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その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)

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第19話 猫神様と黒い魔法使い(3)

 金糸を思わせる長く綺麗な髪の下にある、紅い瞳。
 突如として現れ大きくなったシャムスに雷撃を仕掛けた少女は、秀麗な顔に一切の表情を浮かべず、その紅い瞳でシャムスをみつめていた。
 いや、ただ目の前にいるシャムスの中――彼女の体にあるジュエルシードしか見つめていなかった。

「バルディッシュ、フォトンランサーを連撃」

 抑揚のない声で、人形のように無感情な表情のまま自身の愛機に命じる。低い声でそれに応じた彼女の杖は、先程の閃光を何十とシャムスに向かって打ちだした。

「いけないっ!」

 その光景を見ていたなのはが、まだよろめくシャムスの方へ走り出しバリアジャケットを展開、移動魔法で空を駆け橙色の背中に降り立つ。

『Wide area protection』

 同時に杖を前方に向けシャムスの体全体に防壁を作りだした。桜色の壁がシャムスを覆った直後、襲撃者の少女の閃光が届くが、ほぼ全ての攻撃をその防壁によって阻まれてしまう。

「魔導師……?」

 襲撃者の少女の紅い瞳が僅かばかり疑問に揺れた。
 それでも攻撃の手を緩めず、黙々と攻撃を続けていたが、突然自分の前に躍り出た黒い影によって、それを中止せざるを得なくなった。

「シャムスを……いじめるなぁぁぁ!」

 彼女の上方向に防壁が自動展開される。全く予想だにしていない方向からの強襲に、少女ははっと顔をあげ、襲撃者の姿を見た。
 防壁の向こうで怒りに染まった、或いはとても悲しそうに顔を歪めるのは、先程までシャムスを心配し叫びをあげていた純吾だった。

 なのはよりも一瞬遅れて少女を見つけた彼は、その後次々と先程の攻撃を繰り出すのを目撃。
彼女が人間である事も忘れて、【ハーモナイザー】によって強化された本気の拳を彼女に見舞ったのだ。

「くっ! この位」

 突然の強襲に僅かばかり声を荒げながらも、少女は防壁を解除し純吾の足場をなくした。そして急いでその場を離れる。

 彼女から見た純吾は魔法に必要な杖――デバイスを持っていない。ならばこの一回を凌げば後はどうとでもなる、そう考えての行動だったが


「そんな、この力は一体……」

 目の前に迫った拳を展開した防壁で防ぎながら、彼女はその無表情だった顔を驚愕に染めた。

 純吾は足場が無くなった後、恭也との試合でも用いた【ガル】による空中で体勢を立て直す事に成功していた。
 そしてそのまま無数に生えている木々を足場にして、再び彼女に向かって躍りかかっていたのだ。その【ハーモナイザー】の使用を鑑みても異常なほどの芸当を為さしめているのは、偏に純吾の感情の爆発による一時的な潜在能力の発露によるものだ。

「どうしてっ! あんなこと!!」

 防壁と拳の接触によってできた轟音に負けじと純吾が叫ぶ。

「彼女の中のジュエルシード…、私にはあれが必要だから」

 少女はそれに淡々とした、機械の様に平坦な口調で答える。

 その言葉は、純吾の感情を更に爆発させた。
 シャムスを含むこの世界での縁を守ると彼は誓った。だが、彼女の言葉や表情はまるで無慈悲に機械的に、彼の大切なものを奪ってやるとでもいいたげなものに見えたのだ。

 純吾の防壁に叩きつける拳の早さが増していく。それに比例して防壁が段々ときしみをあげ、少女の顔から余裕が無くなる。魔導師でもないのに、それでも自分に対抗しうる力を前にして、彼女はどう対処したら良いか困惑していた。

「シャムスはっ、ジュンゴの家族なのにっ!」

 拳を叩きつけながら、純吾は叫ぶ。
 その言葉に少女はどうして彼が必死になっていたのかを悟った。その理由は自分と全く同じで、だからこそ戦いの最中にも関わらず、彼女は決して見せまいとした弱音を呟いてしまったのかもしれない。

「……私だって、母さんのために」

 その少女の言葉に、純吾の振り上げた拳が止まる。全身を駆け廻っていた怒りが霧散するのを感じながら、純吾は目を見開きながら防壁越しに自分を見上げる彼女の顔を見た。

 しかし、それ以上彼女の口から言葉が紡がれる事は無かった。
 そのまま元の無表情に戻った彼女はより強く展開した防壁で純吾を押し、地上に叩きつけたのだ。

 油断していた所に容赦のない一撃を加えられた純吾は、地面にぶつかった衝撃に空気をありったけ肺から吐き出す。
 すぐさま仰向けに倒れた体を起き上がらそうにも、衝撃の余波が抜けきらない体は、震えて言う事を聞かない。

 少し表情を暗くしそれを見ていた少女は、空中でシャムス、正確にはその背に乗ったまま、警戒をあらわにして杖を構えるなのはに目を向けた。

「ロストロギア、ジュエルシード。……いただいていきます」

『Scythe form』

 自身の杖に鎌状の光を纏わせ、一直線になのはに向け駆け抜ける。
 なのはも、シャムスに攻撃が当たらないよう彼女の背を飛び立ち、あえて前面に立ち防壁を作って少女の一薙ぎを受け止める。

「純吾君まで傷つけて、どうしてこんなことをっ!」

 鎌と防壁がぶつかる事で生じる火花を挟みながら、困惑したようになのはは叫んだ。
 だが、言葉として返答が返ってくる事は無く、少女の瞳は特に揺れない。彼女は腕に力を込め、なのはを後方へ吹き飛ばす。

「バルディッシュ」

『Photon lancer』

 シャムスに向け構えた杖に、先ほどよりも大きく強い光が集まりだす。
 光が充分な大きさになったことを確認した彼女は、

「ごめんね……」

 呟きと共に、光球を発射した。
 その光球は、彼女の呟きを聞きとり咄嗟に手を伸ばしたなのはと、その後ろにいた何も知らないシャムスを巻き込み、地面を削り取りながら膨らみ、そして弾けた。

 光が消えた後には倒れ伏したシャムスと、空中で意識を失い地面へと落ちてくるなのはの姿。

「な…のは……、あぁぁあっ!」

 それを見た純吾が、無理矢理に体を起き上がらせ駆ける。
 段々と地面へと近づいていく彼女を、歯を食いしばって見上げつつ疾走する。地面が陥没するほどの踏み込み、それで得た力で体を大きく跳躍させる。
 落ちてくるなのはを受け止め、彼女が地面に激突しない様に抱え込んだ。

「いけない、2人ともっ!」

 その時、小さい体で懸命に走ってきたユーノが純吾の着地する地点に緑色の魔法陣を展開した。それによって純吾は大きな衝撃を受けずに地面に降り立つ事ができた。

 しかし、限界まで酷使した体はそこで本当に言う事を聞かなくなり、純吾はその後、少女がシャムスの中からジュエルシードを取り出すさまを見ている事しかできなかった。

 少女が淡々と封印魔法を準備して発動し、シャムスが電流の縄に拘束され悶える。
 空から数え切れないほど降ってくる電撃を浴び悲鳴をあげるのを、ただ見ている事しかできなかった。

「ど、ぉして………どうして!?」

 かき抱くなのはを持つ手に無意識に力を込め、純吾は無感動にジュエルシードを封印した少女に向かって叫んだ。
 その声色には以前のような怒りよりも、自身が誓った事――家族を守れなかった苦しみに悲しみ、そして「ごめんね」と呟いた少女の真意が、本当に分からないというような様々な感情が入り混じったものだった。

 しかし少女はそれに答えない。少しだけ暗い、悲しんでいるかのような表情で純吾を一瞥すると、空へと飛び立ち、やがて見えなくなってしまった。



「必要…。シャムスや、なのはが怪我をして……。それでも、必要」

 彼女が飛び去って行った後。
 ぽつりぽつり、純吾が壊れたテープレコーダーのように少女の“必要”という言葉を繰り返す。

 純吾には分らなかった。
 あそこまで、人を傷つけてまでかなえたい願いがあるという彼女の心が。

 勿論、今までそんな欲望に直面した事がなかったわけではない。
 ここに来る前、崩壊したあの世界では、誰かれもが自分が生き残るために食料を、医療品を、生活に必要なもの全てを奪い合っていた。
 そこまできて初めて、人は人を傷つけてまで自分の望みをかなえようとする。


――ではあの少女は、こんな平和な世界の中ただ一人、そんなにも絶望し、追い詰められた状況にあるとでもいうのか?


 ぐるぐるぐるぐると、思考が空回りしてまとまらなかった。

「…………んご。純吾!」

 と、いきなり自分の名前を呼ぶ声に純吾は思考の渦から顔をあげる。
 声の方へ視線を向けると、そこには焦ったような顔をしたユーノがいた。

「純吾、なのはを地面に下ろして。傷を調べたいんだけど、純吾が抱えたままだと良く見えないよ」

 その声にはっとなり、なのはを下ろす。
 失念していた。今は戦いが終わったばかりであり、急いでしなければいけない事は、山のように会ったのだ。

 そんな純吾を尻目に、なのはに向かって先ほどとは違う紋様の魔法陣を起動させる。しばらく厳しい顔をしてそれを眺めていたユーノだったが、ほっと顔を緩めた。

「良かった…。バリアジャケットがうまく働いてくれたおかげで、何の怪我もしてない」

 そのユーノの言葉に純吾もほっとするが、次の瞬間忘れてはいけないもう一匹の事を思い出す。

「シャムスっ!」

 純吾はジュエルシードを無理やりに抜かれ、小さくなった体へ駆けよる。
 段々と見えてくる小さい体、その傷の深さに思わずはっとした表情をしてしまった。

 綺麗な橙色だった毛並みが、最後に電撃の当たった脇腹あたりを中心に火傷によってかなりの範囲が黒く変わっていたのだ。
 そんな大けがを負い、ぴく、ぴく、と弱々しく痙攣するシャムスを見て、思わず純吾はひざまずきそっと、今にもその命が吹き消えてしまいそうな彼女を抱きあげる。

「頑張って、シャムスっ!【ディアラマ】」

 抱きかかえた腕の中で息も絶え絶えなシャムスを励まし、そうして今彼が出来る一番効力の高い回復魔法をシャムスに使う。
魔法の行使に伴い、白くはじける様に瞬く光が辺りを包む。が

「まだ、足りない……!」

 ギリッ、と音が鳴るほど奥歯を噛みしめた。
 確かに電撃による火傷などは治療する事が出来たが、今度はビクッビクッと強く、よくない痙攣を起こしはじめたのだ。

「純吾! 彼女の体内でジュエルシードの魔力が暴れまわっている、それが体調を狂わせているんだ!」

 その時、ユーノが唐突に声をあげる。
 なのはの時同様魔法によってシャムスの体内の様子を見た事により、無理やりジュエルシードをひきぬかれた後遺症か、彼女の体内にかなりの魔力が残っている事を発見した。

 単純な体力回復ではない、状態治療の治療が急務。
 ユーノの声を聞きそう判断した純吾は、どんな体の異常をも治す秘薬を呼びだす。

「【アムリタ】」

 インド神話に伝わる、飲んだものを不死にする神酒の名を冠した薬。それをまだ目を覚まさないシャムスの口元に手づからツ…、と流し込んでいく。
 シャムスの小さな口が神酒をのみ込んだ、その瞬間

「んっ……!」

 【ディアラマ】を行使した時よりもまぶしく、どこか神々しい光が、純吾を中心とした森の一角を包み込んでいった。




 2人の少女と1人の女性が月村邸の裏口、森への道が続くそこを飛び出していった。

「はっ、はっ…リリーさんっ! こっち、ここから森の中に行けます!」

 すずかが走りながら告げる。息が少し上がっているのは、今までずっと屋敷の中を走り回っていたためである。

 なのはと純吾が出て行ったあと、すずかもアリサも優雅にお茶会を続ける気には勿論なれなかった。
 そのため、彼らを手助けすることのできるリリムに事情を伝えようと屋敷の中を駆けまわり、先程やっと純吾の部屋で正座のファリンを前に説教――いかに純吾と彼の作る料理が素晴らしいか――を延々と語っていたリリーを見つける事が出来たのだ。

「分かったわ! ……あぁもうそれにしてもっ!?
 ファリンのお馬鹿にお説教してたせいでこんなになっちゃうなんて! ジュンゴが少しでも怪我してたら説教じゃすまさないわよあのポンコツメイド!!」

 リリーはそう叫びながら、焦った様子でその秀麗な顔を歪める。

 これまで彼女はいつでも純吾の傍にいて、降りかかる危機を共に乗り越えてきた。
 しかし今回は自分の失態から彼の傍におらず、そのままジュエルシードの発動という未知の危機を迎えてしまっている。

 思い出すのは、この世界に来るきっかけとなった暴徒との争い。
 あの時彼女は無理やりに彼の傍から引き剝がされてしまった。その結果は、彼が致死の重傷を負ってしまうという最悪のもの。

 嫌な予感がする。
 何か取り返しのつかないような、そんな不安が彼女の体を這いずりまわっている。
それを振り払うかのように、リリーはすずかとアリサに続いてがむしゃらに森の中を走り抜けた。



「っ! なのは、ジュンゴ!!」
 さほど森の奥にいなかったのか、先にジュエルシードを封印しに出かけたなのは達を見つけた。
 なのはは気絶しているのか、以前見た白い服装のまま横たわっている。
 そして純吾。彼はシャムスとおぼしき猫を片手にしゃがみ込んで、その手から何かを彼女に飲ませようとしていた。


 シャムスの口にその何かが入った瞬間、純吾を中心として白く、圧倒的なまでの光の奔流が巻き起こった。

 突然の、太陽が落ちてきたかのような光の出現に、リリー達は腕で顔を光から守りながらも、心配のあまり声を荒げて叫ぶ。

「きゃっ! 2人とも無事!? 大丈夫だった!? ……って、へ?」

 しかし光が収まって腕を下げ純吾の姿を確認した瞬間、戸惑いを感じる声が漏れた。

 その後何故かリリーは顔を俯かせ、ふるふると無理矢理何かを押さえつけているかのように体が震え始め

「あ、あ、あ、あん、た……」

 アリサはプルプルとブレまくる手で純吾を指差しながら、顔を真っ赤にさせ

「ふふっ、うふふふふふ……、そっかぁ。純吾君、私たちはスンごい心配してたのにぃ。そっか、そうなんだぁ……ふっ、ふふふふふふ」

 すずかは普段の清楚な雰囲気を全く感じさせない、泥のようにどす黒い微笑を顔に張り付け、地獄の底から響くような、聞くものを震撼さしめる笑みをあげ始める。



 彼女たちの目の前にいる純吾は、何か変な事をしているのか?
 いいや、していない。彼はシャムスを治療した時から全く動いていない。


 いや、彼にとっても余りの展開に動く事が出来ない、という方が正しいだろう。



「にゃ? にゃにゃ? この体は……。
っ!! ジュンゴにゃんジュンゴにゃん! ジュンゴにゃんがシャムスを治してくれたおかげで、シャムス、こうやって喋れるようににゃったにゃーーーっ!!」

 ごろごろにゃーん、そう嬉しそうに動きを停めた純吾に体を押し付け、胸に顔をうずめるシャムスだったもの。

 以前よりも輝きのました橙色の毛並みは、まるで夏の陽の様に当たったかのように煌めき、猫耳は嬉しそうにピコピコと揺れている。

 ここまではまだいい、ここまでは前のシャムスでも持っていた。しかしその他が圧倒的に違う。

 紫色の長髪は波打つようにウェーブがかかり、まるで紫水晶を乱反射させたかのように艶やかに顔の半分を隠すように流れ、その下にある、ぱっちりとしてつり上がったネコ目は、紅いルビーのような輝きを放っている。
 背面には尻尾が無くなった代わりに、髪と同色の小さな羽根がぱたぱたと揺れる。

 前のシャムスには無かった様々なもの。これだけでも十分シャムスが変わってしまったという事は一目瞭然だろう。

 だがしかし、一番劇的なのは体のサイズだ。
 前は片手で軽々と持ち上げられていたシャムスだが、今純吾は彼女を無意識のうちに両手でお姫様抱っこをして支えていた。身長が今の彼とほぼ同じくらいあるからだ。

 そして何よりもどこよりも、今リリー達の目の前で彼に押し付けた胸。
 猫のそこなんて確認のしようが無いが、今の彼女のそれは純吾に押しつけた拍子に柔らかく形を変え、体の横からはみ出している。
 明らかにリリーよりも、下手をしたら忍なみに豊かな胸だった。

リリー達の目の前で、シャムスがさらに純吾に絡みつく。
 肘の半ばあたりまで髪と同色の毛に覆われた長手袋のような腕を、より強く純吾の首に廻して顔と顔、胸と胸をさらに近づける。
 悦に浸ったかのように目を細めて頬を寄せる彼女に、ビクッと硬直したまま体を震わせ、純吾はこれ以上ないくらい真っ赤だった顔をまた一段と朱に染めた。


 そんな彼らの様子を見て、遂に力をため込んでいたリリーが爆発し、その顔をあげて彼らに吠えかかる。

「……どうして、どうしてっ! そんなにジュンゴに引っ付いてるのよ
 こっこのっ、このどろぼう猫〜〜〜!!」


 その顔は鬼女の名を冠するにふさわしい、まさに悪鬼、いや嫉妬の鬼のような形相。
 そんな形相と共に、物理的な圧迫感さえ感じてしまう嫉妬の篭もった眼を向けた。

 間近にいたアリサもすずかは、リリムのあまりの嫉妬のオーラに自分たちの怒りを中断させられ、唖然とした様子で彼女を見やった。
 ユーノに至っては、遠くにいるのに「ひっ」と情けない声をあげる始末だ。

「にゃにゃ? しっけーにゃ、今のシャムスは猫は猫でもただの猫じゃにゃいにゃん!」

 しかし視線を受ける方は純吾の頬から顔をはがし、ぷーっと頬をふくらます位で全く怯まなかった。

「そ、そうだよ。シャムスはただの猫だったはずだよ、どうしてそうなっちゃったの!?」

 はっとしたかのようにすずかがリリーから視線を外しシャムスへと問いかける。
 それに対して彼女の事を覚えていたのか、シャムスは頬を膨らますのをやめて嬉しそうに笑みを作った。

「にゃはは。シャムスにもよく理由は分かんにゃいけど、ジュンゴにゃんが助けてくれるまでシャムスの中には膨大な魔力が渦巻いてたにゃ」

 ユーノの方へ笑みを向ける。その視線を受け、彼女の言っている事は正しいという風に何度も首を縦に振るユーノ。

「で、その魔力がジュンゴにゃんの使ってくれた魔法と最後の神酒。その2つによって暴走するだけだった魔力を制御して、体を作りかえる、って方向を与えてくれたにゃん」

「おかしいでしょそれ! 【アムリタ】はただ体の状態を治すだけのものであって、そんな説明信用できないわよ!?」

 リリーが一歩踏み出し、その説明に即座に喰ってかかる。
 目の前で純吾にベタベタひっつき、しかも自分に無いものをもっているシャムスは、はっきり言って彼女にとって非常に気に食わない存在だ。

 しかしそれを「知らないのかにゃ?」と鼻で笑い飛ばした後、シャムスはさらに続ける。

「アムリタってホントは神様のお酒。それは飲む者に不老不死を与える、神様の力の源でもあるものにゃん。
 たとえ名前だけを借りたものとはいえ、元々あった魔力を使えば猫だったシャムスに神性を持たせる事くらいお茶の子さいさいにゃん」

 そう説明し終わると、また目を細めて嬉しそうに純吾に頬擦りをし始める。
 再びビクッとなる純吾に、ビシィッ! と青筋を立てる女性陣。

 だがやはりシャムスはそんな事を気にせず、一度ギューっ、と頬と頬を強く押し付けあう。
 そして顔を離してすずか達の方を向き、いたずらが成功したような嬉しげな顔をして言うのであった。

「と、言う訳で。今のシャムスはただの猫じゃにゃくて、神獣バステト。
みんにゃ、こんごともよろしく、にゃん♪」
 
 

 
後書き
〜仲魔・スキル紹介〜

◆仲魔紹介
※デビルサバイバー2未登場悪魔(設定等は全てオリジナルとなります)

【神獣】バステト(Lv13)
力:5 魔:9 体:6 速:10
魔耐性、雷撃弱点

 エジプトに伝わる女神。ブパスティスという街を中心として信仰をされる守護神でもあり、その姿は猫の頭を持った女性として描かれる。
 なお余談だが、シャムスという言葉はアラビア語で「太陽」という意味。

◆スキル紹介
【ディアラマ】
味方単体のHPを中回復。

【アムリタ】
味方チーム全ての状態異常を回復。
 
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