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100年後の管理局

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第五話 稲妻、加勢

「それじゃあ、相手の犯人の武装を教えていただけますか?」
三人と別れた後、アリスは本局の転送ポートから送られてきた座標の方へと転移し、110部隊との合流を果たしていた。
「はっ!敵の武装は銃剣の武装のみですが、近接戦闘及び遠距離砲撃共にAA級相当と確認が取れています。」
「他に何か特殊な攻撃などは?」
「特に確認できていません。非常にオーソドックスなジーンドライバーかと。」
「分かりました。」
アリスは110部隊の隊員から犯人の戦闘能力についての情報を聞き出す。
その結果、犯人はこれといった特徴を持たないが、所有する戦闘能力は極めて高い部類に属していることが判明した。
アリスはその後二、三、犯人についての情報を受け取り、110部隊から離れた。
「準備はいい?バルディッシュ。」
『Yes, sir.』
「セットアップ!」
『Set up.』
瞬間、金色の光がアリスを包む。
そして、その光が晴れた時、黒のレオタードと言うべきだろうか、非常にそれに近い衣装を身にまとい、さらに白のミニスカートを履き、白い裏生地の黒いマントを羽織った姿で現れた。
「それじゃあ行くよ!バルディッシュ!」
『Thunder move.』
アリスとバルディッシュが声を掛け合ったと同時に黄色の閃光が瞬き、アリスはその姿を消した。


ジーンドライブシステム。
それはかつて管理局が抱えていた慢性的な人手不足を解決した画期的なシステムである。
開発のきっかけとなったのは、新暦81年ごろに発生した事件、エクリプス事件にある。
エクリプス事件とは、エクリプスウイルスと呼ばれるウイルスを原因として発生した一連の事件全てを指すことであるが、ここではその詳細を割愛する。
話を戻すと、ジーンドライブシステムとはエクリプスウイルスに似た性質を持つナノマシンを体内に注入し、個人個人の遺伝子に適合した形でナノマシンが進化。それにより個人が魔力に頼らない武装を展開することを可能にしたシステムのことである。
魔力に頼らない以上、戦闘能力の大半を魔導師に頼っていた管理局は即刻このシステムを採用し、人手不足の解消を得た。
しかし、それによって発生する問題もないわけではなかった。


「ハハハハ!邪魔だ、邪魔だ!」
背格好からすれば15歳程度の少年が、少年を捕らえんとかかる大の男たちをバッタバッタとなぎ倒している。
「クカカ!弱いんだよ!」
また一人、少年を取り押さえようとした男が少年に無造作に吹き飛ばされる。
「くっ、強い………。」
一人の男が、幾人もの仲間を斬り飛ばし、吹き飛ばし、蹴り飛ばした少年を睨み、呻く。
自分たちではおそらくかなわないことは男の中でも理解できていた。
それほどまでに少年は強かったのだ。
けれど、男はあきらめなかった。
持っていた杖を構え、少年に問う。
「何が目的だ!」
そう、幸い死者は出ていないものの、幾人もの重傷者を出した少年の目的はいまだ知れていなかった。
あまりにも唐突に少年は暴れ出し、近隣の住民を傷つけ、そして管理局員たちと戦っていたのだ。
誰も少年がなぜ暴れているのかを知らない。
だからこそ、問う。
「何故、このような真似をする!?」
しかし、その問いかけに対し、少年の返事はあまりにもひどい理由だった。
「何故?はっ!むかつくからだよ!てめえら大人がよ!」
少年は声を荒げ、叫ぶ。
「どいつもこいつも俺より才能ないくせして、偉そうにしやがる。たかだか十数年俺より早く生まれただけじゃねえか。才能もないのに上から目線であれやれ、これやれうるせえんだよ。」
少年は自分の中にある不満をぶつけるかのように恨み事を吐く。
その言葉には強い憎しみの感情がこもっていた。
「だから暴れてやったんだよ。どうせ俺より強い奴なんていねえんだ。いくら暴れたって誰も俺を捕まえられねえ。実際誰も俺に敵わなかったしな。」
クケケ、と少年は笑う。
しかし、男にとってその言葉は衝撃的だった。
一児の親でもある男にとって、子供にあれこれ言うのは子供にきちんと育ってほしいからであり、そこに決して他の感情など交じったことはなかった。
だからこそ、少年持つ憎しみの感情が、それを理由に暴れたことが、理解できなかった。
「そんな理由で………。」
それを聞いた少年はその顔に嘲笑を浮かべた。
「そんな理由だぁ?そう言えんのはあんたが才能ねえからだろ?才能のねえ奴が才能のあるやつの事なんか理解できるはずがねえんだよ!」
そう言って少年は男に一気に近づき、男に向かって銃剣を振り下ろす。
その瞬間、黄色の閃光が瞬き、何かが銃剣を受け止めた。
 
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