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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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After days
fall
  Wild Battle Online

 
前書き
まぁ、気持ち的にはGGOの試作というか前哨戦というか……。

そんな感じの話です。 

 



―――『Wild Battle Online』



それは《ザ・シード》規格で初めて《四足歩行補助システム》を実装したタイトルである。


プレイヤーは《生息圏》を設定し、ランダムに決定される《動物》(課金により変更可能、ただしランダム)になって自らを鍛え、過酷な生存競争を生き抜き《聖獣王》を目指す。

特徴は何と言っても《四足歩行》をする動物になったときの《補助システム》。
詳しい原理は秘匿とされているが、まるで産まれた時から四つ足だったように誰でもすぐに不自由無くプレイする事ができる。

余談だが、《ALO》とはまた違った《フライトエンジン》も使われており、鳥になると飛ぶこともできる。これも練習不用。ただし、扱いは数倍難しい。

この世界で《聖獣王》になるためには不定期に開催される《聖獣王決定戦》で勝ち抜けばいい。
2025年9月現在、過去2回の大会で《聖獣王》は2人(匹)。

9月下旬には待ちに待った第3回大会が予定されていた―――





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「―――と言うわけで、2人に《四足歩行システム》と《新型フライトエンジン》を調査してもらいたいんだよね」

「「断る」」

「……………」


見事にハモった俺と和人の答えに、菊岡は半泣きの様な表情でガクッ、となる。


「……理由を聞いてもいいかな?」

「面倒」

「……中間考査」


答えたのは俺、和人の順だ。


「そうそう。中間考査もあるしな。生憎暇じゃないんだよ」


それ以外に『例のブツ』の解析や諸々の事後処理、本業の学業等々意外に多忙を極めているのだ。


「そこを何とか頼めないかい?事態は中々に深刻なんだよ」


「どうせまたバーチャル犯罪がらみだろ……。俺達は『電子探偵(エレクトロン・ホームズ)』じゃないぜ、流行らねぇよ」


電子探偵(エレクトロン・ホームズ)』は夏頃に一瞬流行ったライトノベル。VRワールドを渡り歩き、様々な問題を解決する話だ。今や早くも下火になり、最近では『流行遅れ』のジョークに使われる。

―閑話休題―




「まあ、そうなんだけどね。……でも興味深くないかい?」

「……それは、まあ……」


和人が目に見えて動揺しているが、無理もない。正直、俺も興味がないと言えば嘘になる。


現在、急速に成長しつつある《フルダイブ技術》。それの『三大難問』と言われているのが『無重力』、『液体環境』、そして『異形駆動』。


これらは技術的、あるいは擬似的には成功しているが、所々の問題も孕んでいる。


『無重力』は慣れていない人間が入ると、酔ってすぐにセーフティが発動してしまう。

『液体環境』は今のところ擬似的に成功しているが、完全ではない。

『異形駆動』はALOでいう《翅》やケットシーで見られる《耳》や《尻尾》を動かすことだが、これは一部分だから可能ということで、人間が例えば仮想世界で犬になって走るなどは非常に難しいとされていた。


《Wild Battle Online》はそれを俗人的なスキルとして実装したというのだ。興味が無いはずが無い。少なくとも、


「無論、報酬は弾むよ」


という悪魔の囁きで2人が陥落するぐらいには。








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翌日、菊岡に嵌められた(?)俺は放課後、学校の図書館に籠っていた。


「……うーん」


読んでいるのは解剖学についての本だ。
どうにか四足歩行のイメージを掴めないかと期待していたが、いまいち解らなかった。

《四足歩行補助システム》を体感するにはまず違和感を感じなければならない。話を聞くところによると、そのシステムは人に違和感を感じさせないようだ。
《仕事》を受けるからにはそれを《報告》しなければならないのだが、まったく違和感が無いのでは人に伝えようがない。
そっちはついでとは言っても依頼の一部だ。性格的に疎かにはしたくない。


「メインのこっちは、面倒くさそうだな……」


脇に置いてある写真は些か過激なモノだった。

写真に写っているのは死体だった。鋭いもので皮膚が抉られ、あちこちに爪痕のような傷が刻まれている。さらに、首筋には黒ずんだアザが付いている。形は人の歯形だ。


「……………」


これをやった犯人は未だに捕まっていない。だが、この死体を調べた検死官達は皆一様の結論に至った。


―――凶器の類いは一切使われていない。と、


つまり、犯人は己の体躯のみでこれをやったことになる。

勿論、つい450年前までは忍者という職業の連中が素手で暗殺などをしていたのだ。そう考えると不可能な事ではない。が、それには相応の技術が必要だ。

だが、これは完全な力業。暴力だ。


―――あるいは、『力業』を研鑽することで『技』としたか。


『殺し』の技を合法的に磨くことが出来るVRワールドという場所が現代にはあるのだ。

その話を聞いた菊岡を始めとする《仮想科》の面々は《Wild Battle Online》に目を着けた、ということだ。

最近では犯罪があると、真っ先にVRワールドとの関係を調べあげるそうだ。その度にフルダイブゲームの世間的評価はだだ下がりになる。真っ当なプレイヤー達にとってはいい迷惑だ。


「ま、こっちに火種が跳んでこなければどうでもいいがな」


彼にとって大切なものは自分を取り巻く仲間や家族だけ。それ以外の有象無象が何をしようが、危害を加えられない限りどうでも良かった。








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その帰り、駅までの道のりを歩いて行くのは螢、和人、明日奈の3人。一緒に帰るメンバーは固定されている訳ではなく、その時々によって変化する。この場合、後の2人は固定だとして、そこにくっつくのは俺の場合もあるし、そうでないこともある。

図った訳ではないが、今日に限ってはそれは好都合な組合せだった。


「―――というわけで、今度の土日はALOにログイン出来ないんだ。ごめんな」


要するに、俺達が勝手な行動すると(特に)うるさい明日奈に2人掛かりで説得できるという利点があるのだ。
当然、明日奈は「むぅ~」としているが、一応は菊岡に多大な恩があるのは彼女も然りなので文句は言えない。


「本当にそれだけなの?危ないこととかないよね?」

「大丈夫。SAOじゃ無いんだ。ま、例えデスゲームだとしても俺達だぞ?」


片や《英雄》。片や《反逆者》である。恐らく対人戦闘ゲームでこのコンビに勝てたら、まぐれか奇跡だ。


「なら、いいけど……」


殺人事件がらみなんて余計なことは俺も和人も言わない。そんな事を言ったら反対する、もしくは付いてくるなんて言い出しかねない。


「じゃあ、これでどうだ?大会はALO内でも放送されるから皆でそれを見てればいいだろ?さらに、ダイブする場所は俺の家だ。ヘタな高級ダイブカフェよりセキュリティは数段上だ」


何せ、使用人を合わせて常時100人以上の人間が居るのだ。そしてその半分以上は水城流の門下生。あの家を陥落させるには最低でも装甲車が必要だろう。
歩兵じゃ無理だ。即、無力化される。


「うん、分かった」


そんなことは知らないにしても、明日奈はどうにか安心してくれたようだった。









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時が流れるのは速いもので、あれよあれよという間に週末。「暇で死にそうだ」という蓮兄と庭でじゃれている時に和人はやって来た。


「……準備運動か?」

「いや、あのうるさい馬鹿兄貴に付き合ってただけだ。……そんなことより、明日奈。何でお前まで来るんだ?」

「何よ。文句ある?」

「いや……ないけどさ」


大会が始まるのは午後7時。それまで慣れておこうと早めに昼に約束をしていたのだが、それまではどうするのだろうか?


「沙良ちゃんと会う約束してるの。直葉ちゃんも、もう少ししたら来るわよ」

「「え!?」」


和人も初耳だったのか、驚く声がハモった。
ていうか、いつの間にそんな仲良くなったのだろうか?
まあ、嬉しい限りだが。


「そういうことなら、早めに言ってくれ……。爺さんに1人って言っちまったよ」

「いいんじゃね?俺が言っとくから、さっさと行ってこい」


蓮が整備運動をしながら答える。急に人数が増えたことでいちいち目くじら立てるほど家の爺さんは短気ではないが、家長であるあの人には一応、報告する義務がある。
それを代行してくれるならそれで良かった。








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《Wild Battle Online》はまず、生息圏を設定する必要がある。

これは他のゲームでいう《属性》に当たり、選べるのは無数にあるが、大別すると《森林》、《水辺》、《荒野》、《高地》がある。各々に《空》、《地上(水面)》、《地中(水中)》などがあり、それらに無数の相性があるが、プレイヤースキル次第でそれらはひっくり返る、と紹介サイトには書いてあった。

俺と和人は諸々の理由から《弱小》と揶揄されていた《荒野》系を選び、その世界に飛び立った。










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荒涼とした大地。木の一本は愚か、他のプレイヤーすら居ない。


「と、俺はどんな姿に?」


アバター名は《レイ》だが、アカウントは新規作成したもので、《闇妖精・レイ》の能力は継承されていない。

右前足(この時点で四足歩行は確定)をあげてちょい、と動かしてみる。
ALOなら鈴の音のような澄んだ音が聞こえるのだが、この世界のメニューウィンドウは違った。


―パサッ


と乾いた音を立てて視界の上からウィンドウが降ってきた。


「ナルホド……」


これも世界観に合わせた変化なのだろう。《魔法》がないこの世界でどこからともなく鈴の音がしたら不思議すぎる。
都合よく《Mirror》のアイコンがあったので、それを押すと目の前に犬のような長い鼻があった。


赤銅色の毛並みに長い尻尾。手足もすらりと長い。

やはり、何と言っても特徴は顔だろうか。目付きは鋭く、紅蓮に染まる瞳が爛々と輝いている。犬のような鼻、その下にある口からは鋭い牙が覗いている。


「狼か?」


それか大型の犬だ。まあ、野ネズミとかじゃないからよしとしよう。


「―――と、キリトはどこだ?」


キョロキョロと辺りを見回すが、相変わらず何もない。

と、その時、


「うおぉぉぉぉ!?」


空からの落下物。それが見事に俺の背中に突き刺さる。


「いだぁ!?」


ドシャァッ、と地べたに這いつくばり、顎が地面につく。


「す、すいません。まだ慣れてなくって……」


目の前にやって来た黒い鳥、烏はヘコヘコを頭と嘴を下げる。
このタイミングで出現するのは1人しか居ないので、俺はすぐに正体を見破った。


「キリト、てめぇ。後で覚えてろ?」

「お、レイか。……いやマジでごめん。……って、口開けんな!?食べないでくれ!!」

「問答無用」


ひらり、と飛び上がったキリトを跳躍で追撃する。
ちなみに、キリトのアバターも新規作成なので、性能面では俺と変わらない。
が、俺はキリトをマイルドな圧力で喰わえて、地上に戻る。


「うう……何かネットリしたものが……」


―みしっ


「はい。ごめんなさい……」

「よろしい」


俺はキリトを放すと、再度周囲を見回すが、初期スキルの《索敵》にも何も引っ掛からなかった。

キリトはバサバサ、と俺の背中に乗ると、そこにちゃっかり腰を落ち着けた。


「……まぁいいけどさ」


《羽》は恐らく《手》に相当するので、ずっと動かしているのは疲れるのだろう。

地図を見てみると、東に少し行った所に建物(どうやって作ったんだ?)が有るようだったので、取り合えずそこへ向かう事にした。




 
 

 
後書き
前書きにも書きましたが、これはGGOの練習のつもりで書いているものです。

どうも事件ものが苦手な私めがGGOを失敗しないように四苦八苦しながら書いていきます。
《圏内事件》シリーズ失敗という輝かしい前科を持っていますからね。
というわけで、アドバイスなどをお願いします。

それはさておき、なんだか恒例となりつつあるお詫びを。

ストックが減ってきたので、投稿をしばらく週一にします。
他の作者さんの言い方を借りる(無断)と『ストック溜め期』です。

期間は……一ヶ月ぐらいを目標に最長三ヶ月で!

 
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