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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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10.失われた聖夜の前兆

『コマンダーより全ユニット.....シュウとイバラがヴォイドで足止めをする。その間に二台目のトラックを奪取する』

『ターゲット攻撃ポイントまで6...5...4....3....2...1....GO!!』

集がいのりのヴォイドを取り出そうとするも.....取り出さない。

「集?」

『シュウ、どうした!』

『おい、まだかよ!早くしてくれバレちまうぞ!』

いのりのヴォイドを引き出そうと手を伸ばすもそれ以上手が伸びない。

「.....だめだ」

『チッ....バレた』

その瞬間、俺たちの後ろで爆発音が.......

『シュウ!どうしたの、答えて!このままじゃ、みんなが!!!』

『早く来てくれ!!』

いのりが集の名を呼ぶ。

しかし、集は叫び声をあげて逃げていく。

「シュウ!!」

「集がどこかに行っちまったぞ、ガイ!!」

『コマンダーより全ユニット....ミッションアバウト、ミッションアバウト!!』





次の日いつものように学校へ行く。

「王様、シュウのこと心配?」

「そりゃ、心配に決まってるだろ。勝手に逃げやがってあいつ」

「しょうがないよ。あんなことがあったあとなんだから」

集がヴォイドを引き出そうしなかったのは、たぶん.......八尋の弟を順君をその手で........彼の命を断ってしまったからだろう。

教室で集が来るのを待っていると颯太が、よう!シュウ来たのか、教室から出て行く。

「お前、今までなにしてたんだよ」

「シュウ、来たみたいだね、王様」

シオンとともに集の元へ行こうと廊下に出る。

「うわぁぁっぁぁっ!!!」

集の叫び声が響く。
急いで廊下に飛び出ると廊下で両耳を押さえて叫び続ける集のすがたが。

「シュウ、どうしたの!!シュウ!!」

集は祭、気分転換にどこかへと連れて行った。

「ねぇ、王様。シュウ、大丈夫かな?」

「大丈夫だ........あいつは.....」

「私たちも、すこし気分転換にどこか行こっか」

シオンに連れられて俺たちは校内を少し散歩する。

「イバラ!!」

後ろを振り向くと綾瀬が車椅子を自分で動かしながら現れる。
その後ろにはガイもいる。

「どうしたんだよ。二人揃って」

「奪われた"始まりの石"の所在が判明した。奪還作戦をしかける。来い」

ガイの言葉に少し躊躇いながら、口を開く。

「集は......行くのか」

「やつは、もう葬儀社ではない。もはや無関係だ」

「今まで一緒に戦ってきた仲間を無関係だって!!」

思わず俺は声をあげる。

「そんなことどうでもいい。来るのか、来ないのかだ」

ガイの態度に腹が立つ。

「なんだよ.......。俺はもうあんたにはついていけない。......葬儀社を抜けさせてもらう」

「そうか、それならそれでいい。行くぞ綾瀬、シオン」

今、ガイがシオンって言わなかったか?

「待ってください、ガイ!!あんたのこと信頼してたのに!!」

綾瀬は声をあげ遠ざかるガイについて行く。

「ゴメンね、王様。私、行かなくちゃ」

「何でシオンが」

「わかんないけど、私がいるみたいなんだ。じゃあね、王様」

シオンはいつものように笑っていた。

「ま、待てよ、シオン!!!」

俺の言葉は届いていたが、シオンは振り向くことがなかった。



家に帰るとまるでシオンが最初からいなかったかのようにシオンがいた形跡が全くなかった。


次の日となる。
やはり変わらぬ日常ただ違うのは、シオンといのりがいないことだ。
ただ、シオンといのりがいなかった時と同じような日常に戻っただけだ。
俺にとって葬儀社は非日常でしかなかった。
それでいて.........


昼休み。一人になれる場所を探してたどり着いたのは、映研部室近くの広場の階段に寝転ぶ。
映研部室は集がいるだろうから、行きずらい。

「なにが葬儀社を抜けるだよ。なにが罪の王冠だよ。なにが共犯だよ。.....なにが、なにが」

今までの葬儀社での出来事が頭の中を駆け巡る。
こんな形で葬儀社を抜けて良かったのか......こんな形でガイを、綾瀬を、アルゴを、大雲を、四分儀さんを......そして、シオンを裏切っていいのか。

すると俺の頭の中で羽虫どもがざわめき、右腕がうずく。
そして、何かのビジョンが俺の頭に浮かぶ。

そこは景色のいい海の見える丘の上。
そこに帽子をかぶった桜色の髪の少女と茶髪の少年と金髪の少年.....そして、水色の髪の少女と一緒に海を見ている。

だが、羽虫どもがうるさすぎて声が聞き取れない。

映像はいきなり変わりそこはどこかのわからないがそこはあたり一面、火の海に包まれていた。

俺はこの光景を見たことがある。
あの日だ.....あの全ての終わり.....俺の始まりの日の光景だ。
でも、何で今頃この光景が.....待てよ、まさか....
何かを思い出しそうになった次の瞬間、歌が聞こえる。
その歌が聞こえた瞬間、頭が壊れそうなくらいの頭痛がする。

「なんだ....この歌は......!!」

この歌は....なんだ。
でも、この感覚はあの時と一緒だ。
.......あの時の悲劇。
.......10年前に起きた災厄の事件。


.........ロストクリスマスに
 
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