシグナムに変わるぞ?」
『あ、わかった』
その後はシグナムとも話を交わしていてどうやらまだはやての体調は大丈夫のようだ。
なので私は魔力消費を抑える為に鷹形態に戻る。
しかし、未だにどうして私はこんな体なのかと思う事がある。
記憶を思い出せばこの原因も掴めるのだろうか…。
しかし、シホ・E・シュバインオーグから感じたのは郷愁だと…?
やはり私の失われた過去にはなにか彼女と関係があるのか…?
シホとエミヤは同時に同じ思いを抱いていた。これが意味することは、まだ分からない…。
後書き
シホから蒐集したページ数はこのくらいでいいでしょうか?
魔術回路の方の魔力も少し吸収されているのでかなりページは貯まると思うんですよね。
それと最後はわかりやすい伏線ですね。これがどういう意味か気づく人はいるでしょうか?
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