戦国異伝
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第百四話 鬼若子への文その三
「後は最後の一手じゃ」
「そしてその一手がですか」
「御主達と文じゃ」
この二つがそれだというのだ。
「それを打つだけじゃ」
「そしてそれを打ち」
「土佐までも手に入れますか」
「土佐を手に入れれば帰る」
それで目的は達したというのだ。
「そうするぞ」
「やはり伊予は手に入れず」
「帰りますか」
「伊予はややこしい」
だから今は手に入れないというのだ。四国の残る一国は。
「よい国だそうじゃがな」
「それでもですか」
「あの国は」
「毛利と大友が争っておる」
丁度その二家が互いに勢力を伸ばしてきているのだ。この二家は今や犬猿の仲になろうとしている程だ。
「そこに入ればな」
「いらぬ争いに巻き込まれますな」
「必ずや」
「泥沼に入るつもりはない」
伊予を巡っての毛利、大友との三つ巴は避けるというのだ。
「只でさえ武田や上杉が控えておる」
「そこで毛利、大友まで敵に回すと」
「実に厄介ですな」
「だから伊予は今は入らぬ」
手中に収めないというのだ。
「そうするぞ。よいな」
「はい、わかりました」
「では土佐を手に入れて」
「帰りそれからじゃ」
帰って終わりではなかった。むしろそこからだった。80
「政に取り掛からねばな」
「これまで手に入れた国全てを含めた」
「その政をですな」
「都もじゃ」
そこも当然入っていた。信長の政には。
「町をさらに整えそのうえでじゃ」
「朝廷に幕府ですな」
「それに寺社も」
「僧兵がいらぬ様にせねばな」
信長は己が目指すものの一つも述べた。
「荘園も検地で消していくがのう」
「朝廷には銭を出してお助けすればいいですが」
「しかし寺社はどうされますか?」
「特に寺は」
「檀家を作ろうかのう」
信長は新しい言葉を出した。今この場で。
「そうも考えておる」
「檀家といいますと」
「それは一体」
「寺の信者じゃ。それの葬式等をやらせて銭を手に入れさせる」
そうするというのだ。
「本山を一番上にして下の寺から上にな」
「荘園に代わりにそうした銭で、ですか」
「坊主達が生きていける様にしますか」
「こうすれば曾兵達もいらぬ」
このことがとりわけ重要だった。この場合は」
「かなりよいと思うがのう」
「では寺社はそうしていき」
「力を抑えますか」
「僧兵はもういらぬ」
信長は僧兵については忌々しげに言った。
「最早な」
「僧兵は、ですか」
「いりませぬか」
「寺社が力を、武を持つとじゃ」
よくはないと言うのだ。
「だからじゃ。出来るだけな」
「いりませぬか」
「そう仰いますか」
「天下を一つにするのじゃ」
一つ、だからこそだった。
「寺社に武はいらぬわ」
「武は武士のもの」
「そういうことですな」
「そういうことじゃ」
実際にこう家臣達に答える。
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