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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第二十一話『クラス対抗戦~乱入~』

早朝。スウェンは本音に耳に息を吹きかけられた以来、彼女より早く起きるようにしている。現在、寮の近くの自販機でコーヒーを買いベンチに座ってゆっくり飲んでいた。


「あれ? あんた……」

「?」


不意に声を掛けられそちらを向く。


「凰鈴音だったな」

「そうよ。あんたはスウェン……でいいのよね」

「ああ」

「隣良い?」

「ああ」


鈴音はスウェンの隣に座る。だがお互い何も話さないため、沈黙が続いていた。それに耐えかねたのか、鈴音が


「……そういえば、一夏のヤツどう?」

「どうとは?」

「えっと……頑張ってるのかなーって」

「頑張っているとは本人から聞いている」

「聞いてるって……あんた一夏と一緒に自主練とかしてないの?」


スウェンは静かに頷く。


「その様子だとお前は織斑とは会ってない様子だな」

「うん……」

「あの昼食の時、凰と織斑は親しい関係だとわかった。それなのにここ最近会っていないと言う事は、織斑と何かあったのか?」

「まあ……話ちょっと長くなるけど良い?」

「構わない」


それから鈴音はあの昼食後の事を語った。

一夏が鈴音との約束を間違えて覚えており、鈴音はそれに激怒。一夏と喧嘩をしたらしく、それで顔を合わせていない様だ。


「……とまあそんな訳で。正直、一夏が悪い――と言いたいけど、私も少し言いすぎたかもだし……」

「ならば言い過ぎたことを謝ればいいだろう」

「そ、そんなの出来るわけないじゃない!」


飛び上がるようにベンチから立ち、怒鳴るように言う。素直ではないな、とスウェンは思いため息を吐く。


「まあどちらにせよ、凰も悪ければ織斑も悪い。今日のクラス対抗戦で白黒つけるんだな」

「そうね……一夏にギャフンと言わせてやるわ! そしてその後……」


スウェンは飲み干したコーヒーの缶をゴミ箱に捨て立ち上がり、ポケットに手を突っ込む。背を鈴音に向けたまま


「だが……そう言う関係であるのも、幼馴染の特権……なのかもな」

「何か言った?」

「いいや。他のクラスの代表に言うのもなんだが、頑張れ。それではな」


そうしてスウェンは一瞬だけ鈴音を見た後、寮に向かって歩いていった。




/※/





第二アリーナで行われるクラス対抗戦第一試合は、織斑一夏と凰鈴音。


『それでは両者、規定の位置まで移動してください』


アナウンスの合図に二人は距離を縮める。一方のスウェンとセシリアの一組の専用機持ちに箒を加えた三人はアリーナの管制室にいる。


「しかし、なかなかどうして会場が盛り上がっているな」

「それもそうでしょう。なんたって今注目の一夏さんと鈴さんの試合なんですから」

「そう言うものなのか……」


モニターに映された、鈴音のIS“甲龍”にスウェンは注目した。


(中国の開発した第三世代型IS、甲龍か……)


赤黒い装甲に特徴的な非固定浮遊部位を持つ、その容姿を見て


「龍というのだから、どこか龍の要素があると思ったんだが……」

「何処に期待しているのだ、お前は」


箒の鋭い言葉にスウェンは黙り込む。


『それでは両者、試合を開始してください』


開始の合図と共に、一夏と鈴音は動き出した。一夏の“雪片弐型”と鈴音の“双天牙月”。それぞれの武器が重なり合うたびに響く音、走る火花。

鈴音の斬撃に押されながらも何とか受け止めながら後方に飛ぶ一夏。双天牙月をまるでバトンのように軽々と扱い、一夏をどんどん追い詰めていく。

何とか隙を見つけ一旦距離を取ろうとした一夏だが、甲龍の片方の非固定ユニットが光り、空間が爆発するような衝撃に一夏は吹き飛ばされる。


「何ですの今のは!?」

「あれが“衝撃砲”か」

「衝撃砲?」

「ああ、空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃を砲弾として打ち出す兵器。データでは見たが、あれが第三世代兵器“龍砲”か」

「砲身の射角がほぼ制限無しで撃てるようですね……しかも砲弾自体が見えないなんて」


画面前の椅子に座る真那がそう言うと、箒は表情を強張らせる。一方のスウェンは表情一つ変えずに、戦闘を見続ける。するとスウェンは一夏の動きの変化に気づいた。


「織斑君、何かしようとしてますね」

瞬時(イグニッション)加速(ブースト)だろう。私が教えた」

「瞬時加速?」


真那の後ろに立つ千冬は頷き


「一瞬でトップスピードを出し、敵に接近する奇襲攻撃だ。出しどころさえ間違わなければあいつでも代表候補生と渡り合える。ただし……通用するのは一回だけだ」


その言葉を聞き、スウェンは


(瞬時加速に白式の単一能力の零落白夜……上手く事を運べれば……)


もしくは、という言葉を考えるその瞬間


「「「ッ!?」」」


すさまじい衝撃がアリーナを襲った。同時にアリーナの中央から発生した爆炎と煙が巻き上げられ辺り一面を覆う。


「な、何が起きましたの!?」

「システム破損! 何かがアリーナの遮断シールドを貫通してきたみたいです!」

「試合中止! 織斑、凰! 直ちに退避しろ!」


状況を直ぐに判断し、一夏と鈴音に通信をする千冬。


「これは……アリーナに所属不明機を確認!」


その時、煙の中から一夏達に向けて一筋の緑の閃光が放たれ、一夏は鈴音を抱え回避する。煙が徐々に晴れ、その所属不明機が姿を現す。


「何ですの……あれ……」


その姿を見て思わず声を漏らすセシリア。スウェンは目を疑った、何故あれがここにあるのかと。


(……まさか……いや、間違いない。あれは……)


人型の上半身に、下半身は6脚の脚部によって支えられ半人半虫のような外観を持つその容姿。


(ゲルズゲーだと……?)


YMAG-X7F / YMFG-X7D“ゲルズゲー”がモニターの向こう、一夏達の眼前に居た。




/※/





突如として飛来してきたその存在は、一夏達に牙を向けた。放たれた閃光をかわした一夏はハイパーセンサーの簡易分析によって提示されるデータを見る。


「ビーム兵器かよ……しかも、セシリアのISより出力がはるかに上だ。あんなもの喰らったら……」


ISを纏っていても、間違いなく危険だ。データが一夏にそう告げているのだ。煙の中から現れたその異形な姿に


「何なんだよこいつ……こんな見た目でもISなのかよ……」


さながら蜘蛛のような身体に人の上半身がついたようなその姿。


「お前、何者だ! 何の目的があって来た! 答えろ!」


それに対する返答は無い。すると、真那から通信が入る。


『織斑くん! 凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生たちがISで制圧に行きます!』


一夏はその言葉に対し


「皆が逃げるまで時間を稼がないと」

『そ、それはそうですけど……でも! いけません、おr――』


通信を切り、鈴音に視線を向ける。


「やれるな、鈴」

「だ、誰に言ってんのよ。そ、それより離しなさいってば!」

「わ、悪い……」


一夏と鈴音が離れた瞬間、二人にビームが迫りそれをかわす。


「向こうはやる気満々みたいね」

「みたいだな」


侵入者は地を歩き、空中に居る二人を確認する。


「一夏、あたしが衝撃砲で援護するから突っ込みなさいよ。武器、それしかないんでしょ?」
 
「その通りだ。じゃ、行くぞ!」







 
 

 
後書き
ということで登場しました、ゲルズゲー。中々にゲテモノですね、あれは。

もはやあんな見た目のISあったら乗りたいとは思わないですね……更新は近日行います。 
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