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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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20.約束

集が"王の力"を取り戻し、自らのヴォイド.........全てを受け入れるヴォイドを使用して一晩が経った。

俺たちはガイの計画を阻止するため、船でかつてのお台場......24区へと向かった。

船に乗っていた葬儀社メンバーが慌てだす。

「24区からメッセージだって」

「ガイがしゃべってる!急げ!!」

俺も急いで皆が集まる講堂に向かう。

『俺はかつてお前たちに告げた。......邪魔をするなと.......にもかかわらず、24区には34回の物理侵入、42000回のハッキング行為が行われた。故に俺は結論した。.......お前たちは死にたがっている.....滅亡したがっていると。ならばそれを叶えよう......俺はお前たち一人一人の価値を問うことにした。.......12月25日、今ある世界は終了し.......新たな世界が始まるだろう』

12月25日........ガイは再びあれを起こす気だ。........4度目の黙示録を。

「私は供奉院王からその資産とコネクションの全てをガイと戦うように言い使いました。明朝にはそのために集めたPNC。民間軍事会社勢力と合流します。桜満シュウ君、茨カイ君、我々とともに戦ってくれませんか?みなさんもあらためてお願いします。どうか我々に力をお貸しください」

倉地さんが今一度、皆に問う。

「その前に誰か教えてくれねぇか。ガイのやついったい何やらかす気なんだ?」

アルゴが問う。それもそのはず、アルゴはこの件についてほとんど知らない。

「4度目の黙示録」

聞き覚えのある声に皆が声のした方を見る。
するとそこには.......

「世界規模での完全なロストクリスマスを起こす気なのですよ。彼は」

葬儀社のメンバーの一人......四分儀さんが。

「しぶっち!?ウソ!?幽霊!?」

「生きてますよ。シュウ、ガイからこれを預かってきました」

四分儀さんは黒い手帳を取り出す。
その手帳は血が付着している。

「それは!?」

ハルカさんが驚く。
見覚えがあるのか?

「桜満クロス博士の日記です」

「父さんの!?」




「やはりあなたの左腕は物体の時を戻すことができるみたいね」

俺のヴォイドの本当の力を知るためにハルカさんに精密検査を行ってもらった。

「戻せるのは無機物だけのようね。でも、ヴォイドは例外のようね」

「アポカリプスウイルスの時は戻せないんですか、ハルカさん?」

アポカリプスウイルスは結晶という無機物の塊。
俺のヴォイドでアポカリプスウイルスの時を戻すことが出来るのなら、集のキャンサーを戻すことが出来る。

「残念だけどそれは無理みたい」

ハルカさんが少し残念がったように言う。

ヴォイドは人の思いでその力を変える。
祭がそうだったように。俺のヴォイドも.........






すでに空は夕暮れとなる船の甲板に出ると八尋、颯太、草間の3人がしんみりとした空気で誰も口を開かずただただもうすぐ皆を乗せ出発するヘリコプターを見ていた。

「どうしたんだよ、みんな。そんなしんみりした顔して」

3人はこちらをちらりと見て、すぐに下を向く。

「そろそろ作戦開始の時間だろ、カイ」

「もうそろそろ時間だな。集もそろそろくるだろ」

甲板にいる葬儀社メンバーが騒がしくなってきた。

「そろそろ時間だ。なぁ、このままでいるのか、颯太」

八尋がずっと海の方を見る颯太に問う。

「あっ!桜満君!」

草間の声に後ろを向くと集が現れる。
その後ろには綾瀬、ツグミ、アルゴ、倉地さん、四分儀さんが。

「これで全員かな」

集は次の瞬間、驚くべきことを口にする。

「これから君たちにヴォイドを返す」

集の発言にその場にいた皆が驚きを隠せない。

「シュウ君!?」

「待ちなさい、そんなことしたら君の力は」

「でも、返さないと借りたままの状態で僕が死んだらみんなも死んでしまいます」

八尋、颯太、草間が驚く。

「大丈夫、キャンサーとウイルスは僕が引き受けるから。綾瀬、君も来て」

「.......シュウ」

集の右腕にエメラルド色の線が浮かび上がり、ヴォイドを取り出す時のように徐々に光を放つ。

「おい、ふざけるな!!」

八尋が集のマフラーを掴み、怒鳴る。

「昨日は調子良く取り出しといて、今日は返す!!それでどうやって戦うんだ!!」

「この腕でも銃くらいは撃てるよ」

「バカな!!それでガイに勝てると思っているのですか、シュウ!?」

「僕はこの力をいのりやみんなを助けるために使うんです。ガイを倒すためじゃない。おかしいですか!?」

八尋はシュウのマフラーを離す。

「ヴォイドは持っててほしいわ」

綾瀬が声をあげる。

「どうせあんたが失敗すれば、私たちの命もないのよ」

「まぁ、そういうことよね」

「私たちはそれでいいけど。どう、颯太君?」

草間が颯太の方を見る。

「いいよ、それはお前にやったんだ。よくわかんねぇけど。それでいいんだよ!」

集が颯太に近づいて行き、颯太の手を握ろうとする。

「何だよっ!!やめろよ!!」

それを颯太は払う。

「違う返すんじゃない。.......握手をしよう、颯太」

颯太は驚いた顔をする。

「仲直りには握手だろ。颯太が言ったんじゃないか。僕らはこのまま別れちゃいけない.......そう思うんだ」

集が手を握ろうとする。だが、颯太はまた払う。
握ろうする。払う。

集が颯太の手を両手で握る。
颯太は手を握られると急に泣き出し、集はそれを包み込むように抱きしめる。

「.......ゴメン.......この手......ゴメン....シュウ」

「颯太のせいじゃないよ」

「......オレ......お前が怖くて......こんな自分が嫌で.....辛かった」

「僕も同じだよ」

「頼む、シュウ......友達でいてくれ......いてくれよ」

「颯太.......友達だ......僕らは一生.....友達だ」

俺たちを乗せたヘリは船を飛び立った。
大切な仲間との別れ......いや、約束をして.......






 
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