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戦国異伝

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第八十二話 慎重な進みその三


「十兵衛殿、それは幾ら何でもです」
「無理だと思いますが」
「波多野自体はやはり」
「攻めるしかないかと」
「確かに攻める手段もあります」
 このことは明智も否定しなかった。しかしだ。
 それでもだ。彼は二人にも言うのだった。
「ですがそれでもです。話で済めばです」
「それに越したことはない」
「そういうことでござるか」
「はい、そうです」
 明智は二人の同僚にも述べた。
「まずはやってみてです」
「それが果たせなかった時にですか」
「八代の城をあらためて攻める」
「そうするのですな」
「無論本丸は最後に攻めます」
 いきなりだ。それはしないというのだ。
「我等が武田殿、一色殿の軍勢と合流し丹波の国人衆を味方につけていき」
「そして波多野についた国人達や家臣達を切り崩し」
「そのうえで、ですか」
「左様です。そして使者を送りながらです」
 織田家につく様に勧めるだ。その使者達をだというのだ。
「兵を八代に進めていくのです」
「兵を止めることはしないというのですな」
「はい」
 それは絶対にだと。明智は丹羽にも答える。
「兵を進めることも大事ですから」
「それがそのまま波多野を怯えさせますからな」
 丹羽はこう言ったのだった。
「だからですな」
「おわかりでしたか」
「はい。兵は動かすだけでも相手に怯えを与えるものです」
 自分達のその軍勢が向かってくるからである。
「だからこそ進んで、ですな」
「そう考えています」
「それでいいかと」
 丹羽はすぐに明智に述べた。
「ではこのまま八代に向かいながら」
「はい、そのうえで仕掛けていきましょう」
 明智は穏やかに言った。こうしてだった。
 丹羽が率いる一万の軍勢は北西に進みながらまずは丹波の中央に向かっていた。その途中だ。
 丹波の国人達が次々と彼等の陣地に来る。そのうえでだ。
 織田家に加わってきた。明智の読み通り軍勢はかなり増えていった。そして。
 その武田、一色の軍勢もだ。姿を現したのだった。その報を受けてだ。
 丹羽は傍らにいる明智にだ。こう言ったのだった。
「まずは、ですな」
「はい、第一の段階は終わりました」
「左様ですな。まずはこれで」
「しかしです」
 これで終わりではないとだ。明智は丹羽にすぐに言ってきた。
「次はです」
「彼等の軍勢と合流しそのうえで」
「いよいよ八代城に向かいます」
 そうするというのだった。
「その時が来ます」
「ですな。それでは」
「それで、なのですが」
 ここでだ。また言う明智だった。
「その波多野についてですが」
「既に人を多くやっています」
 国人や家臣達、その彼等にだというのだ。
「後はその結果ですが」
「おそらくですが」
 どうなったのか。明智は己のその読みをだ。丹羽に述べたのだった。
「その殆どがです」
「上首尾に終わっていますな」
「そうなったかと」
 二人の読みは同じだった。まさにだ。
「ですからここはです」
「そのままさらに八代に向かう」
「そうすればいいです」
「そうすれば八代城の周りの支城も我等の手に落ちる」
 そこを守る波多野についた国人達や家臣達がそのまま織田家につくからだ。城ごとだ。 
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