| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三話 部活その八


「比重が大きいの」
「ううん、何か聞いてるだけで凄い話ね」
「で、琴乃ちゃんにはね」
「そうした声では歌わない方がいいのね」
「声域は一人一人違うのよ」
 これが景子がここで言いたいことだった。
「それで琴乃ちゃんは声域が高いから」
「下手に低い声で歌うと駄目なのね」
「ある程度声域を広げることもできるけれど」
 これは努力によった。声域もまた努力次第で広げることができるのだ。だが景子はそれでもだというのである。
「それも慎重にね」
「慎重に勉強していかないと駄目なのね」
「歌いたかったら喉は大事にして」 
 それは絶対にだというのだった。
「歌いたいわよね、ずっと」
「うん、それはね」
「じゃあ喉は大切にして練習していって」
「練習するのはいいのね」
「しないといけないけれどオーバーワークには気をつけてアフターケアもしっかりと」
 そしてだった。
「声域はよく考えること」
「そういったことが大事なのね」
「よく覚えておいてね」
「うん、それじゃあね」
 琴乃も景子の言葉に頷く。そうしてだった。
 琴乃は課題である演奏しながら歌う練習をした。歌う際にギターの動きがおろそかにならないようにしたのである。
 その練習の中でだ。こう言うのだった。
「ううん、まだかな」
「まだまだじゃないかしら」
 彩夏はベースを手にして琴乃の右手にいた。そこから言ったのである。
「手の動きが。よく見てみるとね」
「おろそかになってるのね」
「ちょっとね」
 実際にそうなっているというのだ。
「そうなってるわ」
「そうなの」
「だから。何度もね」
「何度も練習してなのね」
「そうすれば慣れるから」 
 それでだというのだ。
「手の動きもしっかりとね」
「わかったわ。それじゃあ」
「もっとね」
 こうした話をしてだった。琴乃達は楽器の練習もした。それは家でも同じだった。
 琴乃は家に帰り私服に着替えるとすぐに部屋の中でギターを手にした。部室から借りてきたものである。
 それを演奏しているとだ。部屋に弟が入って来てこう言ってきた。
「何やってんだよ姉ちゃん」
「何って見てわかるじゃない」
「楽器の演奏かよ」
「そう。ギターのね」
 琴乃は扉を開けてそこにいる弟にありのまま答えた。
「見ての通りよ」
「そういえば部活替えたんだってな」
「替えたっていうか高校に入ってね」
 それからだというのだ。
「軽音楽部にしたのよ」
「バスケもうしないのかよ」
「うちの高校部活は受け持ちできるけれど」
「じゃあできるんだな」
「多分入らないわね」
 こう答えるのだった。
「もうね」
「ギター一本なのかよ」
「うん、軽音楽部だけにすると思うわ」
 ギターを手にしてそれを演奏しながらの返事だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧