DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第1章:王宮の戦士とヲタ少女
第2話:戦士の誇りと…
(バトランド地方・イムル村周辺)
ライアンSIDE
驚いた事に、この可憐で美しく心優しい聡明な少女…マリーは、随分と旅慣れをしている様だ。
旅慣れだけではない…戦闘にも慣れており、私一人の時よりも大分戦闘が楽になった。
本人曰く『攻撃魔法しか使えない』との事だが、それで十分すぎる程の腕前である。
お陰で戦闘スピードも上がり、移動のスピードも向上したが、それでもイムル村までは遠く、今日はこの広い平原に立つ1本の大木の下で、野営を行い休息する事となった。
マリーの魔法で火を灯し、周囲の警戒を怠ることなく休息する…
とは言え、暖かい焚き火を囲み美少女と二人きりで食事をするなど…どうにもテンションが上がってしまうな!
「すまんなマリ-…一人で行動する予定だったから、大した食料を用意しておらんのだ。君の口には合わないだろうが、今日だけは勘弁してほしい」
私は無骨な携行食を火で炙りながら、お世辞にも女性の好みに合わない事を恥じてしまう…
「あらライアン様…私はモンスター蔓延る世界を、正義の為に冒険しておりますのよ。大きな町の小ジャレたカフェテラスで、優雅にお茶を嗜んでいるのとは状況が違います。本来お一人での行動を予定していたのに、急に加わった私の為に食料を分けて頂ける…それだけで感謝に絶えませんわ」
何という心の優しさだろうか!?
一見するとお上品な貴族令嬢の様に見える彼女…
しかし、我が儘を言うことなく置かれた状況を理解し、共に苦楽を共有する事の出来る少女………まさに理想的だ!
しかし…そうなると気になる事が……
「マリー…私の事を“ライアン様”と呼ぶのは止してくれないか?“様”付けで呼ばれる程偉くはないし、これから共に旅する仲間なのだから、もっとフランクに話しかけてほしいのだが…」
私としては少しでも親密度を上げたいと思う…
その一歩は互いの呼び方だろう。
私は年上である事から、当初より彼女の事を『マリー』と呼んできた…
彼女は礼儀正しそうだし、いきなり呼び捨てには出来ないだろうが、それでも少しはフランクな呼び方をしてほしい。
「あら…良いんですか?私としてもその方が楽ですし助かります…けど」
やはり礼儀正しい娘なのだな…
私に気を使っていたとは。
「構わぬよ。これから共に旅する仲だ…堅苦しいのは止めにしようではないか!」
私は持てる最大限の優しさと真摯さを前面に押し出し、マリーをリラックスさせる様努め話しかける。
「いや~…助かるわライアンちゃん!ブリッ子するのは馴れてるけど、やっぱり面倒なのよね!」
………ちゃん?……ブリッ子?…面倒だと!?
「あ…あぁ…うむ…そ、そうだな…(汗)」
ず、随分と…此方へ踏み込むことに躊躇のない少女の様だ…よ、予想とは違ったな…
「やっぱり言葉遣いって大切じゃん!最初は“ライアンさん”くらいで行こうかなと思ったんだけど、身分の知れない私がいきなり親しげにしちゃったら、失礼かなって思ったの。だから取り敢えずは“様”付けで呼んで、期を見て歩み寄ろうと考えたんだけど、ライアンちゃんからOKしてもらえると、すっごく助かっちゃうわ!」
うむ…予想とは遥に違う性格…なのか?
ちょっとフランクすぎる…かな?とは言え私からの提案だし、やっぱり止めようとは言い辛いなぁ…ちょっと言葉を濁して伝えてみるか。
「そ、そうだな…親しき仲にも礼儀ありと言うし…言葉遣いは大切だ!うん!」
「だよねぇー!初対面でタメ口ってあり得ないわよね!でも、そう言う人間って居るのよ…私の身近にも、初対面とか目上とか全く気にしない男が居るんだ!ビックリよね」
うん…どうやら私の気持ちは伝わらなかった様だ…
仕方ないか…私からの提案だったし…ここで止めにしたら、極端なまでの狭量さと、空気を読めない我が儘さだけが目立ってしまう……
諦めるしかないか…
「あ、そうだライアンちゃん!さっきまでは言い辛かった事なんだけど、この機会に言っておきたい事があるの」
言葉を選ばずに済む様になった所為か、先程より饒舌になったマリー。
一体何を言い出すのか……?
「あのね、ライアンちゃん…行動が遅すぎる!」
!?……何やら思いもよらぬ事を言ってくる。
確かに以前から、同僚等には“遅い”とか“のろま”等と、心無い暴言を言われる事も暫し…
今回の神隠し事件でも、私はバトランド城下での情報収集を行い、それからイムルへと出立した…
同僚の中には、私がバトランドを出る頃には、イムルに辿り着いている者も居ただろう…
しかし、その事を数時間前に出会った少女に指摘される謂われはない!
「あ、その顔はご不満プンプンだな!?断っておくけど私が言ってる“行動が遅い”ってのは、調査に乗り出すタイミングが遅いって意味じゃないからね!」
まるで私の心を見透かした様な言葉に、思わずたじろぐ。
「私が言いたいのは、戦闘を開始して敵に攻撃をするのが遅すぎるって言ってるの!さっきの洞窟を抜け、この遮蔽物のない平原を移動して思ったの…敵が近付いてるのは随分前から分かっているのだから、攻撃態勢に入るのが遅いなって…」
ぬぅぅ…私としても戦士としてプライドがある。
素人の少女にここまで言われるとは思っても見なかった。
何とか反論をしようと、自身の戦闘を思い出していると…
「あ、今ライアンちゃん言い訳考えてるでしょ。顔に出やすいゾ!…確かにね私は剣術の素人よ。こんな素人に戦闘のイロハを言われれば、多少なりとも腹が立つでしょう。でも私はね…冒険のプロと一緒に困難な旅をしてきた事もある女なの!」
ぼ、冒険のプロ…
それは一体…
ライアンSIDE END
(バトランド地方・イムル村周辺)
マリーSIDE
ふっふっふっ…
ライアンちゃんてばキョトンとしちゃって!
でもねぇ…戦闘が始まる毎に、スライムやらエアラットやらに一撃貰っていたんじゃ効率が悪いのよ!
本人はアレで敵を引き付け、自分の間合いで攻撃しているつもりなのだろうけど…
その内、一撃が強烈な敵が現れだしたら、反撃するまもなく戦闘終了って事になりかねない。
お父さんやお兄ちゃん…能力は落ちるがアルルさん達の戦闘を見てきた所為か、ライアンちゃんが頼り無く見えてしまう…まだ序盤中の序盤だし、これからに期待すれば良いのだろうけど…
「冒険のプロ…その方は戦闘に関してもプロ級なのであろうか?」
「そうよー…私のお父さんの事だけど、そりゃもう超強いからね!強すぎて大魔王が泣いて逃げたもん!」
まぁ正確には“不死身を捨てて、直ぐにトドメを刺してくれる方へ逃げた”だけどね。
「何とそんなに…お父上と言う事は、マリーと共にこの時代へ参られているのかな?」
お?さっきまでちょっと不愉快そうな顔をしていたのに、強い人が居ると聞いただけで目を輝かせ出したわ。
単純よね~…“戦士”とか“剣士”とかって、強いヤツが居るって分かると直ぐ戦いたがる…きっと今のライアンちゃんも、そんな気持ちで溢れかえってるんでしょうね。
「では、そのお父上に会い手合わせをして頂かねばなるまいな!」
ほ~ら~ね~!(笑)
思考回路が単純すぎー!
「あははははは、ライアンちゃん単純すぎー!ちょ~うける~!」
「むう…マリー、何が可笑しい!私は真剣なんだぞ!」
やだ~…ライアンちゃん、ちょっぴりご立腹!?
「ごめんなさい…でもムリなのよね。ライアンちゃんのその願いは叶わないのよ(笑)」
「叶わない…?それはどういう意味だ、私では差がありすぎて相手にもされないとでも!?」
あ、いかん!笑いすぎたか?目が超マジだ!
「う~ん…違うのよライアンちゃん。あのね私のお父さんに、手合わせをお願いしても『え~めんどくさ~い!良いよ君の勝ちで…僕は弱いから、やる必要ないでしょ!』と言って絶対に手合わせしてくれないのよ」
「な、何と…それは…言ってはなんだが腰抜けではないか!?」
「………ライアンさん……ライアンさんは私のお父さんの事を何も知らないだろうから、今回は我慢します………でも、二度と侮辱をしないでください!お父さんは強くて、格好良くて、面白くて、頼りになって、本当に凄い人なんです!」
気付くと今度は私が怒っていた。
「私は目の前でお父さんの凄いところを見てきたんです!あの人は“名”より“実”を取る人なんです…だから、どちらが強いのか比べる為手合わせを挑んでも『どっちが強くてもいいよ!』と言う気持ちから、戦う事自体を拒むんです!」
どうやら私は、自分が思っていた以上にファザコン・シスターズに近い心を持っていた様だ…
でも、面と向かってお父さんの事を侮辱されると、これ程までに腹が立つとは予想だにしなかった。
う~ん…でもこの場にいるのが私で良かったわ…他の姉妹だったら、ライアンちゃんを殺しかねない。
「す、すまん…私としては侮辱するつもりはなかったのだ…本当に申し訳ない事を言った。心から謝るので許してほしい……真に申し訳ない!」
些か怒りすぎたのか…深々と頭を下げて謝るライアンちゃん。
「…分かってくれれば良いです。言っとくけど、私だからこの程度の怒りで済んだんだからね!他の姉妹だったら、ライアンちゃん殺されてたかもしれないわよ!みんなファザコンばかりなんだから…」
「それは怖いなぁ…その、他の姉妹達もこの時代に来ているのかな?」
あれ?そう言えば…巻き込まれてたのはリューノとリューラだけだったわね。
あの二人だったら怒っても大したこと無いか………
「う~ん…怒ると怖いお姉ちゃんは来てねいわね。つー事は大丈夫かもしんない!」
それに今ここに居るワケじゃないし…良いか、アイツ等の事なんかは!
………でも、私が一人だけ此処(第1章)に来たってことは…もしかして他の連中も………?
マリーSIDE END
後書き
怒らせると怖い姉妹…
一体誰の事だろうか?
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