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戦国異伝

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第六十九話 岐阜での会見その九


「それだけ我等も落ち着くものです」
「政でございますか」
「そう思います」
 そうだとだ。村井は明智に述べる。
「政があり。そして戦です」
「戦が第一ではありませぬか」
「殿はあくまで政を第一に考えられます」
「となるとです」
 その政を第一にすると聞いてだ。明智はこの二人を挙げた。
「武田殿や毛利殿と同じですな」
「そうですな。あの方々とそこは同じです」
「それはいいことです。やはりまずは政です」
 明智もだ。そのことは納得して答える。
「政なくして国はありませぬな。民も」
「少なくとも殿は暴虐な方ではありませぬ」
 村井はこのことも確かに述べた。
「民をみだりに害されることはありませぬ」
「むしろその逆ですな」
「左様です。はっきりと言えます」
「素晴らしいことです。では都に上洛されても」
 それでもだというのだ。明智もだ。そのうえでだ。
 彼と細川は織田家と行動を共にすることに決めた。すぐに上洛の用意が進められる。
 それを聞いてだ。浅井長政もだ。父である浅井久政にこう述べた。
 場所は小谷城の本丸だ。そこにおいてだ。
 自分に似ているが遥かに大柄な我が子の話を聞きだ。久政はこう言うのだった。
「では。御主もじゃな」
「はい、兵を連れ出陣します」
「出す兵は五千か」
「多いでしょうか。それとも」
「いや、家のことはもう御主に任せておる」
 隠居という形になっている。長政が六角と戦う時に隠居させられているのだ。だからだ。息子である彼にそうしたことを任せるというのだ。
 それを聞いてだ。長政は言うのだった。
「では。五千で」
「そのうえで六角をか」
「織田殿が討たれるとか」
「あの家がなくなると我が家としてはやりやすいな」
 近江を二分するその宿敵がいなくなればというのだ。
「それはいいことじゃ」
「まことにですな」
「しかし。織田殿はのう」
 苦い顔になり袖の下で腕を組みだ。久政は述べた。
「あの家は朝倉殿とは折り合いが悪い」
「代々の因縁ですな」
「織田家と朝倉家は宿敵関係にあると言ってよい」
 そこまで仲が悪いのだ。同じ斯波家の被官の出同士でだ。
「そこが厄介じゃな」
「まことに。しかしです」
 長政はそのことを踏まえてだ。父に話した。
「朝倉殿と悶着があればその時はです」
「我等に事前にか」
「お話して下さるとのことです」
「やはり朝倉殿とは戦になるか」
「それは我等にとっても望ましいことではありませぬが」
 浅井家にとって朝倉家は初代である浅井亮政、長政の祖父からの関係だ。互いに持ちつ持たれつの関係なのだ。その縁は深い。
 しかしだ。織田と朝倉の関係はだった。
「やはり。朝倉殿の誇り高さを考えますと」
「致し方ないかのう」
「乳上はどう思われますか」
 長政は父の顔を見て問うた。
「織田殿につきましてな」
「最早うつけではあるまい」
 まずはここから話す久政だった。これまでの風聞は否定したのだ。
「かなりの御仁じゃな」
「そう思われますか」
「うむ。それは間違いない」
「では織田殿と婚姻を結んでいることも」
「それもよい。しかし浅井の家はこのままか」
 織田家に組み入れられるのではというのだ。このことについてだ。 
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