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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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12.ロストクリスマス

「王の器を得ながら、いつまでも虚ろなままで.....ここでお別れです、さようなら.....オウマシュウ!!」

白衣の少年はいのりのヴォイドで高く振り上げ、そのまま、集に振り下ろす。

「集ぅぅっ!!!」

血が飛び散る。
赤い血が......。

だが、それは集のものではなかった。

それは.......集を助けに身代わりとなったガイのものだ。

ガイは倒れこむ。

「ガイ!!」

「だから、ほっと....けないんだ....お前は」

「ガイ!!しっかり!!」

ガイはグッタリとする。

「ガイ!!ガイ!!ガイィィ!!!」

「嘘.....だろ」

ガイが.......
.........まさか

するとこんな時に羽虫どもが騒ぎ出す。

頭の中にビジョンがいくつも浮かぶ。
ーー海が見える光景ーー桜色の髪の少女と水色の髪の少女が見える光景ーー金髪と茶髪の少年と橋を飛び越えている光景ーーそして......燃え盛る教会に誰かがいる光景ーー

このビジョンって......まさか!?

「君は......まさか」

集も何かに気づいたようだ。

「......やっと....思い...出したか.....鈍いのは相変わらずだな........シュウ」

「君は......」

ガイは精一杯の力で白衣の男の方を見る。

「ようやくお出ましか.......ダァトの墓守り」

「......墓守り?」

「修一郎がとても頑張ってくれたので我々も協力することにしたんです」

白衣の少年は紋章を使い浮かび出す。
そして、割れた空間の中へと入って行く。

「行きますよ、キーパー」

『ハい!!もっト遊ビタかっタなッ!!』

黒のシュタイナーの後ろの空間が割れ始めその中へ入って行く。

「待て!!」

その割れた空間へ向かい走る。

「いのりをどこへ!!」

集もいのりを追って白衣の男の空間へ走る。

空間が徐々に閉ざされていく。

「間に合えぇぇ!!!」

割れた空間に右手が触れた瞬間、とてつもない光を放つ。

光が消え、目を開けるとそこはあたり一面が光る謎の空間だった。

「いのり!!!」

「シオン!!!」

「オウマシュウ、イバラカイ、どうしても来るというなら全てを思い出してからにしてください。君たちが自ら封じた真名の記憶とともに」

あと少し......あと少しでシオンに届く。

白衣の少年が指を鳴らすとその空間からどこかへと落とされる。

「「うわぁぁぁあぁ!!!」」





「カイ.....カイ....カイ!!」

目を開けるとそこは、どこかの橋の上だ。
そして茶髪の少年と金髪の少年と俺がいる。

「ねぇ、本当に飛ぶの?」

「大丈夫だよ、俺を信じろよ」

「そうだよ、トリトン」

そう言って茶髪の少年は壊れて途中が落ちてしまい、人がギリギリ跳び越えられるくらいの橋をジャンプして向こうの橋へと行く。

それについて行くように俺も跳び越える。

「次はお前だ。来いよ!」

金髪の少年は少し勢いをつけて跳ぶ。
だが、着地した時にバランスを崩し落下しそうになる。
俺と茶髪の少年は落ちそうになる金髪の少年の手を引っ張る。

「ほらな、出来ただろ」

「やっぱり、できたろ」

「うん」


.......そうだった
........何で忘れてたんだろう
俺はこの時、椎名の付き添いで大島の椎名の親戚の家に遊びにきてたんだ。
そこで会った二人の少年......集とトリトン

本当になぜ忘れていたのだろうか
.......俺は10年前に会っていたのだ
.......集.....桜満集とトリトン......ガイに


そして同じ時間を過ごす間に俺たちは親友と呼べる友達になったんだ。

優しい集のお姉さんの真名と親友と呼べる友達になった集とガイ......そして、この頃はまだ恥ずかしがり屋で人と触れ合うのが苦手だった....シオン

この夏は俺にとって絶対に忘れてはいけない大切で楽しい夏となる......はずだった。
.......あんなことが起きなければ


「気がついたか」

目を開けるとそこには白い階段が光指す天井に向かい伸びている。

「ここは......」

「いのり!!!」

どうやら集も目覚めたようだ。

いのりは階段の踊り場のような場所に囚われている。

いのりは頭からベールのような物をかぶっていてまるで花嫁のような姿をしている。

すると、そこに一人の男が現れる。

集がいのりを助けに行こうとするが、足が結晶に固定されていて動けない。
それは集だけではなく俺も同じだった。

「何なんですか、これ!!いのりを返してください!!」

「この少女は元々我々が真名と意思の疎通を図るために作ったインターフェイス用インスタンスボディー......返すという言葉は当たらないな」

何を言ってるんだあの男は.......インターフェイス?インスタンスボディー?何を言ってるんだ?

「.......作った」

「そして、真名は"始まりの石"に最初に触れた"アポカリプスウイルス"の第一感染者......すなわち、イブ。肉体を失った彼女の魂は今新たな体に注がれ我々の手で再びこの世に降りたとうとしている。.......彼女の復活は"ロストクリスマス"の再来。アポカリプスが再び猛威を振るうだろう。私はその承認にならねばならんのだ。ダァトはお前たちに何か期待しているようだが、わたしに言わせればただの小僧すぎん。だまって.....そこで見ていろ」

男は一歩一歩、いのりに近づく。

「いのり!!!」

集が叫ぶと鋭く尖った結晶が無数に集の動きを止めるように出現。

「集!!!」

「邪魔をしてはなりません。これから彼がいのりを代えして真名にプロポーズします」

そこには、さっきの白衣の少年が集の横へ現れる。

「プロ...ポーズ」

「彼女が選ぶ伴侶は次代の新たなる人類の始祖となるのです。わがままなイブも石と彼女を使えばコントロール出来るようになりますから」

白衣の少年は階段を登って行く。
そして、元からいた男が"始まりの石"を取り出し、いのりとの間に現れた台の上に石を置く。
すると石は徐々に削れていく。

「二人の未来に祝福を捧げてもらえますね」

「そんな......バカな」

白衣の少年は何かの本を読み出す。

「新たなる主を導く血の交わりを」

男は自ら指を少し切り、血を出しいのりの唇に血を塗る。

「やめろぉぉぉ!!」

集が叫ぶと集の周りにあった結晶が全て消え去る。

『ダメよ、シュウ。怒る資格なんかないのよ。あなたは私を遠ざけたじゃない?あの時、私を損なったじゃない?シュウ』

集の周り目の化け物が無数に現れる。

「な、なんのこと」

目の化け物は集の頭を結晶で掴み近づく。

『何も覚えてないの?忘れちゃった?......じゃあ、お仕置き』

目の化け物の目から尖った結晶が現れる集の顔に徐々に近づく。

「やめろぉぉぉ!!」

足場の結晶を無理やり破壊して、戦輪のヴォイド取り出し、目の化け物を戦輪一個で破壊する。

「壊ィ!!」

集の周りの目の化け物を戦輪で蹴散らすが数が多すぎる。

「クソッ.....はぁ....数が多すぎる」

すると周りいた目の化け物が次々と砕けていく。

『無事、シュウ、カイ!!』

上を見てみるとそこには白いシュタイナー、綾瀬とその上に乗るガイの姿が。

「綾瀬!!!」

「だからお前はほっとけないんだ」

「ガイ、傷は!!」

「急所は逃れた.....キャンサーの結晶に救われた」

「恙神 涯」

「俺はこの時を待っていたんだ。....あんたとそして.....真名と対人できる瞬間を!!」

「だが、もう遅い.....運命は変わらぬ」

ガイが男に向かって銃を打つ。

だが、目の化け物が彼を守る。

目の化け物がガイを狙い綾瀬のシュタイナーを狙う。

「シュウ、カイ、走れ!!」

「行くぞ、集!!」

俺たちはいのりの元へ走る。

『シュウ、カイ!!』

俺たちは後ろから来る結晶に気づかず綾瀬のシュタイナーがその結晶から俺たちを守ってくれた。

『うわぁぁあぁっ!!』

「ツグミ、緊急ペイルアウト!!」

『ガイ、まだ戦えます』

綾瀬のシュタイナーの動きが止まる。

そして俺たちを目の化け物が無数に囲む。

そんなことをしている間に"始まりの石"が一つの指輪の形となる。

「それでは、最後に彼女の力を借りましょうか」

白衣の少年が言うと......俺が求める彼女が選ぶ現れた。

「.....シオン」

シオンは両手を縛られて気絶している。

「それでは、椎名シオン.......イブの犠牲となれ」

白衣の少年はシオンの胸の前に手を差し出す。
すると光が溢れ出す。

「まさか!!」

「そのまさかです」

シオンからヴォイドが取り出された。
取り出されたヴォイドは.......指輪

「螺旋の契りを、今ここに」

すると、赤いまるでDNAのような形の輪が無限の形を画く。

「シオン!!!」

俺は周りの目の化け物を処刑剣で蹴散らしながらシオンの元へ向かう。

「待て、カイ!!」

ガイの言葉を聞かずに俺はシオンの元へ向かった。
だが、数が多すぎる。

倒しても倒しても増え続ける。

「はぁ.....はぁ......」

届く距離にいるのに届かない。
......俺は.......シオンを絶対に助けるんだ!!!

次の瞬間を再び右腕が光を放つ。

だが、俺はヴォイドを取り出している。
なぜだ!?

でも、今は.......俺の力......偽りの王の力にかけるしかない!?

俺は右手で持っていた処刑剣を左手に持ち替える。
すると、更なる光が溢れ出し光が消えると右手の中にロンギヌスの槍が姿を現す。

「ヴォイドを同時に二本出現させただと!?」

「わかんないけど、スゴイ力だ」

「いのり!!!」

集の叫び声があたりに響く。

『シュウ、誰を呼んでるの』

目の化け物が集を狙う。

「集!!」

ロンギヌスの槍を投げ飛ばし目の化け物を粉砕する。

「ありがとう、壊」

「とっとと終わらせるぞ」

「うん、カイ!!ガイ!!」

集がガイのヴォイドを出現させる。
ガイは自らのヴォイド......黒い銃をいのりに向けて銃口を向ける。

そして、いのりに向けて放つ。
黒い銃から放たれたレーザーはいのりの胸を貫く。

貫いた瞬間、いのりの胸から巨大な剣が姿を現す。

「ヴォイドを強制的に出現させるヴォイド!!......人の心を引き出す銃か!!」

集と俺は走り出す。

「シオンは返してもらう!!」

シオンを捕らえている鎖を破壊する。
破壊するとシオンのヴォイドが元に戻る。

集もいのりを救ったようだ。

「ガイ、行って!!」

「待て!!」

男が向かおうとするが、白衣の少年が止める。

「引きなさい、修一郎。あなたは失敗しました」

もう目の化け物はこちらには来ない。
........あとはガイを見届けるだけだ。


俺たちはガイの元へ......真名の元へ向かう。

だが、俺たちはそこで現実と向き合うこととなった。

「「ガイ!!!」」

ガイは無数の結晶に貫かれていた。

「俺ごと真名を刺せ、シュウ」

「どの道、俺は助からん.....だから」

「でも!!!」

「シュウ、今お前には俺がどう見える」

集は言葉が出ない。

「子どもの頃のお前は.....決断力があって勇敢で....強くて.....俺はお前のようになりたいと思っていた....」

「ガイ!!何を!!」

「お前はいつだって俺になれる。俺がお前になれたように....あとは一人でやってみろ」

「集.....」

「カイ......シュウがもし道を迷うようならお前が......」

「わかってるよ、ガイ」

ガイは少し笑みを浮かべて、そうか、と

「さぁ、早くしろ!!」

集はうつむき下を向く。

「集.....」

「大丈夫だよ.......壊」

集の周りを銀色の線が包む。
集はうつむきながら一歩一歩階段を登って行く。

そして、その目に涙を浮かばせながら集は巨大な剣でガイを突き刺す。

「うわぁぁあぁぁぁっ!!!」

光がその場を包み込む。



六本木に聳え立っていた塔は跡形もなく崩れ去りそこには何も残っていなかった。

そこにガイの姿はやはりなかった。




第二次ロストクリスマス
ーー俺たちは大切な人たちを守りきった。
でも、その代わりに俺たちは大切な親友を失った。

これですべてが終わった........




 
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