遊戯王GX-音速の機械戦士-
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―修学旅行 前編―
前書き
お久しぶりです
「ああ、お土産期待せずに待っててくれ」
デュエル・アカデミア生徒専用の携帯電話――PDAをポケットにしまい込み、周囲の港のような風景を一回り見回した。
そこにはせっせと働いている人は大勢いるが、見慣れた赤やら黄色やら青色の制服を着たデュエル・アカデミアの生徒は見当たらない。
それもその筈、この港は普段のデュエル・アカデミアの港ではなく、今回十代が修学旅行先に選んだ、別名『海馬コーポレーションの城下町』とも言われている町、《童実野町》の港であったからだ。
「待たせたな、電話終わったぞ」
この港の俺以外のデュエル・アカデミアの生徒である、先程まで船酔いでずっと気分が悪そうに寝ていた三沢に電話が終わったことを告げると、陸上に上がったことでもう気分が良くなったようで、いつも通りの笑みで返してくれた。
「それじゃあ行こうか……レイくんは何だって?」
「自分だけ仲間外れで寂しい、だとさ」
通常デュエル・アカデミアの修学旅行は二年生のみのイベントであるのだが、今回は光の結社の方から多額の寄付があったおかげで、今年の一年生も俺たち二年生と同じように修学旅行に来ているため、剣山も含めて中等部のレイ以外は修学旅行に来ているこの状況のことを言っているのだろう。
ちなみに、一応デュエル・アカデミアの一年生であるエドもこちらに来てはいるのだが、来るときも自家用のボートで来ていたため、未だ姿は見ていない。
「それにしても、修学旅行先がただの田舎町っていうのも変だよな」
この修学旅行の一日目は基本的に自由行動が許されているため、とりあえずデュエルキング・武藤遊戯がデュエルしたという名所でも回っておくことにしたのだが、名所と呼ばれた場所では現地のデュエリストが活発にデュエルを行っているだけで、その伝説のデュエルが追体験出来るわけではないので、正直ただ田舎町を歩いているようにしか感じなかった。
「まあそう言うな。もしかしたら、パワースポットのような場所になっているのかも知れないぞ?」
「デュエルキングがデュエルしただけでパワースポットになるなら、この町はパワースポットじゃない所の方が少ないんじゃないか……?」
カードの精霊だの闇のデュエルだのに関わるようになってからは、そういうオカルトなことにもわりかし肯定的になってはいるが、流石にデュエルキングがデュエルしただけでパワースポットにはならんだろう……
そのまま童実野町をぶらぶらと散策し、ついに俺の一番の来たかった場所であるカードショップ――《亀のゲーム屋》へとたどり着いた。
すぐ前にデパートかと見まがうような大きい量販店があるにも関わらず、小さいながらも近所の常連客に愛されているような、そんな印象を持たせたこじんまりとした店である、デュエルキング・武藤遊戯の実家である。
「いらっしゃい」
店内に入ると同時にしゃがれた老人の声に出迎えられると、デュエルモンスターズを始めとした様々なゲームが俺と三沢の目に入ってきた。
「これは……武藤遊戯や海馬瀬人が使っていたレアカードがこんなにも沢山……!」
常日頃から良く過去のデュエリストの戦歴などを図書室で眺めている三沢には馴染み深いカードたちなのだろう、三沢は喜びを隠しきれずにカードケースを見始めた。
俺はと言うと陳列されているカードケースを見るのはそこそこに、この亀のゲーム屋の店主である、店の奥にいるデュエルキングの祖父――武藤双六に声をかけていた。
「すいません、武藤遊戯はご在宅ですか?」
俺がここに来た理由はただ一つ――デュエルキング・武藤遊戯に会うことであった。
貰った当初は解らなかったものだが、デュエル・アカデミア本島に行くときに、二種類のラッキーカード《エフェクト・ヴェーラー》と《パワーツール・ドラゴン》を渡してくれたのは、思い返してみればあのデュエルキングに他ならない……会ってお礼を言いたかったのだ。
「ほっほっほ、遊戯に挑戦かね? しかしじゃな、遊戯はちと旅に出ておっていないのじゃ」
ここに来た目的は少し勘違いされてしまっていたが、デュエルキングは旅に出ていていないという、予想の斜め上を行く返答は双六老人から得られた……少し、いや、かなり残念だが仕方あるまい。
あまりカードを買う気は無いが、三沢に習ってウィンドウショッピングでもするか、と思ったその時、双六老人が俺の顔を覗き込んできた。
「まさか君、黒崎遊矢かの?」
「……!? ええ、そうですけど」
初対面の双六老人から突如として自分の名前を言われ、ついつい身構えてしまう俺に対し、双六老人はまたもほっほっほ、と笑いながら一枚のカードを取りだした。
「遊戯から頼まれているのじゃよ。『黒崎遊矢という人物が来たら、このカードを渡して欲しい』とな」
そう言いながら、双六老人は俺に一枚のカードを手渡してくる……別に見たことのない背景の色だったり見たことのない効果が書いてあったりしないし、カードの絵柄が描かれていなかったりとそういったことはなかったが、見たことのないカードであることは確かだった。
「……これを俺に?」
「そういうことじゃ。遠慮なく受け取っておきなさい……それと、このカードもサービスじゃ」
双六老人から受け取ったカードと、新しく受け取ったそのサポートカードと思しきカードをとりあえずデッキに入れると同時に、いきなり蹴破られるように亀のゲーム屋のドアが勢い良く開いた。
そして顔を出したのは、見覚えのない、しかし、何の変哲もないどこにでもいそうなデュエルディスクを付けた二人の男だった。
「な、なんじゃアンタら!」
「黒崎遊矢と三沢大地はいるか?」
双六老人がおっかなびっくりその男たちに声をかけるが、男たちはそれを無視して俺と三沢の名前を呼んで来た……今日は、良く知らない人間に名前を呼ばれる日だな。
「俺たちはここにいる。何か用なのか?」
比較的ドアの近くにいた三沢が男たちの前に立ち、用件は何か告げる。
とりあえず俺も双六老人の近くにいても仕方ないと思い、三沢の横に立って二人の男の出方を見る。
「俺たちとデュエルしてもらおう……コイツらの命が惜しければ」
そんな物騒なことを言いながら男が俺と三沢に見せてきたのは、鏡のようなものであり、中には……剣山と翔が倒れていた。
「……ッ!? お前ら、剣山と翔に何をした!?」
「デュエルで俺たちに勝てば教えてやろう」
俺『たち』……つまり俺と三沢、そして相手は男たちで行う、二対二のタッグデュエルということか。
「黒崎くん、三沢くん。このデュエルディスクを使うんじゃ」
双六老人から貸し出されたデュエルディスクをありがたく使わせてもらうと、四人そろってこれ以上亀のゲーム屋に迷惑がかからないように外へ出た。
「俺の名前は岩丸」
少し太り気味な、帽子を被っている男の方の名前は岩丸。
「俺の名前は炎丸!」
対照的にやせ細った身体をした、切れ長の目をして髪が一本立っている男が炎丸というらしい。
『デュエル!』
遊矢&三沢LP8000
岩丸&炎丸LP8000
「俺のターンから、ドロー!」
帽子の男、岩丸の先攻からデュエルは始まる……さて、相手はどんなデッキかな?
「俺は《マイン・ゴーレム》を召喚!」
マイン・ゴーレム
ATK1000
DEF1900
マイン・ゴーレム……《ゴーレム》の名を冠してはいるが、純正の【ゴーレム】には入りはしないことから、恐らくは岩丸という名前の通り、奴のデッキは【岩石族】だと当たりをつける。
「永続魔法《導きの鉱脈》を発動し、カードを一枚伏せてターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!」
俺と三沢のタッグは三沢から始まることになり、俺にターンが回ってくるのは一番最後となった。
「俺は《馬頭鬼》を召喚!」
馬頭鬼
ATK1700
DEF800
三沢の妖怪デッキの、主力アタッカーたる馬頭鬼がまずは戦陣をきることとなった。
その効果は墓地にいる時にこそ効果を発揮する効果だが、全体的に下級モンスターの打点が低い三沢のデッキにはアタッカーとなり得るモンスターである。
「バトル! 馬頭鬼でマイン・ゴーレムに攻撃!」
マイン・ゴーレムはのステータスは、守備力は高いものの攻撃力はそれほどではなく、岩丸はマイン・ゴーレムを攻撃表示で召喚した為に、馬頭鬼が持ったその斧剣に破壊されてしまう……だが、マイン・ゴーレムは被破壊時に発動する効果がある。
「マイン・ゴーレムの効果発動! マイン・ゴーレムが戦闘破壊された時、相手ライフに500ポイントのダメージを与える!」
馬頭鬼の斧剣に砕かれたマイン・ゴーレムの破片が動きだし、三沢と俺の方向に飛んできて俺たちのライフを削るが、破片の半分ほどはそのまま岩丸に飛んでいった。
岩丸&炎丸LP8000→7300
遊矢&三沢LP8000→7500
「更に、永続魔法《導きの鉱脈》の発動! 岩石族モンスターが破壊された時、同名モンスターをデッキから特殊召喚する!」
俺たちにぶつかった破片が、永続魔法の効果により再結集していったため、岩丸のフィールドに再びマイン・ゴーレムが召喚された。
「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
全く予想通りの展開であったためか、三沢は特に驚くこともなく、淡々とカードを一枚伏せてエンド宣言を行った。
「俺のターン! ドロー!」
さて、今度は細いほうの男である炎丸のターンであるが、岩丸と同じように自身が名乗った名前と同じデッキであろうか。
「俺は岩丸の《マイン・ゴーレム》をリリースし、燃え滾るマグマの帝! 《炎帝テスタロス》をアドバンス召喚する!」
炎帝テスタロス
ATK2400
DEF1000
炎帝テスタロス……本来ならばアド損であるアドバンス召喚を、自身の効果によってアド損ではなくさせるという優秀な効果を持ったレアカード群である……何でそんなカードを持っているのか。
「炎帝テスタロスの効果発動! 相手プレイヤーの手札を一枚墓地に送り、モンスターカードならばレベル×100ポイントのダメージを与える! バーニング・ノーブル!」
炎帝テスタロスから発せられた小さい炎が、三沢の手札の一枚を貫く……墓地に送られたカードは、三沢のエースカードたるレベル7モンスター《赤鬼》。
遊矢&三沢LP7500→6800
「更にバトルだ! 炎帝テスタロスで馬頭鬼に攻撃! ブレイズ・ランチャー!」
「くっ……」
三沢の手札を削った時の小さなピンポイントの炎とは違い、その二つ名に違わぬマグマが馬頭鬼を飲み込んだ。
遊矢&三沢LP6800→6100
「カードを一枚伏せターンエンド!」
「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺のターン、ドロー!」
炎丸の《炎帝テスタロス》を主軸にしたビートバーンに、少しライフが削られてしまうものの、まだ大丈夫だろうと推測する。
それより問題なのは、炎丸の使ったカードが《炎帝テスタロス》だけなせいで結局彼のデッキが不明なことだった……名前だけで判断するならば、【炎属性】なのだが。
「俺は三沢のリバースカード《もののけの巣くう祠》を発動! 墓地から馬頭鬼を特殊召喚する!」
解らないことを考えても仕方がない、気を取り直して三沢が伏せていたリバースカードを使わせてもらい、つい先程炎帝テスタロスに破壊された《馬頭鬼》を墓地から蘇生する。
「更にチューナーモンスター、《ドリル・シンクロン》を召喚!」
ドリル・シンクロン
ATK800
DEF300
俺のエクストラデッキに眠る《ドリル・ウォリアー》の指定チューナーであるが、馬頭鬼のレベルは4である為にレベル6のドリル・ウォリアーはシンクロ召喚は出来ない。
まあ、元々今回の狙いはドリル・ウォリアーのシンクロ召喚ではないのだが。
「レベル4の《馬頭鬼》に、レベル3の《ドリル・シンクロン》をチューニング!」
ドリル・シンクロンがその身についたドリルを高速で回転させ、光の輪となり馬頭鬼を包み込んだ。
「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 《パワー・ツール・ドラゴン》!」
パワー・ツール・ドラゴン
ATK2300
DEF2500
ドリル・シンクロンと馬頭鬼の黄色のボディを持った機械竜、ラッキーカードが姿を現す……このままでは炎帝テスタロスに攻撃力が及ばないが、パワー・ツール・ドラゴンの効果を使えば超えられないことは、まずない。
「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! デッキから装備魔法カードを三枚選び、裏向きで相手が選んだカードを手札に加える! 俺が選ぶのは《団結の力》・《ダブルツールD&C》・《デーモンの斧》。パワー・サーチ!」
「……左のカードだ!」
炎丸に選ばれなかった二枚のカードをデッキに戻してシャッフルし、反対に選ばれた左のカードをデュエルディスクにセットする。
「パワー・ツール・ドラゴンに《ダブルツールD&C》を装備し、バトル!」
ここで墓地の《馬頭鬼》の効果を使えば、三沢のエースカードである《赤鬼》を特殊召喚出来る……だが、炎丸のデッキは未だに不明であるし、岩丸が一枚、炎丸が一枚ずつカードをセットした為に相手のリバースカードは二枚。
パワー・ツール・ドラゴンは自身の効果によって破壊を防げるものの、赤鬼にはそんな効果はない……まだ慎重に行っても良いだろう。
「パワー・ツール・ドラゴンで、炎帝テスタロスを攻撃! クラフティ・ブレイク!」
ダブルツールD&Cの効果によって、攻撃力は炎帝テスタロスを超えている。
パワー・ツール・ドラゴンの右手についたドリルが甲高い音をだして唸り、そのまま炎帝テスタロスに突き刺そうとした。
「ただじゃ破壊されないぜ! 永続トラップ《バックファイア》!」
炎丸のリバースカードが開かれたが、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃を阻害する効果ではなかったため、そのまま炎帝テスタロスは破壊されたが、破壊された時に残り火を残して俺に直撃した。
岩丸&炎丸LP7300→6200
遊矢&三沢LP6100→5600
ただではやられないと言ったその言葉通りに、あの永続トラップ《バックファイア》を破壊しない限り、炎属性モンスターを破壊するごとに俺たちは500ポイントという無視出来ないダメージを負うこととなった。
「これで俺はターンエンド」
「俺のターン、ドロー!
岩丸のターンに移ったことにより、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は一旦2300に戻る……そう、帝に破壊されてしまうぐらいの攻撃力に。
「俺は伏せていた《リミット・リバース》を発動し、《マイン・ゴーレム》を蘇生する!」
これで都合三度目の登場となるマイン・ゴーレムであったが、当然ステータスはパワー・ツール・ドラゴンには遠く及ばない。
「マイン・ゴーレムをリリースし、揺るぎない大地の帝、《地帝グランマーグ》をアドバンス召喚する!」
地帝グランマーグ
ATK2400
DEF1000
外れて欲しかった予想通りに、相方の炎丸と同じようにマイン・ゴーレムをリリースしてその名に対応した帝をアドバンス召喚した。
「地帝グランマーグの効果にチェーンして速攻魔法《月の書》を発動し、《パワー・ツール・ドラゴン》を裏側守備表示にする!」
パワー・ツール・ドラゴンに月の書が発動され、裏側守備表示となってダブルツールD&Cが外れると同時に、《地帝グランマーグ》の効果が発動する。
「地帝グランマーグの効果発動! 裏側となったパワー・ツール・ドラゴンを破壊する!」
地帝グランマーグの背後に岩が出現し、守備表示となっていたパワー・ツール・ドラゴンを破壊する。
パワー・ツール・ドラゴンの破壊を防ぐ時に発動する効果を、月の書によって破壊されたために、計算外のパワー・ツール・ドラゴンの破壊となった。
「これでお前たちのフィールドは空だ! 地帝グランマーグでダイレクトアタック! バスター・ロック!」
「《速攻のかかし》を捨てることで、バトルフェイズを終了させる!」
地帝グランマーグが出現させた俺と三沢に襲いかかってきた岩を、俺の手札から飛びでた《速攻のかかし》が代わりに受けた。
「チッ……運が良いな。このままターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!
そのレアカード……君たちは、斎王や光の結社の手の者か?」
三沢がデッキからカードを一枚引くと同時に、岩丸と炎丸に質問を問いかけた。
……なるほど、斎王の手の者ならばレアカードたる帝の存在も納得出来るが、服の色が白くないせいでその存在を頭から消していてしまっていた。
「ふん……勝てば答えてやるよ!」
炎丸の自白により、これでこの二人が斎王や光の結社がらみの人間であることが確定した。
勝てば答えてやるよ、とは言っても、『斎王』と『光の結社』という部外者には訳の分からない二つの単語に何の反応を示さないというのは、亮並みの仏頂面か部外者ではないかどちらかであり、炎丸がそれほど役者であるとは思えない。
「なるほど、負けられなくなった訳だな。墓地の《馬頭鬼》の効果を発動し、閻魔の使者《赤鬼》を墓地から特殊召喚する!」
赤鬼
ATK2800
DEF2100
《炎帝テスタロス》の効果によって墓地に送られた、金槌を持った赤鬼が墓地から特殊召喚される。
「更に《サイクロン》を発動し、お前たちの《導きの鉱脈》を破壊する!」
三沢のカードから凄まじい嵐が引き起こされ、岩丸と炎丸のフィールドにあった永続魔法《導きの鉱脈》を墓地に送った。
「くそ、《導きの鉱脈》が……!」
「これで《地帝グランマーグ》がデッキから特殊召喚されることはない。更に《牛頭鬼》を召喚!」
牛頭鬼
ATK1700
DEF800
先程墓地から除外し、赤鬼を特殊召喚した馬頭鬼と対称となっている妖怪、牛頭鬼を召喚したため、これならば相手プレイヤーへとダイレクトアタックが通る。
「牛頭鬼の効果でアンデット族モンスターを墓地に送り、バトルに入る! 赤鬼で地帝グランマーグに攻撃! 鬼火!」
牛頭鬼が槌を地面を叩いてデッキからアンデット族モンスターを墓地に送り、赤鬼はその口からの火炎放射で地帝グランマーグを破壊する。
「チィ……!」
岩丸&炎丸LP6200→5800
「更に牛頭鬼でダイレクトアタック!」
「ぐああっ……!」
牛頭鬼の両手持ちの槌がターンプレイヤーである岩丸を遅い、このデュエル初のダイレクトアタックが決まる。
岩丸&炎丸LP5800→4100
「カードを一枚伏せ、ターンエンド」
「俺のターン! ドロー! ……よし、《強欲な壷》を発動して二枚ドロー!」
強欲な壷が出現しては破壊され、炎丸がデッキからカードを二枚手札に加え、引いたカードを見てニヤリと顔を綻ばせた。
「俺は手札の《スカル・コンダクター》の効果を発動! このカードを墓地に送ることで、攻撃力が合計2000になる《バーニング・スカル・ヘッド》を二体手札から特殊召喚する!」
アンデット族の案内人がその杖を振り、炎丸の手札から二体の炎を纏ったシャレコウベが特殊召喚され、思わず顔をしかめた。
「バーニング・スカル・ヘッドの効果発動! 手札から特殊召喚された時、相手ライフに1000ポイントのダメージ! しかもそれを二体だ! ヘル・バーニング!」
「……ぐうっ!」
遊矢&三沢LP5600→3600
手札からという条件はあるものの、特殊召喚をするだけで1000ポイントのバーンダメージを与えるという強力な効果を一気に二回もくらい、俺たちのライフが大きく削られた。
「更にやらせてもらうぜ! バーニング・スカル・ヘッドをリリースし、《炎帝テスタロス》をアドバンス召喚する!」
バーニング・スカル・ヘッドの片割れをリリースし、二体目の炎帝テスタロスがアドバンス召喚され、帝の持ち味たるアドバンス召喚時の効果が発動する。
「炎帝テスタロスの効果発動! お前の手札を一枚削る! バーニング・ノーブル!」
二度目となる三沢の手札をピンポイントで焼く炎に、今度はモンスターカード《ピラミッド・タートル》が墓地に送られてしまったため、更に俺たちに400ポイントのダメージが入る。
遊矢&三沢LP3600→3200
「そしてバトル! 炎帝テスタロスで牛頭鬼を攻撃! ブレイズ・ランチャー!」
「……っ!」
自身の片割れたる馬頭鬼と同様に、炎帝テスタロスのマグマのような熱気を持った炎に焼き尽くされてしまった。
遊矢&三沢LP3200→2500
「ハハハ……カードを二枚伏せ、ターンエンドだ!」
「すまない遊矢……かなりライフを削られた……」
「気にすんな。俺のターン、ドロー!」
三沢はああ言うが、フィールドには三沢のエースカードたる赤鬼にリバースカード、しかも墓地には《牛頭鬼》の効果で前のターンで墓地に送られた《タスケルトン》という《ネクロ・ガードナー》の相互互換カードがあるなど、ライフは削られたがボード・アドバンテージはかなり残してくれた。
しかし、こちらに赤鬼がいるのにも関わらず、炎丸は構わず炎帝テスタロスをアドバンス召喚したのが少し頭に引っかかる……単純にバーンダメージを狙ったのか、伏せられたリバースカードに何かあるのか……?
「……俺は《発掘作業》を発動し、一枚捨てて一枚ドローする」
考えても仕方がない、とりあえず手札交換カードを使っておき、墓地でこそ効果を発揮するカードを墓地に送ると同時に一枚ドローする。
「墓地に送られた《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキ・手札・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚出来る! 守備表示で現れろ、マイフェイバリット!」
『トアアアアッ!』
スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400
マイフェイバリットカードがリミッター・ブレイクによって守備表示で特殊召喚されるが、今のところは何もやることはない、更に続けようか。
「《スターレベル・シャッフル》を発動し、《赤鬼》を墓地に送って同じレベルの《パワー・ツール・ドラゴン》を特殊召喚する!」
自分のフィールドのモンスターを墓地に送り、そのモンスターのレベルと同じレベルのモンスターを墓地から特殊召喚する魔法カード、《スターレベル・シャッフル》によって赤鬼をリリースし、地帝グランマーグに破壊されたパワー・ツール・ドラゴンを再び呼び戻した。
「蘇ったパワー・ツール・ドラゴンの効果――」
「甘いぜ! 《ブレイクスルー・スキル》を発動! パワー・ツール・ドラゴンの効果を無効にする!」
パワー・ツール・ドラゴンがパワー・サーチを発動しようとした瞬間、炎丸のリバースカードがパワー・ツール・ドラゴンの動きを封じ込めた。
「赤鬼をリリースしたのは失敗だったな! これで炎帝テスタロスを倒せなくなった!」
「こいつは残念、ならばチューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》を召喚!」
エフェクト・ヴェーラー
ATK0
DEF0
はごろもを羽根のようにしたラッキーカードの登場により、俺のフィールドにラッキーカードが並んだ……なのだから、やることなど一つしかない。
「レベル7のパワー・ツール・ドラゴンにレベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング!」
エフェクト・ヴェーラーが光の輪になりパワー・ツール・ドラゴンの周囲を回り、その身に包んでいた鎧を炎と共に外した。
「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」
ライフ・ストリーム・ドラゴン
ATK2900
DEF2400
遂に全ての装甲板が外れ、ライフ・ストリーム・ドラゴンの正体が露わにし、俺たちの上空へと飛んだ。
「くっ……これがライフ・ストリーム・ドラゴンか……!」
「ライフ・ストリーム・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、ライフを4000ポイントにする!」
三幻魔の時以来の効果により、ライフ・ストリーム・ドラゴンが出した光に触れた俺と三沢のライフが4000ポイントまで戻る。
遊矢&三沢LP2500→4000
「……これでもうお前らのバーンは通じない……バトル! ライフ・ストリーム・ドラゴンで炎帝テスタロスを攻撃! ライフ・イズ・ビューティーホール!」
「それも甘いぜ! リバースカード《聖なるバリア-ミラーフォース》を発動!」
ライフ・ストリーム・ドラゴンの放った光弾を、炎帝テスタロスの前に張られた光のバリアがライフ・ストリーム・ドラゴンへと跳ね返した。
「これでお前らのモンスターは全滅だ!」
「だが、ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果を発動する! 墓地から装備魔法《ダブルツールD&C》を除外することで、破壊を無効にする! イクイップ・アーマード!」
ライフ・ストリーム・ドラゴンはその効果によって破壊を免れるものの、俺のデッキではただのバニラモンスターにも等しい《牛頭鬼》はそうもいかず、ライフ・ストリーム・ドラゴンの攻撃に当たって破壊されてしまう。
三沢にすまない、とアイコンタクトをした後、再びライフ・ストリーム・ドラゴンに攻撃を命じる。
「ミラーフォースは攻撃自体を無効にはしない! よって、ライフ・ストリーム・ドラゴンの攻撃は止まりはしない!」
ライフ・ストリーム・ドラゴンがもう一度光弾を撃ち、炎帝テスタロスの胸の部分を貫いて破壊した。
「ミラフォで攻撃が止まらないことなんてあんのかよ……!?」
岩丸&炎丸LP4100→3600
「だが炎帝テスタロスが破壊されたことにより、永続罠《バックファイア》の効果発動! 500ダメージを与えるぜ!」
炎属性モンスターが破壊されたことで永続罠《バックファイア》が起動し、炎が俺たちに撃ち出されたものの、その炎は俺たちの前に立ったライフ・ストリーム・ドラゴンに吸収された。
「ライフ・ストリーム・ドラゴンがいる限り、俺たちにバーンダメージは届かない。ダメージ・シャッター!」
ビートバーンよりのデッキ構成たる岩丸と炎丸にとって、ライフ・ストリーム・ドラゴンはかなりの有効な手段と化し、その効果を惜しみなく使ってライフポイントを逆転させた。
「ターンエンドだ」
「くっ……俺のターン、ドロー! ……《マジック・プランター》を発動し、二枚ドロー!」
ライフ・ストリーム・ドラゴンの登場によって、もはや《バックファイア》はいらなくなったのか、《マジック・プランター》で二枚ドローに昇華する。
「俺は手札から《死者蘇生》を発動! 墓地から蘇れ、《マイン・ゴーレム》!」
……何故ここでマイン・ゴーレムを、しかも攻撃表示で特殊召喚したんだ? 墓地にはライフ・ストリーム・ドラゴンに勝るモンスターはいないが、その中でもわざわざマイン・ゴーレムを選んで攻撃表示で特殊召喚する理由は……?
「更に速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動し、マイン・ゴーレムをデッキから更に二体特殊召喚する!」
「ならば俺は、《スピード・ウォリアー》を更に二体守備表示で特殊召喚する!」
《地獄の暴走召喚》の効果は良く知っているし、俺のフィールドにいるスピード・ウォリアーは、もちろんデッキに三枚積まれている……先日のローズとのデュエルの時のように不発にならなくて良かった。
これで俺たちのフィールドにはライフ・ストリーム・ドラゴンと三体のスピード・ウォリアーに、三沢が伏せた一枚のリバースカード。
対する岩丸と炎丸のフィールドは特殊召喚されたマイン・ゴーレムが三体と、守備表示のまま放置されている《バーニング・スカル・ヘッド》のみだ。
「更に《クロス・アタック》を発動! 同じ攻撃力を持つモンスターが二体いる時、一体の攻撃を封じることでダイレクトアタックが出来る! バトル! マイン・ゴーレムでダイレクトアタックだ!」
マイン・ゴーレム一体の攻撃を封じたことで、一体のマイン・ゴーレムがライフ・ストリーム・ドラゴンとスピード・ウォリアーたちをすり抜けて、俺たちにダイレクトアタックを仕掛けてくる……たかが攻撃力1000ポイントだ、《タスケルトン》を使わなくても構わないだろう。
遊矢&三沢LP4000→3000
「……よし、これで終わりだ! メインフェイズ2、墓地の《ブレイクスルー・スキル》を除外することで、ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果を無効にし、速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動! 手札を一枚捨てることにより、このターン、俺は罠カードを手札から使うことが出来る!」
この局面でライフ・ストリーム・ドラゴンの効果を無効にしての罠カード……となると、思い浮かべるのは一枚のバーンカード……《マイン・ゴーレム》を主軸とした岩丸のデッキに入っていないわけがない、マイン・ゴーレムの強力なサポートカードが……!
「手札から《岩盤爆破》を発動! マイン・ゴーレムを全て破壊し、その数×1000ポイントのバーンダメージを与える! 俺たちのフィールドに《マイン・ゴーレム》は三体! よって、3000ポイントのダメージで終わりだ!」
「チェーンして三沢の速攻魔法、《上級魔術師の呪文詠唱》を発動! 俺は手札から魔法カードを使うことが出来る! 俺が発動するのは……《ミラクルシンクロフュージョン》!」
俺たちのライフポイント3000ポイント引く岩盤爆破によるバーンダメージ3000ポイントという、単純な引き算で解る危機的状況に俺が使ったのは、先程双六老人に貰ったモンスターカード、そのサポートカードであるという魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》。
よって、この魔法カードから現れるは、俺の新たな仲間……!
「ライフ・ストリーム・ドラゴン! スピード・ウォリアー! お前たちの力を融合する! 融合召喚! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」
波動竜騎士 ドラゴエクィテス
ATK3200
DEF2000
フィールドの《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と《スピード・ウォリアー》が融合されたことにより、二人とは似ても似つかぬ槍を持った竜騎士がその翼で飛翔し、その巨大な槍を構えて俺と三沢を護るように俺たちの前に羽ばたいた。
「《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》……フ、君にはいつも驚かされるな」
三沢をもってしても知り得ないカードであるらしく、肩をすくめて小さく笑っていた。
「だ、だから何だって言うんだ! 岩盤爆破の効果の3000ダメージ、受けてもらう!」
突如として現れたドラゴエクィテスに驚いたようだったが、《岩盤爆破》を発動させれば自らの勝ちだということを思いだしたのか、いきなり強気になって岩丸は喜々として効果処理に入った。
マイン・ゴーレム三体に向かってダイナマイトが投下されていき、そのダイナマイトで爆発したマイン・ゴーレムが更に誘爆し、その名の通りに《岩盤爆破》と言った光景になっていく。
だが、その爆発の衝撃は全て、ドラゴエクィテスがその手に持った槍で吸収していた。
「ドラゴエクィテスの効果発動! 俺たちが受けるバーンダメージを、全てお前らに返す! ウェーブ・フォース!」
「……何だと!?」
ドラゴエクィテスが受けた衝撃を全てその槍から放出し、《岩盤爆破》によるダメージは全て、岩丸と炎丸へと反射された。
「ぐあああああ……!」
岩丸&炎丸LP3600→600
自らが起こしたダメージを多大に受け、岩丸たちのライフは風前の灯火となるが、彼らはまだ諦めてはいなさそうだった。
「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードの確認もそこそこにし、三沢は手札の一枚のカードに手を伸ばした。
「遊矢があんなモンスターを召喚したんだ、俺が何もやらないわけにはいかないな。スピード・ウォリアー二体をリリースし、《赤鬼》をアドバンス召喚する!」
再び現れる閻魔の使者だが、先程現れた時と違うのは墓地からの特殊召喚ではなく、俺のマイフェイバリット二体をリリースしたアドバンス召喚ということであり、彼らが持つ帝と同じようにアドバンス召喚時に発動する効果が起動する。
「赤鬼がアドバンス召喚に成功したため、効果を発動する! 手札を一枚捨て、そのリバースカードを手札に戻す。地獄の業火!」
赤鬼が吐いた、攻撃の時よりも広範囲の火炎放射が、岩丸が伏せたリバースカードを手札に戻させた。
「……《陰陽鏡》が!?」
「バトル! 赤鬼でバーニング・スカル・ヘッドに攻撃! 鬼火!」
バーニング・スカル・ヘッド自身が纏っていた炎とは、全く比べものにならないような熱気の炎が直撃し、バーニング・スカル・ヘッドは抗いようもなく破壊され、これで岩丸と炎丸のフィールドは空となった。
「君が決めてくれ、遊矢。ドラゴエクィテスは君のカードだ」
「そうだな。お言葉に甘えさせて貰おうか」
三沢の申し出をニヤリと笑いながら受け、新たな仲間である竜騎士にトドメの一撃を命じる。
「波動竜騎士 ドラゴエクィテスでダイレクトアタック! スパイラル・ジャベリン!」
竜騎士の名に恥じないように翼を瞬かせて飛翔し、勢いをつけて岩丸と炎丸に槍を投げつけた。
「うわあああああっ!」
岩丸&炎丸LP600→0
波動竜騎士 ドラゴエクィテスという新たな仲間のおかげで、デュエルは俺と三沢の勝利という結果で終結した。
「約束通り、お前らがなんでデュエルを挑んで来たか訊かせてもらおうか」
三沢と共に勝利の余韻に浸るのもそこそこに、デュエルに敗れた衝撃で倒れた岩丸と炎丸の近くで尋問のように問いただした。
「……俺たちは、斎王美寿知様から命令されてデュエルした」
観念したのか義理堅いのか、炎丸がとつとつと語りだした……が、今デュエル・アカデミアに在籍している『斎王』の名は、確か斎王琢磨といった名前であったはずであり、そもそも美寿知という名前から察するに女性である。
「うあああああっ!」
突如として響いた悲鳴に俺と三沢が振り向くと、亀のゲーム屋内で倒れていた翔と剣山を移していた鏡に岩丸が吸い込まれていっていた……!?
「岩丸……わあああああっ!」
俺たちが呆然としている間にも、相棒である岩丸を助けようとした炎丸もが鏡の中へと吸い込まれていく……高田との闇のデュエルでの、闇に吸い込まれていった明日香のように。
「離れろ遊矢! 危険だ!」
「くっ……解ってるさ……!」
あの時の明日香がフラッシュバックしたからか、無意識に岩丸と炎丸を助けようとした俺を三沢が引き止めてくれ、岩丸と炎丸はそのまま鏡の中へと吸い込まれていった。
そして、岩丸と炎丸と入れ替わりに、巫女装束の女性の姿が浮かび上がる……半透明であるので、本物ではなくソリッドビジョンと同じようなものであろう。
「お前が……『斎王美寿知』か?」
「――いかにも。そして、そなたらが捜している斎王琢磨の妹でもある」
俺の自然と口から出た質問に、ソリッドビジョンの斎王美寿知は古風な口調で応えてくれる……なるほど、妹というのであれば、同じ名字であるのも頷ける。
「何が狙いだ? 翔に剣山、岩丸や炎丸をどうした?」
「質問は一つずつにせい……まあよい。その質問は、明日海馬ランドのバーチャル空間の中で答えよう……」
それだけ言うと、斎王美寿知の姿が半透明から更に薄まっていき、その姿を写していた鏡ごと、徐々に見えなくなっていった……ここまで来てオカルトを信じないと、もはや現実逃避だな。
「明日、海馬ランドのバーチャル空間で、か……あそこのバーチャル空間は人間が閉じ込められるという事故があったと聞く」
三沢が俺に警告めいた言葉を言いながら、『どうする?』とでも言いたげな表示でこちらを伺ってきた……俺がどう答えるか、もう解っているだろうに。
「今日で大体回ったから、明日どこに行くか迷ってたが……行き先が決まったな、三沢」
「フ……せっかくの修学旅行だからな。あの海馬ランドのバーチャル空間を学ばせてもらおう」
……警告めいた事を言ってくる癖に、自分も行く気しかないんじゃないか。
こうして、俺たちの修学旅行の一日目の自由行動時間は、終わりを告げるのであった。
後書き
修学旅行編の開始、そして新たな切り札の入手でした……ドラゴエクィテスに出番がとられたせいで、遊矢と三沢のコンビネーション的なものがイマイチな描写になってしまいましたが……
では、感想・アドバイス待っています
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