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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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18.交差する道

僕は裏切られた..........供奉院さんに......颯太に......みんなに

僕のやってきたことは間違いだったのか........

「シュウ!!!!」

「.....いのり!」

いのり..........
いのりだけは僕を裏切らない。
いのりだけは僕を信じてくれる。
いのりだけは.......

次の瞬間........僕のことを裏切らず信じて、僕の元に来てくれた、いのりが僕の目の前で撃たれる。

撃たれ、いのりから巨大な剣のヴォイドが出現する。

「いのり!!!!」

僕は夢でも見ているのか........
いるはずのない彼がエンドレイヴとともに現れる。

彼は僕の元に近づいてくる。

「久しぶりだな、シュウ」

僕の知っている彼とは髪の色が違うが間違いなく僕の知る彼だ。
僕の憧れ、僕の親友.......ガイ。

驚きのあまり声が出ない。

「.........えっ?」

何が起きたんだ......右腕が.....えっ!?
飛び散る血しぶき.......感覚がなくなる右腕。

ガイは右腕を上にあげる。
すると僕が"王の力"を得た時のように腕に銀色の糸のようなものが巻きつく。

ここでようやく気づいた僕の.....ぼくの右腕が......

「あ......あぁ......あぁぁぁ......あぁぁぁ.......」

僕の右腕が......僕の僕の......

「あぁぁぁぁぁ........あぁぁぁぁ......あぁぁぁぁぁ.......腕がぁぁ!!!僕の!!!僕の"王の力"がぁぁぁ!!!!!」

腕が....."王の力"が!!!!
襲いくる痛み......全てを失った失望感.......膝から崩れ落ちていく。

「王だと......忘れたのか。お前は横取りしただけ........最初から王は俺だった」

これが僕の罪なのか......僕が受ける罰なのか.......






「何だよ、これ!!!!!」

すると上空に巨大な飛行物体が現れる。

「王様、あれ、ヤバくない」

「だよな」

弩砲のヴォイドを取り出し、目標を飛行物体に合わせる。

だが、地上からミサイルのようなものが飛行物体に向かって飛んでいく。それは、飛行物体から降り注ぐミサイルを全て紋章のようなバリアで破壊しながら飛行物体に向かっていく。

飛行物体に直撃すると、ミサイルは結晶に変わり砕け散る。それと同時に飛行物体も爆発する。

あのミサイルはヴォイドだ。
それが結晶化したということは.......これが意味するのは、所有者の死。

ガイの近くにいる3人の生徒が結晶となり消えていく。
3人が同時に消滅ということは、ヴォイド融合.....しかも、この能力は集の能力じゃない......じゃあ、誰のだ!?

何か状況がおかしい!?
エンドレイヴ同士が争いあっている。
正確に言えば一機だけが綾瀬やツグミを守っている。

「シオン、集といのりを頼む!!!」

「うん!!!」

俺とシオンはガイの元へと向かう。

「ガイ!!!!」

ガイは振り向きこちらを向くがエンドレイヴが行く手を邪魔する。

「邪魔だ!!!」

左手を前に出す。
俺のヴォイド.......時を巻き戻すヴォイドで向かってくるエンドレイヴの時を戻し、エンドレイヴが巻き戻しされるように俺の前から消える。

「ガイ!!!」

さらに供奉院が盾のヴォイドで俺の邪魔をする。

「悪い!!供奉院!!」

左手で供奉院の盾のヴォイドに触れ、ヴォイド時を戻す。ヴォイドは出現する前の状態となり俺の前から盾のヴォイドが消える。
そして、供奉院を横に飛ばす。

ついにガイの元についた。

「久しぶりだな、イバラ」

「そうだな、ガイ」

今のガイからは昔の俺たちの指導者だった面影は感じられない。
今のガイからはダァトの墓守とかいうあの少年と同じ感覚がする。

「感動的な再開......とはいかないようだな.....ガイ」

「そうだな......イバラ」

ガイの周りには無数のエンドレイヴ......その銃口は全て俺を向いている。

「.......やれ」

ガイの声とともにエンドレイヴから一斉に銃弾が連射される。

左腕を上に掲げる。左腕の中央に入るラインが緑色に光る。

飛んでくる全ての銃弾の時を戻す。
銃弾は映像の逆再生の様に銃の中に吸い込まれていく。
そしてエンドレイヴの持っていた銃が爆発する。

「それがお前のヴォイドか」

「ああ」

「お前は俺の元に来る気はないようだな」

「ああ.......それに俺はもう消える」

「なに!?」

その時、シオンの声が聞こえる。

「王様!!!オッケーだよ!!」

「おう!!それじゃあな、ガイ!!」

右腕から聖杯のヴォイドを取り出す。そこから出てくる昆虫によって俺は姿を晦ます。






それから一日が経った。

「どうだ、出れそうか、シオン?」

「ダメ!警備がキツくて出れそうにないよ」

俺たちは何かの劇場らしき建物に身を潜めた。

「......シュウ、お腹減ってない?」

いのりが倒れる集に話しかけるが集は......

「......ゴメン、みんな.......ゴメン......僕が間違ってた.....ゴメン」

いのりが何かに気づいた様に外に出ていく。

「.......いのり?」

「王様は待ってて。いのりは私に任せて。王様はシュウをお願い」

シオンがいのりを追って外に出て行く。

「集......いつまでそうしてるつもりだ」

「......ゴメン、みんな......ゴメン」

倒れる集を無理矢理起こし、胸ぐらを掴む。

「集!!お前は何がしたいんだ!!!みんなに謝りたいなら直接言え!!」

「......ゴメン......ゴメン.....みんな.....」

「......クッソ!」




日がくれる......だが、いのりとシオンは帰って来ない。
集は柱にもたれかかり電子端末で何かを見ている。

集が変わったのは俺のせい......俺が勝手な行動をしたから...俺が弱かったから......大事な仲間を.....祭を失うことに.......

このヴォイドで時が戻せるなら......あの頃に戻って馬鹿な俺をぶん殴ってやりたい。

気分転換に外に出る。
結晶が残る腐り切った風景。
第二次ロストクリスマスが起こした悲劇。
そして、東京封鎖によって起きた大量虐殺の惨劇の後。

「カイ!!!」

シオンの声で"カイ"と呼ぶ声が。
シオンが俺のことを"カイ"と呼ぶ時は何かある時だけだ。

シオンの方を見ると.......シオンの顔には血のあとが......
だが、シオンの顔から血が出たようには見えない。
シオンは俺に飛びついてくる。

「シオン?」

シオンの体は震えていた。

「カイ.....カイ.....カイ」

「どうしたんだ?」

「わからない、わからないの。.......自分がわからないの」

その目には大粒の涙が流れ落ちる。
俺は何も言わずシオンをそっと抱きしめた。




そのまま寝てしまったシオンを中に運ぶと集が眠っているいのりの前にご飯を作っていた。

その横にシオンを寝転がらせる。

「集、シオンにも」

集は無言で俺にご飯と味噌汁の缶を渡してくる。

準備を終え、俺と集は外に出て行く。

「ゴメン..........壊」

「お前、謝ってばかりじゃねぇか」

「壊には、特に謝らないといけないから......その腕」

集は、俺の左腕を見る。

「やっぱりお前だったか。.......別に気にしてねぇよ.....と言いたいところだがはっきり言えばまだ許せねぇよ。お前はシオンを殺そうとした」

「..........言い返す言葉もないよ」

俺は左手で拳を握る。

「一発殴らせろ」

「えっ!?」

「あの時、言っただろ。俺はお前をぶん殴るって」

集は俺の方に体を向け、目を閉じる。
左の拳を今一度握りしめ、集を殴る........が、歌が聞こえ止める。

「この声はいのりとシオン?」

声の聞こえる方に俺と集は向かうと天井が破壊され夜空が見えるプラネタリウムだった場所であろう所でいのりとシオンが歌っている。

「......いのり」

「......シオン」

歌声を聞いていると目から涙が溢れてくる。

「あれ......」

集も泣いている。

「聞いてシュウ、もう自分を嫌いにならないで」

「カイも自分を責めなくてもいいよ」

「私、シュウと一緒にいてたくさんの気持ちをもらったよ。全部シュウのおかげ。みんながシュウのことを嘘つきって言っても、自分のことを嫌いになっても、私はシュウの味方だから」

「私もカイがどんなことをしても、私はカイについていくよ。それがどんなに辛い茨の道だとしても」

シオンが俺を抱きしめてくる。
シオンは暖かく、柔らかく、何より優しい。

「シオン」

「いのり」

「それじゃあ、いくね」

「またね、カイ」

「みんなが探してるのは私たち」

「だから、私たちが囮になる。その間に.....」

「そんなのダメだ!!!」

「囮なら俺が........シオンたちを犠牲にするぐらいなら.......」

シオンが俺の額に指を当てる。
すると、急に眠気が襲ってくる。

「シ、シオン......」






「うっ.......う」

目を覚ますといのりとシオンの姿はなくなっていた。

「集、起きろ」

集は目を覚まし、手の中にあるいのりの髪留めを見るとまた泣き出しそうになる。

「泣いてる暇があるなら.......やることはわかるだろ」

集は涙を拭い立ち上がる。

「うん、そうだね」

集は決意を決めた顔で俺の前に立つ。

「そういえば、まだだったな」

俺は左手で拳を握りしめ、集の頬をぶん殴る。

集は当然ながら吹き飛ばされていく。

「行くぞ、集!!!」

集に手を差し伸べる。

「うん!!いのりとシオンを助けに!!!」

その手を力強く集は握りしめ立ち上がる。




途絶えた俺たちの道が今一度交差した。 
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