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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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後日談9 バレンタインデー

2月、この月には男達には大きなイベントがあった………


そう、バレンタインデーだ。
好きな男の子にチョコを送ったり、友達として義理チョコを渡したり。
目的は人それぞれだが、普段勇気を出せない女の子にも格好なイベントでもある。

しかし、そんなイベントもある男達にとってはた迷惑なイベントにしかならなかったのである。
今回はそんな男達の話である。


「明日バレンタインデーだな………」
「そうだな………」
「だけど俺達モテない男には悲しいイベントだよな………」
「なあ………」

「なあ零治、俺、あんな殺意を持った目で見られるの初めてなんだが………」
「圭、俺じゃない。神崎に言え」
「もう無理。俺の言葉なんて聞く耳持たないよ………」
「俺当日休もうかな………」

そんな話をしながら教室の隅で固まっている俺、圭、良介、神崎。
下手に動くと男子に襲われそうでマジで恐い。

「………たかがチョコくらいであんなになるなよな」
「全くだ」
「圭、零治。それは貰える人の意見だよ」
「だけどな神崎………」
「そうだよ。俺だって渚からしか貰えないのに………」
「良介はそれで良いんだろ?」
「まあね」

そう言って笑みを見せる良介。
こんな話を盗み聞きされたら良介はバレンタインを迎えられるかどうか………

「貰えたとしてもあんまり見せびらかすような事はしないようにな………」

俺は隣のクラスの桐谷がとても羨ましかった………






放課後………



バニングス家………

「出来た!」
「うん、完璧!」

バニングス家の厨房ではアリサとすずかが一緒にチョコを作っていた。

「………だけどやっぱりハートじゃないの?」
「む、む、無理よ!!」
「だけど零治君気がつくかな………?多分星ちゃん達も作るだろうし」
「………アイツの事だから気がつかなそうね。………でも、やっぱり恥ずかしい!!」
「もう………なら予めもう一個ハートのチョコ作ろうよ。直前まで考えて渡せば良いじゃない」
「でも………」
「じゃないと勝てないよ!!」

すずかにそう言われ、固まるアリサ。
そして………

「もこうなったらヤケよ、やったろうじゃない!!」
「流石はアリサちゃん!」

こうして再び2人はチョコを作り始めた………






八神家………

「はやて、こうか?」
「そうそう、ええでヴィータ」
「はやてちゃん、はやてちゃん、私は!?」
「リィンも中々ええで」
「はい!」

「何をしているのだ主は?」
「明日はバレンタインデーでしょ?だからみんなで作っているのよ」

机の上でヴィータやリィンと一緒にチョコを作っているはやてを見ながらシャマルが説明した。

「シグナムは誰かにチョコを送ったりしないの?」
「そんな相手は居ないな。そう言うシャマルはどうなのだ?」
「零治君にいつもはやてちゃんがお世話になってますってあげるつもりよ」
「………作るのか?」
「本当はそうしたいのだけどはやてちゃんがどうしても駄目って………」

(流石は主はやて………これで死人を出さすにすむ………)

そう思ったシグナムであった………

「ザフィーラはチョコ無しな。チョコは犬には毒やから」
(あ、主………私は犬では………)






高町家………

高町家のキッチンではエプロン姿のなのはがせっせと作業をしていた。

「あら?なのはチョコ?」
「うん、明日みんなで配りっこするの」
「男の子には?」
「零治君と桐谷君、後ユーノ君にもあげようかなって」

そう言って作業に戻るなのは。
これ以上邪魔してはいけないと思った桃子は静かにキッチンを後にした。

「どうだ?」
「う~ん、やっぱり友達って感じね。零治君も桐谷君もユーノ君も男性として好きって訳じゃないみたい」
「そうか………なのはは女の子が好きって事は無いよな?」
「それはない………筈。」
「………そろそろ恋なんかも知ってもらいたいんだがな………」
「そうね………」

と、なのはを遠くから見て話す、両親だった………





ハラオウン家………

「フェイト、食べて良い?」
「ダメだよアルフ、これはレイ………」
「レイ………?」
「………な、何でもない」

と、うっかり渡す相手を話しそうになったフェイトだったが、辛うじて言う前で気がついた。
これがエリオなら気がついたのかもしれないが、アルフは零治に会ったことが無いため気が付かなかった。

「じゅる………」
「ダメだって………ほら、こっちならあげるから」
「わあっ!ありがとうフェイト!!」
そう言ってアルフはチョコを加えてソファーに走っていった。

「ふふ、青春ね………」

そんなフェイトをドア越しに見ているリンディだった………






有栖家………

「ねえ星お姉ちゃん、これで良いの?」
「ええ、上手ですよキャロ」

そんな星の答えに自然と笑顔が溢れるキャロ。

「星、私は?」
「………優理、その顔は誰?」
「レイ」
「自分で自分の顔を食べることになるのはキツイのでは………?」
「………まあ気持ちは人それぞれですよ夜美」
「嫌いと言っている様に思えるのでは………?」
「レイなら分かってくれますよ」

「そんな事よりも上手く出来ないよ~!!」

と涙目で訴えるライ。
そんなライを見て、星と夜美はため息を吐いた。

「ライはもっと慎重にやらないと駄目だろ」
「でも………」
「見ろ、フェリアなんてあんなに集中して………」
「うがー!!」

怒り任せに自分の作ったチョコを引っくり返すフェリア。いつも冷静なフェリアにしては珍しい出来事で、その場にいる皆が驚いてる。

「フェリア、どうしたんだ!?」
「まだ駄目だ、もっと、もっと上手く出来る筈………」
「いや、普通に綺麗に出来てるぞ」
「駄目だアギト、これではノーヴェには到底及ばん」
「いや、何でそこでノーヴェ………?」





加藤家………

「皆さん、ちゃんと手順を守れば綺麗に………ウェンディ、聞いてますか?」
「………ここにタバスコを入れて、トマト味のチョコと言えば………流石に無理があるっスね………」

「エタナド、あのアホはほっといて続きを教えてくれ」
「………分かりました。それでは続けましょう」

今、加藤家ではノーヴェとセインがエタナドの指導の元、チョコを。ウェンディが何かを作っていた。
パパっと作った加奈は部屋に戻っており、桐谷は零治と共に出かけていた。

「しかしセインはチョコを誰にやるんだ?」
「友達やあとレイや桐谷にも」
「女の子同士にか?」
「友チョコってやつだよ」
「へえ~変わってんな」
「それよりもノーヴェこそ桐谷に喜んでもらえれば良いね」
「なっ!?」

と驚いた顔でセインを見るノーヴェ。

「私は一応3人の中では一番姉だからね。それくらいは察しがつくよ」
「いや、でも私は………」
「桐谷はレイ以上にモテるから大変だよ。それなのにレイ以上に鈍感なところがあるし………」
「そうだよな………」

そう言ってため息を吐く2人。

「女泣かせですね零治様も桐谷様も」

そんな様子を見て呟いたエタナドだった………







ゲームセンター………

「はぁ………毎年この時期は家を追い出されんだよな………」
「良いじゃないか家族に愛されてて」

ゲームセンターのパチスロエリアで並ぶ2人の姿が………

チョコを作るのに家を追い出された零治と桐谷である。

「でもさ、どうせ食べるんだし、部屋に居たって………」
「楽しみにしてもらいたいんだろう。それに零治自身も今年はいつもと違うだろ?」
「………まあ確かにな。キャロや優理、アギト、フェリアもいるし、何より星達からもらうチョコは去年とは違うからな」
「そうだな………おっ、確変入った」
「マジか!?」

この後も、2人で1日を過ごすのであった………




そんな放課後が過ぎ、運命の当日………





「会長、チョコどうぞ!」
「会長、私からも!」


学校に着いた途端フェリアは桐谷の元へ向かった。何でそんなに慌てるのか謎だが、とても上手く出来ていたとアギトが言っていたのでよほどの自信作なのだろう。フェリアがさっさと行った後ゆっくりと教室へ向かっていた俺達だったが、行く途中後輩の女の子からもらったり、先輩達からからもらったりと既に結構もらった。

………まあ全部義理だけど。

「………モテモテですね、レイ?」
「えっ、何睨んでるの?」
「言わないと分からない?」
「………いやでもせっかくもらえるんだし、用意してもらったのに断るのは失礼かなと………」
「ほう………?」

あの………星さん、ライさん、夜美さん、怖いんですけど………

「そんなにチョコあるなら私達のは要りませんね」
「そうだね。一杯あっても食べられないだろうし」
「仕方がないから自分達で食べるとするか」
「ちょ!?それは無いだろ!!せっかく楽しみにしていたのによ………」

「「「楽しみに………?」」」

「ああ、だって今回はいつもと違うからさ」

そう、お互いの気持ちを言い合って、家族以上に大事になった3人。
その3人との初めてのバレンタインデーなのだ。
期待しないほうがおかしい。

「そ、そうですか………」
「そ、そうだよね………」
「す、済まなかった………」

「いいよ、だけど凄く期待してるからな」

「「「わ、分かった」」」

「とりあえず教室に行こうぜ」

そう言って俺達は教室へ向かった。





「おっ、来た来た!」

教室に入るとすぐさま近づいてくるはやて。
手には大きな紙袋を持っていた。

「ほな、零治君達にもチョコプレゼントや。家族みんなで食べてな」
「おっ、まさかの全員分用意してくれたのか!?」
「まあ零治君だけはちょっと多いけどそれは堪忍やで」
「いや、嬉しいよありがとうはやて」

お礼を言って大きな紙袋から出した2回りくらい小さい紙袋を受け取った。

「「「レイだけ多い………?」」」
「そや。リィンやヴィータ、シャマルは………私が代わりに作ったんで安心してええよ」
「「「!?」」」

リィンやヴィータやシャマルさんまで………

「本当ありがとな。ちゃんとお礼は返すよ」
「期待しとるよ。それじゃあ加藤家の面々にも渡しに行ってくるわ」

そう言ってはやてはさっさと教室を出ていった。

「シャマルさんまで………なんだか悪いな………」
「そうですか?内心は飛んで喜びたいのでは?」
「そうだよね、レイはお姉さんが好きだし」
「エロ本もそう言うのが多いしな」
「おい夜美、そのカミングアウトは止めてマジで!」

とまたもや不機嫌になる3人。
またか………と思いながら、ご機嫌取りをしようとした時、タイミング悪く今度はなのはがやって来た。

「あっ、零治君に星ちゃん、ライちゃん、夜美ちゃん!」
「なのは。………お前もチョコ配り?」
「………何か媚売りみたいに聞こえるの………違うよ、日頃お世話になってるお礼だから………はい」

そう言って渡されたチョコには俺達4人分だけでなく、キャロやアギト、優理の分まであった。

「わざわざありがとななのは」
「これは私達の分です」
「はい」
「良ければ食べてくれ」

そしてお返しとばかりに星、ライ、夜美からなのはにチョコを渡した。

「うん、ありがとう!あっ、そう言えばお姉ちゃんから零治君にチョコレートケーキをって別に………」
「丁重に返却しといて」






「アリサちゃん、なのはちゃんみたいに渡しに行かないの?」
「待って、どうしても心の準備が………」

遠くから見ていた私達。なのはやはやてが渡していく中、私はどうしても踏み出せなかった………

「………まあ星ちゃん達が近くに居たら本命チョコ渡しづらいよね」
「そうよね………」
「だけどなるべく早く渡した方が良いと思うよアリサちゃん、何だか男子の様子がおかしいよ」
「確かに、そわそわしてるけど零治やあのアホを遠くから観察しているような………」
「零治君、今日一日大変そうだね………」
「………自業自得でしょ」

だけどタイミング的には零治が1人になってからね………
上手く1人にならないかな………?






昼休み………

「れ、いっじく~ん」

変な言い方で俺を呼ぶ水無月先輩。

「何ですか先輩………?」
「何その警戒した言い方は………せっかく零治君の為に愛を込めたチョコを持ってきたのに………」

「「「「「愛!?」」」」」

誰だ?先輩の冗談にわざわざ反応したのは………

「分かりました、美味しく妹達と食べるのでありがたく頂きます」
「………ちぇ、つまんない。もっと取り乱してくれれば面白かったのに………それとも貰いすぎてそう言う感覚がマヒしちゃった?」
「………まあ確かにこんなに貰ったのは人生初めてですね。………俺のだけじゃなく、妹達にって準備してくれた物もありますけど」
「あら、本当に人気者ね零治君。だけど一つだけお節介ね」

そう言って俺の耳元に顔を近づける先輩。

「このクラスの男子達の目が怖いわ………放課後、気を付けた方が良いわよ」

そう俺にだけ聞こえるように教えてくれた。
確かにいつもなら粛清だ!!とか言って襲ってくると思っていたが、遠くから見ているだけで何も動きがない。桐谷や神崎にも被害が無い事を見て不気味と思いつつ、流石のバレンタインデーだから静かにしているのかと思っていたが………

「放課後か………」

確かに放課後動くのはありえそうだ。
もう貰える見込みが無いと分かれば一斉に襲ってくるかもしれない。

「今まで貰ったチョコは星達に任せればチョコは問題無いだろう、後は無事に家に帰るかだな………」

そうと決まれば星達に………

「レイ、話があります」
「僕も」
「我もだ」

「ああ、ちょうどいい。俺もお前逹にお願いが………って何でそんなに力一杯引っ張るんだ?」

「いいから!!」

そう言って3人は俺を教室から引っ張っていった………

「あらあら………まあ頑張りなさい零治君。………さて私もはやてちゃんと桐谷君にチョコ渡してさっさとご飯食べましょ」

その後俺は星達に涙目で昼休み中説教を受けていた。
昼飯ぃ………






放課後………

結局チョコを家族の分含めて20個近くもらった俺達ははやてからもらった紙袋になんとか詰め込み、持って帰ることにした。
因みに圭はさっさと部活に、良介は渚と帰った。
神崎は恐らく加奈と会っているのでは無いかと思う。

そして廊下に出て、いざ帰ろうと思ったとき、生徒会室に忘れ物をしたままだったのを思い出した。

「悪い、俺はちょっと生徒会室に行って忘れ物取ってくるから先に帰っていてくれ」

そう言うと途端に3人の顔が不機嫌になった。

「女の子との約束があるのですか………?」
「………俺の話聞いてた?」
「今までのレイを見てて信じられないよ!」

そう言われもな………

「生徒会室なら我も付いていこう、別に問題ないだろう?」
「………まあ別に………いや、やめた方がいい」
「レイ?どうしたと言うのだ?」
「横目で教室の方を見てみろ………」

3人とも俺に言われた通り、そっと横目で教室の方を見ると………

「チョコ………」
「チョコ………」
「チョコ………」
「チョコ………」

とこちらを睨んでいるSBS団が。

「皆さんどうしたんです………?」
「チョコをもらえなかった悔しさ、妬み、恨みが最高潮まで高まり暴走寸前まで来てるんだろう。せっかく作ってくれたのに無駄にするのが流石に失礼だろ?だから俺が囮になるからチョコを頼む」
「わ、分かった」

夜美の返事を聞いた俺は再び教室に入った。するとそれがスイッチだったのか、ゆっくりと立ち上がるSBS団。

そして………

「チョコを………よこせ!!!」

一斉に襲いかかってきた。

「じゃ、頼んだぞ!!」

そう言って俺は走り始めた………

「あれ?零……!!」
「待て神崎、逃げるな!!」

俺の後ろから追いかけてきたSBS団を見て、後ろに走り出す神崎。

「1人だけ逃がすか!!」
「こっち来るな!!」

しかしここは狭い学校の中、道も限られる為、自然と神崎も巻き込まれた。

「「「「「チョコよこせー!!!!」」」」」
「絶対渡すか!!」
「みんな、いい加減諦めろ!!」

「うるさい、裏切り者!!お前は必ず捕まえる!!!」
「………もし加奈のチョコ取られたらマジで零治、襲うから全力で」
「いや、SSSランク魔導師でマジでこられたら塵一つ残らないんだけど………」
「だったら絶対に逃げ切るぞ!!」

しかしそんな時、目の前にSBS団の面々が立ちふさがった。

「神崎!!」
「おう!!」

「来たぞ!!捕らえろ!!」

真っ直ぐ向かってきたSBS団。その特攻ぶりは怪我などお構い無しと言った勢いだ。

「神崎、机を蹴って避けるぞ………」
「机………?あれか!!」

壁に並べられた机を見つけた俺はその机に飛び乗り、思いっきりジャンプした。

「なっ!?」
「まさか!?」

「神崎、来い!!」
「おし!!」

神崎も同様に机に飛び乗り、思いっきりジャンプした。
しかし………

「うごっ!?」
「あっ、ごめん………」

一番後ろにいたSBS団の顔面を踏んずけたが………

「………まあ自業自得だから気にするな」
「あ、ああ」

「くそっ、突破された!!」
「追いかけろ、チョコを奪え!!」

その後もいつも以上にしつこいSBS団に追いかけられ続けた………







「零治、どこに行ったのかしら………?」

アリサは放課後1人で学校をさ迷っていた。
本当はもっと早くチョコを渡す気でいたアリサだったが、零治から片時も離れない星達3人のせいで中々渡せずにいた。

放課後になってやっと星達と離れたのでチャンスだと思い、探しているのだが………

「どこにもいないじゃない………」

さっきから聞こえるのはクラスの男子の奇声ばかり。
流石に騒がしいと思った先生方が止めに入っているが、執念を感じさせる勢いに止めようがなかった。

「私はどうしていつもこう………」

諦めそうになるアリサ。
時間も放課後から1時間経過していた。

「………最後に生徒会室に行ってみよう」

重い足取りでアリサは生徒会室に向かった………






「はぁ………」

こちらもアリサ同様零治を探していたフェイト。
アリサとは違い、何度も零治の姿を見つけたフェイトだったが、声をかける前に零治は行ってしまい、声をかけられずにいた。

「全く………私達のクラスの男子は本当に余計な事をするなぁ………」

文句を呟きながらフェイトは生徒会室へ向かう。
零治ならあそこに行くんじゃないかという勘でそう決めたフェイト。

「「あっ」」

そしてアリサと鉢合わせた………








「神崎、生徒会室だ!!あそこに!!」
「分かった!!」

「行かせるな、絶対に捕らえるんだ!!」

色んなボールや物が投げられるが、それを無視して生徒会室に滑り込んで鍵をかけた。

生徒会室は色んな資料や、時々個人情報も扱うため、鍵は二重でかけられ、扉も頑丈になっている。
鍵も生徒会長か、副会長、先生方しか持っていない為、普通の生徒では絶対に開けられない。

「ふう………これで一安心」
「だけどどうやって帰る?」
「いっそこのまま転移するか。ラグナル無いから余り遠くにはジャンプ出来ないけど、あいつらにバレないくらいなら………」

「零治、許可無く魔法使っちゃ駄目だって言ったよね?」

そんな声が聞こえ、部屋の中を見るとソファーに座っているアリサ、フェイト、そして桐谷がいた。

「………何でいるんだお前ら?」
「俺は帰る途中に忘れ物に気がついて学校に来たら、SBS団に見つかって追いかけられたから早々に生徒会室に逃げ込んだ」
「わ、私はれ、零治に渡したい物があったから………」
「私も………」

そう言うと気まずそうにお互いを見る2人。

「俺に………もしかしてチョコか?だったら日中渡してくれればよかったのに………」
「いやでも………」
「星達がずっと張り付いてたじゃない………」
「別に気にしなくても………」

「そこまでだ、流石にアイツらやりすぎだな………」

桐谷がそう言った瞬間、ドン!ドン!と扉にぶつかる音が聞こえた。

「扉を壊すつもりなの!?」

アイツら………いくらなんでもやりすぎだ………
無駄な時間を浪費させられ、星達と過ごすバレンタインデーを邪魔され………

「………もう頭にきた………アイツらこらしめる」

そう言って扉へ向かう零治。

「だったら手伝うよ。俺ももう帰りたい」
「なら俺もだ。これ以上副会長としても見過ごせない。」

「ちょっと、桐谷!神崎!」

しかし、3人は扉の前に立ち、零治が鍵を開け、扉を開けた。

「「「「「!?チョコよこせー!!!!」」」」」

叫びながら突撃してくるSBS団。

「うるさい」

一番最初に突っ込んできたSBS団の男子の頭を掴み止める零治。

「やりすぎだよ、追いかけっこくらいならまだしも、扉を無理矢理破ろうだなんて………」
「零治は滅多にキレないが、キレると容赦がないから覚悟した方がいいぞお前ら。」

神崎と桐谷も負けじと上手く押さえつけ、首筋に手刀を当て、沈黙させる。

「中学生の動きじゃ無いわね………」
「3人共高ランク魔導師だからね」

その後も3人の勢いは留まること知らず、結局10分後には………

「あ~あ………」
「一体どうするのよコイツら………」

生徒会室の前にSBS団の男子が全員気絶していた。
誰も立っておらず、そこに立っていたのは男3人。

「………やりすぎた」
「俺達はちゃんと手刀で気絶しただけだがな」
「零治は荒いんだよ、顔を思いっきりアイアンクローしたり、頭に思いっきり殴ったり」
「いや、プチんと来ちゃてさ………どうしようコイツら?」
「教室にでも集めとけば先生達が気がつくだろ」
「そうだね、そうしようか」

そう言って桐谷も神崎も足を持って引きずって運んでいく。
………確かに人数も多いからってそれは酷いんじゃないか?

「零治、ちょっといい………?」
「ん?」

アリサに声をかけられ、話しかけられアリサ達の方を向くと、そこにはフェイトもアリサと並んで俺を見ていた。

「どうした?」
「零治、これ………」

そう言ってバックからそれぞれチョコを取り出した。

「悪いなわざわざ」
「それだけじゃないの!!」

いきなり大きな声を出すフェイトにちょっと驚くが、フェイトは緊張しているのか同じボリュームで続ける。

「私………私ね!!」
「ちょ!?フェイト待っ!!」
「れ、零治の事が………!!」

そこまで言った時に俺のポケットにある携帯が鳴った。

「悪い、電話だ………って星か、何の用だ………?」

そう思い、携帯に出た。

「もしもし………?」
『レイ、今何処にいるのですか?………もしかしてまだ学校ですか………?』
「いや、まあ学校だよ。SBS団の奴らがしつこくてな………結局シメちゃったよ」
『………いいから今すぐ帰ってきて下さい。じゃないとチョコはおあずけです』
「えっ!?何故!?」
『いいから!言うこと聞かないと本当に無しですよ!!』
「わ、分かった。直ぐに帰るから!!」

そう言って直ぐに携帯を切った。

「わ、悪い、直ぐに帰らなくちゃ行けなくなった!!」

「えっ!?」
「何かあったの?」

「何故か星が不機嫌でな、今すぐ帰らないとチョコおあずけだって………それはマジで勘弁!!鍵は桐谷に任せて………俺、先に帰るな!チョコマジでありがとう!」

ぱぱっとメールを打ち、お礼を言って生徒会室を出た………










「はは………やっぱり星達か………」
「零治………」

残された2人はその場から動けずにいた。

「もう駄目なんだね………」
「フェイトも零治の事好きだったのね………」
「うん………だけど………」
「零治の気持ちはやっぱり………」

「悪いな、あのバカは普段鈍感な分、一旦好きになれば一途な奴なんだ」

「「桐谷………」」
「すまん、聞くつもりは無かったんだが、鍵を閉めるの頼まれたからな」

そう言って携帯をひらひらと見せる。

「ううん、でも教えて欲しい事があるの………」
「やっぱり零治も………星達の事が好きなの?」

そう聞くアリサ、既に目頭には涙が溜まっている。フェイトも同様だ。

「………ああ、零治は星達3人に自分の素直な気持ちをぶつけた。そして3人もそれに答えた。アイツらは完全に相思相愛だ」

「「………」」

そう言うと沈黙する2人。

「………取り敢えず1時間後にまた来る。それ以上は悪いが………」

そう言うと静かに頷く2人。
それを確認した桐谷は静かに生徒会室を出ていった。

「………失恋って辛いね………」

涙を流しながら言うフェイトの言葉にアリサも涙を流しながら頷いた……… 
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