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久遠の神話

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第零話 炎の覚醒その十二


 その彼にだ。聡美はこんなことを言った。
「あの」
「うん、何かな」
「これからです」
「これから?」
「何があっても絶望しませんか?」
 こう彼に問うてきたのである。彼のその目を見ながら。
「中田さんは。何があっても」
「ああ、絶望ね」
 今度も笑いながらだ。そうして返す中田だった。
「俺ってそういうのとはさ」
「縁がないんですね」
「うん、ないんだ」
 陽気そのものの声での返事だった。
「全然さ」
「じゃあ何があっても」
「そういうのはないよ」
 また答える彼だった。
「何時でも明るくユーモアが俺の信条なんだよ」
「明るくですか」
「くよくよしたって仕方ないじゃない」
「そうですね。本当に」
「だからそれはないから」
 こう聡美に話すのである。
「安心してよ」
「わかりました」
「で、銀月さんはどうなの?」
 中田は聡美にそのまま話を切り返した。
「絶望したことっていうか。そんなことは」
「気にしていることはあります」
 俯いた顔になってだ。聡美は言ってきた。
「ずっと」
「ずっと?」
「友人のことで」
 そのだ。友人のことでだというのだ。
「私の姉の様な存在の。友人のことで」
「ふうん、そのお友達のことで」
「はい、気にしています」
 そうだとだ。中田に話すのである。
「そのことがどうしても」
「友達思いなんだね」
「大切ですから」
 だからだというのである。
「それで」
「で、その人って今どうしてるのかな」
 中田は自然に聡美に尋ねた。
「日本にいるのかな」
「はい」
 聡美は中田の今の問いに小さくこくりと頷いて答えた。
「います」
「そう、この国に」
「ただ」
「ただ?」
「日本の何処にいるのかは」
 それがだ。よくわからないというのだ。
「そこまでは」
「?それってやばくない?」
 中田は聡美の話、彼女の国籍も踏まえて考えてだ。怪訝な顔で述べた。
「その娘。女の子だよね」
「そうです」
「女の子で。留学生なのかな」
「そうなります」
「留学生の娘が住所不定って」
「この町にいるのは間違いないですが」
 聡美はこうも話す。
「八条町ですね」
「うん、八条町だよ」
 町の話にもなった。彼等が今いるのはその町なのだ。兵庫県の神戸市にある。そこに八条大学もありだ。そうして通っているのだ。 
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