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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第51話 対決、大蟻超獣

 
前書き
 前回のあらすじ

 光の子抹殺の為ヤプールが放った超獣。それに挑む我等がヒーロー達。だが、超獣の力は凄まじく窮地に立たされる。だが、其処へ新たなウルトラマン「アストラ」が駆けつけて超獣を倒してくれた。
 新たなウルトラマンの登場に希望が膨らむヒーロー達であった。だが、ヤプールの新たな恐ろしい計画が実行されている事に、ヒーロー達はまだ気づかないでいた。 

 
 一角超獣バキシムの出現から翌日。破壊された町では急速な復興作業が行われていた。破壊されたのはビルが立ち並ぶ市街地であり幸いなのはやはやて達の居る居住区の被害はほぼゼロでもあった。それでも、何時何処からでもやってくる超獣の存在は厄介以外の何者でもない。
 何しろ他の怪獣と違い出現する兆候がいきなりなのだ。故に対処に遅れてしまい被害を被る結果となってしまう。

「難しい話だよなぁ」

 その日、甲児は難しい顔をしていた。理由はいわずとも知れた超獣の存在だ。只でさえ強い上に神出鬼没と言うのは始末が悪い。せめて被害を最小限に抑えられれば良いのだが。

「何時かの結界みたいに超獣ごと囲むってのは出来ないのか?」
「相手が相手だ。あれだけの巨体を包み込むには相等の魔力が必要になる。我等にとってそれは致命的な事だ」

 シグナムが述べる。それは確かに痛い。守護騎士達は魔力を用いて先頭を行う。それを結界に使ってしまえば超獣を仕留める事が難しくなってしまう。
 が、何時までも後手に回っていてはいけない。何か手段を講じなければならないだろう。

「そう言えば、超獣が現れる時に突然空が割れる現象が起こったって聞いたんだけど」
「空が割れる…もしかしたらその際に特殊なエネルギーが放出されてるかも知れないな。一応調べてみるか」

 顎に指を当てながら甲児は机に紙を敷き、難しい図式を書き始める。

「な、何書いてんだ? 甲児」
「見て分かんねぇのか? 超獣の出現の際に発生するエネルギーを計算してんだよ。この結果が出ないと装置を作れねぇからよ」
「つくづく思うんだが、兜は一体何処の誰にそれを教わってきたんだ?」
「あれ? 言ってなかったか。俺ミッドチルダに行ってたんだぜ。ミッドチルダのジェイル・スカリエッティ教授の元で勉強してたんだ。それと地球からやってきたって言う光明寺博士と一緒にさ」
「お前、ミッドチルダに行ってたのか?」

 甲児のそれには皆驚く。当然だろう。一般的には甲児はアメリカに留学した事になっているのだから。
 勿論アメリカにも甲児は行った。だがそれはアメリカのNASA円盤研究施設で設計していた小型円盤TFOを完成させる為のと宇宙人に関する資料を見る為であり実際勉強をした期間はミッドチルダの方が長い。

「ところで、前の戦いで気づいたんだけど、お前等ってベルカ式の魔方陣を使うんだな」
「驚いたわ。其処まで知ってるなんて」
「まぁな、興味本位に魔法の事も色々と調べたんだ。なのは達が使ってるのがミッド式でお前等が使ってるのが古代のベルカ式なんだろ?」
「そうだ。我等は元々古い時代の人間だからな」

 甲児も守護騎士については簡単に調べてはある。闇の書の護衛プログラム。それらが何時作られたか、何の為に作られたかは未だわからない。只、此処に居る四人が少なくとも何千年も戦い続けていたと言う事実は知っている。

「ま、そんな訳だからさ。お前等のデバイスが壊れたら有る程度は修理してやれるから気兼ねなく頼めよ」
「あぁ、感謝する。お前のような奴が居てくれるとこちらとしても思う存分戦えるからな」
「良いって良いってぇ。その変わりちょっとばっかりサービスしてくれれば良いしさぁ」
「前言撤回する。やっぱり貴様は居ない方が良いな」

 先ほどの格好良さは何処へやらである。その一言で全てが台無しとなってしまった。まぁ、甲児らしいと言えばらしいのだが。

「そういやぁシャマルさん。なのははどうでした?」
「外傷はなかったわ、でも内面が酷い状態よ」
「どう言う意味だよ」
「あの子、意図的に力を封印しているのよ。理由は分からないけどそのせいで本来の力の十分の一も出せてない状況だわ」
「あ、あれで十分の一かよ!」

 ヴィータは正直驚かされる。あの時の収束砲。あれだけでも相等な威力になる。にも関わらずあれでも本気ではないとしたらもし本気になったらどうなるのか?

「ま、仕方ないだろうな」
「兜は知ってるのか?」
「あぁ、俺は一度あいつの本来の力を見たことがある……俺達が前に戦った超獣が居るだろ?」

 甲児の言い分に皆が頷く。

「あいつ……その超獣を一撃で粉砕したんだ」
「!!!」

 その言葉に皆は息を呑んだ。守護騎士達は既に超獣の危険性は理解している。その強さも既に体験済みだ。それを一撃で粉砕したとなると驚かない方が難しい。

「凄ぇじゃねぇか! じゃぁ何であいつはその力をわざわざ封印なんかしてんだよ?」
「怖くなったんだよ。その力が」
「力が?」
「あいつは元々誰かを守る為に魔法の力を得たような者なんだ。それがあんな恐ろしい力を手にしちまって、しかも、その力のせいで俺達をぶちのめす寸前までの事をしちまったからな」

 甲児は半年前に起こったPT事件の最後の戦いを話した。あの時なのはを覆った赤い光。その光の力により超獣を倒し、ヤプールを退かせる事が出来た。だが、制御できない力は暴走し、仲間達にまで危害を加えてしまった。その事実を知ったなのはは自身の力に恐怖してしまい魔力の殆どを封印してしまったのだ。

「今のあいつの心の中は恐怖で一杯だろう。それでも必死に自分自身と戦ってるんだ。新しい仲間を守る為にな」
「新しい仲間?」
「お前等のことだよ」

 甲児が四人を指差す。それに四人は驚いた。

「私達を守る為に?」
「あぁ、あいつはいつも自分の事は後回しにして回りの皆を助けようとする。お人好し過ぎるだろうが、それがあいつらしいんだ。だけどあいつ歯止めが利かないから誰かが支えてやらないと何時か折れちまうんじゃないかと心配でさ」
「なるほどな…お前は良き兄貴分なのだな」
「俺にとっちゃあいつは妹みたいなもんだしな。兄貴としてみていてやりたいって気持ちはあるさ」

 言い終える甲児は再び図面に目を落とす。そんな中、守護騎士のメンバーは皆複雑な面持ちをしていた。改めて知った事実。一人の少女が強大な恐怖と言う壁に孤独に戦いを挑んでいると言う事実に。その恐怖の壁は余りにも大きく、また高い壁であった。





     ***




 二階のベットの上でなのはは寝かされていた。今はすっかり顔色も落ち着き微かに寝息を立てている。そんななのはをはやてと光太郎は見ていた。

「なぁ、光太郎兄ちゃん。なのはちゃん一体何があったん?」
「ちょっと無理したみたいなんだ。シャマルさんの話だとすぐに良くなるって言ってるよ」
「ホンマにか?」

 はやてが心配そうに見つめる。その目は何処か悲しげであった。

「そんなに心配かい?」
「なのはちゃんな、半年前に私の事助けてくれたんよ。でも、そのせいでなのはちゃんは大怪我してずっと辛いリハビリをしとった」

 はやての脳裏に蘇る海鳴病院での生活。その中で、なのはは必死にリハビリを行っていた。怪我で思うように動けない中必死になって行っていたのだ。
 それがどんなに辛い事かはやては知っていた。それでも、なのはは弱音一つ吐かずに必死に打ち込んでいたのだ。
 だが、夜になるとなのはは一人辛さに耐え切れず静かに涙を流していた。それらをはやては知っていたのだ。
 だからこそ、なのはを放ってはおけない。それがはやての考えなのだ。

「まだ私なのはちゃんに何もお返し出来てへんもん。つくづくこの動かない両足が憎らしいわ」

 そう言ってはやては不自由な両足に手を添えて愚痴る。心の底から悔しかったのだ。なのはの力になりたい。だが、自分には魔力もなければ戦える力もない。結局未だになのはに守られてばかりなのだ。
 その事実がはやてにはとても悔しかった。

(はやてちゃん、辛いんだね。君も…)

 そんなはやてに光太郎は何も言ってやれなかった。変に励ませば返ってはやてを傷つける事となってしまうからだ。複雑な思いが何重にも絡まり、何時しか部屋の空気事態が重くなっているのに気づくのに、二人はそれなりの時間を有する結果となってしまった。




     ***





 時刻は正午、此処海鳴市某所にある遊園地では仲の良いカップル達がその日のデートを楽しんでいた。当然、中にはカップルじゃない人も居るのだがまぁその辺は触れないで置く。
 それは、遊園地内にあるティーカップで起こった。其処で楽しそうにティーカップに乗って微笑んでいるカップル。
 だが、その突如ティーカップに乗っている女性の足元が突如あり地獄が現れ、その中に女性が吸い込まれてしまったのであった。
 その後、警察の必死の捜索も空しく、犯人を特定する事が出来ず事件は迷宮入りとなってしまった。それだけならまだ良かったのだが、立て続けに同じ事件が何件も起こり出したのである。




     ***




「連続女性失踪事件……また奇妙な事件が起こったものだな」

 その日、新聞を読みながらシグナムは呟いた。その日の新聞にデカデカと載っているのが件の連続女性失踪事件である。その内容によると被害にあった全ての女性が蟻地獄の様な現象が起こりその中に吸い込まれてしまったと言うそうだ。明らかに人間の成せる業ではない。

「っつってもあたしらには関係ない事じゃねぇのか?」
「嫌、この一連の事件の首謀者が主を狙って来るやもしれん。油断は出来ん」

 シグナムにとって最も危惧すべき点はその一連の首謀者が八神はやてを狙うかも知れないと言う危険性であった。何故ならこの事件の被害者は皆女性。理由は不明だが危険極まりない事に変わりはない。

「心配すんなシグナム。はやてが襲われる危険性はねぇよ」

 その心配を崩すかの様に甲児がやってきた。シグナムと向かい合うようにソファーに座る。

「どう言う意味だ? 兜」
「一連の事件の被害者のデータを調べた。結果、襲われた被害者は全員O型の血液型を持つ女性だった。つまり、首謀者はO型の人間しか狙わない事になる。そして、はやてはB型だった」

 甲児の推測が正しければはやてが襲われる危険性はない。とりあえず一安心だったが、其処で甲児の顔が暗くなった。

「只…」
「只、何だ?」
「なのはは…O型だ」
「それって、つまり…」
「あぁ、狙われる……恐らく、その首謀者の狙いははやてじゃなく、なのはだ…理由は分からないがそいつはあいつを殺そうとしている」

 途端に空気が重くなった。この推測は出来れば当たって欲しくない。しかしそれでもなのはが狙われる危険性が遥かに高い事は立証される事となる。

「何か、何か手はねぇのかよ!」
「無理だ、相手が地底に居るんじゃ手の出しようがねぇ……俺のTFOだって地面にもぐる能力はねぇんだ。勿論、グレンダイザーにも……」

 正しくお手上げの状態であった。相手が地上か空中に居るのなら話が早い。が、地底では話は別だ。地底に行くには硬い岩盤を突き抜けて地面にもぐらなければならない。しかしその手段が無いのだ。

(こんな時、ゲッターロボが居れば心強いんだけどなぁ)

 所詮はない物ねだりである。向こうから何の音沙汰が無いと言う事はまだゲッターが戦える状態ではない事を示している。となれば自分達だけでその首謀者と戦わなければならない。だが、戦おうにも相手は地底、こちらには打つ手がないのだ。

「どないしたんや? そんな暗い顔して…」
 
 すると丁度其処へ看病を終えて戻ってきたはやてが部屋の空気を察し皆に話しかける。皆はどんな顔をしたら良いか迷いだす。はやてに真相を話して逆に不安にさせても仕方のない事でもある。

「な、何でもありません」

 しどろもどろにそう言い切る。若干後ろめたい気持ちもあるが仕方ない。

「そっかぁ? 何か悩みがあるんやったら何でも言ってやぁ。相談に乗ってあげるからなぁ」
「承知致しました」

 そう言ってはやては台所へと向っていった。恐らく食事の準備に取り掛かったのだろう。だが、今のメンバーのほぼ全員が食べる気など起きなかった。今にも地底からそいつが出てくるのではと思うと気が気でないのだ。

「さっきの話聞いたよ。とんでもないのが現れたみたいだね」
「って、光太郎さん聞こえてたのかよ!」
「僕の聴覚は人間よりも数段優れてるんだ。この家の中の会話なら何でも聞けるよ」

 正しく地獄耳であった。そうして、会話に光太郎も混ぜて行う事となった。三人寄れば文殊の知恵とは良く言うが、三人ではなく6人揃っても良い案は浮かばずであった。

「こうなれば…奴を誘き出すしかないな」

 突如、シグナムがそう呟く。

「誘き出すって…まさかっ!」
「そうだ、高町を囮にして奴を引きずり出す。地上に出てしまえばこちらの物だ。その方が手っ取り早く片付けられる」

 名案の様に淡々と言い切るシグナム。だが、その直後彼女の胸倉を甲児が掴んだ。

「てめぇ、本気で言ってるのかっ! それじゃなのははどうなる? あいつを見殺しにする気かよ?」
「これ以上犠牲を出さない為だ! 主を危険な目に合わせる訳にはいかない」
「はやてが無事なら他はどうなっても良いって言うのか?」

 怒号を張り上げる甲児の手を払い除けてシグナムは凛とした目で甲児を睨んだ。

「当然だ。我等は主はやての守護騎士。最悪の事態の時、我等は主の御身を優先する」
「てめぇ…」
「止せ! 落ち着くんだ甲児君」
「シグナム。貴方も言い過ぎよ!」

 今にも殴りかかろうとした甲児を光太郎が止めて、シグナムをシャマルが叱る。それにはシグナムも半ば反省の色を見せた。だが、甲児の憤りは止まらない。

「俺は絶対認めない! あいつを囮に使うなんて絶対に反対だ!」
「ならば他に方法があるのか?」
「そ、それは…それはこれから考えるんだよ」
「そうしている間にも犠牲者は増える一方なんだぞ! お前はそれでも良いと言うのか?」
「ぐっ…」

 甲児は苦虫を噛み潰す思いであった。どうする事も出来ないのか。シグナムの言う通りなのはを囮にして敵を誘き出す以外に方法はないのだろうか。

「私はそれで良いですよ」
「なのは…」

 見れば壁伝いにやってきたなのはが居る。未だに顔は青ざめているがどうにか動けるくらいには回復したようだ。

「なのは、無理するな! 方法は俺達が絶対に考える。だから…」
「ううん、良いんです甲児さん。シグナムさんの言う通りこのままじゃもっと沢山の人が殺されちゃう。だったら、だったら私が頑張れば…」
「気は確かか? 下手したら死んじまうんだぞ!」

 なのはの肩を掴み甲児が言う。出来ればこんな作戦認めたくない。まだ幼い少女を囮に使うなど間違っている。だが、他に手段が無いのも事実であった。
 そんななのはの肩をシグナムが掴む。

「すまない、高町。だが、我等も全力を尽くす。絶対に…絶対にお前を死なせはしない」
「シグナムさん…」
「そう言うこった。お前の事はあたしら守護騎士が守ってやる。お前は大船に乗った気で居れば良いのさ」

 皆の言葉が胸に響く。その言葉がなのはに微かにだが勇気をくれた。自分で名乗り出ておいて何ではあるが正直怖かったのだ。あの蟻地獄の先に待っているであろう怪物が自分を食いつくそうと待ち構えている。
 そう考えただけで思わず身が縮みこんでしまう思いでもあった。
 しかし、今の自分には心強い仲間達がついている。仮面ライダー、UFOロボ、そして守護騎士達。
 彼等が居るのだから間違いなく自分が死ぬ事はない。そう確信が持てるだけでも嬉しい事でもあった。




     ***




 作戦はすぐさま決行された。その日、なのはは何時もと変わりなく道を歩いている。その周囲10m以内には何時でも出られるようにと守護騎士達と光太郎。その上空にはTFOとグレンダイザーが配置していた。皆緊張の面持ちでその場に居る。
 特に守護騎士達と光太郎の緊張は半端じゃない。

「うぅ…今更だけど凄く怖いなぁ…」

 思わず身震いしてしまった。無理もない。今のなのはの状況と言ったらネギを背負った鴨が猟師の前に躍り出るような物だ。正しく「今が食べごろなので食べて下さい」と言っているような物である。

(案ずるな。我等は常にお前の側に待機している)

 なのはの脳裏にシグナムの念話が響いてきた。どうやら今のなのはの身を案じて言って来てくれたのだろう。その言葉を聞きなのはもホッとなる。
 丁度その頃、一同とは別方向から歩いてくる青年が居た。以前ウルトラマンに変身した青年である。その青年が反対方向から歩いてくるなのはを見つける。

「あの子は…あの時の不思議な力を発していた子」

 青年は丁度彼女を探していた。行方不明となった生き別れの兄の詳細を知る為に、どうしても彼女と接触したかったのだ。
 近づき声を掛けようとした時であった。突如少女の足元があり地獄の様に崩れだしたのだ。

「来たっ!」
「え? きゃぁぁぁぁ!」

 あり地獄は瞬く間になのはの体を半分まで飲み込んでいく。思ったよりも早かった。急ぎ飛び込もうとした時、見慣れぬ青年が真っ先に飛び込んでいった。

「な、何だあいつ?」
「言ってる場合じゃねぇだろうが!」

 詮索は後回しと言うように、ヴィータが真っ先に飛び込んだ。それを最後にあり地獄は綺麗にその場から消え去ってしまった。そして、先ほどまで其処に居たなのはと青年、そしてヴィータの三名は忽然と姿を消してしまった。




     ***




 どれ程地下に来たのだろうか。一面不気味な黒い壁に覆われた薄暗い地面の空間の中になのはと青年は居た。

「大丈夫かい?」
「は、はい…あの…」
「君に少し聞きたい事があるんだ。良いかい?」
「え? えと…はい」

 突然そういわれたので思わずなのはは頷く。すると青年は嬉しそうに微笑んだ。

「これから僕が言う事は本当の事なんだ。聞いて驚かないで欲しいけど、僕はこの星の人間じゃない。獅子座L77星出身の宇宙人なんだ」
「宇宙人? それって、あの時超獣を倒したあのウルトラマンって…」
「そう、僕だ。僕の名前はアストラ。生き別れた僕の兄さんを探してこの星にやってきたんだ」

 包み隠さずにアストラは言った。本当なら驚く事なのだろうが、なのはは以前にもウルトラマンに会っていたので別に驚く事はなかった。寧ろ平然にアストラと向き合った。

「あの時私達を助けてくれたんですね。有難う御座います」
「どう致しまして。それより一つ聞きたいんだ。君の中に宿ってるその力は一体何だい? 僕等に似たような似てないような力を感じるんだけど」

 どうやらなのはの中に眠っている光をアストラは感じ取ったのだろう。だが、それに対しなのはは首を横に振った。

「私も良く分からないんです。でも、何故かこの力を狙ってヤプールが襲ってくるってだけで…」
(やはりそうか、彼女が伝説にもなってる光の子…ヤプールが狙う訳だ)

 アストラが納得する様に頷く。その時、遠くから獣のような雄叫びと凄まじい轟音が響いた。何かと思い其処に近づいてみると、其処には一体の超獣が地下鉄を引き抜いていたのだ。超獣は地下鉄列車を足元に叩き落すと口からゲル状の液体を吐き出してきた。

「見ちゃ駄目だ!」

 咄嗟にアストラはなのはの目元を隠す。其処に映ったのは衝撃的な光景であった。ゲル状の液体は列車ごと中の人をドロドロに溶かしてしまったのだ。恐ろしい光景でもあった。
 突如、超獣の前に異空間が現れヤプールが顔を出す。

【大蟻超獣アリブンタよ! お前はもう充分エネルギーを蓄えた。今こそ地上に躍り出て人間達を皆殺しにしろ! この青く美しい星を死の星に変えてしまうのだ!】

 ヤプールの命を受け、アリブンタは地上へ向けて猛スピードで駆け上がっていく。地上を攻撃するつもりなようだ。

「あれって、超獣!?」
「やっぱりヤプールが一枚噛んでいたのか。僕達もすぐに地上へ行こう」

 アストラがそう言う。だが、その直後足元で爆発が起こった。咄嗟に飛びのく二人の目に映ったのはこちらに向き歩み寄ってくる異星人であった。

「お前達は、ザラブ星人に、ガッツ星人、それにシャプレー星人」
「そう言う貴様は光の巨人。まさかまだこの星にウルトラマンが居るとはな」
「だが一人で何が出来る? 所詮我等星間連合の敵ではない」
「星間連合?」

 聞きなれない組織名であった。恐らく異星人の集合団体なのだろう。

「今は貴様に構っている余裕はない、その娘を渡せ。ヤプール様がご所望なのだ」
「やはりそうか。だったら尚の事お前達に渡す訳にはいかない!」

 そう言ってアストラは構える。だが、相手は三人。かなり分が悪いのは事実だ。だが、その時だった。

「退きやがれ其処のてめぇらぁ!」
「何!?」
「ひでぶっ!!!」

 突如背後から物凄い衝撃が襲いかかりシャプレー星人が押し潰される。背後から現れたのはヴィータだった。

「ヴィータちゃん!」
「無事か? ちびっ子」

 二人が近づき互いの無事を確認しあう。それを知りヴィータは安堵した。

「良かったぜ。てっきり蟻野郎の餌になっちまったかと心配したんだぜぇ」
「ヴィ、ヴィータちゃん…それあんまりな言い方だよ」

 確かにあんまりな言い方でもあった。あんな蟻の餌になんてなりたくない。

「んで、お前は一体何者だ?」
「自己紹介は後にしよう。まずは奴等を倒す事だ!」

 アストラがそう言う。すると目の前には二体の異星人が構えている。

「障害が増えたか、だが我等の目的に変わりはない! 光の子を抹殺する事が我等の目的」
「要するになのは狙いってのか。だったら尚の事そんな事させねぇ!」
「お前達の好きにはさせない。僕が居る限り!」

 2対2の戦いが始まった。ヴィータがガッツ星人と、人間体のアストラがザラブ星人と戦いを始める。

「な、何だこのガキ! このパワーは」
「鉄槌の騎士ヴィータ。あたしの実力を…舐めんじゃねぇぇぇ!」

 名乗りを上げた後、アイゼンを振り回しガッツ星人を壁に叩き付ける。衝撃の余り周囲に巨大なクレーターが出来上がり、そこでガッツ星人がガクリと項垂れる。
 その隣ではアストラの宇宙空手がザラブ星人を圧倒していた。

「その構え、まさか貴様獅子座の…」
「僕は獅子座L77星のアストラだ! ディィヤァ!」

 気合を込めた正拳突きを叩き込み吹き飛ばす。遥か後方まで吹き飛んだザラブ星人もまたその場で動かなくなってしまった。

「よし、後は超獣を片付けるだけだ」
「アストラさんは早く先に行って下さい」
「しかし、君達はどうするんだい?」
「安心しろ。こいつはあたしが責任を持って地上に連れてくからよ」
「分かった。それじゃ行って来る!」

 アストラはそう言いアリブンタが開けた大穴の真下に行くと、つけていた指輪を突き出す。眩い光が彼を包み込み光の巨人「ウルトラマンアストラ」へと変える。
 アストラは飛翔し穴を飛び出す。

「あたしらも出るぞ。しっかり捕まってろよちびっ子」
「うん!」

 未だに飛ぶ事の出来ないなのははヴィータにしがみつく形で穴を飛んで出て来た。
 地上に出たアストラの目の前では町を破壊しようとしているアリブンタとそれに挑むグレンダイザーの姿があった。

「あれは、あの時の光の巨人!」
【援護します! ディヤァ!】

 アリブンタ目掛けてとび蹴りを放つ。ウルトラマンの蹴りを食らい、流石のアリブンタも転げまわる。

「今だ、反重力ストーム!」

 グレンダイザーの胸から放たれる七色の熱線がアリブンタの巨体を持ち上げていく。やがて、光線の斜線から外れたアリブンタが真っ直ぐ地面に向かい落下してくる。その真下にはアストラが陣取っていた。

【トドメだ!】

 空高く飛翔し、燃え盛る蹴りをアリブンタの脳天に叩き付ける。それを中心にアリブンタの体が左右に真っ二つに分かれる。
 上空で爆発するアリブンタ。地上に降り立つアストラ。やはりウルトラマンが居るととても心強く感じられた。

「またあの光の巨人に助けられたんだな」

 大介は飛び去っていくアストラを見ながらそう呟いていた。その直後、巨大な穴からなのはを抱えたヴィータが戻ってきた。

「うっしゃぁ! さぁ超獣は何処だぁ? この鉄槌の騎士ヴィータ様が成敗して…あり?」
「もう終わっちゃったみたいだね」

 どうやらそのようである。その事実を知るなり愕然とするヴィータ。そんなヴィータの元へ集まってくる仲間達。

「高町、無事だったんだな」
「うん、ヴィータちゃんとアストラさんが助けてくれたから」
「アストラ? 誰なのそれ」
「さっき飛んでったウルトラマンだよ」
「あれがウルトラマンと言うのか。凄まじい力だったな」

 一同が改めてウルトラマンの強さを認識した。とにもかくにも、これにて今回の事件もどうにか無事に解決したのである。

「さぁ、早く帰って主を安心させよう。何時までも留守にしてては主も気が気でならないだろう」
「そうだね」

 皆も頷き帰路に着こうとした時、突如周囲を巨大な結界が覆い尽くす。それは相手を閉じ込める広域結界であった。

「これって、広域結界!」
「だが、誰が?」

 皆に緊張が走る。そんな中、目の前に突如転移してきた。
 其処に現れたのは見覚えのある四人であった。

「フェイトちゃん、それに皆!」
「知り合いなのか? 高町」
「うん、私の友達なんだ、でも…その隣の二人は誰だろう?」

 フェイト達の隣に居る二人の男には見覚えがなかった。初めて見る顔ぶれである。また、それだけではなかった。
 グレンダイザーの前にも二体の巨人が転移してくる。マジンガーZに良く似た姿をしたロボットと赤、青、黄の三食の巨大ロボットであった。

「あれは、グレートマジンガー! でもなんでこんな所に?」
「知っているのかい? 甲児君」
「以前俺を助けてくれたんだ。でも何で今更…」

 甲児もまた疑問を感じていた。その時だった。突如グレートマジンガーがグレンダイザー目掛けて腕を飛ばしてきたのだ。轟音と共に腕が飛んでくる。

「うわっ!」

 咄嗟にそれを回避する。だが、その直後今度は三色の巨大ロボットが両手に持ったダブルトマホークで切り掛かってきたのだ。

「くっ、ダブルハーケン!」

 ダイザーもそれに応じる為ダブルハーケンを取り出しぶつかりあう。その光景を甲児は見て驚愕した。

「な、何だ? 一体どうなってんだよこれ?」

 何がなんだか分からなかった。何故グレートがダイザーに攻撃を仕掛けてくるのか? そして、それは地上でも同じであった。

「フェイトちゃん、それに皆も。久しぶりだね」

 なのはがフェイト達に手を振る。しかしそれに対しフェイト達の表情は硬い。一体どうしたのかと思い近づく。するとフェイトは突如バルディッシュを構えだす。

「なのは、そいつらから離れて!」
「え?」
「そいつらは凶悪な犯罪者達だ! すぐにこっちに来るんだ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 急に何を言い出すの?」

 全く話が見えないなのはが叫ぶ。だが、その叫びを無視して四人が一斉に守護騎士達に襲いかかってきた。突然の事に守護騎士達も驚く。

「待って! その人達は敵じゃないよ!」
「いいや、敵だ! いい加減目を覚ませ、高町なのは!」

 クロノが厳しい声を放つ。一体全体何がどうなってるのかさっぱり分からない。何故フェイト達が守護騎士達と争わねばならないのか?

「皆、今助ける!」
「お前の相手は俺達だ!」
「何!?」

 守護騎士達を助けようとする光太郎に声を掛けたのは見慣れぬ青年達であった。その二人が構えを取る。

「変身、ブイスリャァ!」
「ヤァー!」

 二人の青年がそれぞれ変身する。

「か、仮面ライダー! 貴方達も仮面ライダーだったんですか?」
「俺の名前は仮面ライダーV3」
「そして、俺はライダーマンだ! 覚悟しろ悪のライダー!」
「な、何だって!」

 いきなり言われた事に戸惑う光太郎。だが、其処へ容赦ないV3の攻撃が降り注ぐ。ライダーマンもそれに続いた。
 只一人、状況が全く飲み込めていないなのははその場で立ち尽くすすかなかった。

「何で? どうして? どうして皆が戦わなくちゃならないの!?」

 一人叫ぶなのは。何故彼等が戦わなければならないのか? その真相を知る為にはもう一つ、別の物語を見なければならない。
 そう、一人の少女により救われたもう一人の魔法少女の物語を…




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

突如激突する事となったアースラ隊と守護騎士達。
一体何があったのか。それを知る為話を一旦戻す必要があった。

次回「復讐の3号」お楽しみに


次回からフェイトを中心としたアースラ編に入ります。
なのはの話とは別シナリオとなります。
お楽しみに。 
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