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戦国異伝

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第四十二話 雨の中の戦その十


「そしてさらに多くの国を手に入れ」
「織田の力は相当なものになる」
「そうなりますな」
「あの男の好きな様にさせておく」
 そのだ。信長にだというのだ。
「しかしやがてその勢いも止まるか弱まる」
「さすればその時に」
「我等は」
「その時まで待つ」
 闇の中の声が言う。
「しかしだ。その間もだ」
「仕掛けてはいきますか」
「そうされますか」
「それは忘れない」
 こうも言うのであった。闇の中の何者かが。
「仕掛ける状況であればだ」
「その際はですね」
「常に用意しておく」
「そして実行に移す」
「そうされますか」
「そうだ」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「見るとは言っても指を咥えて見ているつもりはない」
「だからですね」
「織田に隙があれば仕掛ける」
「仕掛ける状況であればそうする」
「そうされますか」
「その通りだ。もっともあの男に隙はない」
 信長にはだ。それはないというのだ。
 しかしだ。それでもだとだ。闇の中にいる者達は話していく。
「しかし中にそれはなくともだ」
「外にはですね」
「それがあるかも知れない」
「そういうことですか」
「弟に仕掛けてそれで失敗するとは思わなかった」
 闇の中心からだ。こうした言葉が出るとだ。
 その次にだ。こう言う者が出て来た。
「申し訳ありません」
 こう言うのだった。その者は。
 闇の中においてだ。その者はこう中心にいる者に話すのだった。
「それがしが及びませんでした」
「よい」
「よいと」
「そうだ。あれは余も上手くいくと思っていた」
 そうだったというのだ。その中心の者はだ。
「しかし。あの男は予想を超えた」
「織田信長はですね」
「そうだったのですか」
「あの男は既に龍だった」
 蛟龍をだ。既に超えていたというのだ。
「水に潜んでいてもだ。巨龍だったのだ」
「ではあの策ではですか」
「あの男を防げなかった」
「そうだと仰るのですか」
「今にして思えばな」
 今だからこそ。そのことが過去になったからこそわかることだというのだ。 
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