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万華鏡

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プレリュードその八


「足になると。これでも体育の成績はいいけれど」
「あっ、そうなの」
「ええ、それだけは自信があるの」
 こう言うのである。
「何とかね」
「いいわね。私は運動の方は」
「あまり?」
「運動部とか入ったことないから」
「じゃあ文化部にする?」
「そうしようかしら」
 里香が言うとだ。琴乃もこう言うのだった。
「それがいいかも知れないわね」
「本当にどんな部活にしようかしら」
 二人はこんな話をしながら始業式が行われる体育館に向かった。そしてだった。
 そこで始業式を迎えクラスの担任の先生やそれぞれの教科の先生の紹介も受けた。そのうえで里香と一緒に満開の桜が咲き誇る校庭に出た。
 するとそこには予想通り実に色々な部活の紹介があった。勧誘の為のコーナーもそれぞれ置かれていた。
 卓がありテーブルもある。そうしたものを見ながらだ。里香は少し困った顔で一緒にいる琴乃に話した。周りは新入生と部活の先輩達で一杯だ。
 その中でだ。里香はこう言ったのである。
「やっぱりね」
「ここまで多いとよね」
「うん。何処にしようか迷うわよね」
「かなりね」
 琴乃も言う。
「何処にしようかしらね」
「私はやっぱり」
「文化部よね」
「それにしようかしら」
 ここでもこう言ったのだ。様々な勧誘を左右に見ながら。
「とはいっても書道と茶道は別にして」
「他の部活よね」
「そう。文化部っていっても色々だけれど」
「本当に色々な部活があるわね」
「演劇部に華道部に園芸部にね」
「科学部もあるわね」
「生物部に化学部もね」
 そうした学校の授業とも関わりのある部活もあった。これも多い。
 そしてその中にはだ。音楽関係もあった。琴乃はまずこの部を見て言った。
「あっ、雅楽もあるわよ」
「雅楽って日本の?」
「そう、それもね」
「そんな部活もあるのね」
「ちょっと。他の学校にはないわよね」
「そうね。普通はないわ」
 里香もその雅楽部の勧誘のコーナーを見た。見ればだ。
 日本の昔ながらの楽器を使って演奏をしている。そして平安時代そのままの姿で舞を舞っている。それはまるでこの世のない様なものだった。 
 その幻想的でさえある演奏と舞を見てだ。琴乃は言った。
「凄過ぎてね」
「入るには、なのね」
「ええ、ちょっとね」
 拒否とまではいかないがそういったものがあるというのだ。
「私には無理かな」
「私もね」
 里香も少し俯き加減になって言う。
「あそこまではね」
「高尚過ぎるっていうか」
「この世のものみたいじゃないわよね」
「だからちょっとね」
「雅楽はね」
「止めよう」
 琴乃が里香に言う。
「何か結構人が集まってるし」
「ああ、この学校ってね」
「何かあるの?」
「部活は幾つも入っていいけれど」
 里香は懐から学生手帳を出していた。そこに書いている校則を見ながらの言葉だ。 
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