Muv-Luv Alternative~一人のリンクス~
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帰還
前書き
最近になって不知火の3Dモデルを製作しているので更新速度が遅くなります
朝部屋に鳴り響くラッパの音で目が覚める。
「…ああ、唯依中尉の部屋だったな」
横浜基地にある自分の部屋の天井と模様が違う事に違和感を感じたが、昨日の事を思い出し納得する。
部屋に置いてある時計に目を移せば時刻はAM6。そろそろ唯依中尉も此方に来る頃だろう。
そう思い、ベッドから体を起こし、昨日椅子の上に投げておいた軍服に手を伸ばし、袖に腕を通す。
と、丁度そのタイミングで部屋の扉が叩かれる。この時間にぴったり来るのだから唯依中尉だろう。
「シルバ少佐。入っても宜しいですか?」
自分の部屋なのだから遠慮せずに入ればいい、と言う言葉は言わずに、無言で扉の方に近寄り扉を開く。案の定開いた扉の前にいたのは昨日最後に見た姿と変わらない唯依中尉の姿。…違うと言えば眼の下に隈があるくらいか。
しょうがないとは言え恐らくは寝ていないのだろう。この時間までXFJ計画移動に関する手続きでも行っていた筈だ。XFJ計画が国際規模で行われている計画なのだから当然と言えば当然だ。他国の許可も必要だろうに。
「あ、おはようございます!」
突然俺が出てきた事に驚いていた様子だったが、俺の顔を見るなり敬礼を取る。
「おはよう。昨日は助かった」
「いえ、お気になさらず。既に横浜基地との連絡はとってありますので昼頃には向かえがくるかと」
「何から何まで済まないな。…それまではどうしようか」
先ほども言ったが現在の時刻は朝の六時。向こうからの迎えが来るのは昼頃との事なので少なくとも六時間の間が空いてしまう。…この時間を使って唯依中尉にXM3の操作を教えてもよかったが、唯依中尉は寝ていないのだから激しい動きを必要とするシミュレーター訓練は無理があるだろう。
「予定がないなら取り合えず朝食を取ってはどうですか?」
この後どうするか考えていると唯依中尉からそう提案があったので、その提案を受け入れる事にする。
「そうだな…そうさせてもらおう。案内してくれるか?」
「はい」
再び唯依中尉についていく形で食事を取る場所へと足を運んだ。
――――――――――
あの後帝都内のPXで食事を取り、そのままPX内で唯依中尉と今後の事を話している事で時間を潰した。帝都の人間じゃない俺の存在はかなり目立ち、XM3の事もありかなりの視線に晒されたが、少佐と言う立場があるからだろうか、誰も俺には話しかけて来なかった。
最後に月詠と話したかったが、残念ながら顔を合わすことはなかった。
取り合えず唯依中尉の話によると、三日から一週間の間でXFJ計画は横浜基地へと移動になるらしい。本来ならば今すぐにでも、と言いたいところだが、横浜基地も横浜基地でXFJ計画で集まった各国の衛士が泊まれる場所を用意しなければならない。
向こうも向こうで忙しければ此方も此方で忙しいのだ。まぁ…確かに俺と白銀あわせて香月も相当皆を急がせていたからな。それに見合うだけの対価は手に入れたからいいのだが。
「それではシルバ少佐。今度は横浜基地で」
「ああ。向こうは忙しいからな。しっかり体を休めて来いよ」
先ほども言ったが、時は既に昼になっており、俺の迎えも横浜基地からようやく到着した。
一日と言う短い時間だったが、悪くはなかった。また来れる機会があれば来たいものだ。そんな事を思いながら、目の前の唯依中尉に視線を送る。
「はい。シルバ少佐こそ体には気を付けて下さい。XFJ計画はこれから始まるんですから」
…これから始まるか…か。
唯依中尉はどうやら過去の事を忘れ、前を見る決心をしたようだ。俺の視界に移る唯依中尉の瞳には曇りが一切ない、澄み切った色をしている。
負けてられないな。俺も唯依中尉を見習おう。
「そうだな。…それじゃあそろそろ行く事にする」
「はい。お気をつけて」
この会話を最後に俺は帝都を後にした。
――――――――――
「あ、シルバさん!お帰りなさい!」
横浜基地に着き、香月の方へ結果報告をしに行こうとしていると、その途中で白銀と偶然出会った。
「…ただいま。帝都での収穫はでかかったぞ」
少しただいま、と言う単語を言う事に違和感を感じたが、言わない訳にもいかないので取り合えず言っておく。
そして収穫と言う言葉に表情を強張らせる白銀。この収穫の内容によって白銀の未来が変わるのだから当然それを聞く白銀は緊張するだろう。そう言う俺も、もし聞く側の人間だったのならば当然緊張しているだろう。今回はその収穫の内容を知っているので緊張はしないが。
「…聞かせてもらいますか?」
「それを今から香月の方へ報告しに行こうと思ってたんだ。聞きたいなら取り合えず香月の方に行くぞ」
本来ならばこの場で話してもよかったのだが、帝都で過ごした時間が長かったため、香月との約束の時間が過ぎてしまっている。これ以上下手に伸ばしたら何を言われるか分かったものじゃない。
幾ら内容が濃密で今回のそれに成功したと言っても、自分が待たされる事を嫌っている香月の事だから既に機嫌を悪くしているだろう。
「分かりました」
白銀もその事を理解しているのか、すんなりと了承してくれた。
白銀の了承も得られたのでそのまま白銀を引きつれ、香月の部屋へと向かう。
途中で幾度となく整備班の人間と出会ったが、その度にXM3の掴みはどうだったか、と問われた。先程も言ったが、時間がないので簡潔に成功した、としか教えなかったが、それでも整備班の人間は皆嬉しそうに笑っていた。
…今まで人との殺し合いしかしてこなかった俺だが、人の笑顔を見ると此方も不思議と気分が良い。こんな事をあいつに言ったら鼻で笑われそうだが…。
少し過去の事を思い出し、感傷に浸ってしまったが、そうこうしている内に香月の部屋に辿り着く。
何時も通り、扉を数回叩き、返事がなかったので遠慮なくカードを通し部屋の中に入る。
案の定部屋の中に香月は居たが、何時ものようにコンピューターに噛り付いており、部屋に入った俺達に気づいていない。そして今日は香月の隣に余り見かけない社の姿があった。
社は白銀と仲がいいようだが、俺とはあまり話したことがない。話した事がない、と言っても会う事自体そうそうないので、当然の事といったら当然の事だ。
取り合えずこのまま香月を放置するとどれだけ待たされるか分かったものじゃないので香月に近寄り、XFJ計画に関して纏めた資料を机の上に放り投げる。
「ッ!シルバか…驚かせるんじゃないわよ」
「すまない。だが、そうでもしないと気づかないだろう?」
俺の言葉に思い当たる節があるのか香月は少し苦い顔をするとそのまま資料の方に目を通した。
「へぇ…結果はかなり上々じゃない。あんたを行かせて正解だったみたいね」
「最初は俺も緊張したがな。それでテストパイロットを受け入れる準備は出来ているのか?唯依中尉の話によれば近い内に此方に移行するぞ」
「唯依中尉?…ああ、日本側の開発主任ね。テストパイロット受け入れの方は問題ないわ。既に基地指令に話を通してあるから」
「それなら問題はなさそうだな…と言いたいが、各国のテストパイロットのデータはあるか?少し目を通しておきたいんだが」
このXFJ計画で集まるのは日本の衛士だけではない。各国のテストパイロットが集まるのだから、各国の方々を無碍にする訳にもいかない。
間違いなく日本含めたテストパイロット達は初めて使用するXM3の感触に戸惑うだろう。そこで俺含めたXM3の経験がある人間が教える必要が出てくる。XM3経験と言っても俺と白銀、そしてヴァルキリー隊のメンバーぐらいしかいないが。
白銀が教育している訓練兵達の方にもXM3を早く慣れさせるとの予定だが、まだ他の事があるらしく、訓練兵達はXM3には触れていない。
「ほら、持ってきなさい」
その言葉と共に無造作に紙の束を俺に投げつけてくる。咄嗟に投げられた紙を空中でキャッチし、中身を見てみる。
確かに各国のテストパイロットのデータが記載されているが…そんなに無造作に扱っていいものなのか?一応機密書類だと思うのだが…まぁ言っても仕方がないか。それに俺だからこそ見せて貰っていると言う事もある。
と、XFJ計画に関するテストパイロットのデータを見ている最中、ふと目を資料から外すと白銀と視線が交わる。
…そう言えば白銀にも今回の事に関する結果を言わないといけなかった。
その事を思い出し、手元に持っていた資料を白銀に何も言わずに渡してから帝都での事を簡潔に話す。月詠の事や唯依中尉の事。月詠の話をしたあたりから白銀の表情が少しこわばった辺り、白銀は月詠と何かしろの接点があるのかと疑問を抱くが、それを聞くことはしなかった。
白銀の抱えている事情が事情だけに、それに全くといっていいほど関与していない俺が軽い気持ちで踏み込んではいけないと思ったからだ。
「まぁ…取り合えずは成功、と言っていいだろうな。帝国とのパイプの少なからずは作る事が出来たしXFJ計画も此方に持ち込むことが出来た」
「シルバさんには少し失礼かもしれませんが…予想以上の結果です!!」
白銀の言葉に少しばかり含む表現があったので少し俺も思う所があったら、白銀の本当に嬉しそうな表情を見ると何も言えない。
それに俺自信がこんな結果を出せるとは思っていなかったのもある。少なくともXFJ計画を此方に持ち込める事は想定していたが、月詠の事に関しては運が良かったとしか言いようがない。
「認めてもらえたならそれで十分だ。…それで、BETA上陸の事に関する話を聞きたいのだが、詳しい事は分かるか?」
この近い未来に白銀は新潟と言う場所にBETAが上陸すると言っていた。
香月はそれを聞いて最初は疑っていた物の、俺が知らない白銀の持ってきた情報があるために最終的にはそれを信じた。そうなれば何も知らない俺は白銀を信用するしかない。俺に白銀の言葉が真実かどうか見定める情報は何もないのだから。香月が白銀を信じるといえば俺も信用するしかない。
…とは言ったが、香月が今回の新潟の事を信用しなくとも、俺が独断でストレイドを動かしていただろう。
「すいませんが詳しい事は俺にも分かりません。只、BETAが新潟に上陸する日は11月11日。そしてそれに対応したのは恐らくA0-1部隊だと言う事ぐらいです」
白銀の言葉を聞き、香月に視線を送ると、香月は首を縦に振った。
恐らく今この時系列の自分でもそうすると言う意味なのだろう。
「なら話は早い。BETAが上陸する日にちが分かっているなら…香月、ストレイドで迎撃していいか?」
「な!?あんた、それがどういう意味か分かってんの?」
「…少なくともストレイドの存在を公に晒す可能性があることは分かっている。だが…俺はヴァルキリー隊の皆を見捨てる事は出来ない」
ストレイドの存在が公に知られればどうなるかなんて事は分からない。
「…本気なの?」
俺が新潟に上陸したBETAをストレイドで迎撃すれば、ACという異形の存在は一般に大きく知られてしまう。その性能も、単機で上げられる異常ともとれるであろう成果。そしてそこから俺に圧し掛かる重く厚い重圧。
「余りこう言う事は言いたくないが…あくまでこの世界は俺にとって関係のない世界だ。俺は世界を救う事なんかよりも…近くにいる奴らを守る事を最優先する」
「そう…。何を言っても無駄見たいね。あんたも白銀も似てるわよ。後先考えず意見を述べる所は」
「…」
香月の言葉に何も言えなくなる。
実際俺達は自分達で何をする訳でもなく、XM3に関してもAMSに関しても全て香月に任せている。俺達はただこれを作ってくれ、あれをああしてくれと言う子供のわがままにしかすぎない。結局は作る人間が居なければ俺達は何も出来ない。
「まぁいいわ。あんたのストレイドは新型機のテストって形でヴァルキリーに同伴してもらう形で出てもらうわ。それで構わないでしょ?」
「ああ。此方のわがままを通してもらう以上、俺からは何も言えない。…宜しく頼む」
改めて自分の無力さを思い知る。
力だけを持ってても、実際は何も出来ない。守りたいと固い意思を持っても、それを貫き通す事は難しい。
…やはり俺は人の下で何も考えずに操り人形のようになっているのが一番なのかもしれない。
「ったく…テスト機だと此方が言い張っても上から何言われるか…考えただけでも面倒臭いわね」
「すまない」
「いいって言ってるでしょ。あんたらは自分の機体のチェックでもして来なさい。特にシルバの方に限っては暫く触ってもいなかったでしょ?」
この場に留まっても香月の邪魔をするだけだと分かったので大人しく香月の言葉に従い、最後に頭を下げてから部屋を白銀と共に後にした。
部屋の外に出た俺達は一度顔を合わせるが、何を言う訳でもなく、格納庫へと足を向ける。俺の機体であるストレイドは地上の格納庫ではなく、地下の方に入れられているが、地上の格納庫からも行けるので取り合えずは白銀についてゆくだけだ。
新潟にBETAが上陸するまでの日にちは既に近い。
その当日、俺はストレイド…つまりAでBETAに太刀打ち出来るのだろうか。
現実どう考えても戦術機より、ACの方は性能が高いが、一枚の紙に上げられたデータが戦闘にそのまま影響するとは限らない。何時何が起きても可笑しくない場所が戦場だ。
考えれば考える程湧き出てくる小さな不安の数々。俺はその不安の無理やり心の奥底に沈め、白銀の後を付いて行った。
後書き
更新放置して申し訳ありませんでした。
流石に一ヶ月以上放置となると何を書いていたかいまいち思い出せず、構成がかなり可笑しくなっていると思いますが、報告の方宜しくお願いします。
…元々駄文だけどね!
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