戦国異伝
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第八十話 大和糾合その三
「無論。あの地まで」
「ですな。あの地の国人達もこの城に来ております」
「では問題がないかというとそうではなく」
「左様です。あの地には国人以外の者も多く」
「山伏や修験者の類がおりますか」
「他にもいる様なのです」
少し眉を顰めさせてだ。筒井は滝川に話した。
「そうしたよいと言っていい者達だけでなく」
「といいますと」
「妖術師でしょうか」
怪訝なものもその顔に浮かべてだ。筒井はそうした存在のことも話に出した。
「そうした類もです」
「あの地にはいるのですか」
「南朝についていた・・・・・・いや」
「いや、とは?」
「また別の。まつろわぬ者でしょうか」
こうした者達もだ。筒井は話に出したのだった。
「この大和は土蜘蛛の国でもありまして」
「土蜘蛛というと」
そう聞いてだ。眉を顰めさせたのは雪斎だった。彼はこう筒井に返した・
「あの山にいる」
「まことに蜘蛛である場合だけではありませぬ」
「そうでしたな。まつろわぬ者達であることもまた」
「そうです。土蜘蛛はそうした者達である場合もあります」
「その土蜘蛛と戦をすることになるのですかな」
「いえ、そこがよくわかりませぬ」
そう問われるとだった。筒井も答えられなかった。そうしてだ。
そのうえでだ。彼は雪斎達にこうも述べた。
「織田様と敵対するのかそうでないのかは」
「ふむ。では」
「ではとは?」
「先に調べておくとしますか」
こう言うのだった。
「流石に今すぐは無理にしましても」
「この戦の後ですぐに」
「そうされると」
「こう考えています」
筒井は滝川と雪斎に述べながらだ。そのうえでだった。
松永を無言でちらりと見た。それからだった。
あらためて滝川と雪斎にだ。問うたのだった。
「それでどうでしょうか」
「ふむ。確かに治める場所にどうした者がいるのか把握するのは当然のこと」
「そのことも考えれば」
「ですな。では」
筒井は二人の言葉も受けてだ。そうしてだった。
吉野やそうした場所のことを調べることも言うのだった。この話をしてからだった。彼はあらためてだ。一行に対して笑顔を向けてこう言ったのだった。
「それで茶でもどうでしょうか」
「むっ、筒井殿も茶を嗜まれるのですか」
「多少ですが」
そうだとだ。筒井は松永をまた一瞥してからだ。滝川に答えた。
「最近はじめました」
「左様でございますか」
「この大和は豊かな地で米もよく獲れますが茶もです」
「それもですか」
「他には紙に果物もです」
とにかく多かった。大和で獲れるものは。
「墨を作ることもできます」
「まことに豊かな国ですな」
「その大和の国人衆は信長様に従います」
主の座にいるがそれでもだ。筒井は頭を下げる様にして言った。
「そして興福寺もです」
「あの寺も」
「これが大和衆の結論です」
筒井はこう滝川に述べた。
「そして大和をお治め下さい」
「随分と話が順調に進んでいますな」
「そう思われますか」
「はい、違うでしょうか」
「そう思われて当然でしょうな。何しろ我等はです」
筒井はここでだ。顔を顰めさせて滝川に述べた。
「これまで長い間細川氏や三好氏にいいようにされてきましたので」
「そこまで酷かったのですか」
「信長様は我等を完全に家臣として扱って頂けると聞いて」
そうしてだというのだ。
「信長様に従おうと決めました」
「織田家に入られる理由は」
「それが家を守ることになるからです」
家、それこそが守るべきものだというのだ。その言葉を聞いてだ。
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