レッドバロン

「そして攻めるよ」
「わかりました、それでは」
「今から」
「攻めますか」
「そうして」
「彼等は奇襲をしようとしている」
　そのポイントに来る筈の彼等に対してだ。
「だから奇襲をすることだけを考えているよ」
「奇襲を受けることは考えていない、そうですね」
「そういうことですね」
「如何にも」
　まさにその通りだと言うリヒトホーフェンだった。
「その通りだよ、ポイントを見てはいるけれど」
　高度的に雲の横だ、尚ドイツ軍は既に雲の上に来ている。
「他の位置は見ていないね」
「それが彼等の失態ですね」
「そうなりますね」
「奇襲を考えている相手程奇襲しやすい相手はいない」
　逆説的にそうなることだった。
「さて、それじゃあね」
「はい、では」
「行きましょう」
「私が最初に撃つよ」
　リヒトホーフェンがだというのだ。
「そして彼等を突き出すからね」
「そこで出て来た彼等にですね」
「さらに」
「そう、一気に仕掛けよう」
　こうした話が為されてだった、リヒトホーフェンの赤い機体が動いた。
　その雲の真上に来たところで軽く銃撃を行った、そして。
　一気に雲を突っ切った、するとだった。　
　それに驚いたイギリス軍は雲から出た、その彼等に。
　リヒトホーフェンは単機で向かう、その赤い機体を見て。
「レッドバロンだ！」
「リヒトホーフェンだぞ！」
「一旦散開しろ！」
「一機では勝てる相手じゃない！」
「数機で向かえ！」
　彼等はリヒトホーフェンだけを見ていた、その赤い機体だけを。
　それで彼に向かおうとする。だがここで。
「諸君、今だ！」
「はい！」
「行きます！」
　ドイツ軍のパイロット達が一斉に動く、リヒトホーフェンのその言葉を受けて。
　空を降り陣を乱すイギリス軍に向かう、そうしてだった。
　上から一気に奇襲を浴びせた、奇襲は見事成功した。
　イギリス軍は次々と撃墜され空から消えた、その一撃が決定打になった。
　イギリス軍は真央ｔも似奇襲を受けて流れを取られた、そして最後は算を乱して逃げるだけになってしまった。
　戦いはドイツ軍の勝利に終わった、その中でだった。　
　リヒトホーフェンは通信を入れた、その先はというと。
「いいだろうか」
「あっ、何でしょうか」
　地上部隊に対してだった、その通信を入れてだったのだ。
「うん、撃墜したイギリス軍のパイロット達だけれど」
「彼等ですね」
「捕虜にしてね」
「抵抗するのなら仕方ないけれど」　
　だがそれでもだというのだ。、
「そうでない場合はね」
「はい、捕虜として丁重に扱う」
「そうしろというのですね」
「うん、頼むよ」
　彼が言うのはこのことだった。
「そうしてくれるね」
「いつも通りですね」
「そうして」
「そうしてくれるね」　
　リヒトホーフェンは撃墜された敵軍のパイロットの待遇を頼んだのだ、それが終わってからだった。
　ルード達はその彼にこう言った。
「あの、先程の通信ですが」
「捕虜についてですか」
「丁重に扱って欲しいと」
「そう仰りましたが」
「うん、いつも言ってるよ」
　リヒトホーフェン自身もそうしたことを認める。