木の葉詰め合わせ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
小ネタ
BAD END ルート
BAD END ネタ①
前書き
これがBAD END だ!
――ああ、死ねるものなら死んでしまいたい……。
あまりにも残酷すぎる事実に直面した私の心情を表すのであれば、上記の様な物であった。
頭上に広がる空は地上の争乱とは打って変わって清々しいまでの青色だ。
そんな光景を虚ろな眼差しで見つめながら、私は大きく溜め息を吐いた。
なんでだろう、なんでこんな事になっているのだろうか。
肩越しに向こうの光景をちらりと眺めて、再度溜め息を零す。
硬質な黒髪を風に靡かせている見慣れた背中を遠目に目にして、ますます虚しくなった。
「いや、マジでどうしよう……。出て行くタイミングを完全に見逃しちまったわ……」
――はぁ、と溜め息を零して、その場に座り込む。
本当はこんな事している場合じゃないんだけど、なんか物凄く戦意を下げられたと言うか……、モチベーションが根こそぎ削り取られたというか……。とにかく虚しいというかなんというか……。
丁度私がいるこの場所は風下になっているから、風上にいる彼らの話し声が私の耳にも届く。
それにしても、なんでかねぇ……。
ごしごしと髪を掻きむしる。
つらつらと聞こえて来る、我が仇敵の憎たらしいまでに太々しい声を右から左に聞き流しながら、私はこれまでの人生を振り返ってみた。
生まれた時代が戦国の世で、前世とか言う余計な物が有ったにせよ一生懸命に頑張って生き抜いて来た。
父上が母上共々戦死してからは十代で一族を率いる様になって、二十代の中頃には火の国だけとはいえ、取り敢えず平和をこの世に齎す事には成功して……いざこれからって時にあの馬鹿野郎と終末の谷で殺し合いをして……その時の戦いの後遺症が原因で早死にして……。
それまで争うしか無かった忍び達に私達がお互いに協力し合えると言う事を示すことには成功できて、我武者らに頑張って来た成果はそれなりにあったと思いながら……死んだんだけどなぁ。
なーーんで、こんな事になっちゃったのやら。ああ……。
もうどうしようもなく心が鬱で、考えている内容も徐々に暗い物になっていく。
ちょっとだけ視界が心の汗で滲む。
「それもこれも……全部扉間の阿呆のせいだ……」
ははは、と乾いた声が零れ落ちる。
あの愚弟めが。どうしてもこうなって欲しくなかったから、遺体は火葬にして細胞すら残すなって念を押しておいたのに……!
「あれほど、あれほど、このフラグだけは、成立させたくなかったってのにぃぃいいいっ!!」
四つん這いになって、地面を拳でどんどんと叩く。
聞こえるとマズイから声を潜めてはいるが、本音を言えば叫び出したい。
ちっくしょう! まじでこの世界は私に優しくねーぜ!!
神でも仏でも、この際六道仙人でも誰でも良いから、その胸ぐら引っ掴んで、たこ殴りにしてやりたい!! なんだってばこんなこんなことになっとるんじゃい、こんちくしょう!!
――……もーやだ、死にたいっていうか、この世から綺麗さっぱり消え失せたい。
もうマジでなんなの、おまけになんだってば史上最悪フラグが成立しちゃっているのさっ!!
「あの野郎もあの野郎だ! なんであんな罰ゲーム的な代物をくっ付けておいて、平然としていられるんだぁっ!!」
私を絶望のどん底にまで突き落としてくれやがったあの光景を脳裏に思い起こして、涙が零れ落ちそうになる。……泣かないけどね。
「どう考えても、どん引き物の光景だろ、ありゃ……。なんというか……二次元なら我慢出来るが、三次元で見せつけられる様な物じゃないね……」
生前から皆にハイセンスハイセンスと言われて来た私でも、絶対にあれだけは御免被る。
飛び出していく寸前に目の当たりにしてしまった悲惨な光景。どうしてあの野郎はあんなものに胸元をひっつけたままであんなに堂々としていられるんだろう。
私だったら恥ずかしさのあまりに憤死してしまいかねないのに。
あの野郎が私以上のハイセンスの持ち主だったって事か、はははは……ちっとも笑えねぇ。
「それともあれか。力が手に入るんだったらそれで良いのか……。確かにさっちゃんにもそう言った傾向が有ったけどさぁ……」
現世に引き戻されてから取った弟子の姿を思い起こす。
あのお兄さん相手に戦うんだったらせめて弱り切っている大蛇丸は倒せないとね、といって送り出したのはいいけども、その大蛇丸を取り込んで帰って来るとは思わなかったんだよねぇ……。
呪印の支配下に置かれたままだと後々危なくなるとお兄さんと話し合って、二人がかりでさっちゃんを半死半生状態にまで送り込んで大蛇丸を引き摺り出したのは良い思い出だ。
耳を素通りしていく話し声の響きから、どうやら会話は佳境に差掛かった様だ。
凛とした声で対峙しているのは、私の愛しい妹の血を引く五代目火影・綱手こと、つーちゃんの声だろう。
強い決意の響きを宿した声音に、もう会える事の出来ない妹の姿を思い出して、なんだか切なくなった。
「――ミト……。お前の言う通り……、あの野郎は私の鬼門だった様だよ……」
あの野郎と犬猿の仲であった鮮やかな赤髪を持つ妹がだから申したでしょう? と言わんばかりの表情を浮かべている様を思い起こして、しみじみとした感慨に襲われる。
むさ苦しい男ばかりに囲まれていた時の癒しであった妹の姿を思い起こして、ちょっとだけ元気が出た。
「――はぁ……。あんなもん見てしまった今になっては、癒しが欲しいよ……切実に」
木ノ葉に帰って可愛い子供達と触れ合いたい。
木の葉丸君とか、モエギちゃんとか。いのちゃんとかサクラちゃんや、ヒナタちゃんとか……。
ナル君やリー君もなんだかんだで見ていて癒されるんだよねぇ……、頑張っている所とか物凄く。
「……帰ろうかなぁ」
『ちょっ! お待ちください、初代様!!』
突如として脳裏に響いて来た声に眉根を上げる。
この声は本部での情報伝達を一手に引き受けてくれている山中の……いのいちさんの声か。
『五影達が善戦しているとはいえ、相手はあのうちはマダラ! しかも、カブトの力によってか、貴方の木遁まで併せ持っている! ここは是非とも最強の忍びとして謳われた初代様の御力をお貸しください!!』
「いや、そーはいわれてもさぁ。あの野郎のあんな姿を見せつけられてしまうと……ぶっちゃけ正直言って近寄りたくないんだよねぇ」
身を隠している大岩に背中をくっ付けながら、立てた片膝を支えに頬杖を付く。
遠くで物凄い音が聞こえて来るが、気のせいだろう……多分。
『いや、確かにあの光景にはどん引きしますけど……、ですが……!』
あ、やっぱり引くんだよね。
「無理無理無理。体の方が距離反応起こして近寄れそうにない」
『そこをなんとか……!』
うちはの誇る瞳力に、万華鏡特有の特殊能力。
それだけじゃ飽き足らず六道仙人の目に、おまけに私の血継限界たる……木遁までぇ……!
くっそう。なんだかんだでチート設定盛りだくさんな万華鏡と渡り合えていた木遁は私も結構愛着湧いてたし、流石のあの野郎も真似出来ないからかなり自慢の代物だったのに、それまで使われてしまうなんて……!
おまけに本人のあの鬼畜極まり無い性格からして、流石の五影も苦戦することは間違いないだろう。
それは分かってるんだけど……なんだかなぁ。
「近寄りたく、無いんだよねぇ……」
『初代様、しっかりなさって下さい!!』
「いや、もうさ……。マダラはマダラでも、あの仮面の方に行っても良い? 自称マダラでもマダラだし……」
『あっちにはナルトとビー殿が既におられます!!』
「いや、でもさぁ……」
= = = = = =
……という具合にエンドレスループ。
んで、この後相手のアジトにでも潜入して、彫像となっている自分の姿とか目撃してとうとうその場へと崩れ落ちる。
「もうだめだ、私の細胞悪用されまくり……。嫌がらせにも程があるよね……」といって意気消沈。
それを必死に励ます本部組。
後書き
原作柱間があのマダラの姿を見てどう思うかは知りませんけど、ここの柱間様はこうなる。
何せ、この作品自体が人面フラグを避けるために作られた話ですから。
ページ上へ戻る