学園黙示録 Highschool Of The Dead ~壊れた世界と紅の狼~
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運命の大きさ
~真紅狼side~
俺達が高城の家………と言うより屋敷についた瞬間、俺は恐怖な目で見られてた。
そんなことも気にせずに、風呂場を借りて俺は血を洗い流し、全身も洗った。
その後、俺は風呂から出て、ズボンだけ穿いて上半身裸の状態で麗の部屋を探した。
すると、麗の悲鳴らしきものが聞こえたのでそちらに向かうとちょうど背中の痛みを押さえる為の塗り薬を塗っていた。
「お~、麗、大丈夫か?」
「いたい、いたいよぉ、真紅狼~~!!」
涙目+上目遣い、しかも全裸だとこれはそそられるな。
俺は麗の頭を撫でながら横についてやった。
「はい、終わり! 先生の特製塗り薬だぞ♪ 染みた~?」
「なんで、真紅狼が塗ってくれなかったの?!」
「いや、俺は風呂に入っていたし、俺が塗ろうとしたらそれ以上の事をしそうだったから。麗が裸という時点で結構キツイ。あと一押しがあれば襲ってるし………静香も裸だったら確実だな」
すると、静香は恥ずかしそうに顔を赤くする。
麗もつられて赤くなっていった。
「この後、麗が動けないからこの部屋で俺の正体の話をするから、その艶肌を他の男に見せない様にしてくれよ?」
「………真紅狼って結構独占したい男なの?」
「俺は独占欲が高いぞ? かなりな。だから、麗のそういう姿も他の男に見られるのは結構嫌だな」
すると、麗は嬉しそうに俺に寄って来る。
「………大丈夫よ、真紅狼なら、なにされてもいいから///」
「………若いわね~」
「静香もまだ若いだろ?」
「それはねぇ、当り前じゃない!」
「それにしても、真紅狼は上、何か着ないの?」
「全身血で真っ赤だからな。洗って乾かし中だよ」
「でも血って………そう簡単に落ちないんじゃ?」
静香は、自身の経験上から発言したが、俺の黒コートは特殊仕様な為、その辺の配慮もされている。
「俺のコートは特殊仕様でな。血とか油とかそういう関係のモノを洗い落とせるように特殊加工されてるんだよ。ちなみに防刃に防弾、耐火、絶縁もプラスされているし、通気性もよく乾きやすい。カスタムも出来るから万能だな」
「………一着ぐらい欲しいわね、そのコート」
「落ち着いた時間が取れるなら、創れないことはないんだがなぁ………」
そう言って、俺は高城の家を見た。
おそらくここは、近い内に使われなくなるだろう。
そうなると、高城の御両親は違う目的地だが、俺達は俺の家に行くことになる。
イレギュラーなことが起きなければ、最大でも二カ月は保つだろう。
自家発電も搭載してるし、浄水機能もついてるから問題は無いが………面倒事ってのは安心した時にたいていやってくる。
それも、最大級クラスで、だ。
後は、流れに沿って行くしかないか………。
「真紅狼………?」
「あ、悪いな。今後の予定に付いてちょっと考え事をしていたんだよ」
「そう」
俺は時計を見ると、集合時間が近づいていた。
「そろそろ、孝達が来るから麗は隠せる所は隠せよ」
「うん。分かった」
麗が隠し終わった時、戸を叩く音が聞こえた。
コンコン………
『真紅狼、時間になったから来たぞ』
「おう。入ってくれ」
がちゃ………
「よう、孝。疲れは取れたか?」
「まぁ、取れたりはしたが………なんで上半身裸なんだ?」
「上着を洗って乾かしている最中だからな、これぐらい許せ」
俺は一人勝手に進み、ベランダの戸を開けて外に出る。
「さて、何から聞きたい?」
「全部だ。真紅狼が知ってる事、全部を話してくれ」
「オーライ。なら、まず、俺の事から話そうか。お前等は“転生”って言葉、知ってるか?」
訊ねると、ありす以外は頷いた。
「まぁ、有り体に言っちまえば、俺はこの世界の住人じゃなくて、別の世界からやってきた存在で、元の世界ではちょっとした訳アリで死んでからこちらの世界にやってきたって感じだな。ちなみに言えば、この世界がどういう事になるのかも知っていた。俺達が名称して呼んでいる<奴等>が出てくることも、そのせいで世界がぶっ壊れることもな。その為に俺は事前から対策もしてる」
「つまり………アンタは、この世界の流れって言うモノが視えていたのね?」
高城は冷静な口調で喋っているが、確実に怒っているな。
「そうだな。どんな物語にも“プロット”と言うモノがある。これは物語の流れを司る“核”と言い換えてもいい。そこにイレギュラーな存在………つまり、俺みたいな存在が出現すると、その“プロット”が不安定な状態になり、イレギュラーの行動で物語が変化し本来の流れから外れることになる」
「何故、蒼騎はここに転生したんだ?」
平野は高城と違い、普通に質問してくる。
「転生も何もここに行けって言われたから、ここに来ただけさ」
「誰に?」
「カミサマ」
「「「………はぁ?」」」
うん、分かってた。
そんな反応が出るんだろうなーってのは、分かってたよ。
しかし、今の反応は高城、孝、平野の三人だけで他は無反応か。
いや、無反応ってわけじゃないな。
静香と冴子は若干反応してる、高城の奥さんは………見事なるポーカーフェイスで分かりにくい。
ありすは、難しそうな表情をしてるな。まぁ、分からねぇよな。
高城は最初は『信じられない』って表情をしていたが、だんだんと頭が回ってきたのか、ある事に気が付いた。
「待ちなさい、蒼騎! アンタはこの世界がこのようになることを知っていたということは、その原因を絶てたんじゃないの!?」
「それは、無理だな」
「なんでよ!! アンタのその力があれば、救える者も居たでしょうが!!」
「………それにはそれ相応の理由がある」
「理由? はんっ! どうせ、『自分の都合でしか動かない』とかそういうつもりなんでしょ!?」
「ま、それも多少なりはあるが、大部分は違う。人には“運命”と言うモノがある。これは誰にもあることで、麗にも、孝にも、平野にも、冴子にも、静香先生にも、ありすにも、そしてお前にもだ、高城」
俺は高城を睨むとその眼光に怯む。
「………うっ、そ、それがどうかしたの!? 関係ある話ワケ!?」
「大いにある。その“運命”ってのは大きなモノから小さなモノまで大きさは多々あるんだが、その中でももっとも大きな“運命”ってのは、自分自身で解決しなくてはならないんだよ」
高城達は「何を言っているのか分からない」という表情だが、高城の奥さんは大雑把だが何かを掴んだようだった。
「そうだな………ある青年が居たとしよう。その青年は“<奴等>に噛まれてしまう『かもしれない(・・・・・・)』”という運命がこの先待っていて、その後はただただ死んでしまうという運命の持ち主だった事にしよう。そしてその運命の場面が来てしまい、青年は他者の助けを借りるが予定通りに<奴等>に噛まれてしまう。―――故に死んでしまった(・・・・・・・・)。……………どういう意味か分かるか?」
孝達は、素で「わからん」という表情をしていたが、高城は「頭大丈夫?」という目で見ているが、高城の奥さんは完全に把握したらしく、発言した。
「蒼騎君、つまりこういう事ですわね? その青年は自分自身の運命に出会った時、自分の力ではなく他人の力を借りてしまったから死んでしまったと言いたいのですね?」
「理解が早い人は有難いね」
「ママ、一体どういう事?!」
「沙耶ちゃん。蒼騎君が言いたいのは、その青年は『対処の仕方』さえ間違わなければ、今も生きることが出来たと言う事よ」
「そう。その青年の運命は先程も言ったが“<奴等>に噛まれてしまう『かもしれない(・・・・・・)』”………いいか? 『かもしれない』と言う事は未来が不安定の事を指している。――にも関わらず、青年は噛まれてしまった。何故だ? 答えは簡単だ………自分自身の力でその運命を乗り越えたわけじゃないからだ。―――自分の命や生きる道に関わる“運命”ってのはどれもこれも枠が大きい。だからこそ、そういうことは自分の手で解決しなければならない。100%とは言わない。他人の力も借りていいが、一割程度まで。残りの九割は自分で解決することが条件だからだ」
噛み砕いた説明をすると、孝達は理解したのか自然と頷いていた。
全員が理解した所で、高城の奥さんは再び質問してくる。
「では、小さいモノに関してはどうなんですか?」
「小さいモノに関しては、他者の力が干渉しても問題は無い。あ、言い忘れていたが大きな運命の時に例外が一つだけある。それは他者の力をたくさん借りていながら乗り越えること出来る時があるんだ」
「本当なのか?」
孝が驚いたように聞いてくる。
例外があると聞いただけ喜んでいるんであれば、孝の命が危険だな。
「ああ、本当だが、その場合、未来に再び別の形で出会う事になるだろうよ」
「蒼騎、それはなんでなんだい?」
「筋が通らねえのと歪みが発生するのさ、平野」
「「「“歪み”?」」」
「ああ。そいつとその運命に関わった奴の未来の運命が歪んで本来関係ない運命まで巻き込まれる可能性があるんだ。そうなると面倒なことになる」
「……面倒とは何かな? 真紅狼」
「どれぐらいの規模になるのか分からないのさ、冴子。天候で表すなら、霧雨から天変地異クラスの運命が生まれることがある。だから、そいつ等の未来に負担を掛けない様にするために別の形でやってくるのさ。だが、それを逃れてたり、自分自身の力で解決しないで乗り越えていくのを続けていったら、いつか歪みが発生して、面倒事がひきっきりなしに飛び込んでくるのさ。いつ来るのか? どれほどのものなのか? 全部が謎に包まれた状態でやってくる。迷惑極まりねぇシロモノなのさ」
「で? その“流れ”ってことは理解したわ。その話と私の質問となんの関係があるわけ?」
………このバカ娘は、本当は隠れバカなんじゃないか?
こんなにも、重要な事実を伝えたんだから気付け、バカ!
「俺はお前に先程何を話した? 大きな運命にはその当事者自身が解決しなくてはならないと言ったし、“歪み”が発生すると言った筈だぞ? お前はバカか!?」
“天才”を普段から謳っているんだから、理解しろ。
「なんですって!? アンタ、私に向かって舐めた口を………!!」
「OK。お前がここまで馬鹿だったとは………俺の判断ミスだな。つまりだな、こういう運命になるのは確定済みで、それを俺は前から知っていたが絶つことは出来ないんだよ。運命事体が確定済みな上、どこで始まるのか知らないんだ。どう足掻いても無理だ。例え、発生する場所を知っていて防いだとしても、別の場所で発生する………。しかも、何度も確定済みの運命を何回も防げば“歪み”だって発生して、より酷い運命が待ってることになる。………高城、お前はまだ“優しい地獄”とそれ以上に“厳しい地獄”どちらがいい?」
「そ、それは………」
高城は口ごもる。
「いいか、高城。お前がいる………いや、俺達が今の世界は“優しい地獄”だ。“優しい地獄”だからこそ、こうやって自分の家に辿り着くことが出来、自分の両親と触れ合う事が出来る。一時の安らぎを得ることが出来る。その様なことが出来ることを今一度噛み締めろ」
高城だけではなく全員は思うところがあるのか黙ってしまった。
さっさと全部話しちまうか。
案外、疲れる。
「大きく脱線しちまったな。次は………そうだな、俺の力にでも説明するか」
「“能力”?」
「そ、能力。なんどかちらほらと見せたモノがあるだろ? “鋼糸”とかよ」
「アレは自前のモノじゃないのかね?」
「鋼糸とかは転生する際に授けられた能力だ。あんなものが実際にあったら、日本は第二次世界大戦で確実に勝利してるさ。後は………孝を助けた時の武器を覚えているか?」
「あのすごい暴風が発生したモノのこと?」
「そうです。静香先生。あれは“宝具”と言うモノだ」
「「「“宝具”?」」」
「“宝具”ってのは、神話に出てくる英雄の武具のことを示す。見てもらった方が早いな。――――――“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”」
俺の後ろから突然空間に波紋が広がり、幾千モノ武器が出現する。
『なっ!?』
「これがありとあらゆる宝具を収めている空間。“王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”だ」
「なぁ、蒼騎。それが凄いことが分かるんだが、何が入ってるんだ?」
「じゃあ、平野。なにか適当に各神話の英雄が持っていた武具の名を一つ上げて見せてくれ」
「じゃあ、キング・アーサーが持っていたエクスカリバー」
初っ端から、“星の聖剣”とは謂われた『約束されし勝利の剣』ですか。
俺は心の中で『エクスカリバー』と命じると、俺の頭の辺りに柄が独りでに出てくる。
「これが、エクスカリバーだ」
柄を掴み、引き抜き刀身を顕わにする。
そこには、豪華絢爛な柄や鍔とは違い如何なる攻撃ですら折れることの無い程の屈強な剣が微かな黄金を煌めかせていた。
「これがエクスカリバーなのか? もっとこう派手だと思ったぞ?」
「まぁ、ゲームじゃそう見せているだけだからな。言っておくが、派手=強いというイメージは止めとけ。エクスカリバーが真名解放をしたら、簡単に国が吹っ飛ぶぞ」
「国が吹っ飛ぶって、そんな大げさな」
孝達は笑っていたので、俺は“偽・螺旋剣”の力を付加させた無名の剣を持ってベランダに出た。
「そんなに信じられないなら、実践してやるよ。孝を助けた時に放った宝具の威力を覚えているよな?」
「あ、ああ。凄まじい暴風だったな」
「アレでもかなり威力を押さえた状態で放ったんだぜ? だが、今回は違う。全力でぶっ放す! 目標地点は<奴等>がウヨウヨ居る床主大橋! よく見とけ」
俺は槍の投擲するかのようにおもいっきり目標地点まで投げ飛ばす。
「“偽・螺旋剣”!!!」
ビュンッ!!
放たれた螺旋剣は、弧を描きながら床主大橋に向かい橋に直撃した瞬間、この辺り一帯が大きく揺れると同時に突如虹色の極光で出す極太な光の柱が出現した。
キュゴッ………ゴォォォォォォォォォォォッッ!!
突然の大きな揺れに高城邸に居る者は驚き、そして光の柱が出現したことに騒ぎ始める。
俺は未だに光の柱に背を向けて、孝達を見る。
「これが宝具の力だ、理解したか? 言っておくが今の威力でもエクスカリバーより下の宝具だからな? エクスカリバーが真名解放したら、本当に国が吹っ飛ぶぞ?」
「「「………………(゜д゜;)ポカーン」」」
「おーい、大丈夫かー?」
麗以外は全員が目を大きく開いて口をあんぐりとしていた。
そこに麗が一言入れる。
「真紅狼、やりすぎ」
「そうか? こういう手合いは実践した方が早いと思っていたんだが………」
「………し、真紅狼。それを僕たちに放たないよな………?」
「安心しろ、放たねぇよ。放つのは<奴等>と俺が殺したいと思った奴が対象だから」
すると、ほっと胸をなでおろしていた。
「と言うわけで、俺の意味が言ったことを理解出来たな? この際だし、お前等が知ってそうな宝具を順に出してやるよ」
そこから俺は、片っ端から取り出した。
『約束された勝利の剣』
『勝利すべき黄金の剣』
『全て遠き理想郷』
『絶世の名剣』
『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』と『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』
『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』
『干将・莫耶』
『破戒すべき全ての符』
『赤原猟犬』
『原罪』
『太陽剣』
『災いと破滅を呼ぶ黄金の剣』
と、ポンポンと出してみた。
「まぁ、こんな感じか。あ、この中で絶対に刀身に触れないで欲しいのは『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』と『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』には触れんなよ。下手したら死ぬぞ」
「なんでだ?」
「この二つの槍は呪いの槍だからだ。どちらもその槍で傷つけられた者の傷を癒すことは出来ないし心臓を穿たれたら確実に死ぬからな」
そう説明すると、全員が息を飲む。
「蒼騎、もう話すことはないわね? まだ、隠してる事とかあるかしら?」
「あー、あと一つあるがまだ時期じゃないし、話したくねぇな」
「アンタねぇ………!」
「なら、ヒントを出してやろう。“一つの身体に、二つの魂”………これがヒントだ。どういう意味かよく考えな」
「どういう意味よ!?」
「それを考えることがお前達の課題だよ。とまぁ、俺の話しはこれで終わりだ。上着も乾いたかな? 取りに行くか」
俺は何も言わずに部屋から出ていった。
~真紅狼side out~
~孝side~
俺達は、真紅狼が出ていき、高城の母親も用があると言って出ていって俺達だけになったあと、高城が我先にと口を開いた。
「………宮本」
「なによ?」
「アンタ、蒼騎と私達が話している間、ずっと黙っていたけどもしかして蒼騎の正体知っていたの?」
「ええ。孝達と別れた後すぐにちょっとした出来事が起きてね。その時に教えてもらったわ」
「知っているなら、僕達に教えてくれたっていいじゃないか!」
「あんな状況の中で教えていたら、孝はまともに動けたと思う? 事実に驚いて無理でしょ? 今もこうして動けないでいるのが証拠。……それに真紅狼が『時期』を見て話すと言っていたし、それを邪魔するのもどうかと思わない?」
そう反論されてしまうと、高城は反撃に出ることは適わなかった。
「………で、どうするの? 蒼騎が人外だってのは分かったわ、その上で私達はこの先もずっと仲間で居るべきだと思う?」
高城が真紅狼の事を“人外”と言った時、麗は少しだけ高城の事を睨んでいた。
「………どういうことだ?」
「いい? 私達は、今や“家族の安否を確認する為に生き残ったチーム”という勢力じゃなくて、さらに大きな勢力に居るのよ? 小室や平野も体験したかもしれないけど、大人たちは私達を『子供』と見ている! 一人例外は居るけどね。そして私達は今やより大きな結束が固い集団の中にいるわ!」
そこで、繋いで毒島先輩が言葉を紡ぐ。
「つまり、私達の選択肢は二つか。呑み込まれか………」
「そう、別れるか! その二つのみ! このテラスから、周りを見渡してみなさい! それで分からなければ、私の名前を呼ばないでちょうだい!」
高城はテラスに出た、釣られて僕と平野、毒島先輩、静香先生も外に出る。
平野から双眼鏡を渡されて、周りを見るが、被害は酷くなる一方だった。
そして高城は、自分の家の状況を見て叫んだ。
「………私のパパとママは凄いわ。妙なことが起こったらすぐさま対応して、屋敷と家族を守った! でも、それが出来るなら………! 娘の………私の心配ぐらい出来た筈でしょう!!」
「こんな状況下の中でも、これほど出来たんだ。御両親を悪く言っちゃいけない」
「いかにも、ママが言いそうな台詞ね! そうよ、私の両親は最高! 私の事も一番に考えた!! 生き残ってる筈がないから、一番に諦めたなんて!!」
その言葉を聞いた瞬間、僕は高城の胸倉を掴みあげた。
「止めろ、沙耶!!」
「な、なによ、いきなり……………」
「お前だけじゃないんだよ! お前はまだマシだ! 両親が健在だけでもマシなんだよ!!」
「わ、分かったわ。分かったから降ろして」
「………悪かったな」
「ええ、本当。さ、本題に入らないと………」
そう言った時、屋敷の外から、トレーラーやら給油車が次々とやってきた。
「あれは………?」
「この県にして、国粋右翼の首領!」
黒のフォレストが止まり、中から出てきた人は……………
「正邪の割合を自分だけで決めてきた男! 私のパパ!」
高城の親父さんだった。
~孝side out~
~真紅狼side~
俺は、コートを取りに行くために外に向かう途中で、百合子さんに出会った。
「あら、お話はもう終わったのですか?」
「ええ、まぁ。……と言っても、俺についてだけで今頃は今後の身の振り方について話してると思いますよ」
「蒼騎さんは参加しなくてもいいんですか?」
「俺は、護りたい者の為に動きますから………」
「それは、貴方の護るべきルールですわね」
「こんな状況下ですし、各々縋りたいモノがあるでしょう? 多くの人は傍から見れば、同じように見えるかもしれませんが、俺から見ればそれは大きく懸け離れていますよ」
「では、貴方は………違うと?」
「俺は………“護る”という概念に固執し、囚われてしまった化物ですよ」
「………それは違うモノなのですか?」
「ええ。俺はそう思ってますが、その辺は人それぞれですかね」
そういって、視線を落とすと百合子さんの手に俺のコートがあった。
「すみません、もしかしてそれって………」
「あ、これ、乾いていたから蒼騎さんの所に持っていこうとしたんですよ」
「わざわざすみません」
「いえいえ。娘を護ってもらった貴方に出来る数少ない恩返しですよ」
俺は、百合子さんの手からコートとシャツを渡してもらい、その場で素早く着替え、いつもの姿に戻った。
うん、新品同様で気持ちいいね。
着替え終わると、テラスの方から高城の叫び声が途切れ途切れに聞こえてくる。
『い……も、………言いそ……詞……ね! そうよ、私の…………高! …………一番に考え…!! 生き残………筈がない…ら、一番に諦めた………!!』
その後、すぐさま孝が高城に向かって叫んでいた。
「………親の心知らずですね」
「恥ずかしい所を見せましたわね」
「別にいいんじゃないんですか? それにあの場に俺がいなくてよかったと思いますよ。孝ではなく俺だったらブン殴っていた」
「容赦ないですわね」
「自分が幸せな所に居ることを知りながら、悲嘆するなんざ、喧嘩売ってる様にしか聞こえませんよ。中には目の前で父親を殺されて、母親ですら死んでいるのに気丈に振る舞ってるありすに対しての冒涜ですよ」
「………でも、あの子も自分の立場に気が付いたみたいですし、よかったですわ」
すると、向こう側からトラックの音が聞こえてきた。
「アレは………?」
「私の夫であり、この県の国粋右翼の首領の壮一郎さんが帰って来たんですよ」
「あれがねぇ………」
車から降りてきた人は、厳格で凄まじい闘気が溢れていた。
~真紅狼side out~
物語が進みそうだな………。
後書き
作中で語ってる“運命の大きさ”は、私独自で考えて、理論にしたものですので注意してください。
でも、実際はペルソナとかそういうのが私に大きな影響を与えたんですけどね。
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