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戦国異伝

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第六十九話 岐阜での会見その七


「やはり。それがしが功を挙げてです」
「その褒美で楽にさせられるのですな」
「左様です。そうあればいいと思っています」
「そうですな。同感です」
 木下のその話にだ。明智はだ。
 温かい目になり頷きだ。こう応えたのである。
「実はそれがしにも母がおりまして」
「明智殿もですか」
「はい、それがしにとってはかけがえのない母上です」
「そうですな。母親というのはどうしてもそうなります」
 木下は明智の話に乗って述べるのだった。
「いや、明智殿もそうとは思いませんでした」
「それがしもです。木下殿もそうであったとは」
「そこは同じなのですな」
 そしてだ。木下はこうも言うのだった。
 そのうえでだ。彼はだ。秀長にこう話したのであった。
「してじゃ。今度母上の為に新しい屋敷を建てようぞ」
「そうされますか」
「うむ、母上の為のお屋敷を建てるのじゃ」
 こう言うのである。
「妹もそこに入れようぞ」
「兄上は屋敷を建てるのがお好きですな」
「そうじゃな。嫌いではない」
 実際にそうだと応える。弟に対して。
 そのうえでだ。また明智に顔を向けて述べたのだった。
「では明智殿は暫く我等と行動を共にされますか」
「はい、そのつもりです」
 明智は礼儀正しく木下に応える。
「ですから働きもです」
「共にですか」
「そうさせてもらいます」
「明智殿が加わるとなると」
 竹中がだ。ここで話したのだった。
「非常に心強いですな」
「むっ、そういえば明智家といえば」
「そうじゃな」
 ここでだ織田の面々も気付いたのだ。明智家といえばだ。
「美濃でも有名な兵法の家じゃったな」
「とりわけ明智光秀殿といえば斉藤道三公の秘蔵っ子であられた」
「左様でしたな」
「秘蔵っ子かどうかはわかりませぬが」 
 そこは謙遜する明智だった。しかしだ。
 そのうえでだ。彼は織田家の面々にこう述べるのだった。
「道三様にはよくしてもらいました」
「あの頃の御主は見事な切れ者じゃったな」
 安藤が笑ってだ。こう明智に言ったのだ。四人衆は今までのところは沈黙を守っていた。今になりようやく口を開いたのである。
「軍学だけでなくあらゆる学問に秀でておった」
「鉄砲にも詳しかったのう」
 今度は氏家が言う。
「すぐにあれを身に着けたわ」
「となると明智殿は道三公直々に育てられた」
「そこまでの方でござったか」
「そうだったのじゃ。しかしじゃ」
 稲葉は同僚達に難しい顔で話す。その話すこととは。
「急に美濃を去ってしまった。あれは殿が大殿と御会いする少し前じゃったか」
「はい、先の公方様にお声を駆けて頂き。道三様に命じられてでした」
 明智はそのうえで幕府に加わったというのだ。
「それで幕臣となっていました。それに少し越前にいたこともあります」
「ああ、越前の」
「朝倉殿でしたな」
「あの家でござるか」
 朝倉氏にはだった。織田家の面々はだ。
 急に不機嫌な顔になってだ。そこに敵意も見せて話すのだった。 
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